キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ソウルビートとテラが闇に堕ちたアマスの体内に取り込まれてしまった頃。伝説のアイドルが行ったと思われる小島にどうにか到着したうた達。
ちなみに三人が交代でプリキュアに変身しつつ船を漕いだお陰で時間はさほどかかって無かった。加えて疲労もそこまで溜まっておらず、まだまだうた達は元気である。
「島に無事に着けて良かったね」
「うん、後は伝説のアイドルを探すだけ!」
「ただ、その……たった一人でこんな所に住めるのでしょうか」
うた達一行が到着した島の中に入っていくとそこはまるでジャングルのようなうっそうとした木々が生える森の中であった。しかも、見た所他に誰かが住んでいるようにも見えない。つまり、アイアイ島とは違って完全な無人島だ。
加えて島の中では虫が好き放題飛んでおり、食べられる物があるようにも見えない。つまり、生活するどころか人が生き延びる事さえも困難なのだ。更に言うならここでもし病気にかかったり間違えて毒のある物を食べる。若しくは毒虫に刺されるなりして体調を崩したら即アウト。誰にも助けてもらえないだろう。
「幾らアイアイ島やその周辺の知識を島の人に教えてもらったからと言ってアイドル様は元の世界では仕事を抜きにしたらただの一般人ですし……」
「でも、諦めるにはまだ早いよ!とにかく行ってみよう!」
「うーん、でもこれ。木々や草とかが邪魔で進むのも大変そうだね」
うた達はこの視界が閉ざされた森の中でどうやって進むか考える。するとプリルンがある事を思いつく。
「プリ!ここはプリルンに任せるプリ!」
「えっ、プリルンどうにかできるの?」
「これがあれば行けるプリ!」
プリルンが自分がかけているポシェットに手を突っ込むとどうやって入れたのかわからないが、巨大な棍棒を取り出す。
「あっ、これってヤシの実を落とした時の」
「そうプリ」
実は前日にヤシの実を落とす作業を終えた際にまた翌日もヤシの実落としの役をお願いされていたため、彼女が偶々持っていたのである。ただ、それにしてもどうやってこの大きな棍棒を小さな彼女のポシェットに入れていたのか不思議ではあるが……そんな些細な事は置いておこう。
「行くプリよ〜!Δ○・艶○アクセルプリ!プリプリプリプリプリ!」
「ちょっと技名がアウトっぽいですけど続いて行きましょうか」
プリルンがやったのは前にもプリキュアになった際に歌っていたどこぞの偽善者が大嫌いな歌姫が使う技である。
そんなメタ話はさておき、プリルンは自らを軸に棍棒を両手で持ったまま拘束回転。まるで立ち塞がる障害物は全て伐り刻むと言わんばかりの殺意高めの鋸刃のような状態で突進を開始する。
「プリプリプリプリプリ!」
「ねえたま、カッコ良いメロ……」
「頑張れ〜!プリルン!」
そしてプリルンが切り開いた道を他の四人が進んでいく。ちなみにメロロンがこの回転するプリルンの真後ろを付いていきながらカッコ良いと言っているが、実際どうなのかは要審議と言った所だろう。
「プリプリプリプリ……プリャ!」
「あっ、見てください。何かありますよ!」
「ホントだ。もしかして伝説のアイドルの居場所はここかな?」
見た目は兎も角、ボートを漕がずに体力を温存していたプリルンのお陰で普通なら進むのに相当時間がかかるであろう山道を突破。頂上付近にある広い場所に出た。
「この花……テッポウユリかな……一面に生えてるね」
そこにはテッポウユリが自生しており、そこが咲き乱れている場所だけは木々が少ないためにその分木々の間から差し込む光があった。そして、奥の方には数百年くらいは生きているであろう巨大な木やそこに置かれたテラの家を構成しているような形で置かれた巨大なシャコ貝。
そしてそのシャコ貝は貝が閉じないように入り口を木材やロープで補強しており、明らかに人が住んでいる形跡があった。
「あの貝、入口が補強されてますよ!」
「うん、アイドル様がいるのはきっとあそこだね!」
しかし、ななはその光景を見て嫌な予感がする。何しろ人が住んでいるにしては長い間放置された後のように補強に使った木には苔が生えているのだ。加えて、シャコ貝自身も貝の下側が土で埋まっており、そこには雑草が生え放題。少なくとも、人が現在進行形で住んでいるようには見えないのである。
「ねぇ、こころちゃん。私……ずっと違和感があったの」
「えっと、どういう事ですか?」
シャコ貝の様子を確認したななはこころへと恐る恐る話しかける。その違和感は、影人がこの前日に感じた嫌な予感が殆どそのまま的中したような内容だった。
「……伝説のアイドルって、一体いつこの島に来たの?そしてどのくらいの間、女神様といたんだろ」
ななの脳裏に浮かんだのはこの時間に来る前、現代のアイアイ島で話したトットとの会話だった。
〜回想〜
「10年に一度なのも納得かも」
「……あまり頻繁でも興醒めですしね」
最初に違和感があったのはトットが言ったあまり頻繁でも興醒めという言葉。10年というのは人間が考えた場合、頻繁という言葉は使わない。それこそ1年単位とか、1ヶ月単位とかで使う言葉だろう。
「1000年って……」
「凄く昔メロ……」
「そうですか?」
そして1000年前の事をトットはそこまで昔の事として捉えていなかった。まるで、長い時を生きるのが当たり前だと言わんばかりに。
〜現在〜
ななの話を聞いてこころもある事実に気がついて目を見開く。そして、同時に影人もななと似たような違和感を抱いた事を思い出す。あの時はレイがそこまで違和感を抱いたような反応を見せなかったため、こころも見落としていた。
「あっ……じゃあレイ先輩が反応しなかったのは……」
「うん、多分だけど……レイ君はきっと知ってたんだよ。最初から全部」
恐らくレイは違和感を感じなかったのでは無く元からこの理由を知っていたから無反応であったのだろう。何しろ彼は一度フェスティバルを彼以上に知識のある完璧人間のハジメと来ているのだから、彼伝てに何か聞かされて知っていてもおかしく無いのだ。
「あれ?ななちゃん、こころ?」
「プリ?」
「メロ?」
そしてここでずっと止まっているななとこころに気がついたうたが止まって振り返っているとそれを見てなな達は彼女に追いつくために歩いていく。それからうた達にもこの事実を伝えた。プリルンは最初理解が追いつかなかったが、ななが改めてしっかりと補足しつつ説明すると結果的に理解する事に。
「サンゴ礁の寿命は1000年単位。もし女神様やサンゴの精達も同じように長生きだとしたら……」
ななの話を聞きながらシャコ貝の元に五人が到着するとそこには長い間放置された影響か泥を被り、色も褪せて劣化してしまったアイドルの衣装。更に苔が生えてボロボロになった赤い手帳があった。
「まさか……嘘……」
「くっ……」
うたはその事実を受け入れたく無さそうに呟き、こころも悔しそうな顔をする。それでもななは続ける。この事実を受け入れないと……アマスは助けられないからだ。
「人間よりも遥かに寿命の長い女神様にとって、アイドル様と共に過ごした時間も……彼女がいなくなったのも……私達が思うよりもずっと……」
人間の寿命はせいぜい長くても100年行けば良いくらい。しかもそれはあくまで医療が発達した現代の話。こんな無人島のど真ん中に医療技術なんて無いし、そもそも伝説のアイドルが生きていた昭和時代の事を考えたら寿命はもっと短い。
そう考えると100年という時間すら生きられない人間と最低でも数百年は当たり前、長くて1000年生きられるサンゴの……しかも神様という更に上乗せで長く生きられるアマスの間に流れる時間感覚の差は果てしなく大きい。
その頃、ソウルビートとテラを自らの中に取り込んでしまったアマスは自らの力が戻る感覚が感じられると欠損していた右側のサンゴの枝のような角が再生して復活。これにより、彼女は上機嫌になっていた。
「ああ……これで私は完全なる物に!しかも、私の神経を逆撫でする邪魔者も消えて……あはははっ!」
アマスが高らかに笑っていた。それだけ自分の力が完全に戻って嬉しいのだろう。……ただ、アマスのすぐ近くには彼女の近くでこの様子を見守っていた影がいた。
それは、既に亡くなって霊体としてずっと側にいた伝説のアイドルである。そして彼女は今のアマスを悲しそうな目で見ていた。
場面は戻り無人島の中、そこではうたが早速手帳の名前を見る。その手帳に書いてある名前はUtakoであった。これによりうた達は知らないものの、行方不明になってしまったUtaKotoneのUtakoが元の世界で行方不明になった後にこの島に流れ着いていた事が確定する。
ただ、本当に惜しむらくはこの場に影人がいない事だろう。それはさておき、うた達は早速Utakoの手帳を読み始める。ちなみに、手帳に書いてあったのはこの島に来てからの事が殆どだった。恐らく、偶々手帳を新品で購入したばかりの頃にこの島に流れ着いたという事だ。
「こうして読んでみるとUtakoさん、この島で過ごしている時間を楽しんでる」
「うん。きっと、Utakoさんにとってここでの生活は元の世界と同じくらい充実していたんだと思う」
「メロ……でも、偶に出て来る心配の言葉が気になるのメロ」
そんな中、Utakoはアイアイ島での楽しい想い出の中に時折り元の世界に残してきた仲間……Kotoneについて心配しているような趣旨の話も書いていた。
「Kotone……多分Utakoさんと同じような表記ならことねさんって名前だよね?」
「はい、でもこの名前……どこかで聞いたような……」
ななとこころがKotoneという名前についてどこかで聞いた名前だと感じて脳内で考える。だが、その答えに辿り着く前にうたは更にページを捲っていくと最後の数ページに到達。そこには様々な事が書いてあった。
まずはこの島で自分を温かく迎えてくれた島の住民への感謝。続けてこの島で過ごせて自分は幸せだったという事、そしてもう自分は先が長く無い事を悟っているような話。日付の最初の方と最後の方に書いてあった年の部分が40〜50年程離れている所から、彼女は比較的長期間に渡ってこの無人島で過ごす事ができたのだとわかる。
「この文面を見るとやっぱり……アイドル様はもう……」
「プリ……」
「メロ……」
うた達がよく周囲を見てみるとそこにはアイアイ島の住民が着ているような服もボロボロながら置かれていた。しかも数着あった島民用の衣服の内、一着はまるで横たわったような状態で置かれている所を見ると……彼女が最期を迎えた場所はここだと察する事ができる。
ただ、彼女の遺体や遺骨が無く服だけ残っているという事は彼女が亡くなった後、それなりに長い時間が経過。骨さえも全て消えてしまった後なのだろう。しかもその最後に来ていた服も殆ど残ってないくらいだった。
「という事はヤミクラゲがあそこまで増えたのも……」
「恐らく、それだけ長い間……女神様が退治をやってこなかったって事だと思う」
それこそ、現代で大量発生したヤミクラゲと原理は同じなのかもしれない。現代でも女神アマスが石像化してからかなり時間が経っていた。もしその間女神からの光をヤミクラゲが受けていないとなると……アイアイ島のみならず、全世界に同時侵攻できるだけの戦力を用意する期間は十分あったと思われる。
話が脱線したが、手帳の最後の二ページへと読み進む。そこには元の世界に残してきた友達……Kotoneへと向けた物で、それは彼女への謝罪と自分という存在は目の前にいなくてもずっとKotoneの隣にいるから前を向いて生きてほしいという切実な願いだった。
そして、ラスト一ページ。そこには約束を果たせなかったアマスへの謝罪と彼女に向けた最後のメッセージ……Utakoの想いが記されていた。
「……ッ」
それから彼女の手帳を読み終えた五人。手帳を読み終えたうたの瞳には悲しさから涙が浮かんでおり、プリルンとメロロンもしょんぼりとしている。勿論ななやこころの二人もいたたまれない気持ちになっていた。
「メロ……」
「プリ……」
「……キミの想い、受け取ったよ」
うたはそう呟き、伝説のアイドルが……Utakoが残した手帳をそっと閉じてから元の場所に戻す。
すると突如として地響きのような音が聞こえて来ると五人は急いで山を下山。その頃には地響きによって起きた異変の影響か、空が暗く染まりつつあった。
「あっ!」
「メロ!?」
「プリ!?」
その瞬間、うた達の視線の先……アイアイ島では火山が噴火したかのようにその頂上に露出した火山の火口部分のような場所で土煙が立ち昇る。
「噴火!?」
「いえ、でも噴火の兆候なんて無かったはずですよ」
島の人々の雰囲気から見て少なくとも火山が今日この場でいきなり噴火するような前兆は起きていなかった。そう、今発生したのは火山の噴火では無い。それを裏付けるかのように頂上を覆う土煙が晴れるとそこにいたのは……完全にヤミクラゲに乗っ取られ、全身がヤミクラゲ特有の紫の液体のような姿と化した女神アマスであった。
「うぉおおおっ!」
彼女の体は巨大化しておりその際に羽衣は完全に消えていたものの、背中には先程どうよう暗い水色のような背中の輪は健在だった。胸には彼女の核のような赤い水晶。そしてその中には人影が囚われている。このため特徴自体は女神アマスのまま、中身はそのままヤミクラゲに塗りつぶされたような形とも見て取れるだろう。
「あれは……」
「恐らく、アマスさん……」
「えっ!?じゃあ、テラちゃんやカゲ先輩は!?」
「わからない……兎に角行かないと!」
こうして、うた達中学生組の三人はプリキュアに変身。急いで船に乗り込むとアイアイ島へと引き返し始める。尚、プリルンとメロロンは島に到着し次第プリキュアに変身する形を取るのだった。
また次回もお楽しみに。