キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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アマスの心に空いてしまった大穴

アマスの精神世界に到着したソウルビート達アイドルプリキュア。六人はアマス本人を探す。外で暴れている今のアマスは恐らく彼女自身の悲しい気持ちがヤミクラゲの力で凄まじく増幅された状態で出力されている。

 

外側にいるアマスへの説得は最早不可能。可能性があるとすればもう本体のアマスに直接話しかけるだけ。本体の気持ちを説得して落ち着かせられればまだ戻ってくる事はできるはずだ。

 

「ううっ……うっ……うっ……」

 

「アマス様……いた!」

 

それから六人は少しだけアマスの精神世界的な空間を彷徨うとそこには一人悲しんだように蹲ったアマスが座り込んでいた。その姿はヤミクラゲに乗っ取られる前であり、それは彼女がまだ完全にはヤミクラゲに支配されてない証拠でもある。

 

「アマスさん……どうして泣いてるの?」

 

そんな中、彼女は悲しさのあまり一人泣いていた。まるでもう何もやりたく無いと言わんばかりに。そして、ソウルビートが更に話しかける。

 

「……先程は色々と無礼な事をすみませんでした。改めて俺の方から言わせてください。……そうやっているだけでは何も変わりませんよ」

 

「……そんなのわかってるわ。でも、寂しくて辛いの」

 

ソウルビートが謝った時、アマスは先程ソウルビートに色々と言われた事に関しては特に気にして無い感じではあった。恐らくこれも外と中で気持ちに大きな差ができている辺り、ヤミクラゲによる感情増幅の影響が入っているのだろう。

 

「私はずっとヤミクラゲから島を……世界を守ってきた。それこそ何百年……何千年」

 

その言葉からやはり伝説のアイドルことUtakoとの寿命差問題はあるという事を一同は認識。ただ、やはり神様というだけあってその命は長く。少なくともこの感じだと西暦が始まる頃にはもうとっくにアマスは神様としてヤミクラゲを撃退。島のみならず、海を通じてその魔の手が世界中に広まらないように抑制してきたのだろう。

 

「長い事守り続けてきたおかげで島は平和その物。その間に住人は増え……けれど私は孤独だった。ずっと平和を祈り続ける。ただそれだけ……。ずっとずっと一人で……」

 

アマスのその言葉にソウルビート達は考え、辿り着く。彼女が生きてきた時間はこの時点でもう千年は軽く超えている。それだけの長い間生きているにも関わらず、自分が心を許して悩みを話せる相手は現れなかったという事に。

 

何しろアマスは神様だ。島の住民達では対等に話すなんて無理だろうし、偶にここに流れ着く人達こそいたもののそれらはいつの日か島の海から元の世界に帰ってしまう。そしてその中にアマスの気持ちが惹かれる人はいなかった。

 

「でもあの日、彼女と出会ったの」

 

アマスは何千年と言うべき長い時間をただ平和を祈り、自分の力でヤミクラゲを追い払うという行為だけに従事。その流れ作業とも言うべき行動は例え神様と言えどその心に大きな負担を強いてきたのだ。

 

だが、そんな時に島に流れ着いたのが伝説のアイドルことUtakoである。彼女が初めて会った際にアマスに向けたその笑顔をアマスは忘れられなかった。

 

〜回想〜

 

「私は、アイドルです!ふふっ」

 

「ああ……」

 

アマスにとってUtakoという存在は島の住民や彼女と同様に島に流れ着いた人々の中の誰よりも自分に光を与えてくれた。それだけの魅力がUtakoにはあったのだ。

 

〜現在〜

 

それ以降、アマスにとってUtakoの存在は無くてはならない物になった。彼女がいてくれるだけで……アマスの心は癒されるようになったのだ。

 

「彼女の顔を見て私は思った。“ああ……なんて可愛いんだろう。なんて生きる力に溢れているんだろう”と」

 

アマスの顔つきは砂漠の中を彷徨っている時にオアシスを見つけた時のような……そんな顔つきだった。それだけアマスにとってUtakoの存在は必要不可欠になっていたのである。

 

「なんて人に愛されようとし、人を愛する事に精一杯な存在なんだろうって。あの娘は私や島の住民のためにライブをやってくれるようになって私は救われてきた。それまで苦しいだけだった毎日が満たされるようになったのよ!」

 

Utakoは島でのライブをやる度にプロのアイドルとしての人々を楽しませ続けてきた。その中で一番彼女に依存していたのは勿論アマスであろう。それこそもう彼女がいない生活なんてあり得ないと思えるくらいに。

 

「私にとってあの子の全てが衝撃で、愛しくて、愛しくて、愛しくて……。あの頃の私にとって、あの娘は全てだった……約束したのに!!」

 

この空間の周囲に浮かんでいる絵、更に言えばアマスが先程までいた洞窟のような場所で座っていた椅子の裏側に描かれていた絵。それら全てはアマスがUtakoと過ごしていた間に描いた物であった。そして、それを自らの心の空間に大量に置いている辺り……アマスは本当にUtakoのファンであったのだとわかる。それはさておき、アマスの声色は急激に寂しさに満ちた物に変わった。

 

「「「「「ッ」」」」」

 

「………」

 

「“ずっとずっと一緒にいようね”って。あの娘もずっと私のために歌ってくれるって!なのに!なのに……あの娘は行ってしまった。きっと私の事が嫌いになったから……」

 

アマスの瞳には涙が浮かぶとUtakoがいなくなってしまった理由を自分の事を嫌いになったからと決めつける。ただ、Utakoが残した手帳を見たアイドル達や彼女の言葉を聞いたソウルビート……つまりプリキュアからして見ればそんな事は絶対に無い。むしろ、Utakoの本心は違うと伝える事にした。

 

「違う!違うよ、アマスさん。嫌いになんかなってない!」

 

「なら会わせて……あの娘に。そしてもう一度、私のために歌って!」

 

しかし、アイドルからの言葉は虚しくも裏目に出てしまう。幾らUtakoがアマスの事を嫌いになってなくて、尚且つその気持ちをアマスに伝えた所でその当の本人はもう目の前にはいない。そして生きてすら無いのだから。もう一度アマスに会わせる事なんて不可能なのだ。そうなると当然プリキュア達にはどうする事もできない。

 

「それは……」

 

「……できないんでしょう。だって本当はあの娘は私が嫌いだから……うぅ!」

 

「(不味い!?)」

 

アマスはアイドル達が口籠もってしまったのを見るとその瞳の鋭さが増す。それを見てソウルビートは直感的に危険を感じたがもう遅い。アマスが一瞬にしてアイドルプリキュアの六人を纏めて体の外に弾き出してしまう。

 

「くっ……」

 

「「「「「「わあっ!?」」」」」」

 

「クソ……説得できるのはこれまでか……」

 

ソウルビートは説得に失敗したと考える。そしてそれを示すようにアマスは声を上げた。

 

「知ってるわよ……誰も私を愛してくれない!だから私ももう……誰も愛さない!」

 

そして、アマスは本体の心も闇に染まってしまった影響で彼女の中の闇の力は更に増幅。左腕を翳すとそれが液体化して変形。左腕ごと凄まじい大きさの巨大ハンマーを生成するとそれを六人に向かって一気に振り下ろした。

 

「ッ!?」

 

「朽ち果てろ!!」

 

神からの裁きの鉄槌と言わんばかりの巨大ハンマーに対し、プリキュア達が今いるのは空中かつ周囲に足場にできるような岩も無い場所。こうなると回避するのは無理だ。

 

「ヤバい!ウインクの力、ソウルビートバリア!」

 

「ウインクバリア!」

 

そのためソウルビートが咄嗟に六人を守るためにバリアを展開。ウインクもそれに呼応する形でソウルビートのバリアを補助するように技を使う。だが、アマスの力を前にそのバリアは無力だった。

 

「くっ……うう……」

 

ソウルビートはどうにかハンマーの威力を抑えようとするものの、自分達は先程も言及した通り空中にいる。そのため踏ん張る事ができず、更に他の五人もバリアを後ろから支える形でどうにか耐えようとした。

 

だが、抵抗したのも虚しく全員纏めてハンマーに押し潰される形で地面に叩きつけられる。

 

「「「「「「うわぁあああっ!」」」」」」

 

そして、六人がバリアごと地面に激突したためにその衝撃波が駆け抜けていく。

 

「プリキュア!」

 

「く……ううっ……」

 

六人の体は既にボロボロ。ソウルビートがバリアを展開したお陰でギリギリ耐え切った六人だが、もう満足に動く事すら叶わず。あと一撃喰らえば終わりの状況だった。

 

「プリキュア!」

 

するとアマスな手にしたハンマーを再度自身に吸収して消失させる。これはハンマー自体を自分の体を構成する液体から作っているからこそできる芸当だろう。

 

そして、六人のうちソウルビートを除く五人は痛みに顔を歪めつつ体を動かせない状態になっていた。

 

「「「「「ううっ……」」」」」

 

「く……そ……」

 

ソウルビートはそれでも戦うのを止めるわけにはいかないと歯を食いしばって立ち上がる。それを見てアマスは苛立ったようにソウルビートを睨む。

 

「貴様……まだ抗うか。私に意見するだけに飽き足らず……いつまでも渋とい男……」

 

「悪いな……アマス様。アマス様を取り戻すまで……俺達は諦めるわけにはいかないんだよ」

 

「ソウルビート……」

 

他の五人もそんな彼を見てどうにか動こうとするが、全員ダメージが凄まじいためにまともに動けなさそうだった。

 

「……ごめん、皆。力……貰うよ」

 

「え?」

 

ソウルビートが手を翳すと六人に銀のリボンが巻き付く。同時に五人から力を貰う形で自身の力をほんの少しだけ復活。その代わりに他の五人はソウルビートに力を取られたせいか変身解除してしまった。

 

「ソウルビート、これって……」

 

「皆に力を与えた時の逆。俺が皆から力を貰った。このままやっても全員がワンパンされて終わる。だったら俺一人だけでも動けた方がマシだ」

 

そう言ってソウルビートが構えを取る。それを見てアマスは彼へと冷たい視線を向けた。

 

「何をするかと思えば……仲間からも力を奪うとは。そこまでして私に抗いたいか」

 

「ああ、抗わせてもらう。……それとアマス様、いつまでそうやって下向いてるんだよ」

 

ソウルビートはアマスを説得するために話す。ただ、ソウルビートは先程の洞窟での件があるためにアマスからの印象は最悪だ。そのためアマスは激しく反発する。

 

「また貴様はそうやって私に……お前なんかに何がわかる!大切な人が目の前から消え去る事の悲しさや寂しさを知らないお前が!!」

 

「……わかるだろ。そんな事くらい……」

 

「は?」

 

ソウルビートはアマスからの話に小さく反論。それから鋭い目線を彼女へと向けた。

 

「大切な人が目の前から消えるなんて人間も神様も変わらないに決まってるだろ!目の前にある物が永遠だなんて事は世界のどこにも無いんだよ……。物だっていつかは壊れるし、人だっていつかは消えてしまう」

 

「黙れ!黙れ黙れ黙れ黙れ!!」

 

アマスは手を頭に置くとグチャグチャになっていく気持ちを抑えるかのように手を翳すと巨大なエネルギー砲を生成する。

 

「そうやって気に入らない物はその存在を全部消せば良いってか?……それだからお前は神様として大切な物が見えてないんだろ!」

 

ソウルビートは地面を踏み込むと跳び上がる。同時に手にしたソウルリンクライトのプリキュアリボン部分をタッチ。その瞬間にソウルビートの体から凄まじい銀のオーラが立ち昇る。

 

「ソウルビートアトラクト!」

 

するとソウルビートの力が瞬間的に増加。同時に彼は一気にアマスへと向かっていく。

 

この技、ソウルビートアトラクトのアトラクトは引きつけるとか魅了するという意味を持っているため、言葉の時点での印象はまるで相手に色仕掛けをするとかそういうイメージに見える。ただ、勘違いしないでもらいたいのがこの場面での魅了するは決して色仕掛けでは無い。あくまで観客を魅了するというニュアンスだ。

 

今までソウルビートはこの技を使えるにも関わらず、使ってこなかった。……それはこの技を使ってしまえばチームバランスを保つという彼の存在理由を崩してしまうからである。そしてそれはソウルビートのチームのバランサーという本来の役割を成り立たなくしてしまう。

 

「はぁあああっ!」

 

しかし、今は他の五人がほぼ戦闘不能の状況で尚且つ自分が負ければ世界が終わるという危機的状況。そのためソウルビートはこの切り札を切らざるを得ないと感じたのだ。

 

そして、ソウルビートが放つ眩しさにアマスが一瞬だけ怯むがその輝きを消そうと破壊のエネルギー砲を放つ。

 

「目障りだ、消えろ……消えろぉおおっ!」

 

「ソウルビート!」

 

「相手が神様だからって……そんなの関係無いに決まってるだろ!間違った事は……正すだけだ!はぁあああっ!」

 

ソウルビートが拳を突き出すと巨大な銀の拳のようなオーラを纏い激突。アマスのエネルギー砲と拮抗する。

 

「ッ!?馬鹿な……どうして……」

 

「うぉおおおっ!」

 

ソウルビートはアマスからの攻撃を受けながらも少しずつ前進。まさか神である自分とここまで競り合うと思ってなかったアマスは混乱する。勿論ソウルビート単体でこの力は出せない。先程五人から力を貰ったのもそれを彼自身がわかっていたからである。

 

「周りの人の輝きを束ねて繋ぎ合う力……それが俺の……俺の輝きなんだよ!!」

 

その直後、アマスからの破壊のエネルギー砲を凌ぎ切ったソウルビートはアマスの眼前に迫っていた。

 

「ッ!?」

 

アマスはその凄まじさに一瞬たじろぐとソウルビートは彼女に向けて本命の拳を繰り出そうとする。

 

「はぁっ!」

 

ソウルビートの拳がアマスに迫った瞬間。だが、その拳はアマスには当たる事は無くその眼前で突き出されたまま止まってしまった。

 

「えっ……」

 

「……!」

 

アマスが一瞬だけ驚いたような仕草を見せると直後にソウルビートの体からオーラが消え失せてしまうとそのまま力無く落下。風に吹かれたせいかどうにかうた達の近くではあったものの、そのまま変身解除。気絶してしまった。

 

「そんな……カゲ君!!」

 

影人が力尽きたのを見てこころの顔が青ざめたような物になると彼女は思わず叫んでしまう。説得には失敗し、プリキュアの力は通用せず。影人達は絶体絶命の状況に追い込まれてしまうのだった。




また次回もお楽しみに。
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