キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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未来へと繋がる響きあう歌

ヤミクラゲによって暴走したアマスを止めるべく開催されたアイドルプリキュアのライブ。それがクライマックスを迎え、六人のプリキュアが中央に揃うとアイドルがアマスと彼女に取り込まれたテラに話しかける。

 

「ねぇ、テラちゃん。アマスさん」

 

「あっ!」

 

アイドルが手を差し伸べながらそう言って呼びかける中、アマスや彼女と一体化したテラの目にはしっかり映っていた。それはとっくに命尽きて、もう二度と会えないはずの伝説のアイドル。Utakoの姿である。

 

「あ……あぁ……」

 

「「例え時が流れても、私達がいなくなっても……キミが覚えてくれている限り……私達は一緒にいるよ!」」

 

アマスはこの時、思い知らされた。アイドルというのは目の前にいる人間だけが全てなのでは無い。己の心の中に生きている限り、彼女の存在は永遠に不滅だという事だと。

 

そして、それがUtakoが死ぬ前に残した手帳の最後のページに記されていたアマスへと伝えられなかった気持ち。それは時を越えて、彼女の面影が残るアイドル。キュアアイドルが代弁する形で……ようやくアマスに伝わった。同時に二人の視界から伝説のアイドルの姿が一時的に消える。

 

「例え私の命が燃え尽きても……キミが私を覚えていて、キラッキランランでいてくれる限り……私達も永遠にキラッキランランだよ!」

 

「ああ……。そっか、だからこんなにもあなた達は魅力的なんだ……。そりゃあ、アマスが気に入るわけね……」

 

同時にテラも理解する。自分がキュアアイドルを好きになった気持ちは決して一時的な物では無い。それはこれからも自分の心の中で永遠に生き続けてくれる存在なのだと。

 

「アマスさん、私達の届ける最後の歌。聴いてください」

 

そう告げると彼女への最後の一曲はアマスと伝説のアイドルが永遠に繋がっているという事を伝える歌。そしてそれが二人のキズナリボンであるという事を教えるための曲だ。

 

♪決め歌 キミとシンガリボン♪

 

「「「「「「感じてYou and I キズナリボン〜♪」」」」」」

 

こうして、六人が技のための領域を展開。インカムとマイクを出すと歌を歌い始める。そのまま六人は円陣を組む形でキラキライトを持ちながらステージの上でパフォーマンスを始めた。

 

「「「「「「クライマックスは私達!」」」」」」

 

そして、掛け声と共にキラキライトは光と共にキラッキランリボンバトンへと変化。その後、プリキュアステージリボンを装填。

 

「ああ……」

 

同時にアマスは席へと着席するのだが、もう彼女に抵抗する意思なんて物は無かった。そしてアマスがライブを見守る中でイントロが終わり、六人は歌を歌う。

 

「「「「「「重なる想いの強さを歌に乗せて〜♪届けるに来たよ Sing For You 照らしてみせる〜♪」」」」」」

 

六人のプリキュアがキラッキランリボンバトンを振りながらアマスへと歌を届けていると彼女の目にはまたしっかりと自分へと歌を聴かせてくれるUtakoの姿が映っていた。

 

その光景に彼女は一筋の涙を流す。何しろ、彼女の中ではもう二度と……永遠に観れないと思っていた光景がそこには広がっていたのだから。

 

「「「「「「溢れる思いを残らず伝えるんだ〜♪どんなときでもYou and I 〜♪私とキミを結ぶキズナシンガリボン〜♪」」」」」」

 

六人の歌が終わると同時に技を発動。キラッキランリボンバトンを掲げて生成された六人のシンボルマークを合わせた強力な浄化の光を解放される。

 

「「「「「「プリキュア!キラッキランフォーユー!」」」」」」

 

その虹色の輝きの奔流がアマスへと向かっていくと彼女はそれを正面から受け止めるように呑み込まれ、フィニッシュは六人での決めポーズでシメた。

 

そしてプリキュアの光に、Utakoから届けられた光を受けたアマスの心の中。彼女は暗い空間から抜け出すかのように走っていた。

 

「はっ……はっ……はっ……あなたはいた。……ううん。あなたはいる!今も私の心の中で……歌声は響いている!」

 

自分は孤独では無い。それに気がつく事ができたアマスの心は白い輝きに包まれるとずっと心の中で待っててくれた彼女の元にようやく辿り着き、再び手を取り合った。

 

同時に現実世界にいる巨大化したアマスもヤミクラゲから解放され、元の女神としての姿に戻るとある事実に思い至る。

 

「……思い出した。世界はとても美しい!」

 

それは、Utakoが生きてて自分に光を与えてくれていた頃までずっと知っていた事。彼女の喪失でモノクロになってしまった世界の彩りをアマスは思い出す事だった。

 

アマスは祈りを捧げると自らの持てる全ての力を解放。今までずっとできていなかった分を取り戻すかのように、その輝きは石化してしまっていた島を元に戻していく。

 

そして、全てが元通りになるとアマスが暴走したせいで浮かんでいた岩は全て落下。同時にここに呼ばれて来ていたプリキュア達が地上に降り立つ事になる。

 

「……後の事はお願いね……テラ」

 

「……ホント、無責任なんだから」

 

「ごめん……」

 

するとアマスは誰にも聞こえないような小声で自らの体内に取り込んだテラへと語りかける。その時、体内にいたテラの体には変化が起きていた。体は神のような神々しいオーラに包まれており、頭には先程まで無かった髪飾りが追加されている。

 

……ただし、同時に彼女の周囲も変化。力を失ったかのように濁ったように暗い空間になってしまっていた。

 

テラはその変化を感じつつアマスからの言葉を聞いて呆れる。だが、それでも彼女はこの変化を受け入れつつ了承する事になった。

 

「テラちゃ〜ん!終わったよー!戻ってきて〜!」

 

そんな中、彼女達のやり取りを知らないアイドルプリキュアは変身解除しつつうたがテラに呼びかける。しかし、アマスの中にいるはずのテラからは何の返事も聞こえない。

 

「あれ?何で……」

 

「ッ……咲良さん。テラは多分出て来れない……」

 

「それってどういう……」

 

影人はこの状況から既に何かを察するとうたへと話す。そしてそれを裏付けてしまうかのようにアマスの体が突如として石化し始めた。

 

「えっ!?」

 

「……トットさんが言ってただろ……女神様は……」

 

「あっ!」

 

現代で語り継がれている1000年前の厄災の話。その最後の部分ではアマスは自らを石像化するのと引き換えに島を救ったという部分がある。これはつまり、厄災が起きてアマスがそれを全力の力を発揮して止めた時点で逃れることができない運命だった。

 

「そんな……テラちゃん!?テラちゃーん!!」

 

うたはそれでも伝説の中で石化したのはアマスだけという事に思い至るとテラへと再度呼びかけを続ける。

 

「……まだ終わりじゃないよ」

 

そんな時、六人の後ろから声がかけられた。一同が振り向くとそこには幽霊のような姿となったテラが六人の前におり、彼女はまるで神聖さを感じるような雰囲気を纏っている。加えて瞳のハイライトが変化しており、それは現代でうたと邂逅したあの少女と同じ物だった……いや、正確には現代で出会った少女こそがこの時代から1000年後のテラ本人というべきなのだろう。

 

「テラ……ちゃん?凄い綺麗」

 

「私は元々女神の小枝。それして今、新しく女神を受け継いだの」

 

「えっ!?女神様?凄い!」

 

うたはその事実を聞いて歓喜の声を上げる。だが、影人は女神と一体化してそれを引き継いだ事の意味がわかったのか複雑そうな顔を見せていた。その証拠にテラの声色にはどこかエコーのような物もかかっている状態である。テラもそんな影人に気がつきつつうたへと問いかけた。

 

「あなた達は未来に帰るのよね?」

 

「うん!私達、1000年後の未来が大変な事になっちゃって。こっちに呼ばれたみたいなんだけど……あっ!テラちゃんが一緒に来てくれれば全部解決!」

 

「咲良さん……それは無理だ。俺達がここに来れたのとは訳が違う」

 

「えっ?そうなの?」

 

うたは女神であるテラの力ならきっと1000年後にもう一度来てしまった厄災相手に対抗できると考える。そのためテラに来るように伝えるが、影人が厳しそうな顔を浮かべつつ否定。そして、テラも影人の意見を肯定した。

 

「そうね。影人の言う通り、私はあなたと一緒には行けないわ」

 

「そんな……何で……」

 

その瞬間、未だに変身解除せずにここに来ていた他のプリキュア達の近くに来る時と同様の空間の穴が開くと強制的にそこへと吸われ始める。

 

「「「「「うわぁああああっ!?」」」」」

 

「「「「うわぁああああっ!?」」」」

 

「なるほど、そういうことか」

 

「プーカ達も戻らないとプカ」

 

「ちょっと二人共冷静過ぎだろ!?」

 

「うわああっ!?」

 

そして、それは影人達とて例外では無い。その後ろに穴が空いてしまうとこの世界でのやるべき事が終わり、滞在できる時間が超過してしまったという事で吸収され始めてしまう。

 

「「うわあっ!?」」

 

「プリー!?」

 

「メロー!?」

 

体が軽い妖精二人が一瞬で吸い込まれる中、そこに島の子供達やミドリが声をかける。

 

「プリキュアのお姉ちゃん達〜!」

 

「ありがとう〜!」

 

そして、ななやこころは自分が吸い込まれつつもその言葉に別れの答えを返す。

 

「こちらこそ、ありがとうございます!」

 

「元気でね〜!」

 

ななは吸い込まれるその中で両手で顔を覆っていた。まるで悲しさを隠すように。理由は単純だ。もし仮に島の子供達が寿命まで長生きできたとしても女神であるアマス以外のサンゴの精霊が生きられる年齢は1000歳が限界値に近い。

 

つまり、今ここにいる面々とは女神様となったテラを除いて現代に戻っても会う事ができない事を意味していた。ななはそれがわかっているからこそ別れを惜しんだのだと言えるだろう。

 

「……テラ、お前はこれから長い間眠るんだろ?」

 

「そうね。この厄災を浄化するためにアマスは女神の力を使い尽くしてしまったわ。だから私は眠りにつかなくちゃいけない。浄化の力を溜めるために。それこそ、あなた達が元いた時代での出来事を止めるためにも」

 

アマスが今回の厄災を止めるために全力を使ってしまった分、テラの中にはもう力が残されていない。そして、彼女はこの霊体も維持できないのか足元から少しずつ消え始めた。

 

「長い間眠るって、どのくらい?」

 

「……1000年」

 

「はっ……」

 

ここでうたもその意味に気がついた。ヤミクラゲが何故現代であそこまでの規模で大量発生してしまったのかという事。それはアマスが石化して以降、女神が実質不在のまま時間が経ってしまったからだと言える。

 

そして、1000年間の時間が経過した時にテラの力が不足していればヤミクラゲを打ち払う事はできないのだ。

 

「だから私を目覚めさせて!1000年後に……アイドルプリキュアの歌で!」

 

テラの言葉を聞きながら最後に残った影人とうたも穴の中に吸い込まれ始める。それを受けて影人は彼女の願いに応える事を約束した。

 

「わかった。最高のステージを見せるって約束する。だから今は休んでてくれ。……女神様」

 

影人は目尻に涙を薄らと浮かべつつうたよりも一足先に穴へと吸い込まれていく。そして、うたはテラと別れたく無いと言わんばかりに手を伸ばしつつ涙ながらに声を上げた。

 

「でも、それじゃあ1000年もの間……たった一人でずっと待ってるって事だ?そんなの寂しいよ!!」

 

うたがどうにかしてこの場に残ろうとするが、そんな事は叶わない。叶ってはいけないのである。……ただ、最後に別れる時のテラの顔は出会った時とは変わって優しく、微笑んでいた。

 

「ふふっ……大丈夫よ、うた」

 

テラの顔を見た直後。うたの姿は穴に完全に吸い込まれるとトンネルの中にまで突入しており、そのまま無情にも穴は閉じてしまった。だが、最後に……うたの脳裏にテラからのあるメッセージが響く。

 

“推しのライブが待ってると思えば……1000年なんて一瞬よ”

 

出会った当初。あんなにもアイドルが嫌いだと言ってうたの歌を嫌がっていたテラは……たった二日間の間に完全にアイドルプリキュアの、咲良うたを推す一人のファンになっていたのだ。

 

そして、うたよりも先にトンネルの中を通っていた影人の脳裏にもある声が響いていた。

 

『……黒霧影人君』

 

「……その声、アイドル様……」

 

影人の脳内に現れたのは伝説のアイドルであるUtakoだった。彼女は何故か影人に直接語りかけてきたのである。

 

『さっきはアマス様を助けてくれてありがとう』

 

「いえ、俺達は未来のために当然の事をしただけですよ」

 

『それでも、私のせいでこうなってしまった事だから。お礼はちゃんと言いたいの。』

 

「そうですか……」

 

影人がそう返すとUtakoはまた気まずそうな顔を見せる。それを見て影人は溜め息を吐きつつ問いかけた。

 

「はぁ……他にも何か心残りがあるんですよね?」

 

『うん……。本当に情けないんだけどね。……私の友達を助けて欲しい。アイドルとしての友達でチームメイト。Kotoneの事』

 

「Kotone……じゃああなたはUtakoさん……ッ!?」

 

影人の脳内でそれを聞いて色々な事実が繋がりつつあった。ただ、Utakoはもうここにいる限界なのか消え始める。

 

『あなたはもう理解してくれたと思うけど、私のせいで闇の中を彷徨ってる子があなた達の時代にいる。だからお願い。彼女の事も助けて……』

 

「……わかりました。だけど、あなたの存在はきっと1000年後にだっていますよ。だから……今度は一緒に助けましょう」

 

Utakoはそれを聞いて先程自分が言った言葉を思い出すと微笑む。そして、影人へとUtakoとしてのファンサであるキュアアイドルがやっている物に似たハートマークを作ってみせる。

 

『そうね。……うたちゃんとも一緒に!』

 

こうして、1000年前のUtakoはその時代に残るべく消滅。その直後、影人は変身前の状態で1000年後の現代に目を覚ます事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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