キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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くりきゅうたとの再会

出張所に届いた一通の手紙。それは以前、アイドルプリキュアを探す際に名前を聞き間違えたがためにプリルンがそのままMOMOに乗せてキラキランドに帰ろうとしてしまったという経緯がある。また、それ以外にももう一度だけ出会った事があった。

 

「くりきゅうたさんって……この前のピクニックの時に会ったお相撲さんですよね?」

 

「プリ?」

 

「そうです!」

 

それがプリルンが記憶を失った際に彼女の記憶を取り戻すために行った山へのピクニックである。ただ、その時のプリルンはくりきゅうた本人を見てもまるで思い出せなかったが。

 

「そのくりきゅうたさんがプリキュア……というのはどういう事ですか?」

 

「その前に私はピクニックに行ってないし……イメージが湧かないよ」

 

夢乃は敵であったカッティンやザックリンと同様にくりきゅうたとは出会った事が無い。そのために余計に混乱していた。

 

「アイドルプリキュアを探している時に会ったプリ」

 

「うんうん」

 

「正確に言うと、俺と夢乃がこの街に引っ越してきたばかりの頃。プリルンと俺、咲良さんの三人が初めて顔合わせした日にアイドルプリキュアを探したんだ」

 

当時はまだアイドルプリキュアへの覚醒者が現れておらず。その事もあって三人で街へと探しに行ったのである。そこで出会ったのが彼。くりきゅうたというわけだ。

 

「うたが“プリキュアですか?”って聞いた時にくりきゅうたが聞き間違えたプリ」

 

「うんうん」

 

「ほんと、あの時はビックリだったよな。だけど、案の定向こうの聞き間違えだったわけだし……」

 

ただ、やっぱりプリキュアとくりきゅうたの聞き間違えには色々と無理があると思ったのか……うたとプリルン以外の全員が疑心暗鬼になってしまう。勿論影人もだ。

 

「プリキュアと……くりきゅうたッティン?」

 

「そいつそんなにザックリ聞き間違えた……リン?」

 

「……わかる。俺も何で聞き間違えたかよくわからなかったからな」

 

「ちょっと!?影人君まで……」

 

うたは影人が自分達側だと思っていたために愕然としてしまう。それから彼女はどうにかして周囲を納得させるためにある事を始めた。

 

「もう良いもん!だったら皆が納得する証拠を見せるから!」

 

「いや、そんな物無いだろ……」

 

影人がそう言った直後、うたは思い切り息を吸い込んで空気を溜める。それからその空気を一気に開放した。

 

「プリキュア!プリキュア!プリキュア!くりキュア!プリキュア!プリキュた!プリキュア!くりきゅア!くりきゅうた〜!……はぁ、はぁ……ね!!」

 

「いや、“ね!”って言われてもリン!」

 

「早口言葉でゴリ押せば行けるとか思ったなコイツ……」

 

まさかの力業に影人達は呆れる一方だ。そして意見を求められたなな達の反応はそれはもう苦いもので。

 

「うーん、まぁ……何とか」

 

「聞き間違えなくも無い……ですかね?」

 

「いや、かなり無理があるかと」

 

「メロ」

 

「やっぱり〜……」

 

結局なな達としては何で聞き間違えたのかわからないと言わんばかりの答えだった。それは一旦さておき。早速プリルンはいつも通りわからない事を質問する。

 

「お相撲さんって何プリ?」

 

「……でしたら、私が説明しましょう」

 

「相撲を詳しく知ってるなんて流石田中さんです!」

 

姫野はここでようやく先程の嫉妬モードから戻ってきてくれた。同時に田中の説明が開始する。同時にカッティンとザックリンがデモンストレーションとばかりに相撲会場を模した謎空間へと移動。

 

ザックリンが土俵入り前の塩を撒くと二人の姿も腰には廻しを付け、頭はお馴染みの髷を結った状態のカツラを被っていた。

 

「リン!」

 

「土俵と呼ばれる丸の中で……」

 

そして二人が土俵の上に上がり、その中で四股踏みをすると田中が声をかける。

 

「「どすこーい!」」

 

「見合って見合って……はっけよーい……」

 

同時に二人が正面同士で向かい合うと構えを取る。そして、田中が開始の合図を言い放つ。

 

「のこった!のこったのこった!」

 

その瞬間、カッティンとザックリンは組み合うと相手を土俵から叩き出そうと押し合う。尚、その間に行司役である田中はいつも以上に張り切った様子で声を上げた。そのため、妙にハイテンションな田中を見て姫野はまた惚れ惚れとする。

 

「活き活きとした田中さん……素敵……」

 

「のこったのこった!」

 

カッティンとザックリンの実力は拮抗しているのか、未だに決着が付かない。そして、田中はまたいつものテンションに戻ると解説を続行した。

 

「……と、二人のお相撲さんが戦う。これが相撲です」

 

「補足にはなるけど、勝敗の決定はどちらかのお相撲さんの足裏以外の体の一部が土俵の中に付くこと。若しくは土俵の外に体の一部が付く事だな。ちなみに二人共体が土俵内についた場合や同じく外に出てしまった場合はそうなるのがより遅い方が勝ちだ」

 

田中の説明に影人が補足。うた達は納得したように頷くとカッティンとザックリンの勝負は両者がピタッと同時に倒れた事で結果的に引き分けだった。

 

「「ごっつぁんです……」」

 

「のこったのこったプリ!」

 

カッティンもザックリンも全力で相撲をしたからかかなり疲れた様子であり、プリルンは相撲の行司が持っている軍配を片手にテンション高めだった。

 

「タナカーン、詳しいメロ」

 

「こちらの世界を勉強する中で知りまして。少々ハマってます」

 

「満喫しティン」

 

「なるほど、今度相撲観戦のお出かけに誘うのも……」

 

どうやら田中は相撲にハマっている様子であり、姫野は良い情報を聞いたとばかりにすかさずメモしていた。もしチャンスがあったら田中を誘って行くつもりである。

 

「これは田中さんの意外な趣味だね」

 

「姫野さんは田中さんの好きな事を聞けて嬉しそうだな……」

 

黒霧兄妹が田中の相撲好きにそれぞれ反応を示しているとプリルンがうたに話しかける。

 

「うた、うた!くりきゅうたのファンレター、何て書いてあるプリ?」

 

「えっとね〜。どれどれ……“アイドルプリキュアの皆さん、こんにちは。僕は強いお相撲さんになるために、毎日頑張っています。時々挫けそうになるけれど、アイドルプリキュアからキラッキラン〜を貰うと凄っごく元気が湧いて来て……。苦しい稽古も頑張れます”」

 

その手紙にはアイドルプリキュアに元気を貰い、自らが戦う舞台である相撲で人々をキラキラにさせられるように頑張るという彼の決意も書かれていた。

 

「“アイドルプリキュアは僕のヒーロー、ヒロインです。僕はいつか、お相撲さんの中で1番強い横綱に……キラキラな横綱になります!”だって!」

 

「プリ〜!」

 

「キラッキラン〜♪!」

 

「プリ!」

 

うたとプリルンはそんなくりきゅうたからの手紙を読んで興奮したように声を上げる。

 

「咲良さん、嬉しそうだな」

 

「うん。私もああいう純粋な応援メッセージとか見ると嬉しい」

 

夢乃もドリーム・アイとして配信中に応援のメッセージが来るとやはり嬉しい。少なくとも自分を応援してもらえるというだけで頑張る力を分けてもらえる。

 

「折角です、カゲ先輩。私達の分も読みましょうよ!」

 

「そうだな」

 

「うん。うたちゃん向けのファンレターを見てたら私達の分も見たくなっちゃった

 

それから影人達はある程度ファンレターを確認してから街に出ると流石にお昼頃になってしまったため、全員で街の方にお昼ご飯を食べに行く事になる。

 

「ファンレター、嬉しかったですね」

 

「読んでると元気が出てくるね」

 

「くりきゅうたさん、頑張って欲しいな」

 

影人達七人とプリメロは良さそうなお店を探しつつ先程のファンレターの事を思い浮かべる。

 

「また会いたいプリ!くりきゅうた」

 

「……僕、くりきゅうただよ」

 

そんな時だった。聞き覚えのある声と共に影人達が振り向くとそこはホットドッグのキッチンカーの前。そして購入したホットドッグを手に立つ一人のお相撲さん、くりきゅうたが立っていた。

 

「……は?」

 

「いたぁあっ!?」

 

影人は思わず唖然とするとうたも同時にくりきゅうたがいたという事実に叫んでしまう。そしてくりきゅうたも影人達の方を向くと両手に持ったホットドッグを齧る。

 

「くりきゅうたさん……」

 

「いきなりいたメロ……」

 

「プリ……」

 

尚、普段なら喋っている姿を見られた時点で即アウトになってしまうプリルン、メロロンの二人。だがくりきゅうた相手には喋る姿はとっくにバレているために二人揃って遠慮なく喋っている。

 

「お久しぶりです、くりきゅうたさん」

 

「うん?……ああ、あの時の」

 

それからくりきゅうた本人も夢乃以外は前に出会った事がある面々だと気がついたのか、近くにあるベンチに腰掛けてゆっくり話す事にした。

 

「あの時はビックリしたよ。その喋るぬいぐるみと桃みたいな乗り物に乗ってさ」

 

「あー……そういえば乗せられてましたね」

 

影人はくりきゅうたと出会って話をした直後。プリルンが一旦キラキランドに戻るためにMOMOを呼び出して彼を乗せたのだ。そしてメロロンはまさかMOMOに乗った人間がいた事に驚いてプリルンに聞く。

 

「ねえたま、この人MOMOに乗ったのメロ?」

 

「プリ……」

 

プリルンも関係無い部外者をMOMOに乗せてしまった事に罪悪感があったのか微妙な返事を返す。

 

「そういえばプリルン、MOMOの中ってどんな感じなの?」

 

「えっと……えっと……大きな桜の花の上に椅子があって、プリルン達はその上に座って目の前の機械を動かして進むプリ」

 

「周りは謎に満ちた空間になってるのメロ」

 

「ふーん、それってまるで○ラえもんの○イムマシ……」

 

「ストーップ!それ以上言ってはダメです先輩!怒られますよ!」

 

「怒られるって誰に!?」

 

うたがプリルンやメロロンの例えを聞いて思わずアウトな発言をしそうになったためにこころがうたへとツッコミを入れて阻止。どうにか最悪の事態を回避した。

 

「はぁ……相変わらずのネタモード全開だな……」

 

ただ、今回の発言でMOMOの中身が見た目によらずそれなりに広いという事。くりきゅうたを一人入れるくらいは簡単にできるという事は知る事ができた。

 

それはさておき。それからプリルンはMOMOの中でのくりきゅうたとのやり取りを経て彼を間違えて乗せてしまった事に気がつき、はなみちタウンに蜻蛉返りをする羽目になったのだという。

 

「……すみません、うちのプリルンが……」

 

「いやいや、それについては気にして無いよ。そもそも最初に聞き間違えたのは僕の方だしね」

 

影人はプリルンがまた他人に迷惑をかけたという事でくりきゅうたへと謝罪。本当にプリルンの行動はお騒がせする物ばかりだ。

 

「プリ……」

 

「キラキランドに着く前に気づいて良かったのメロ」

 

「流石のメロちゃんも今回ばかりはプリちゃんの行動は正当化できなかったみたいだね……」

 

「それに田中さん曰くキラキランドは今相当不味い状態だって言うし。本当に着く前に気づけてよかったと思うよ」

 

もしここでプリルンがくりきゅうたに対する誤解に気がつけていなかったらもっと大変な事になったのは容易に想像できる。そのため本当に到着前に気がつけたのが不幸中の幸いだろう。

 

「危うくアイドルプリキュア第一号がキュアお相撲さん……いえ、キュアりきしになる所でしたね」

 

「キュアりきしって……プリキュアとしては強いかもしれないけどアイドルとしてはダメだろそれ……」

 

影人はこころが言ったキュアりきしという単語に思わずツッコミを入れてしまう。実際問題、力士のプリキュアなんて前代未聞なので色んな意味で変身できなくて良かったかもしれない。

 

「それで僕がそのぬいぐるみと別れた後すぐにアイドルプリキュアって名前のアイドルが現れてさ」

 

「そういえば、うたがキュアアイドルになったのも本当にすぐ後だったプリ」

 

「じゃあ、くりきゅうたさんにとっては当時は訳の分からない妄言が本物になっていたって事だよね」

 

「あー。確かにそうですね!」

 

くりきゅうたは最初アイドルプリキュアなんて言われても理解不能だったが、実際にうたがアイドルプリキュアへと変身した事でそれが実在するアイドルグループであると証明された事になる。

 

「えへへ……僕、初めて見た時、アイドルプリキュアを気に入ってファンになっちゃった〜!」

 

くりきゅうたの手にあったのはまさかのアイドルプリキュアファンクラブの会員証だった。勿論カードの絵はキュアアイドルである。それよりも影人達が驚いたのはその会員番号である。

 

「ファンクラブの会員証!?」

 

「会員番号8!?」

 

「まさかの一桁……かなり早い番号ですね!!」

 

くりきゅうたはまさかの会員番号8番という一桁台の会員番号を持つ数少ない人間の中の一人に数えられるようだった。

 

「それってそんなに凄いプリ?」

 

「ねえたま、一桁番号の会員は世界中見渡してもたった9人しかいないのメロ。その中の二人はカッティンとザックリンだけど、このくりきゅうたって人もその中の一人になるのメロ」

 

「要するにメチャクチャ凄い人って事になるよ」

 

プリルンはメロロンや夢乃からの説明を受けても会員番号が一桁の人の凄さがイマイチよくわかっていない様子だった。そんな彼女はさておき。くりきゅうたはアイドルプリキュアへの熱意を語る際にとても活き活きとした表情を浮かべていた。

 

「えへへ、凄っごく頑張ったんだ!」

 

「まさか会員番号登録競争の上位者がこんな所に……」

 

「良いなぁ、私は二桁しか行けなかったですよ……」

 

尚、夢乃の言う二桁も十分凄い事ではある。しかも彼女の場合はもっと凄い要素があるのだが、これはまた後で解説しよう。

 

「ふふっ、良いよね。アイドルプリキュア、見ていると何だか元気が湧いてくる。……僕、アイドルプリキュアを応援してるんだ」

 

「私達はくりきゅうたさんを応援しています!」

 

そうやって前に中止になってしまったはなみちタウンフェスでのアイドルプリキュアの登場シーンを思い出し、想いを馳せる。その瞬間、うたが言い出した言葉に影人は僅かに嫌な予感を感じた。そしてそれは割とすぐに現実になってしまう。

 

「え?」

 

「キラキラな横綱になってくださいね!」

 

「ちょっ、おまっ……」

 

「……え?僕がキラキラな横綱になりたいって何で知ってるの?」

 

「ああっ!?」

 

うたがいつもの如くアイドルプリキュアしか知り得ない情報について口を滑らせてしまうと慌てて影人、なな、こころがフォローに入る。

 

「い、いやぁ……」

 

「いつかキラキラ輝く横綱になってほしいなって」

 

「そうそう!横綱になって大舞台で優勝すればきっとなれますよ!」

 

「頑張ってください!」

 

影人達のフォローにうたも便乗。ただ、くりきゅうたの反応は申し訳なさそうな物だった。

 

「……僕、もうお相撲さん辞める」

 

『え?』

 

「アイドルプリキュアになる!」

 

『ええーっ!?』

 

くりきゅうたが突然言い出した相撲を辞め、アイドルプリキュアになる宣言に思わず影人達は驚きの声を上げる。果たしてくりきゅうたの心境は如何に……。

 

〜おまけ 夢乃の会員番号〜

 

時を少し遡り、アイドルプリキュアのファンクラブ開設の日の夜。影人の部屋に夢乃が来ていると彼女はご機嫌な様子だった。

 

「ふんふふ〜ん」

 

「……何だよ夢乃、鼻歌まで歌ってご機嫌だな」

 

「お兄ちゃん、今日アイドルプリキュアのファンクラブ開設あったでしょ」

 

それを聞いて影人は夢乃がご機嫌な理由を察する。恐らくファンクラブ関連の話なのだろうと。

 

「……そうだな。それで、何?もしかして会員証番号が上の方だったとか?ただ、1番2番はもう知ってるから嘘吐いてもわかるからな?」

 

「えー?私がわざわざそんな嘘吐くと思う?……そうじゃなくてこれ」

 

それから夢乃が会員番号の映った画面を見せるとそこにあった数字は77番だった。……そう、77(なな)である。

 

「……ッ、お前これマジ?」

 

「超マジ!」

 

「確かお前が推してるのは……」

 

「キュアウインクだよ〜。なな先輩を連想する番号でしょ」

 

まさかの語呂合わせでななを連想できる77番に夢乃が当たった事に影人は唖然とすると思わず笑みが浮かんでしまう。

 

「そっか、良かったな」

 

「うん!今度なな先輩にも報告するね!」

 

「蒼風さんの事だ。喜んでくれるだろうな」

 

「あー楽しみ!」

 

それから後日。ななが夢乃からこの事実を知って歓喜の声を上げたのは言うまでも無い。




また次回もお楽しみに。
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