キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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出張所へと大量に届いたファンレター

プリルンとメロロンが学校に通うようになってから暫くが経った。この日影人達は出張所に顔を揃えており、いつものようにアカペラ練習を終えた後の雑談中である。

 

「私達、上手くなってるって!」

 

「うん、これならあと少し頑張れば発表できそうだね!」

 

影人達のアカペラは日々その技術を上げている。講師である山上達によるとあと1、2ヶ月もすれば完成するとの事だ。

 

「夢乃ちゃん、今日もお疲れ様です!」

 

「はい!私も配信の方で歌が上手くなったって褒められるようになって凄く嬉しくて」

 

「うん、私もドリーム・アイの配信は欠かさず見てるけど歌の上達は確実にしてるってわかるよ」

 

夢乃も自分の成長をファンが誉めてくれる事が大きなモチベーションとなっており、講師の先生達の教えがどんどん身に付いてる証拠だろう。

 

「だけど、油断はダメだからね」

 

「山上さん」

 

そこに片付けを終えた山上や環木、南、仙石の四人がやってくる。彼女達も今日の分の授業を終えて帰る時間になったため、一応引率者となっている田中に挨拶を済ませてから出ていく所だった。

 

「そうそう。折角上達したからって慢心して練習やめたら取り返すのに時間がかかるんだから」

 

「最後まで……油断しないで行こう」

 

『はい!』

 

「それにしてもプリルンやメロロンがプリキュアにならなくても人間になれるようになったってビックリしたよ」

 

すると南がそう話す。何しろ講師陣も最初、二人が人間態になれるようになったニュースを聞いて相当驚いていた。

 

「ほんと、あの二人がなれるようになるにはどれだけ少なく見積もってもあと数年はかかると思ってたから……」

 

「これもプリキュアの力って思うと凄いよね!」

 

「これも夢の学園生活をするために強い想いを抱いた結果ね」

 

「うん!おかげで毎日楽しく学校に通えてるよ!」

 

今もこうしてプリルンとメロロンは田中ぷりん、田中めろんの姉妹設定としてここにいる。加えて二人は人間化によってプリキュアにならずとも人間並みの肺活量と歌い方を手にした。この変化に慣れるための時間が多少かかるが、これで講師陣も特別メニューを使う必要性が無くなったためその負担は減少したと言えるだろう。

 

「本当、このチームのアカペラの完成が楽しみだよ。それじゃあ改めて、お疲れ様」

 

『お疲れ様でした!』

 

こうして山上達が帰っていくとその場には影人達生徒陣が残るのみだった。するとレイが影人へと話しかける。

 

「影人、それと俺も悪いんだが今日はこの後サウンドプロダクションの事務所でやる事があるんだ。……例の件も含めてな」

 

「あー……」

 

どうやらレイは今日はこの辺りで時間切れらしい。やはり彼には実家の方からの制限が厳しいという事だろう。また、例の件というのはParabolaの新メンバー予定の人が指導に来るという話だ。

 

「という事は近衛先輩にはオッケー貰ったって事か?」

 

「いや、まだだと。そもそもまだその近衛さん自身がParabolaに入る決心が付かないらしい」

 

「えぇ……」

 

影人はまさかの事態に唖然となってしまう。確かにレベルの高いグループであるParabolaに入るのは勇気がいる事なのだろうが、そんな人を貸し出せると言い切った聖のメンタルに呆れているのである。

 

「まぁ、でも大丈夫だと思うよ。あの人の強制力半端ないらしいし」

 

「はぁ……。頼むから揉め事だけは勘弁だからな」

 

「おう。それを無くすための今日の話し合いってわけさ」

 

するとそこになながやってきた。レイが影人と話しているのを多少小耳に挟んだのか、自分の彼氏がもういなくなるのだと察したのか。少し寂しそうだった。

 

「レイ君、行っちゃうの?」

 

「ああ。ごめんな、なな」

 

「気にしなくて大丈夫だよ。むしろ、レイ君は大事な事をしてくるんでしょ?」

 

「うん。もし心配ならまた夜にさ」

 

「わかった。約束だからね」

 

夜にというのは彼氏彼女がよくやる夜の通話だろう。二人は実家の関係で普段一緒にいられる時間が少ないため、夜中に通話して少しでも幸せな時間を過ごしているらしい。

 

「それじゃあな」

 

「うん、後でね。レイ君」

 

「頑張れよ」

 

こうして、レイも出張所から出ていく。これにより残ったのは影人、うた、なな、こころ、ぷりん、めろん、夢乃の六人だ。

 

「プリちゃん、メロちゃん……あっ、でもこの姿の時は先輩って言った方が良いのかな……」

 

「そんな堅苦しくしなくて大丈夫よ」

 

「普段通りプリルン、メロロンでも大丈夫だから!」

 

夢乃は人間態となった妖精組。ぷりんやめろんと初めて本格的に会話するために呼び方について迷ったが、二人は特に気にしていない様子で普通に接する。そのため夢乃も普通に接する事にした。

 

「じゃあここではいつも通り話すね。プリちゃん、メロちゃん。中学校通ってみて楽しい?」

 

「凄く楽しいよ!体育もアイドルプリキュア研究会もお昼休みのお弁当も!」

 

「あ、でも勉強とか難しくない?時期的にそろそろ受験とかでしょ?」

 

「受験……って何?」

 

「……へ?」

 

夢乃はまさかの中学に通っておきながら受験を知らないぷりんに思わず唖然とする。

 

「もしかしてそれ、凄く美味しかったりする?」

 

「いやいや、受験っていうのは……」

 

「お姉様、受験というのは高校という物に行くためのオーディションみたいな物です」

 

ぷりんが受験についてわからないために聞くとめろんがすかさずフォローへと入る。

 

「メロちゃん、受験がわからないプリちゃんにオーディションって言ったって……」

 

「あっ、そういう事なんだね!合格したら高校に入れるんだ!」

 

「な、何でオーディションはわかるの!?」

 

夢乃は唖然としていた。彼女は知らない事だが、オーディションに関しては前こころがキュアキュンキュンに入る前に彼女から内容の説明を受けている。だから即理解することができたのだ。

 

「え、えっと……それで大丈夫そう?」

 

「ん?ああ、勉強ならめろんがわからない所を教えるから大丈夫!」

 

「はい、お姉様のために沢山教えてますよ」

 

ただし、めろんの知識はかなり偏っているためにぷりんに教えている事の半分以上は間違った知識である。それについては前に解説したばかりなので置いておこう。

 

「そういえば、私もめろんも男の子から手紙を渡されるのと一緒に告白?っていうのをしょっちゅうされるんだけど……」

 

「告白!?そっか、プリちゃんもメロちゃんも姿が凄い綺麗だから……」

 

夢乃はぷりんやめろんが学校で他の男の子から沢山告白されるという話を聞いて納得の顔つきになる。何しろぷりんもめろんも容姿端麗で顔が良い。体つきだって高校生や大人のモデルと張り合えるくらいの物がある。

 

兄である影人から聞いた話によると転入初日に学校中の注目の的になったそうで、告白を沢山されても納得できるだけの理由が揃っていた。

 

「それにラブレターもしょっちゅう靴箱に入ってるわね」

 

「ら、ラブレター……。プリちゃんもメロちゃんも凄すぎる……」

 

夢乃は完全に学校のほぼ全ての男子の気持ちを掴んだ二人の妖精の魅力に圧倒されているとこころが質問する。

 

「それで、プリルンやメロロンは何て答えてるの?」

 

「ん?うーん……私はその子と会った後にいくつか質問されて、最後には諦めてもらってるかな……」

 

「私はお姉様一筋。影人からの告白だったら興味は示すけど、それ以外なんて眼中にすら無いわ」

 

「あー……」

 

なな達はぷりんとめろんの返しを聞いて何となく流れを察してしまう。めろんは告白をバッサリ塩対応で断っているという事。ぷりんに関しては最初の答えで疑惑を持たれ、その後告白した男子が幾つか質問をした後にぷりんが自分に気を1ミリも持たない事を悟り、自らリングから降りているのだという事を。

 

「でも今はちょっと減ってきたかな」

 

「良いじゃないですか。私にはお姉様や影人、皆がいれば他に何もいりませんから」

 

ぷりんもめろんも少しの間男子達のアタックが続いた後に二人に恋をしてもその恋は絶対に叶わないという事を男子達が思い知ったため、二人の事を憧れの先輩やクラスメイトと思った方が楽だと彼らの中で思われてるからだろう。

 

「盛り上がってる所失礼します。また皆さん宛にファンレターが届いてますよ」

 

するとそのタイミングでやってきたのは田中である。その後ろには姫野もおり、更に彼女の肩にカッティンやザックリンもいた。

 

「田中さん、姫野さん!」

 

「カッティンにザックリンも!」

 

田中と姫野はダンボール箱に山盛りになったアイドルプリキュアへのファンレターを持っており、それをまずはテーブルの上に広げる。

 

「やっぱりずっと届いてるんだ」

 

「凄っごく沢山ある」

 

「キラッキラン〜♪」

 

「でもこれは……」

 

「何だこの量……いつの間にこんなに集まったんだこれ」

 

そこにあったのはテーブルの上にギリギリ絶妙なバランスで乗っている手紙の山だった。下手すると手紙を積み上げただけで影人達の身長の半分くらいの高さがある。

 

「凄い量プリ」

 

「流石アイドルプリキュアなのメロ」

 

ちなみにプリルンとメロロンは田中達が手紙を並べ始める頃には妖精態に戻っており、空中に浮かべる状態になった上で上から手紙の山を一度見下ろしてみていた。

 

「だけど、沢山あり過ぎてどれが誰宛かわからないね」

 

「ああ。それに多分これ下手に触ったらテーブルから雪崩れ落ちて大惨事待った無しだろ」

 

手紙が届く事は嬉しい事ではあるが、このままでは読むことすらままならない。そのため一人の手紙仕分けの匠が立ち上がった。

 

「それならこのカッティンにお任せくだされッティン!」

 

「カッティン、もしかしてこれを崩さずに仕分けられるのか!」

 

「当然ッティン。うぉおおっ!」

 

その瞬間カッティンは超高速で稼働を開始すると積み上げられた手紙の山を崩す事無く正確に仕分けていく。

 

以前影人達がファンレターの仕分けを手伝った際はプリルンがやらかしたせいで相当時間がかかっていたのだが、その仕分けの時の量を遥かに上回る量をあっという間に減らしていった。

 

「キュアアイドル様、キュアウインク様、キュアキュンキュン様、キュアズキューン様、キュアキッス様、キュアソウルビート様、キュアアイドル様、キュアウインク様、キュアキュンキュン様、キュアズキューン様、キュアキッス様、キュアソウルビート様……バババババッ!カッティーン。ビシッと」

 

『おおーっ』

 

カッティンは仕分けを終えた後、しっかりとその手紙を綺麗にピタッと角を揃えて一つの山として置き直す。これにより先程まであんなに汚かったファンレターの山が綺麗な六つの山として整えられたのだ。

 

「あんなにあったファンレターがあっという間に……」

 

「凄いよカッティン!」

 

「ザックリ楽勝リン」

 

うたがカッティンを褒めるとザックリンが何故か自分の手柄みたいな言い回しをしたためにプリルンが容赦無く指摘を入れる。

 

「ザックリンは何もやって無かったプリ」

 

「その辺りはザックリしとけリン!」

 

「やってないのにザックリも何も無いのメロ……」

 

ザックリンがプリルンへと言い返すとそのプリルンと改めて指摘したメロロンは揃って呆れたような顔になる。

 

「やれやれ。……というか姫野さんがヤバそうだな」

 

影人はそんな時、姫野から出てくる嫉妬のオーラに気がついてその方を向く。そこには仕事に対する対抗心のような物が燃え盛っていた。

 

「このくらい私にだってできるのに……。カッティンがやらなかったら私が……」

 

「お兄ちゃん、姫野さんは姫野さんで燃えてるね……」

 

「ああ。姫野さんは仕事が自分にとって唯一の取り柄だって思ってる節があるし……こうなるのも仕方ないだろ」

 

姫野のやる気が燃え盛るのと同時に田中がカッティンへと感謝の気持ちを伝える。

 

「本当に助かります」

 

「……なんティン……」

 

するとカッティンは田中からの感謝に感激したかのように涙を流しつつ自らの想いを吐露した。

 

「うん?」

 

「アイドルプリキュアの力になれるなんティン……こんな幸せがあるなんティン!!」

 

しかし、その瞬間にカッティンの脳裏に電流がビビッと走る。同時に思い浮かんだのは今のままで満足してはいけないという彼の想いだった。そして彼は心の中で気が緩んでしまう自分を戒める。

 

「(……はっ、舞い上がるなカッティン。今の自分はファンクラブを運営する一員なのだッティン!ファンクラブ会員番号1番の誇りに懸けて……この使命を全うするッティン!!)」

 

「いやいや、俺だってザックリ会員番号2番リン!」

 

カッティンが決意を露わにしていると相方のその思考はわかっていると言わんばかりにザックリンがすかさず自分の主張を挟む。それはさておき、影人達は自分の山として積まれたファンレターの前に行くとその手紙を手に取っていく。

 

「でもほんと、嬉しいね。ファンレター!」

 

「はい、心キュンキュンしてます!」

 

「凄っごく……キラッキラン!……うん?」

 

するとうたは自分が最初に手に取ったファンレターの名前の場所を見る。そこに書いてあった名前というのが……。

 

「くり……きゅうた?」

 

「プリ?」

 

「……は?」

 

うたが呼んだ名前というのが“くりきゅうた”という人物。それと同時にプリルンも何か引っかかりがあったためにうたの方に飛んでいき、影人が一瞬思考停止する。

 

「この人、どこかで……」

 

「待て待て、何で覚えてないんだよ。咲良さんがプリキュアになる前。プリルンと初めて出会ってからアイドルプリキュアを探している時に……」

 

影人が慌ててくりきゅうたについての説明をしているとうたの脳裏にもその時の光景が浮かんできた。そして同時にうたやプリルンは思い出す。

 

「「(ああっ)(プリ)!プリキュア(だ)(プリ)!!」」

 

『プリキュア(メロ)(ッティン)(リン)!?』

 

「だから、くりきゅうたさんはプリキュアじゃねーだろ!?」

 

うたとプリルンがあの時同様にくりきゅうたの事をプリキュアだと言ったために事情を知らないなな達は思わずそれを繰り返す。そして、影人は思わずツッコミを入れるのだった。




また次回もお楽しみに。
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