キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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くりきゅうたのアイドルプリキュアへの挑戦

くりきゅうたのプリキュアやる宣言。まさかの展開に影人達の脳内は当然のように大混乱である。

 

「くりきゅうたさんがプリキュアに!?」

 

「本当にキュアりきし……」

 

「いえ、キュアきゅうたに!?」

 

「お、お兄ちゃん。色々とんでもない事になってるけどこれ……」

 

「……大丈夫、と思いたい。そもそもプリキュアへの覚醒ってそう簡単には無理だし」

 

女子中学組の三人が困惑している間に夢乃は兄へと聞くと影人もどうにか夢乃へと平然を保ちながら答えを返す。ただ、色々と不味い事態になってしまったのは間違いないだろう。

 

「君達も手伝ってくれる?」

 

「え……あ、はい」

 

「ありがとう!それじゃあ、早速行こう!」

 

「待ってくださーい!」

 

思い立ったが吉日……とはよく言った物だがそれを体現するとばかりにきゅうたは早速影人達を連れて駆け出してしまう。ただ、そんな時にこの光景を心配そうに見守る一人の男の子がいたのだが……影人達は気が付かなかった。

 

「………」

 

「ちょっ、咲良さん。ご飯はどうす……うん?」

 

そして、影人は未だに昼ご飯を食べてない状態で別の事をやり出したうた達にツッコミを入れると同時に駆け出したくりきゅうたの足元に何かの違和感を感じる事になる。

 

それから少ししてはなみちタウンの街並みを見下ろせる高台にて。くりきゅうたは決意表明と言わんばかりに声を張り上げる。

 

「僕もアイドルプリキュアみたいに……キラキラなアイドルになりたーい!」

 

「アイドルプリキュアになるって……」

 

「お相撲は?」

 

「……もう、良いんだ」

 

うたやななからの問いにくりきゅうたはギュッと手で掴んでいた柵を更に強く握るとどこか悔しそうにしつつも諦めのような雰囲気を出しつつそう呟く。するとそこに一人の男性がやってきた。勿論影人達アイドルプリキュアのマネージャーである田中である。

 

「失礼します。私、アイドルプリキュアのマネージャー、田中と申します」

 

「マネージャーさん……何で!?」

 

くりきゅうたは何故かタイミング良くマネージャーがこの場に来た事に驚いて困惑する。何しろ彼視点では影人達は自分がアイドルプリキュアになってくれるのを応援してくれるというだけの存在。それなのにこんなにも都合良くアイドルプリキュアのマネージャーを名乗る田中がやってくるとは思っていなかったのだ。

 

「くりきゅうたさん、驚いてるね……」

 

「仕方ないだろ。俺達がアイドルプリキュア本人だって事も、表向きにはアイドルプリキュアマネージャー見習い扱いで通してる事も知らないんだから」

 

「あー……」

 

そして、くりきゅうたの反応に対して影人と夢乃はコソコソと会話をしていると彼は慌てた様子でうた達へと問い詰めた。

 

「君達、アイドルプリキュアのマネージャーさんと知り合いで……一体何者なの!?」

 

「べ、別に怪しくは無いんですよ!?本当にちょっとした知り合いと言いますか……」

 

「私達、アイドルプリキュアのマネージャー見習いをやってるんです」

 

「そうそう!だから本物のマネージャーさんとも繋がってると言いますか……」

 

田中の後ろでうた達が三人共慌てたような対応をしてしまう。影人はあくまで落ち着いていたが内心ではいつくりきゅうたがそこら中に見え隠れする怪しい点に気がついてしまわないかドキドキしていた。ただ、彼は色々と純粋だったのか三人の言葉を信じる事に。

 

「そうだったんだ……」

 

「そうだったんです……」

 

「(ほんと、よく今の対応で凌げたな……)」

 

すると田中は眼鏡を右手でクイッと上げる仕草をすると早速質問を始めた。

 

「アイドルプリキュアになりたいというのはあなたですか?」

 

「は、はい!くりきゅうた、二十歳!体力には自信があります、よろしくお願いします!」

 

くりきゅうたは田中からの問いにビクッとしたような仕草を見せて緊張しつつもオーディションを受けるかのように真っ直ぐに立ち、自己紹介する。

 

「お兄ちゃん、これ本当にオーディションするの?」

 

「するしか無いだろうな……この流れだと」

 

「えぇ……」

 

夢乃が本当にオーディションをする流れになって唖然としたような顔つきになってしまう。そもそもアイドルプリキュア自体が世間では普通のアイドルグループとして見られているが、実態の所は怪物と戦うスーパーヒーローみたいな事を並行してやっている。

 

そして、くりきゅうたはその事実を知らないわけで。簡単に言えばアイドルプリキュアに接触したばかりのこころと同じ状況になっているのだ。

 

「それにしても、くりきゅうたさん。本当にお相撲さんを辞めちゃうのかな?」

 

「何か理由があるのかも」

 

「でも……」

 

うた達もくりきゅうたが本気でアイドルプリキュアをやるつもりになっている事で相撲の方は辞めてしまう気満々なのではないのかと不安になる。しかも、逆にアイドルプリキュアへの熱意がどんどん強くなっている彼を前に止める事はできなさそうだった。

 

「頑張りますよ!!」

 

「本人はとってもやる気だね……」

 

「もう一旦やれる所までやらせてみた方が良いかもな。その上で諦めてもらうなら諦めてもらうとかの方がまだマシだと思う」

 

影人はくりきゅうたを無理に止めるよりは審査の中で落ちたという事を伝えて平穏に終わってもらった方がまだダメージは小さいと考える。

 

すると影人よりも田中の方が考え方は一枚上手だったのか、くりきゅうたへとある事を伝えた。

 

「生憎、新メンバーは募集してないのですが……」

 

「特技は餅つきです!」

 

それは、そもそも新人を取っていないからオーディションすらやらないという選択肢である。

 

だが、そんな田中を遮るように早速自分の特技をアピールしてしまうとどこからか餅つきのための道具を取り出す。こうして、その場に餅が入っている臼とくりきゅうたが担ぐ杵が用意されると彼は頭にねじり鉢巻を付けて気合十分だった。

 

「くりきゅうた、餅……つきまーす!」

 

「あれ、これアイドルプリキュアのオーディションだよね?」

 

「夢乃、もうこうなったら餅つきの流れなんだ。諦めろ」

 

夢乃はアイドルプリキュアどころかリアルのアイドルとして考えてたとしてもあり得なさそうな餅つきをするという流れに唖然とし、影人は最早こうなるのを諦めてさえいた。

 

「むん!」

 

「はい!」

 

「どす!」

 

「はい!」

 

「こい!」

 

「はい!」

 

「どす!」

 

「はい!」

 

「こい!」

 

「はい!」

 

くりきゅうたが餅をつく度に田中は彼に息を合わせる形で餅に水を入れる。しかもくりきゅうたが多少ペースを早めても普通について行っている為に影人達は田中の手際の良さに驚いていた。

 

「凄っ!」

 

「息ピッタリ……」

 

「田中さん何でも出来すぎですよ!」

 

それから暫くして。くりきゅうたがついた餅を小さく分けると様々な味付けがされて影人達はそれを食す事になる。

 

「キラッキランラン〜♪!」

 

「きなこにあんこ、磯辺もあるよ!」

 

「この緑のは何?」

 

「これは多分ずんだだね」

 

丁度昼ご飯が遅れていたのもあって影人達は美味しそうに餅を食べており、勿論プリルンやメロロンも同様であった。

 

「やっぱりつきたては違いますね!」

 

「悔しいけど美味い……」

 

「伸び伸びプリ〜!」

 

「メロ〜」

 

田中の方も餅つきの手伝いで疲れがあるために余計に餅を美味しく食べていたらしく。彼は臼の隣に用意された椅子に座りつつ餅を美味しくいただいていた。

 

「体を動かした後は格別ですね」

 

「くりきゅうた。次の特技、行っきまーす!」

 

「えっ、次?」

 

次の特技と聞いて夢乃が唖然とする中、くりきゅうたは問答無用で次の事を始める。それが……。

 

「くりきゅうた特製ちゃんこ鍋!召し上がれ!」

 

「わぁ……」

 

「美味しそう!」

 

そこに用意されたのはくりきゅうたが作った特製のちゃんこ鍋であった。ちゃんこ鍋を作れる辺り流石はお相撲さんというわけだが、早速影人達はまたそれを食べる事に。

 

「あーむ!ん〜!」

 

「美味しい!お料理上手なんですね!折角ならレイ君もいれば良かったのになぁ……」

 

「ちゃんこ鍋、キラッキランラン〜♪」

 

「デリシャスマイル〜♪幾らでも食べられちゃいます!」

 

「こころ、また変なのが乗り移ってないか?」

 

またこころは例の如く美味しい物を食べた影響か、彼女の中に別のキャラが宿っているような台詞を言ってしまう。

 

「はい、カゲ先輩。あーん」

 

「ん、あーん」

 

こころはそのままの流れで影人へとあーんをすると影人は特に躊躇無くそれを食べる。最早人前で食べさせてもらうのにも慣れたのだろう。

 

「むー!こころ先輩、私にもやらせてください!」

 

「良いですよ」

 

「ちょっ、こころは兎も角夢乃まで何でだよ!?」

 

「え〜?偶には良いじゃん」

 

「良くねぇよ!?」

 

流石に妹である夢乃から食べさせてもらうのには抵抗感があるのか影人は慌てて物申すが、結局夢乃からも“あーん”を貰うことになってしまった。距離感が前よりできたとは言ってもやはり夢乃は夢乃である。

 

そして、ここにも食べさせてもらっている二人がいた。それはプリルンとメロロンである。

 

「はい、どうぞ」

 

「あーん。ん〜!美味しいプリ!」

 

「メロ!」

 

二人は直接手で掴んで食べられない物を食べる事になったからか、田中が小さいスプーンで掬って食べさせる方法を取っていた。

 

「おかわりいっぱいありますよ!」

 

「おかわり!」

 

それから暫くの間、影人達はちゃんこ鍋を楽しむと完食。もうお昼ご飯はこれで良いと言えるくらいの満腹度になった所で影人達はちゃんこ鍋を食べていたキャンプ場の休憩所で一息入れていた。

 

「あ〜、美味しかった!」

 

「うたちゃん良く食べたね」

 

「ちゃんこ鍋、美味しかったですもんね」

 

この中では男子である影人やうたが多めにちゃんこ鍋を食べており、特にうたは満足そうな顔つきを見せていた。

 

「くりきゅうたさん。キラッキランラン〜♪」

 

「あ、でも……お餅もちゃんこ鍋もとっても美味しかったんですけど……」

 

「はい、やっぱりこれってアイドルプリキュアと関係無いのでは……」

 

「はっ……!?そういえばそうだった!!」

 

「いや、咲良さん気がつくの遅ぇよ」

 

うたは影人達が指摘した事でようやく今回の件がアイドルプリキュアとは無関係であると自覚して慌てて飛び起きる。

 

「そうですね……アイドルプリキュアとしてはちょっと……」

 

「う、うぅ……つ、次のアピール行きます!」

 

くりきゅうたは今のままではアピールとして弱いと感じたのか、慌てたような様子でまだ他にも自分のアピールポイントがあると言わんばかりに立ち位置を移動。

 

「まだあるんだ……」

 

「ひとまず見るしか無さそうですね」

 

するとくりきゅうたは休憩所から少し離れた場所に行くと影人達に向かって手を上げた。

 

「くりきゅうた、歌います!」

 

「歌……流石にアイドルやるなら歌えないとだよね」

 

夢乃はようやくアイドルらしい事をやり出したくりきゅうたにある意味ホッとしたような顔になる。そんな中でくりきゅうたの歌が始まった。

 

「いくぞ見合ってはっけよい〜♪土俵はステージ〜♪どすこい!」

 

「「「どすこい!」」」

 

「力士!」

 

「「「力士!」」」

 

それはうたがいつもやっている“笑顔のユニゾン”の替え歌である。やはり即興でやるなら聞き慣れている曲に合わせた方が良いという事で。うた、なな、こころは自分のメンバーカラーのキラキライトを振りつつコーレスに応える。

 

「うわてを掴んで……うっ!?」

 

しかし、次の瞬間にくりきゅうたの脚に痛みが走ると顔を歪めて歌を中断してしまう。そして、その様子は影人達からもハッキリと見えるわけで。

 

「「「あっ!?」」」

 

「痛てて……」

 

「やっぱりか……」

 

「くりきゅうたさん!?」

 

影人は何かに気がついていた様子であり、同時に影人を含めた中学生組と夢乃が駆け寄る。ただ、影人達よりも早くどこからか声が聞こえると少年がくりきゅうたの元に来ていた。

 

「きゅうたさん!」

 

「「「「「えっ……」」」」」

 

(ちから)君……」

 

そしてその少年の事をくりきゅうたは知っている様子であり、力という彼の名前を呼んだ。

 

「大丈夫ですか?」

 

「えっと、君は?」

 

(ちから)って言います」

 

「この感じだともしかしてくりきゅうたさんのファンだったりする?」

 

「はい。僕はきゅうたさんのファンです!」

 

影人の問いに力は名前の通り力強く答えを返す。ただ、肝心のくりきゅうたの方は申し訳なさそうな顔つきをしていた。先程の痛みと言い、アイドルプリキュアを目指したのにはやはり訳がありそうな様子である。

 

こうして、くりきゅうたのファンである力との邂逅を機に影人達はくりきゅうたのアイドルプリキュアを目指す宣言の真意に迫る事になるのだった。

 

同時刻、チョッキリ団アジトにて。バーにいるのはチョッキリーヌ。ただ、彼女の顔は不機嫌その物だった。

 

「……いつまでお前はそこにいるんだい!」

 

「別に良いじゃないですか。僕達同じダークイーネ様の部下なんですよ?」

 

正直チョッキリーヌからしてみればジョギは目の上のたんこぶでしか無い。新人なのに先輩の自分には敬意を払わず、むしろ生意気な事ばかり言ってくる。しかもダークランダーの扱いに関しては自分より優秀と来た。

 

折角スラッシューとの関係がある程度軟化したのに彼女はここ最近不調ばかりで中々姿すら見せず、やりづらいったらありゃしない。

 

「……その辺にしなさい」

 

「お、スラッシュー様。やっと戻ってきましたか」

 

そのタイミングでチョッキリーヌが待ち望んでいたスラッシューが姿を現す。彼女は多少疲れたような様子だったが、そんな事言ってられないと言わんばかりに二人の前に姿を見せたのだ。

 

「ジョギ、あまりチョッキリーヌを揶揄ってはダメよ」

 

「えー?別に良いじゃないっすか。反応が見てて面白いし」

 

「何ですって!?」

 

「はぁ……」

 

ジョギにまた揶揄われてチョッキリーヌは額にまた青筋が立ってしまう。もうこうなると彼の揶揄いは止まらない。スラッシューは仕方ないと言わんばかりにある事を言いました。

 

「……だったらジョギ。今日はあなたが出なさい」

 

「へぇ。まぁ良いっすよ。チョッキリーヌ先輩じゃまだダークランダーを使いこなせなさそうだし」

 

「アンタは一々言う事が余計なんだよ!」

 

スラッシューに言われてジョギが出撃のための準備を始めていると何故かスラッシューも同じように出るための準備をしているためにチョッキリーヌが指摘する。

 

「スラッシュー、もしかしてアンタも出るのかい?」

 

「ええ。部下に任せてばかりの上司というのも情けないわ。偶には行くわよ」

 

「やっぱりアンタ……私がアンタに憎まれ口を叩いていた頃からずっと思ってけど、一匹狼よりも部下持ちの方が向いてるんじゃないのかい?」

 

「……そうかもね」

 

スラッシューはチョッキリーヌからの言葉に複雑な気持ちを抱えつつもジョギと共に久しぶりに出撃していく事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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