キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ヤミクラゲの力を取り込んでしまった影響で自分以外の全てを滅ぼそうと目論む女神アマス。彼女はソウルビートと自らから分岐した欠片であるテラを取り込んで久しぶりに地上へと降臨する。
ただ、その姿はすっかり闇に染まってしまったために島の住民から見た彼女はヤミクラゲという認識だった。
「ヤミクラゲじゃ!ヤミクラゲが女神様を乗っ取ってしまったのじゃ!」
サンゴの精である村人達はすっかりヤミクラゲの色に染まってしまった女神アマスを見て動揺を隠せない。するとアマスは早速自らの願いを果たすためにその力を解放して島の地上や海中にヤミクラゲを召喚。島を制圧しにかかる。
「そんな……」
「森が……海が……」
いきなり現れた無数のヤミクラゲはあっという間に島全体に溢れ出していくと当然のように村にも姿を現す。
「あっ!ああ……」
「させないよ!たあっ!」
「ヤミッ!?」
村の子供達が成す術無くやられてしまうその時、間一髪のタイミングでウインクが真上からヤミクラゲを踏みつける形で倒す。更に他の四人も村に出てきたヤミクラゲを倒していった。
「はあっ!」
「ヤアッ!」
「キュンキュンレーザー!」
ズキューン、キッスがヤミクラゲを吹き飛ばすとキュンキュンがレーザービームを周囲に分散して放つ形でヤミクラゲを足止めしつつ倒せる個体は倒していく。
「皆さん、今のうちに避難を!」
「うん!」
「あっ、あなた達。アイドル様には会えたのかい?」
アイドルが村の住民に避難を促しているとミドリが心配した様子で話しかけてくる。彼女は五人が無事に伝説のアイドルに会えたかどうか気になっていたのだ。
「ッ……実は、会うことができなくて」
「そうかい……」
こんな時に嘘を言うのもおかしいために伝説のアイドルと直接会うのはできなかったと答えを返す。ミドリは闇に堕ちて暴れているアマスを彼女なら止められる可能性があると思っていたが、いない者はどうしようもない。
「あの、それと……急に失礼な事を聞いてごめんなさい。ミドリさんって今何歳なんですか?」
「え、えっと……300を越えたくらいだけど」
ウインクはそのままの流れでミドリに断りを入れてから年齢について尋ねる。そして、その答えは300歳越えというこの時点で人間よりもかなりの長生きだった。外見年齢的に見ると40代くらいなのでサンゴの精は人間よりも7分の1の速度で見た目が変わっていくのだろう。
そう考えるとUtakoがこの島に来てから亡くなるまで、更に言えば影人達が来るまでの間をずっと生きていたとしてもおかしくは無い。
「……それがどうかしたのかい?」
「いいえ……ありがとうございます」
ウインクは真実がわかった所でしっかりと頭を下げる。これでもう確定だ。少なくともアイドルがこの島に来てから亡くなるまでの時間は既に過ぎ去ってしまったのだろう。
「皆、アマス様を助けるためにも行こう!」
アイドルの言葉と共にアマスをヤミクラゲから解放するために山頂へと急ぐ。ただ、ヤミクラゲの数が凄まじく多いからか……島の中と島の周囲はあっという間に生命エネルギーを吸われて石になってしまう。
それを示すかのようにあっという間に島の中にある緑は消え、海も石化の影響で色が変わりつつある。ただ、逆にヤミクラゲ達が島にある森にターゲットを向けてくれたお陰でアイドル達五人はヤミクラゲに邪魔される事なく頂上にまでやってきた。
「お前達もか……あの無礼者のように私の邪魔をして!!」
「無礼者……それって……」
キュンキュンがアマスの言葉の意味を考えているとアイドルは何かに気がつく、それはアマスの核と思われる胸の水晶のような場所に金色の光となったテラが閉じ込められていた。
「はっ……テラちゃん!?」
「彼女は元々私の一部でしか無い。私にとっては失われた物が元に戻っただけの事」
それを聞いてアイドル達は悔しそうにする。テラは例え元々アマスの一部だったとしてもちゃんと彼女の意思があった……一人の人間として生きていた。
そんな彼女を友達として見ていたアイドルやキッスは勿論、ウインク達もアイドル達と同じ気持ちである。
「そういえば、一緒に連れて行かれたソウルビートはどこにいるんですか!」
「ああ、あの無礼者ならここにいるぞ」
するとアマスの胸辺りの一部。ほんの一瞬だけ銀色に光るとそれを見たキュンキュンはアマスの言葉の意味を察する。
「ッ、今の光はもしかして……ソウルビートもあの中にいるんですか!?」
「えっ!?」
「……確かに、銀の光を発するのはソウルビートだけ……」
「本当にソウルビートの事も取り込んだのね……」
このタイミングでアイドル達五人はソウルビート……影人もアマスの中に閉じ込められてしまったのだと知る。そして、そうとわかれば黙って見ているなんてできない。
「許さない……幾ら神様でもやって良い事と悪い事がありますよ!」
「お前達が何と思うかは勝手だが……この私の邪魔をするのであれば容赦するつもりは無い!」
アマスが両腕を広げると紫のエネルギー弾が幾つも生成。そしてそれらは地上にいる五人をターゲットにしていた。
「失せろ!」
「「「「「ッ!」」」」」
五人はそのビームを回避するために跳び上がるとそのエネルギーは地面に激突。凄まじい爆発を起こし、衝撃が駆け抜ける。
「この威力……」
「流石は神様の力って事だね」
彼女からの攻撃に当たるのが危険だとわかった所でプリキュア達はアマスの能力で空中に浮かんだ足場を利用しながら彼女を撹乱。また、アイドルはテラに呼びかける。
「テラちゃん!テラちゃーん!」
アイドルからの必死の呼びかけに対し、アマスの胸にある水晶に閉じ込められていたテラは幸いにも完全に意識が無くなったわけではなく。
目を薄らと開けて意識を取り戻すとアマスの中に閉じ込められた彼女を助けるために戦うアイドルプリキュアを見た。
「ううっ……あっ……」
「小賢しい!はぁっ!」
アマスが手を翳すと更に紫のエネルギー弾が生成されて射出。プリキュア達を倒すべく飛んでいく。
「くっ……」
プリキュア達はどうにか当たらないように浮かんでいる岩場を使ってアマスからの攻撃を避け続ける。そして、その時テラが自分のために頑張っているアイドルに向けて声を上げた。
「はっ……キュアアイドル!」
「テラちゃん!」
「良かった、意識はまだ残ってるわ!」
アイドル達はその事実に安堵を浮かべる。何しろ先程テラがアマスに取り込まれた際、その影響でテラは意識や存在ごとアマスに取り込まれてもう戻って来ない危険もあり得た。ただ、その最悪な事態にはまだなっておらず。
今の時点での話だが、テラを助け出す事は十分可能にも見えた。そのためアイドルプリキュアの心に希望が宿るとその士気は上がっていく。
「絶対、助けるからね!」
アイドルはテラの意識が戻った事に嬉しさを感じつつ彼女へと声を上げる。それは、絶対に彼女を助けたいという彼女の強い意志を表していた。
「皆!」
五人はアイドルの合図と共にそれぞれ空中に浮かぶ大きめかつ距離感が近い三つの岩場へと移動。そのままアイドル、ウインクとキュンキュン、ズキューンとキッスという三組に分かれる形で着地。そして、同時に巨大化したアマスを顔を上げて見据えた。
尚、この光景は初代プリキュアのお家芸でもあるのだが……それはさておこう。
「「「「「はぁああっ!やあっ!」」」」」
五人のプリキュアは囚われてしまった影人とテラを絶対に助け出すという想いが込められた五人同時のパンチをアマスへと繰り出す。
「……そんな物か。ふん!」
しかし、神であるアマスにとって五人同時攻撃も対して堪えてはおらず。余裕の雰囲気を示すと体の一部がいきなり液状化。そのまま液体が空中にいるせいで回避ができない五人を丸ごと包み込むように捕まえてしまう。
「「「「「うわあっ!?」」」」」
そして、そのまま五人は容赦無く先程のソウルビートと同様にアマスの体内に取り込まれてしまう。また、そこにやってきたミドリや島の子供達はアイドルプリキュアが取り込まれてしまう光景をただ見ているしかできなかった。
「皆……」
その頃、アマスの内部にて。ソウルビートはアマスによって取り込まれた後……彼女の中で闇の液体により拘束されていた。
「……く……うっ」
ソウルビートはどうにか目を覚ますと自分の体が拘束されて動かしにくい事に気がつく。
「っと……これは……アマスに取り憑いてるヤミクラゲか……」
このままではアマスの体から脱出するどころか動く事すらできない。そのためソウルビートが体に力を入れてみると拘束力の底を確認する。
「……思ったよりは弱めだなこの拘束」
ソウルビートは今自分を拘束している力が想像した物よりは多少弱いのを受けて早速壊そうと考える。
「良し、このくらいだったら……はあっ!」
ソウルビートが力を入れるとヤミクラゲの拘束は耐え切れずにあっという間に粉砕。平然とした様子でソウルビートは降り立つ。
「それにしてもさっきのは死ぬかと思った……やっぱ闇の力は無理に吸収する物じゃ無いな」
『……あの……』
「ん?」
ソウルビートはアマスの内部で誰かに呼ばれる声がするが、そこには誰もいない。ただ、声だけはまた聞こえてくる。
『あの!』
「えっと……誰?」
ソウルビートが反応を返すと彼の前に一つの魂のような物が姿を現す。そして、その魂の正体こそ伝説のアイドルであるUtakoなのだが……何故かソウルビートの前に実体化しないせいで彼はその正体には気が付かない。
「初めまして、影人さん」
「あなたは?」
「私は……このアイアイ島に流れ着いたアイドルです。島の皆さんからはアイドル様って言われてました」
それを聞いてソウルビートは彼女が今どのような状態なのかを察すると悔しそうな顔つきをする。
「もうあなたもお察しだと思いますけど…….私はアマス様と約束したのに彼女を一人にさせてしまいました」
「別に俺はあなたを責めるつもりはありませんよ。アイドル様だって歳を取ることでアイドルとしていられなくなるのが原因でいなくなったのですから……いつから訪れてしまう瞬間です」
ソウルビートはそう言ってUtakoの事をフォローするが、彼女は僅かに言いづらそうな顔をする。
「……ですが、私がアマス様にちゃんと話していれば……そんな後悔はずっと残ってますよ。私、もうこうやって幽霊として近くで見守るくらいしかアマス様のためになる事はできませんし」
Utakoとしても自分の選択のせいでお世話になった島に危機を与えてしまった事、加えてアマスがここまで闇に染まってしまった事に対しての責任感はどうしても拭えなかった。
「……でしたら。アマス様にもう一度本当の気持ちを伝えたらどうですか?霊体として近くにいるなら今の俺に対してみたいに話せば……」
ソウルビートはUtakoにアマスへと諦めずに説得を続けるべきと指摘。ただ、彼女の顔は浮かないままだった。
「……恐らくそれは無理ですよ。アマス様……もう私の事が見えてないんです。すぐ近くにいるのに」
「だったら、もう一度……気持ちを伝えるチャンスを俺達が。アイドルプリキュアが作ります」
それを聞いてUtakoは驚いたような声色で話しかける。そもそもこうやってソウルビートに直接接触してきたのは自分一人ではもうどうしようもできないと察してしまったから。そのためまさか自分がアマスの前に出て説得できるなんて時が来ると思ってなかったのだ。
「本当にそんな事ができるんですか……」
「アイドル様がそれを言うんですか?……アイドル様が今までずっとアマス様の心を動かすために気持ちを込めてやってきた事。……歌なら絶対に届きます」
「ッ……ふふっ、そうでしたね……」
「それと、その敬語止めてください。どことなくあなたの雰囲気は咲良うたという子に似ています。あの子に堅苦しさを求められるイメージがありませんし……あなたも多分素はもっとフランクなんですよね?」
ソウルビートはUtakoが敬語ばかりで察してくるのにだいぶ違和感を感じていた。それは、彼女が自分はお願いする立場だと思っているからだろう。加えて、ここまでの事態にしてしまった負い目もある。
「そっか……。じゃあ、お願いするね。影人君」
「はい!あとそれと。俺は一人じゃ無いですよ」
「うん……アマス様に取り込まれちゃったテラちゃんを介して見てたよ。皆もこっちに来てる。だからお願い……。アマス様を助けて」
Utakoからの言葉にソウルビートが頷くと彼はUtakoの働きかけでテレポートのような形で場所を移動。そして、彼が移動した先には自分が頼れる仲間達がいた。
「っと、場所が変わったな」
「あっ、ソウルビート!」
「無事だったんですね!」
そこには自分と同じようにアマスに取り込まれ、この空間に転移してきたアイドル達五人の姿がある。それから五人が周囲を確認するとここはまるでアマスの精神空間と言わんばかりの場所だった。
ただ、彼女の心を表すかのように周囲は暗く。明るい場所と言えば地面の近くが多少光っているのと、暗い空間に大量に浮かんでいる伝説のアイドルことUtakoを描いた絵だけだった。
「……皆、アマス様を探すよ」
「「「「「うん」」」」」
こうして、プリキュア達はこの空間のどこかにいるであろうアマスを探す。彼女を止めるために……彼女の心に光を取り戻すために。
また次回もお楽しみに。