キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ヤミクラゲによって連れ去られてしまったソウルビートとテラの二人。彼等がいなくなって混乱するうた達はひとまずなな達三人がお世話になっていた村に移動。そこにある村の長老と思われる家に入っていた。
「やっぱり影人君とテラちゃんはヤミクラゲに攫われたみたい」
「私達が目を離したばっかりに……」
「今は悔やんでも仕方ないのメロ。二人を助け出す方法を考えるのメロ」
「でも、どこに連れて行かれたかすらわからないんだよ?」
ただ、ヤミクラゲがどこを活動の拠点にしているかわからない以上はどうする事もできない。そのためプリルンは女神アマスの力を借りる事を提案する。
「こうなったら女神様に会ってお願いするプリ!」
「ふーむ、それは難しいかもしれないのう」
「それは……伝説のアイドルがいないからですか?」
長老はそれを聞いて頷く。やはりここでも弊害となるのが伝説のアイドルが姿を眩ましてしまった事でアマスが実質的に機能停止してしまっている事だ。
「女神様はアイドル様が姿を消して以来……誰にも会われようとせんからのう……」
「……もし可能性があるとするれば伝説のアイドルその人だけ」
「そうなるだろうな……」
アマスのやる気は伝説のアイドルが維持していた側面が大きい。そう考えるとそのやる気を取り戻せるのは現状伝説のアイドルだけ。となれば、やる事は一つである。
「だったら捜そう。伝説のアイドルを!」
「ちなみにうた先輩やメロロンはテラちゃんからその伝説のアイドルの行き先とか何か聞いてませんか?」
「何も聞いてないのメロ。多分あの話し方を見るとテラもどこに行ったか心当たりが無いのメロ……」
それを聞いて一同は考えてしまう。伝説のアイドルの方も行方不明になった状態で手がかりもゼロとなると見つけ出すのはかなり困難な状態だ。
「あの、何か手がかりみたいな物は無いんでしょうか?」
「ふーむ……アイドル様も本当に急にいなくなってしまったからな……」
「……あ」
すると一緒に話を聞いていたミドリが何かを思い出したかのように声を上げる。その声に一同の視線が集まると彼女は話を続けた。
「いや……もしかしたらっていうだけだけど……」
「何か知ってるんですか?」
「前に“いつかあの島に行きたい”って言ってたんだよ。“自分の故郷によく似た景色があったんだ”って」
うた達五人が連れてこられたのはアイアイ島の割とすぐ近くの場所にある小島だった。そして伝説のアイドルの言葉をそのまま受け取るのなら昭和の日本にあった景色がこの島にはある……という事だろう。
「アイアイ島すぐ近くにこんな島があったんですね」
「うん、だけど人力で船を漕ぐとなると……」
1000年前のアイアイ島に今の時代は当たり前に搭載されているエンジン等の動力はあるはずが無い。そうなると人三人が乗れるボートをオールで漕いで自力で進む必要がある。
島から小島への距離は割と大した事は無い……が、あくまでそれは遭難するリスクが小さいというだけ。プリルンとメロロンはオールを漕ぐのに参加できないために実質的に女子中学生三人の力だけで島の間の海を越えないといけないのだ。
「海は危険だってテラちゃん言ってたけど……今はそんな事言ってられない。絶対に助けるから待ってて、テラちゃん」
それから三人は船に乗り込むとプリルン、メロロンも一応船の上に座る事になった。理由としては影人、うた、メロロンが初めてこの島にやってきた時のように島に住んでいる鳥が妖精の二人を見つけた際、食べ物として勘違いされないようにするための対応である。
「最初は私から漕ぎますけど……これ、三人で分割してもそこそこ距離ありますよね」
「だったら、プリキュアの力で漕ぐのは?少なくとも消耗は抑えられるよ」
「ですね」
ななはプリキュアの力で漕ぐという話であれば非力な自分達でもある程度素早く進めるのに加え、体力面の不安も少しは解決できる。するとプリキュアに変身できるという話ならプリルンも漕ぐのをやりたそうな声を上げた。
「プリ〜!それならプリルンも漕ぎたいプリ〜!」
「待って、確かミドリさん達が言ってたけど……この船は三人乗りくらいが限界だって。多分プリルンがズキューンに変身すると……重量オーバーしちゃう」
「プリ!?」
「その前に船に座れないと思うよ」
「プリィ……」
プリルンのままなら重量的に問題無いこの船もズキューンに変身してしまうと体格も体重も年齢相応の普通の人間並に重くなってしまう。ズキューンが重いと言いたいわけでは無いが、船が沈むリスクを考えたら流石に勘弁なので今回はプリルンの話を断らざるを得なかった。
「それじゃあ行きますよ」
出発前に色々あったが、こうしてまずはキュアキュンキュンに変身したこころから順番に船を漕ぐ形で前進する事になるのだった。
同時刻、アイアイ島のどこかにある地下の空洞のような場所。そこは海と繋がっているのかその大部分が海水に浸っており、中でも空洞の一番奥の場所。ここだけは土地が高いのか地面があった。そして、そこには倒れているソウルビートとテラの二人がいる。
「く……ここは……洞窟みたいな所か?ッ、テラ!大丈夫か?」
「ん……大丈夫……起きれるわ」
ソウルビートが目を覚ますとテラを起こし、彼女も起きると自分がヤミクラゲに引き摺り込まれた先がここだと感じ取った。
「ここって……どこか見覚えがあるような……」
「テラ、来た事があるのか?」
「いえ、初めてよ。だけど、どこか懐かしい気もするの」
それから二人が周囲を見渡すとそこは神様のいる神殿にも近いどこか神聖な雰囲気さえも感じられる。そして、二人が正面を向くと自分達へと向けられる目線に気がついた。
「……ようやく気がついたか。我が小枝よ。……余計な者も釣れたみたいだが」
そこにいたのは椅子に頬杖を付いた状態で座っている一人の女性がいた。ただ、その色合いは周囲が暗い事もあって紫や黒の闇の色が強い服装や容姿をしていた。しかも体の半分近くが闇に染まっているのか、闇の液体に近い状態をしている。
「あっ!あんたは……」
「我は女神アマス」
「女神アマス……咲良さん曰くテラと似てるらしいけど、ここまで禍々しくなってるって事は完全に闇に呑まれてるのか」
彼女が、彼女こそが島の住民達が待ち望んでいる女神アマスだった。しかし本来なら彼女からは神としての風格や神々しさを感じるはずなのに、その体が闇に侵食されてすっかりと変わり果ててしまっている。
「あなたが女神様ってわけ……。私が小枝ってどういう事よ!」
「小賢しい。大人しく私と一つに戻るのだ」
「戻るって?」
するとアマスは自分の額の所にある彼女から見て右側の角が根元あたりでポッキリと折られているのを見せる。
「小枝よ、お前は自分が何者か知らない」
「その枝……成程、小枝って文字通りの意味か」
「ふん。そっちの部外者の方は理解が早くて助かる。そう、小枝であるお前は私の欠片。分岐した小枝の一つに過ぎないのだ」
それから女神アマスは語り始める。何故テラが誕生する事になったのか、その秘密を。時間軸は伝説のアイドルがいなくなってしまった後の事。
〜回想〜
悲しみに暮れたアマスは自らの住処であるこの場所に引っ込んで出てこなくなってしまった。そしてその時から増大し始めたヤミクラゲの力はどんどん海を侵食。そのままアマスのいるこの場所にも近くにある海を通じて侵入。アマスへと闇の触手を伸ばすと彼女を捕らえてしまった。
「ああっ!?……く、せめてあなただけでも!」
アマスはヤミクラゲに囚われた際、神様だった事もあって生命エネルギー吸収は免れた。しかし、逆にその強大な力を利用しようと言わんばかりにヤミクラゲは彼女の体を闇に染めていく。
そのためアマスは咄嗟に自らの額に出ているサンゴを自ら一本へし折るとそれを自分の後ろにある緊急脱出用の穴にノールックで投げる形で逃した。
そして、まだ無事だったその穴を伝って小枝は海に辿り着くとその姿がテラへと変化。こうしてテラは女神アマスの一部でありながら別の存在としてこの世に生まれたのである。
〜現在〜
「私はヤミクラゲの深い闇に触れた時、驚きと恐怖に駆られて完全な支配を免れる手を取った」
「私が……女神の?」
「なるほど、そりゃあ二人の姿が似るわけだよ。それと、よくよく考えたら名前も二人合わせてアマテラスだしな……」
ソウルビートが若干のメタ発言も交えつつ状況を理解。テラは対照的に未だに心の整理が付かない状態だった。そしてアマスはある事を言い出す。
「だが、この判断は間違いだった。……闇と溶け合った私は知ったのだ。これぞ完璧であると!他者がいなければ孤独も無い。ただ私だけがあれば良い!」
アマスが立ち上がると自らの理想を語る。彼女の座っていた椅子の裏には何かの絵が沢山描かれていたが、それらは全て目元が黒く塗りつぶされていた。
「完璧か……はっ、正直今の説明で完璧を語られても困るな」
「……何だと?」
ソウルビートはアマスの意見を鼻で笑うと一刀両断。そして神である彼女へと正面から意見した。
「他者がいなければ孤独も無いって言うけど……それこそお前は世界の中で誰とも話す事ができなくて孤独を感じるぞ。それとも何だ、お前の事を蝕んでいるヤミクラゲ達と楽しく暮らすって言うのか?」
アマスは自分の意見に対して痛い所を突き続けるソウルビートの存在に苛立ちを露わにしつつあった。ただ、ソウルビートは話を止めることをしない。
「まぁそれはそれでヤミクラゲという他者がいる世界だから自分以外がいないっていうお前の理想とは矛盾するけどな」
「ッ、黙れ!!お前のような不敬者、初めて見たぞ!」
「あははっ、だろうな。この島の人達は皆良い人達だし、アマス様が正しい事をしてきたから逆らわなかっただろうけど……生憎俺はこの島の者じゃないからな」
ソウルビートは自らを悪役としてアマスのヘイトを集中させるとアマスに見えないようにテラへと指でクイクイと近くにある海から逃げるように指示を出す。
「(ッ!?まさか影人、わざと女神のヘイトを買ってるわけ?)」
「それで、女神アマス様……仮にあなたは自分以外を全部滅ぼしてよ。本当の独りぼっちになって、その先で幸せになれると思ってるのか?それこそアイドル様がいなくなった時と同じで、更に孤独感を感じて不幸になるだけじゃないのかよ」
「煩い……煩い煩い煩い煩い煩い!!私の目の前に広がるこの醜い世界を全て滅ぼしてただ私だけが君臨する世界を作る……それがこの私の願いだ!そのためにもまずは!」
その瞬間、アマスがテラを取り込むために闇の触手を伸ばす。これは彼女と分離した事で失われた力を取り戻そうという行動だ。ただ、それを受けてすかさずソウルビートがその間に割って入ると触手がその体に巻き付いた。
「チィッ……愚かな。私は自分の小枝と一つに戻るだけなのに何故止める?」
「残念だったな。生憎女神様の狙いは先刻承知している。俺は間違った事をしてるのなら神様が相手だとしても遠慮なんてものはしないぞ」
アマスは先程からの会話での事に加え、テラを取り込むのを邪魔してくるその行為を見てソウルビートのやってくる事が一々鬱陶しく思えてくる。そして、それを見てテラがソウルビートへと話しかけた。
「ッ!あなた、さっきからどうして……」
「悪いな……。テラが取り込まれるのを黙って見ているのは俺にはできなくてね。……俺がアマス様を止めてる間に早く逃げろ!」
「馬鹿言わないでよ!それじゃああなたが……」
「ああ、多分長くは保たない。だけど、アイドル達なら……いや。テラが惚れたうたの歌なら絶対にアマス様を止められる!俺を助けるのはその後にでもゆっくりやれば良い。信じてるぞ!」
ソウルビートは急いでここから逃げるようにテラに促す。それを聞いてアマスが何もしないわけが無い。
「ふざけるな、折角一つに戻れるのに……わざわざ逃すとでも……」
アマスはすかさず海にいるヤミクラゲを呼んでテラを捕まえさせようとする。それを見たソウルビートは全身に力を入れるとフルパワーを解放した。
「いいや、アマス様。悪いけど大人しくしてもらうぞ。はぁああああっ!」
その瞬間、アマスは自らの闇の力が抜けるような感覚がすると同時にソウルビートが自らを拘束する触手を力強く掴む感覚を感じた。
「何……まさか、我の闇の力を……」
「ああ。……俺の……ソウルビートの特性は輝き等のエネルギーの変換。それは当然闇の力も対象内だからな」
しかし、その瞬間ソウルビートの体から紫の火花が散ると顔が歪む。恐らく闇の力を無理矢理自らの力に変更するのは体には相当重い負担になっているのだろう。そのため、アマスの口元にも笑みが浮かぶ。
「なるほど、私の力を取り込もうとするとは。だが見た所相当無理しているようだな。……ならば、これでどうだ!」
次の瞬間、アマスは更にエネルギーを爆発的に増幅して逆にソウルビートの体内に無理矢理流し込む。そして、それを受ければ今の時点でギリギリのソウルビートの肉体は当然容量オーバー。そのまま闇のオーラに包まれると悲鳴に近い声を上げた。
「があああっ!?」
「神の力を侮った罰だ。お前はこの私の一部となって世界が滅びる様を間近で見ると良い」
そのままソウルビートはオーバーダメージでグッタリとした状態のままアマスの体内へと取り込まれてしまう。それをテラは恐怖のあまり震えながら立ち尽くしていた。
「……待たせたな、我が小枝よ」
「ッ……」
続けてアマスのターゲットがテラへと向くと今度こそ彼女の体を闇の触手で拘束してしまう。
「ううっ……くっ……この……」
テラはどうにか抜け出そうとするが、アマスの拘束はテラの力ではどうする事もできない。するとアマスはテラへと顔を近づけた。
「恐れるな。お前は元からいない者。ただの欠片は本体に戻り、私は完全な者となるのだ!」
アマスにそう言われつつテラはそのまま成す術なく取り込まれてしまう。そしてその刹那、テラの脳裏にある光景が浮かぶ。それは苦しみながら毎日のように空に向かって祈りを捧げるアマスの姿であった。
「あっ!」
だが、その光景を見た所で今のテラでは何もできない。こうして彼女の肉体はアマスと一つに戻る事になるのだった。
また次回もお楽しみに。