キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
登校の時間が終わり、ホームルームのチャイムが学校に鳴り響く。その少し前に教室に入った影人達四人は既に広まっているプリルンとメロロンの転入の話を耳にした。
「ねぇ見た?三年の転校生!」
「見た見た!あんな素敵な先輩達と同じ中学生だなんて奇跡だよ!もう麗しすぎる〜!」
そんな風に人間になったプリルン、メロロンの姿を見たクラスメイト達によってクラスの話題は二人の転入の事で持ちきりだった。
「もう学校中の人気者になってるね」
「うんうん。あまりにカッコ良くて私も一瞬ドキッとしちゃったもん」
「……そうだな」
「確かにあれは人気になると思う」
尚、影人とレイは先程自分の彼女達から念を押されたせいで既に疲れ切ったような顔になってしまう。そのため他の人と比べるとテンションは低めだった。
そんなわけで担任の富士見先生が早速ホームルームを始める事になるのだが、このタイミングでいつもと違うお知らせがあった。
「今日から皆を教える教育実習生を紹介するぞー!」
「教育実習生……」
それはこれから学校の先生を目指す上で必要な過程であり、実際の学校で先生としての実習を行う人の事を指す。そして、この学校では影人達のクラスにも入る事になった。
「持田先生、どうぞー!」
「は、はい!」
富士見から呼ばれた直後、教室の扉が開くとそこに一人の男性教師が姿を現す。その男性は体格が良く、首からはホイッスルを下げており雰囲気からまずいかにも体育会系と言わんばかりだった。
そんな彼が教室に入ってくるのだが、その動きは緊張からかかなりぎこちない動きとなってしまう。
「(あれが実習の先生……って、緊張しまくってるなぁ……。他の皆も唖然としてるし。ただ、俺達にどうこうはできないからここから援護するのは難しそう。何も無いと良いけど……)」
影人は持田のあまりの緊張っぷりにどうにかサポートする手を考えるが、ハッキリ言ってただの生徒ではこれをどうこうするのは無理だ。そのためまずは他の生徒同様に見守っていると……。
「うわあっ!?」
次の瞬間、緊張のあまり教卓に脚をぶつけてしまうという珍事をやってしまうとそのまま教卓の方に寄りかかってしまう。そのため富士見も慌てた様子で心配した。
「大丈夫ですか!?持田先生……」
「は、はい。すみません……」
持田はあまり心配させるわけにもいかないという事ですぐに反応すると改めて教卓の所に立って自己紹介をする事になる。
「あ、あ、わ、私。持田育と申します!」
そして彼は黒板に自分の名前を書こうとするがまたまた緊張が原因で手にしたチョークは震え、更にそのままチョークをポッキリと折ってしまった。
「ああっ!?」
「(あちゃー……。ダメだこりゃ)」
影人はもうこうなったらどうしようもできないと頭に手を当ててしまう。他のクラスメイトも緊張が原因で散々な目に遭っている持田に対して心配そうな目を向けていた。
「持田先生、リラックス。リラックス」
「は、はい……」
「で、持田先生は体育担当でしたよね?」
「は、はい!バリバリ体育っす!……じゃなくて、体育です!」
「凄く緊張してるね」
「……だね」
持田が返事をした際の言い方を見るに、恐らくこれが彼の本来の調子なのだろう。影人は先生をやるために本来の自分を封印しているのを見て難しそうな顔をしていた。
「(うーん。確かにそのキャラが持田先生の素なら隠すべきな気がするけど……それでここまでガチガチになるなら本末転倒なんだよな。勿論、難しいラインなのはわかるんだけどね)」
そんなわけで自己紹介が終わったという事で早速出席を取る事にこの出席順は苗字ののあいうえお順では無く、このクラスの席順らしく。一番最初に黒板から見た際に右奥に座っているうたから呼ぶ事になる。
「それでは出席を取ります!
「あ、それ
「すみません!?咲良……うたさん」
「はい!」
早速呼び方を間違えてしまう持田。ただ、いつまでも落ち込んではいられないため気を取り直して次の名前を呼ぶのだが……。
「えっと次は……
「
「えっ!?すみません……はぁ……」
また間違いをやらかしてしまった持田。上手く行かない現状に溜息が漏れてしまう。結局この後何度も間違えながらクラスの出席を取るのだった。
ここから少しだけ時間を遡り、朝のホームルームの三年B組の教室。転入についての手続きを終えたプリルンとメロロンの二人は早速教室で担任の先生から他のクラスメイトに紹介される事になる。
「うちのクラスに転校生が来たぞ」
「(こうしてぬいぐるみとして見守っているとは言え、あの二人が話すのは心配なのヒメ……)」
尚、二人が前で先生から紹介を受けてる間。二人の鞄の中にいるヒメーノは顔だけ鞄から出ている状態で机の所から二人を見ており、かなり不安そうだった。
何しろ目の前にいるのは人間とはいえあのプリルン、メロロンである。自分がフォローできるなら兎も角、あの二人だけで自己紹介をして変な事を口走り騒ぎにならない事を祈っていた。
「さぁ二人共、自己紹介して」
「(プリルン、メロロン。お願いだから大事にはしないで欲しいのヒメ……)」
「自己紹介って何?」
「名前を皆さんに伝える事です。お姉様」
「ああ、名前!プリルンは……」
「(いっ!?)」
「プリルン?」
ヒメーノは早速プリルンがいきなり妖精としての名前を言い出した事に思わず顔が凍りついてしまう。やはりメロロンは兎も角、プリルンの方は一人で喋らせると色々アウトな事を言ってしまうらしい。ただ、今回はメロロンがフォローする。
「お姉様は緊張してるんです!お姉様の名前は……」
「名前は?」
しかしフォローしたのは良いものの、キチンとした名前は決めておらず。メロロンも詰まってしまう。だが、それでもメロロンはどうにかできるようで。
「田中……ぷり、ぷ、ぷりんです!」
「うん!そう!」
「私は田中めろんです。憧れの学園生活、精一杯楽しみたいと思います」
「「どうぞよろしく」」
どうにかその場を乗り切ったプリルンとメロロン。いや、この姿の時はぷりんとめろんと言うべきか。その瞬間、その場から黄色い声援が上がる。ただし、ヒメーノは一人茫然としていた。
「(もう色々メチャクチャなのヒメ……)」
「ねぇ、見てみてこれ」
するとぷりんが後ろを向くと黒板やそこに置いてあるチョークに興味を示すとチョークを手に取ってその場で絵を描き始める。
「ほら!絵が描けるよ!」
「ええ、お姉様。これが黒板とチョークです」
「わぁ!黒板とチョーク!」
「お姉様上手です!」
「(ちょっ、ちょっと収拾付かなくなってるヒメ!?しかも周りの子達は黄色い声を出すのばかりなのヒメ!!)」
そのまま二人が絵を描くのを見てまた周りから声援が飛び、先生がどうすべきか迷ってしまっているためにヒメーノはまた気持ちを抉られてしまうのだった。
それから時間が経ち、早速数学の授業となる。ヒメーノにとっては影人同様にこれが一番心配な要素だった。
「今日はちょっと先取りで高校の数学の話をする。皆、
「(sinにcos……こっちの世界で習う数学用語ヒメ。でもこんな難しい事いきなりなんて……)」
ヒメーノが今の二人に数学用語の理解ができるかと考えていると話を聞いてぷりんが声を上げる。
「サインってあの事かな?」
「えぇ、お姉様」
「お。田中達知ってるのか?」
「「はい!」」
このクラスの担任兼数学の教師は二人の反応を見て二人が内容を知ってると判断。そのため声をかけると二人が揃って立ち上がる。ただし、ヒメーノは嫌な予感が浮かんでいた。
「(サインってまさかあの事を考えてたりするヒメ!?)」
ヒメーノの予想通り、二人は黒板の所に行くと何故かキュアズキューン、キュアキッスのアイドルサインを書き始めた。尚、丁寧にもキッスの方はサインを書くサイズを小さめにしてている。
「私はサイン!」
「私はコサイン」
「「二人合わせて、サインコサイン!」」
このように何かのユニットのような言い回しをしつつ解説をしたぷりんとめろん。勿論顔の良さでその場からは黄色い声援が上がるが、ヒメーノは完全に唖然としてしまっていた。
「(もうダメなのヒメ……。しかも普通なら滑るはずのやり取りなのに、顔だけは良いから何をやらかしても黄色い声になって帰っていく……こんなのどうすれば良いのヒメ!)」
ヒメーノはこの事から最早この二人の暴走は誰にも止められないと察してしまう。しかも教師さえも唖然とさせるやり取りであるのに加えてその教師も他の生徒達が黄色い声を上げている手前、中々間違いだと指摘する事もできず。ヒメーノがお手上げになってしまうのも半ば仕方ない所だろう。
そして、この二人の暴走はこれ以降も止まる所を知らない。次は古文の授業。めろんが教科書を読む人として当てられると彼女が立って音読する。
「いと小さく見ゆるはいとをかし……」
「え?いとってお菓子なの!?そのお菓子美味しいの?」
「(プリルン、それはお菓子じゃないのヒメ……流石に本を読み漁ってるメロロンなら反対してくれるはず……)」
ヒメーノは本を読むのが好きなめろんであればぷりんの発言を上手くカバーすると思っていた。だが……。
「ええ、きっと凄く美味しい」
「「いとをかし!」」
結局めろんはぷりんの発言をカバーする事なくその意見に同調してしまった。要するにメロロンは古文の意味を理解しているわけでは無かったのだ。そのためヒメーノは唖然とすると今にも頭を抱えたくなってしまう。
「(あ……ああ……もうダメだ、助けてタナカーン!?)」
それから場面が変わり、家庭科の調理実習。今回は野菜炒めを作るという話だった。尚、普段は鞄の中にいるヒメーノは普通ならここには来られない。しかし、全員が教室から出たのを見計らってぷりんとめろんやそのクラスメイトを追跡。どうにか家庭科室の掃除ロッカーの中に紛れ込んだのである。
「お料理なら私に任せて」
「(めろんのお料理、私は直接は見た事無いけどタナカーン曰く……)」
めろんは張り切って調理実習の料理を主導で進めていく。それから少しして。その場には以前のアイドルプリキュア対ズキューンキッスソウルのお料理対決を彷彿とさせる量の超豪華料理が並んでいた。
『わぁ……』
「(ゴクリ……。こればかりはめろんの作った料理も食べてみたくなるのヒメ……)」
流石はめろんの錬金術のような料理法である。彼女にかかればどんな料理だって作り出せるだろう。ヒメーノも今回ばかりはめろんが作り出した料理を見ると同時に今にもそれを食べたそうな顔へと早変わりだ。
「(うぅ……あんなの見せられたらお腹空いちゃうのヒメ!)」
ヒメーノはロッカーの中から家庭科室内に充満する美味しそうな匂いをモロに受けて今にも飛び出したい気持ちだったが、そんな事をすれば大惨事になるという事で必死に我慢した。ここで我慢してしっかりと踏ん張れる辺り、彼女がプロの大人であるという事がわかるだろう。
「めろん、こんなに美味しそうな料理を見てたらお腹空いてきちゃった!」
「そうですね。皆さんでいただきましょう」
こうして、クラスメイトは歓喜の声を上げると実習で作った料理を食べる事になる。尚、ヒメーノはそれを掃除ロッカー内からただ黙って見ているだけしかできずにかなりの地獄を味わうのだが……それは置いておこう。
その頃、場面が変わってチョッキリ団アジトでは。そこにはチョッキリーヌが一人カウンター席に座っておりエナジードリンクを飲んでいた。
「ぷはあっ……。スラッシュー……やっぱり最近変だよ。性格がコロコロ変わり過ぎだし、この前だって」
チョッキリーヌの脳裏にはヤミクラゲ襲来時に自分を庇って一人でその中に突っ込んでいったという行動が浮かぶ。冷酷なスラッシューと仲間想いのスラッシュー。二つの人格が何度も行ったり来たりで正直チョッキリーヌには彼女の抱える何かが見えて来なかった。
「もしかしてジョギなら何か知ってるのかい……」
「僕を呼びましたか?チョッキリーヌ先輩」
「うわあっ!?」
チョッキリーヌがジョギの事を考えているといきなり彼が後ろから答えを返すとチョッキリーヌはビックリしたような声を上げる。
「ふふっ、面白い反応をしますね」
「あ、アンタいつの間に!?」
「別にいつからいたって良いじゃないですか。それと、チョッキリーヌ先輩の疑問については僕もその理由が知りたい所ですよ。現に今もスラッシュー様は不調につき休んでますし」
どうやらジョギもスラッシューの不調についての詳しい理由については知らないとの事だ。ただし、ジョギはスラッシュー相手に術をかけたという経緯があるので大方その辺りだろうという予想はしているが。
「そうかい。それで、アンタは何の用でここに来たんだい?」
「ふふっ、いやね。僕はただ先輩に光の中に闇がある事を教えに来ただけ」
「光の中に闇……そういえばバッサリーナにもそんな事言ってたね。人間の闇を見抜くとかどうとか」
チョッキリーヌがそう言うとジョギは笑みを浮かべる。それから近くにあった人々をクラヤミンダーに変えるために使っていた水晶の入った宝箱に手を翳した。
「ッ……これは」
「ふふっ。これでようやくあなたにも使えますね。ダークランダーを」
ジョギが力を注いだお陰で水晶はダークランダー召喚用の赤い物に変化。ただ、ついでとばかりにジョギから煽られてチョッキリーヌは苛立ちを露わにする。
「ぐっ……そんな事言ったらスラッシューだって」
「へぇ。僕よりも立場が上のスラッシュー様が……使えないとでも思いました?」
どうやらスラッシューもジョギから再度洗脳を施された時点でダークランダーについては使用可能らしい。今まで使えるのに使わなかったのは……話の都合とでも言っておこう。
「さ、あなたも試したらどうですか?進化した闇の力を」
「ふん、言われなくても今日こそ世界中をクラクラの真っ暗闇にしてやるよ!」
こうして、チョッキリーヌは正直癪だったがジョギに強化してもらった水晶を手に出かける事になるのだった。
また次回もお楽しみに。