キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
プリホリからの帰り道、カイトと出会った影人とうた。三人は近くの自然公園のベンチで話す事に。
「ふぅ……」
カイトがタオルで髪を拭く中、うたに隠れていたプリルンがコッソリとうたへと話しかけた。
「カイトにアイドルのお仕事を教えてもらうプリ」
「シーッ」
ただ、この至近距離でプリルンが出てきてしまったのでうたはそんなプリルンを戒める。するとカイトはうたと影人の方を向いた。座り方はカイトと影人でうたを挟む形である。
「ん?」
「え、えっーと……カイトさんの初仕事は何だったんですか?」
「それは俺も気になりますね」
「……初仕事はコスメのCMだったかな」
質問に対してカイトは二人へとそんな風に返す。まさか二人は自分達と同じだとは思っておらず、目を見開いた。
「おんなじだ……」
「ちょっ、咲良さん」
「え?」
「あぁっ!?で、どんなでした?緊張しました?上手く行きました?」
うたは影人に指摘されると慌てて自分のやらかしを誤魔化すように持ち前のコミュ力でカイトへとグイグイと行く。
「あはは……。初めてだったから何も分からなかったけど、これだけは大事にしたいって思った事があるんだ」
うたはカイトの言葉を聞いてその言葉が気になった。そして、カイトがそれについて言おうとしたその瞬間。いきなりうたの飼い犬であるきゅーたろうが吠え始める。その先には同じく犬を散歩する人がいた。
恐らくきゅーたろうはあまり知らない顔のその人達を警戒したのだろう。うたはそんなきゅーたろうに引っ張られるように行き始めてしまった。
「あっ!きゅーちゃん!うぇえっ!すみません!また!!」
「………」
「また」
うたが嵐のようにきゅーたろうに引っ張られながら去っていくのを微笑ましい目で見たカイトはうたへと返事を返す。影人はそんなうたを相変わらず忙しない人だと考えながら見送る。
「それで、影人君は俺に何か聞きたいことはある?」
「……別に、俺は……」
「あまりそうやって溜め込まない方が良いよ」
そんな風に優しく諭すカイト。影人はこれ以上意地を張るのは良くないと判断するとカイトへと先程までの悩みを相談した。
「……カイトさんはご存知だと思いますけど、俺の知り合いにネットの動画で噂になったアイドルプリキュアがいます」
「うん」
影人の言葉にカイトはあまり動じない様子だった。やはり前のクリームソーダのマックランダーとの件の際にしっかり見られていたらしい。
「実は初めてアイドルプリキュアの二人が企業からの宣伝の仕事を貰えて」
「そうなんだね。じゃあ、二人は揃ってCMデビューになるのかな」
「はい。……でも、依頼主さんからの話を聞いてると……その、今回のCMには並々ならない気持ちで臨んでいて。動画がバズった事で知名度は抜群のアイドルプリキュアなんですけど、初仕事でそんな大型案件なんてやって……。もし上手くできなかったらどうしようって思い悩んでしまって」
影人は不安そうな顔つきだった。カイトはそんな影人を見ると彼へと話しかける。
「それはアイドルプリキュアをサポートする人……マネージャーとして?」
「いえ、俺はマネージャーじゃないと言いますか……二人のカバー役と言いますか」
影人は半ば言いづらそうに言う。確かに自分はプリキュアの二人をサポートするマネージャーのような立ち位置になるのかもしれない。でも、それは少し意味合いが違う気がするのだ。影人の中でのマネージャーは田中に話した通り、アイドルのスケジュール管理とか歌やダンスのトレーニングとかで疲れたアイドルにタオルやドリンクを渡すとかの行為をする人を指していると思っているのだ。
「そっか」
「……心配なんです。もし二人が失敗して、売り上げが上手くいかなかったら……。それが原因で二人がアイドルとしての自信を無くしたら……。最悪、怪物との戦いにまで支障が出たら……。でも、俺自身はアイドルプリキュアじゃないから二人へのすぐそばでのフォローはできなくて」
影人の声色はどんどん暗くなっていく。うたもななも影人から見たら凄まじい光を放つ存在だと思っている。でもそれは二人がアイドルプリキュアとしての覚悟がちゃんと決まっているから。そして二人は優しい。自分達のせいで今回の依頼主が落ち込む姿を見てしまえばきっと彼女達は自分を責めるだろう。
「……せめて俺も二人みたいな光を持ってたら良かったんですけどね……」
そんな風に自虐するように愛想笑いをする影人。カイトはそんな影人をを見て何かを思い出した。
「そっか。……俺のマネージャーさんも最初はそんな風な気持ちだったのかな」
「え?」
「俺のマネージャーさんの話なんだけどさ。初めて俺が仕事をしたあの時。今の影人君程じゃないけど少し不安そうな感じだった。……きっと俺の事を心配してくれたんだと思う」
カイトの言葉に影人は目を見開く。そして、それと同時に改めて認識した。カイトは初めから今のような絶対的な信頼感やカリスマがあったわけじゃないと。
「影人君はアイドルプリキュアの二人が初めての仕事で大役を任されて上手くやれるか心配なんだよね?」
「はい……」
「……俺はマネージャーの立場になった事が無いからわからないけど、二人にはちゃんとアイドルとしての覚悟はあるんでしょ?」
「恐らく、今もちゃんと持ってます」
「じゃあさ。二人のアイドルとしての覚悟と力を信じてあげるのはどうかな?」
影人はカイトからそう言われてハッとする。自分は先程まで失敗の事ばかりを考えていた。二人が仕事をやっても無いのに失敗して、その後に待ち受ける負の未来ばかりを想像していたのだ。
「俺は初めての仕事の時、自分でも上手くやれた気持ちにはなれなかった。多分、今と見比べたらだいぶ違うと思う。それに今、俺が今までやってきた全ての仕事を完璧にこなせたかと他人に問われたとしよう。俺はその質問に素直に頷くのは無理だと思う。だから、初めての二人が何かしらで失敗するのは当たり前だよ」
カイトの言葉に対して影人は二人が失敗するという単語を聞いても影人は暗い顔には変わらなくなっていた。影人はカイトからの話の続きを聞くのに集中していたのだ。
「俺のマネージャーさんは俺の初めての仕事の日、俺がやっているのを見ながら不安な気持ちでいっぱいだったんだと思う。でも、その気持ちを俺に一切悟られないように隠していた。不安が俺に伝染してしまわないように。だから、影人君が二人にしてあげるべきなのは不安な気持ちを二人の前で見せない事。それと、どれだけ二人が失敗したとしても二人の力を信じてあげる事……かな」
そんな風に言われて影人はようやく自分が二人に対してできる事が理解できた。自分はアイドルプリキュアで無い以上、二人の撮影時間に彼女達をフォローするのは無理。基本的に撮影の監督からの細かい指示は二人へと直接伝達される。それに対して自分が余計な口出しはできない。それは監督の意思を勝手に捻じ曲げる事になる。そのような行為はできない。
だからこそ影人がやるべきなのはまず二人が伸び伸びとできるような状況にしてあげる事。自分が不安そうにしたらうたもななも不安になる。だったら影人にできるのは二人へと最初に激励の言葉をかける事とそれ以降の撮影の様子をそっと見守るだけだ。
「……そっか。俺、ちょっと考え過ぎてたんだ。俺が不安になったって俺が撮影される側になるわけじゃ無い。……二人の力を、輝きを信じてあげないとな」
「うん」
「あの、カイトさん。話を聞いていただきありがとうございました」
「ふふっ。どういたしまして」
影人がカイトへと頭を下げるとカイトは微笑んで優しく返す事に。それから影人は長々と彼の時間を取るのも申し訳ないのでカイトと別れて家に帰っていく事になる。
その翌日。学校が終わった後の放課後。影人はこの後に控えているPretty_Holicでの撮影のために教室から出て下駄箱に向かう。うたやななとは帰る前の掃除の場所が違ったので一緒では無い。
影人が下駄箱に到着するとそこにこちらも掃除が終わって出てきたのか、こころがやってきた。
「カゲ先輩!今日は一緒に帰りませんか?放課後の練習をこれからやるので付き合ってもらいたいです!」
こころの顔は影人と一緒に練習をしたいという気持ちに溢れていた。だが、今日は待ち合わせの関係でそういうわけにはいかないために断らざるを得ない。
「こころ……。今日はごめん……この後どうしても外せない用事があって」
「えぇっ!?……そ、そうなんですね」
影人はこころへと断りの返事を返すと彼女はとても悲しそうな目を向ける。そんな彼女の目を見て影人は更にこころ相手に申し訳ない気持ちになるとある提案をした。
「な、ならさ。後日ちゃんと今日の埋め合わせをするから。それで我慢してくれる?」
「……ッ。わかりました……」
影人がそう言うとこころは僅かに考えた後に了承の返事を返す。そんな中、こころが今の自分の返事に対してどこか曇ったような顔つきになったのを影人は見逃さなかった。
「こころ?どうしたんだ?」
「えっ!?あ、いえ……。何でも無いです」
「いや、何か言いたいだろ。こころ、あまり自分の気持ちに蓋をするなよ?」
「……いえ。大丈夫です。そういう事には……慣れてますし」
そんな言葉を話すこころの目は明らかに悲しそうである。影人はこころへと何かを言いたかったが、あまり深く切り込みすぎるのも良く無いと判断してそれ以上の踏み込みができなかった。
「カゲ先輩。また明日朝練で!」
こころは切り替えたのかいつもの元気そうな顔つきで影人と別れて去っていく。
「……こころ。また我慢させてごめん……」
影人は小さくそう言って謝る。影人は何となくこころに色々と我慢させていると察していた。彼女には伸び伸びと目指した目標に向けて頑張ってもらいたいというのが個人的な気持ちだ。実際、彼女はアイドルプリキュアに強い憧れを抱いている。
「……でもやっぱり、こころには話せないよ」
影人は嫌だった。彼女がプリキュアの真の姿……怪物と戦う所を彼女に見せて彼女の夢を壊してしまうのが。そうなればきっと彼女は折れてしまう。こころはきっと自分が思っている以上に繊細なのだから。
そんな中、こころは影人に断られてしまってまだ動揺が隠せなかった。とは言え、影人にだって自分に合わせられない日があるのは仕方のない事だ。影人もこころも悪いわけでは無い。
「……やっぱり、カゲ先輩の隣にいられないと……とても寂しいですよ。それに、私とカゲ先輩は学年が違う。どうしても、どうしてもあと一歩の距離が遠い……」
こころは影人と再会できたあの日から影人の隣に並びたいと必死に頑張った。自分の心をキュンキュンさせたアイドルプリキュアのようなキラキラした存在になれれば、影人の隣に立てると信じて。でも、まだ自分はそれにそんな存在にはなれてない。加えて、学年の差が自分と影人の距離を示しているような気がしてもどかしいのだ。
「……私、カゲ先輩に、アイドルプリキュアに……心、キュンキュンしてます」
そう呟くこころの気持ちはまだ物足りなさを感じているのであった。一方、それとほぼ同時刻。チョッキリ団のアジトではビリヤードをしているチョッキリーヌが声を上げた。
「……アイドルプリキュア。二人になって調子に乗ってるじゃないか」
「そうなんすよ!ザックリダルいっすわ!」
「全く生意気ですぞ」
そんな風にカッティー、ザックリーがチョッキリーヌの言葉に賛同する。ただ、二人のその態度にチョッキリーヌは不満なのか二人へと声を荒げた。
「グダグダ言ってる暇があったら、さっさと行って邪魔者を倒しておいで!」
「「イェス!ボス!」」
チョッキリーヌの指示に二人は返事をすると早速どっちが行くかのじゃんけんを始めた。
「「じゃんけん……ほい!」」
それから二人は暫くあいこになりつつも、三回目にカッティーが勝利。その後、二人であっち向いてホイをするとカッティーが指差した方をザックリーが向いたためにザックリーが負けとなる。
「良し!」
「ああもう!しゃあねぇ……俺が……ザックリ行ってくるわ」
そんな風に今回はザックリーが出撃する事に。前回まで自分から出撃したがっていたはずなのに何故か今回は出るのをお互いに嫌がったようだ。恐らく、チョッキリーヌが機嫌が悪いのが理由で無理矢理出撃させられてるからだろう。
そんな出ていくザックリーがいなくなると前にチョッキリーヌと話していた人間はその後ろ姿を建物の影から見送っていた。
「……さて、今日はどんな姿を見せてくれるのでしょうかねぇ」
フードを被った人間は密かに消えるとザックリーが向かう先へとピンポイントで向かう事になる。
また次回もお楽しみに。