キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アイアイ島での一連の出来事があった日から数日が経過。影人の家ではレイと影人が電話をしていた。
「珍しくお前から電話をかけてくるとは思わなかったけど、何かあったのか?」
『ああ、実は今度親父がある人達と契約を結ぶ事になってな。少し前にその人達と会った』
「それで、その人達というのが?」
『……大学アカペラ界隈の期待の新星にして最強の呼び声の名高いグループ。Parabolaだ』
「Parabola……」
影人もそれを聞いて目を細める。その名前については聞き覚えがあったからだ。彼だってアカペラを上手くなるために上達のコツを調べる等して努力した。その際に関連項目に上がっていた一本の動画、Parabolaのメンバーが歌うアカペラも聴いたのである。
「そんな凄いアカペラグループと契約……お前の父親は何をするつもりなんだよ」
『残念ながら具体的な事は聞いてない。……だけどこの業界は貸し借りが基本だ。恐らく未だ大学アカペラの領域を抜けてない発展途上のグループを早い段階で支援する事で後々大きく成長した際に自分達の意見を通しやすくできる事を考えると……』
「ならやっぱり先行投資の線が濃厚か」
影人はレイからの言葉にハジメの狙いはParabolaへの投資が狙いだと察する。だが、影人は少し疑問符が過った。
「……いや、待て。でもそれだとリスクとリターンが合わなくないか?もしParabolaが有名になれなかった場合、サウンドプロダクションは投資した額をそのままドブに捨てるという大損をするだろ」
『……お前らに関係あるのはそこだ』
影人からの指摘にそこを突いてくるのを待っていたと言わんばかりにレイが食いついてきた。
「ッ……流石にただ契約するだけで俺に電話をかけるなんて無いよな」
『そりゃあそうだろ』
「じゃあ何だ?そのParabolaのメンバーに俺達のアカペラを指導してもらうのか?」
『……いや、そうじゃないんだ』
「は?」
影人はそれを聞いて唖然とする。アカペラの指導目的以外に何のメリットがあってParabolaとの話を付けたのかわからなかった。
「じゃあ何だよ」
『……Parabolaのリーダーである藤代さん曰く、もうすぐチームに加入するであろう新人を紹介すると。その子は自分達程では無いにしろアカペラを見る目はあるからその子を指導員として少しだけ貸すと』
「新人……というか、Parabolaに新メンバーが入るなんて誰にも知らされてないだろ。あのチーム、基本的にメンバーの入れ替えはサイレントというか周知されないって言うか」
実際の所、Parabolaはチームメンバーの入れ替わりが相当激しい。チームリーダーである聖の独断であるが、彼女の中で決めている一定の基準に満たないメンバーは強制的に辞めさせられるパターンが多い。そのためメンバーチェンジをわざわざ周囲に宣伝していたらキリが無いというのもあるかもしれない。
『そうだな。……でも今回の話を持ち込んだ藤代さん、何だか自信作を出してるような感じだったし実力は問題無いと思う』
「そうか……」
影人はそれを聞いてひとまず納得せざるを得なかった。ただ、彼が一番感じたのが今の自分達のレベルではParabolaの人に見せたら酷評されてしまう。遠回しにそう言いたそうな感じだった。
『まぁ、これでも藤代さんはオブラートに包んだ方っぽいけどな。普段ならもっと相手の精神を壊しに行くらしいし』
「うわぁ……。そんなにキツい人なのか」
影人は聖がそこまでアカペラガチ勢なのだと察すると同時に自分達はまだまだ未熟なのだと感じ取る。
「それはそうとして、その人って大学生になるのか?」
『いや、指導に来る人は高校生らしい』
「は!?」
影人の脳内がレイの言葉でバグってしまう。そもそも大前提としてParabolaは大学生のアカペラオールスターズチーム。その中に何故高校生が混ざるなんて事になってるのか。影人は理解が追い付かずに困惑する。
「待て待て、高校生?」
『ああ。うちの親父……社長も興味深そうにしていた。高校生の段階で大学生に並べるレベルのアカペラの能力の持ち主であれば実力は申し分無い。それに高校生ならまだ俺達と比較的歳が近いから指導員としても最適だと』
「……確かにそうか。俺達視点から見ても高校生ならまだ接しやすいと言えばそうだものな。それで、どんな人?」
『それは今度会う時のお楽しみだと。……それにこの話、その高校生の子本人が了承してないから一旦保留状態だし。また決まったら教えるよ』
「それ、大丈夫なやつか?俺達のアカペラの出来が酷いと思われてその子に拒否されたりしない?」
影人は不安そうな様子でそう問いかける。ただ、そこは問題無いだろう。何しろParabolaのリーダーである聖が決定した以上、他のメンバーに選択権なんて無い。そのくらい彼女のリーダーとしての権限の強さがあのチーム、Parabolaの特徴なのだ。
「ちなみに名前だけでもわかったりする?……なんか色々不安になってきた」
『何でだよ……。お前らの出来は確かにParabolaには遠く及ばない。だけど前と比べて皆上達してるし、そこらのお遊びでやってる高校生グループ以上くらいの事はもう出来るんだからな?……っと肝心の名前だけど、それは聞いてる』
「あ、名前は聞いてるんだな」
『おう。そしてその名前っていうのは
影人はそれを聞いて一応は納得。それから話題は次の事へと移行する……の前に夢乃が部屋の戸をノックしてきた。
「お兄ちゃん、お話ししたいんだけど今良いかな?」
「……レイ、少し待っててくれ」
『おう』
影人は一旦レイに待つように言ってから電話を保留。夢乃に答えを返した。
「夢乃、それは今話さないとダメな事?」
「ううん。ちょっと雑談がしたいだけだよ」
「だったら今は無理だ。後でそっちの部屋に行くから」
「むー……。まぁでも仕方ないか。レイ先輩と電話してるんでしょ?」
「そういう事」
「じゃあ後でね」
二人は軽めのやり取りを済ませると夢乃は自分の部屋に戻って行く。それから影人は電話を再開した。
『夢乃ちゃんか?』
「ああ。ちょっと待ってもらったけどな」
『オーケー』
「こっちからももう一個聞きたいんだが、ボーカルアルバムの方は売れ行き良さそうか?」
影人が聞いたのはボーカルアルバムの件である。ボーカルアルバムというのは夏休み期間のラストで録ってプリキュアプリティストアのオープンと同時に発売開始した物だ。
これまで発表していたライブ技の際に歌っていた曲とは別でそれぞれの曲を撮影。今回は前回のCDの撮影の時はまだ持ち歌が無かったプリメロ及びズキューンキッスの曲も収録している。
「本当によく思いつくよな。まさか俺達の日常ソングとか妖精の二人組のテーマソングとか」
『おかげで売れ行きは順調だけどな。今度はつい先日お前らがアイアイ島で歌った曲のCD化も考えてるくらいだぞ』
尚、このCDに収録されている曲は基本的にアイドルプリキュアメンバーの曲のみであるためリアルで発売されてるボーカルアルバム~We are!You & IDOL PRECURE♪~と名前こそ一緒であるものの、プリキュアシンガーや響カイトの曲は入ってない。そのため曲数は影人の分が増えた事を考慮しても全部で8曲程度である。
何にせよこれでリアルアイドルとしての活動も順調である事がわかるだろう。
「それは本当に仕事が早い事で……。それじゃあ、今日はこの辺にしてまた明日だな」
『おう、また学校で』
こうして電話を切ると影人はアイドル活動が順調に進みつつある事を感じつつ夢乃の部屋に向かう事になるのだった。そして、レイの方も一人である事を感じつつ呟く。
「……それにしてとParabolaの人がうちのアカペラを見てくれるのか。仲良くしてくれると良いけれど」
レイはそんな不安を感じつつも影人達なら大丈夫だとその場は割り切る事になるのだった。
それから翌日、学校終わりの放課後の事だ。影人、うた、なな、こころはグリッターの二階スペースに集まっており、プリルンやメロロンも一緒にいる。尚レイはいつもの如く事務所の方に呼ばれてるせいでいない。
「……メロロ〜!」
そして影人達が集まってる隣でメロロンはとある本を読んでいた。そこには二人の女子生徒が仲良さそうに向き合って手を合わせており、その周囲にはバラが舞い散っている。そんな仲睦まじい二人の様子にメロロンはうっとりしていた。するとそれを見て気になったプリルンがメロロンへと話しかける。
「何読んでるプリ?」
「ねえたま!?」
「えっと、薔薇ヶ丘高校の姉妹達?」
そして、二階スペースに影人達もいるという事は彼等もメロロンが本に無茶である事には気がつくわけで。いつの間にかメロロンの近くに全員が集まっていた。
「あ!その小説知ってる!双子の姉妹が薔薇色の高校生活を送る、愛と涙のドキドキ青春物語だよね!」
「なるほど、学園生活ものの小説か。……という事はメロロンもこういうのに興味あったりするのか?」
「そうメロ!メロロンもねえたまとこんな学園生活を送れたら……」
メロロンはそう言ってプリルンと過ごす憧れの学園生活の様子を思い浮かべる。
「窓辺でのランチタイム……昼下がりの図書室……そして、ねえたまとの秘密の場所。二人で語らう夕暮れ時……素敵なのメロ!」
「学園生活に夢見てるなぁ……」
「あはは、二人共普段は学校に来てもできるのはぬいぐるみのフリだもんね」
これは実際そうである。基本的に彼女達は学校で自由に動けない。動いたら当然大問題になる事間違い無しだからである。そんな状況でメロロンにとっての理想的な学園生活の様子を描いた小説を読めば……自然と彼女が憧れを持つのは当然の流れである。
「メロロンも学園生活したいメロ!」
メロロンは小説を読んで憧れた学園生活を何としてでもやりたいと思っていた。勿論プリルンも一緒にである。
「メロ!ねえたまと一緒に」
「プリ!楽しそうプリ!プリルンも学校行って、アイドルプリキュア研究会に入るプリ!」
どうやらプリルンもその気になってしまったらしい。その様子に影人は内心複雑な気持ちだった。
「(学園生活に憧れる気持ちはわからなくも無い……だけどこれ、小説と現実の差を知った時大丈夫かな……というか二人共学校行くって事は勉強を……いや無理だろ)」
影人は二人が勉強をまともにやるイメージでは無い事をわかっており、メロロンはまだギリギリ行けるかもと希望があるものの……問題はプリルンだ。これまで性格による幼い言動をしてきた彼女がいきなり中学生の勉強に投げ込まれた時に彼女が上手くやれる気がしないのである。
「わぁあ……それ良いね!……ってダメダメダメ!」
「そうだよ、二人共その姿を見られたら大変!」
「(そういや、それ以前の問題だったわ……)」
影人はうたななの中二女子コンビがツッコミを入れた事でプリルン、メロロンがまずそもそも妖精である事に問題があると考える。何しろさっきも言及した通り、二人は動いている所を見られた時点で即アウト。
仮に運良く見られなくても止まっていたらぬいぐるみと同じであるために落とし物箱に入れられるか、運が悪ければ問答無用で捨てられる危険がある。つまり学園生活なんてやるどころの話じゃ無いのだ。
「うーん、あっ!それならプリキュアになって行けば良いのメロ」
確かにプリキュアになれば人間の姿になる事はできる。そのため問題は解決……するわけが無い。そんな事をすれば最近有名なアイドルが転校してきたという事で学校中大騒ぎである。むしろその方が問題が悪化するだろう。その事がわかってるのかこころは慌ててツッコミを入れた。
「それはもーっとダメです!」
「うんうん!」
「確かに……」
「プリキュアだとそのままの姿以上に注目を集めるからな……有名人だから尚更」
メロロンは他のメンバーに咎められて悩む。どうすれば問題無く学園生活をエンジョイできるのか……。学校に通いつつ問題の無い姿、その時メロロンの頭に電流が走るとある事を思いついた。
「うーん……メロ!それなら、タナカーンやヒメーノみたいになれば良いのメロ!」
「……うん?」
メロロンの言葉が薄らと聞こえた田中は下から一瞬だけ話が気になって二階の方を向く。ただ、今の彼は仕事中なのですぐに気を取り直して仕事をするのだった。
「えっと、それは……人間態を使うって事か?」
それはさておき、メロロンの提案した人間態への変身ならまだ可能性はある。田中や姫野、他にはレイの事務所で働く妖精達は皆人間としての姿に変身でき、問題無くこの世界で暮らしているわけで。そしてそうすれば途中で強制的に変身解除して妖精にならない限りは問題が起きる事は無いだろう。
「そうメロ!メロロン達も人間になるのメロ!」
「プリ!それなら行けるプリ!」
「確かに人間態なら問題は無いか?あとは勉強だけど……」
ただ、勉強に関しては二人のモチベーション次第ではどうにかする事はできる。少なくとも先程までよりは学校に通える可能性が高い。
「まぁひとまずはやらせたらどうですか?もし二人が通うつもりがあるのなら私達でどうにかすれば良いですよ」
「……それもそうか」
こころにそう言われて影人もひとまずは納得。こうして、プリルンとメロロンは学校に通うべくまずは人間になる事を目指すのだった。
今回うたミルのレイレイが名前だけ出ましたが、一応補足として、うたミル側の時系列はキミプリと同時進行で進んでいます。なので今の時点で大体アニメ7話〜8話ぐらいとなります。
それではまた次回もお楽しみに。