キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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くりきゅうたに届かない応援

場面は再度戻って影人達の方。そこでは休憩所に戻って改めて話をする事になった。

 

「きゅうたさん。お相撲さんを辞めるなんて言わないでください。僕、一生懸命相撲を取るきゅうたさんが大好きです」

 

力はくりきゅうたを説得するために背負っていた鞄からある物を取り出す。それはまさかのアイドルうちわのようなくりきゅうたの名前の入ったうちわとキラキライトであった。

 

「悲しい事があっても、応援してると頑張ろうって元気が出て……。きゅうたさんは僕のヒーローなんです!」

 

「ッ……」

 

くりきゅうたは力からの言葉に驚いたような声を上げるものの、やはりそれなら尚更申し訳ないと言わんばかりにまた顔が下を向いてしまう。

 

「ヒーロー……」

 

「くりきゅうたさんは私達へのファンレターに書いてくれた言葉と同じ」

 

「プリ……」

 

「メロ……」

 

恐らく、力にとってのくりきゅうたというのはくりきゅうたにとってのアイドルプリキュアに近い存在なのだと言えるのだろう。そして、彼への心配で思わず言ってはいけない事も言ってしまったのだが……くりきゅうたや力が気づいてないのでセーフである。

 

「だから辞めないでください!」

 

「………」

 

「どうしてお相撲、辞めようと思ったんですか?」

 

これだけ力が応援しているのに何故彼が相撲を辞める選択肢を取る事にしたのか。うたはそれが気になって彼に問いかける。しかし、まるで言いたくない事を隠すかのように彼は黙り込んでしまっていた。

 

「……くりきゅうたさん。もしかして脚を怪我してたりします?」

 

『えっ!?』

 

「……どうしてそれを……」

 

「先程咲良さん達と一緒にこの場所に来るまでの間、どこか歩き方やら色々違和感があったのでもしかしたら……ってだけです。でも、その反応は当たりみたいですね」

 

影人はくりきゅうたが抱えている問題に気がついていた。そして、こうなった以上は隠すのは無理だと判断。彼は着ていた浴衣の裾を少しだけ上げると左脚に包帯を巻いているのがわかる。

 

「……そこの男の子の言う通り、僕ね……怪我しちゃったんだ」

 

そして、改めて怪我の事実を知ったうた達は驚いたような顔になる。それからこうなってしまった経緯についてくりきゅうたが話す事に。

 

「もうちょっとで幕下っていう……一つ上の地位に上がれる所だったんだ。だから大好きなアイドルプリキュアに、ファンレター書いて。自分に気合い入れて一生懸命稽古してた。そしたら怪我しちゃって」

 

その言葉やくりきゅうたの様子に先程まで励ましていた力は何て声をかければ良いか迷った後にそれでも応援すべきと考えて声を上げる。

 

「でも、でも治ったら……またお相撲取れるんですよね」

 

「うん。……でもまた一から苦しい稽古をしないといけない。それに、こうして休んでいる間にライバル達はどんどん強くなって……僕は置いて行かれちゃうんだ」

 

アスリートの世界において、一度の怪我が致命的になるケースは幾らでもある。例えば、オリンピックでメダルを狙える程に活躍している選手がいたとして。その人が一度大きな怪我をし、それ以降の競技人生ではオリンピックどころか表舞台にすら立てなくなるという事態に陥るなどザラだ。

 

何しろその選手が怪我の治療している間も周囲の人間は当然のように努力して強くなる。そのため怪我のブランク期間中にあっという間に追い抜かれて実力が逆転してしまう……という事が起きてしまうわけだ。

 

「(正直、こうなってしまった以上……俺達は下手にくりきゅうたさんを応援するのもいけないのかもしれないな。もし本人にまだやる気があるなら別だけど……)」

 

影人がそう考えている中でくりきゅうたは話の続きを話す。そしてそれは彼の夢の終わりを語る物でもあった。

 

「いつか、お相撲さんの中で一番強い横綱に……キラキラな横綱になりたいって思ってたけど、その夢は諦めて……新しい道に進もうって決めたんだ」

 

「……本当は辞めたくないんじゃないですか?」

 

「えっ……」

 

するとうたがくりきゅうたへと問いかけるように質問する。それを聞いてくりきゅうたも驚いたような顔つきになった。そして、彼の目線がうたの方を向く。

 

「だってお餅つくの凄く楽しそうだったし!」

 

「ちゃんこ鍋を作ってくれて」

 

「歌もお相撲の歌でした!」

 

「ほら、お相撲の事ばかり!」

 

「私も、相撲を諦めた人が言うことにしてはどこか未練みたいな物も感じられます。だから、本当ならまだやりたいんじゃないんですか?」

 

うた達女子四人は口々にくりきゅうたがまだ相撲をやりたいという気持ちが残っているのだと指摘。力もうた達が言ってくれるそんな言葉に後押しされて更に便乗する。

 

「そうですよ!だから……諦めるなんて言わないで」

 

「だけど……仕方ない。もう……無理なんだ」

 

しかし、やはりくりきゅうたにとって脚の怪我は致命的過ぎる。彼はまるで辞めたくない気持ちを無理に押し殺すかのように自分はもう戦えないと言い聞かせるような形で相撲を継続するのを拒否。そのまま立ち上がるが、影人がくりきゅうたの前に立つ。

 

「カゲ先輩……」

 

「君……」

 

「それはくりきゅうたさんの本心ですか?」

 

「ッ……本心だよ。僕のステージはもう土俵じゃ無いんだ」

 

くりきゅうたは影人からの問いに首を横に振ると相撲を続けるのを拒絶。しかし、影人はまだくりきゅうたに迷いがあると感じて彼の前から退かなかった。

 

「……だったら、そうやって迷いのある状態で。未練のある状態で辞めるなんてしないでください」

 

「ッ、でも……」

 

「もし未練を残したまま辞めたのならきっと後々後悔しますよ」

 

くりきゅうたは影人からの強い視線を受けて図星を突かれたのか止まってしまう。

 

「勿論、くりきゅうたさんが真剣に悩んで相撲を辞めるという話ならきっと周りも納得はしてくれます。辛い事が影響してモチベーションが続かない状態でこれから先、相撲をやったとしても結局は長続きしないと思いますし」

 

「……」

 

「ただ、辞めるのなら辞めるなりにキッパリ相撲を捨てた方が良いですよ。そうしないと……後から後から後悔して心が押し潰されてしまいますから」

 

くりきゅうたは影人に言われてどうすれば良いのか気持ちがわからなくなってしまっていた。この様子を見るにくりきゅうたにはまだ相撲をやれるだけの気持ちがあったのだと見て取れる。それこそ、本心ではやりたいと言わんばかりに。

 

「じゃあ……じゃあ僕はどうすれば良いんだ。これから怪我が治ったとして、キラキラのお相撲さんになれない可能性が高いのに……」

 

うた達は改めて悩むくりきゅうたを見てどう声をかけて励ませば良いのかわからずに気不味い空気が流れる。すると影人が改めて告げた。

 

「……俺はキラキラの横綱……と言うよりは他人から見てキラキラしてる存在にくりきゅうたさんはもうなってると思いますよ」

 

「えっ……」

 

「確かに横綱という肩書きを重視するならそれは厳しいかもしれません。ただ、第三者がくりきゅうたさんの事を見た際にその人からキラキラした存在として見られたいという話なら俺は今の段階でも十分なのかなと」

 

それから影人の視線が一瞬だけ力の方を向く。それからくりきゅうたへと更に詰めの一言を話そうとしたそんな時だった。影人達のいる方に声がかかる。

 

「やぁ、随分と楽しそうな事をしてるね」

 

「アイドルプリキュア。久しぶりね」

 

「ッ、ジョギ!」

 

「スラッシューも……何で……」

 

そこにいたのは丁度タイミング悪く出てきてしまっていたスラッシュー、ジョギの二人だった。そのため影人達はすかさず臨戦態勢を構える。

 

「そんなの、真っ暗闇を探しに来たからに決まってるじゃないか」

 

「くっ……。真っ暗闇なんてここには無いよ!」

 

うたがそう言ってジョギへと反論するが、彼はそんなうたの近く……くりきゅうたから凄まじい闇が見えるのを視界に入れてしまう。

 

「ふーん。つまらない嘘吐くねぇ。そこにしっかりいるじゃん。良い真っ暗闇を持ってる奴」

 

「確かにそこのお相撲さんかしら。良い闇を持ってるわね」

 

「スラッシュー。いや、UtaKotoneのKotoneさん。もうこんな事は……」

 

「切音?ああ、私も少し前までその名前であなた達のカフェに潜入してたんだっけ。……それで?その名前で呼んだって私はあなた達に手加減する事は無いわよ」

 

影人はアイアイ島でスラッシューこと天城切音がUtaKotoneのKotoneであると知ったためにその名前に覚えがあるか確認の意味も込めて問いかけた。しかし、やはりスラッシューの中にその記憶は無い。いや、この調子だと消されていると言うべきだろう。

 

「そんな、Kotoneさん。あなたは……」

 

「待って、蒼風さん。多分今のままじゃどれだけ話しても無理だ」

 

ななもどうにかKotoneとしての記憶を思い出してもらおうと考える。しかし、影人は今のまま呼びかけを続けても無意味だという事でまずは目の前にいる障害……スラッシューとジョギをどうにかすべきと考える。

 

「ねーえ、そろそろやっても言いすか?」

 

「そうね。これ以上の会話は無駄になりそうだしやるならさっさとやりなさい」

 

スラッシューはそう言ってジョギへと指示。それを受けてジョギはタイミング良く真っ暗闇を出してしまったくりきゅうたをターゲットに。すると早速ダークランダーを召喚するための掛け声を言う。

 

「光の中にも闇がある。君の闇を……見せてごらん」

 

「うわぁあああっ!」

 

ジョギが指を鳴らすと同時にくりきゅうたの胸から漆黒のリボンが飛び出す。

 

「綺麗だね……呑まれると良い」

 

すかさずジョギがそう告げると結ばれていたリボンは勝手に解かれてしまい、くりきゅうたの体がリボンから発生した闇のエネルギーで包まれていく。それからジョギは赤い色の水晶を出すと二つを合わせて地面に叩きつける。

 

「さぁ、おいで!ダークランダー!」

 

「ダークランダー!」

 

これによりダークランダーが召喚。その姿は先程くりきゅうたがついていた餅を入れるための臼を模しており、武器として巨大な杵を構えていた。

 

「そんな……きゅうたさん……」

 

するとダークランダーが呼び出されてその中に閉じ込められた影響で力の顔つきは絶望感に染まりつつあった。そして、そうなれば当然闇も生まれてしまう。勿論スラッシューはそれを見逃さない。

 

「あら、その子もまた闇に染まりつつあるわね、」

 

「お、確かにそうですね。ダークランダーを召喚したら丁度良く真っ暗闇も出てきたじゃないですか。スラッシュー様」

 

「ええ。この闇……使わせてもらおうかしら」

 

「ッ、止めろ!スラッシュー!」

 

影人がスラッシューの動きに気がついて慌てて止めようとするがもう遅い。スラッシューは力の中にある闇を使ってしまう。

 

「あなたの闇……頂くわ」

 

スラッシューはキラキラを引き抜く時と同様に力の胸の中にある黒いリボンの所に直接ワームホームを生成。そのままリボンを掴むと引き抜いてしまう。

 

「うわぁああっ!?」

 

力の持っていた闇の黒いリボンがスラッシューの前に出てくるとそのままスラッシューは闇を解き放つ言葉を言い放つ。

 

「光を切り捨て、闇へと呑まれなさい」

 

そのまま黒いリボンが解かれてしまうと闇の中に力が閉じ込められてしまう。同時にスラッシューはダークランダー召喚用の赤い水晶を持ち、ここからは他の二人と同じようにダークランダーを呼び出す。

 

「現れるのです、ダークランダー!」

 

「ダークランダー!」

 

そこに降り立ったのは相撲で使う軍配の姿をしたダークランダーであり、まさかの二体のダークランダーが並び立つ事態に陥ってしまう。

 

「そんな、力君まで」

 

「スラッシュー……どうしてこんな酷い事……」

 

「そんな物、ダークイーネ様のために世界を真っ暗闇に染める。それ以外に理由なんて要らない!」

 

影人はそれを聞いてアイアイ島でUtakoから頼まれた事を思い出す。そして、目の前にいるスラッシューがUtakoのパートナーであるKotoneだと考えて決意を新たに固めた。

 

「Kotoneさん……あなたも含めて絶対に助け出す!」

 

「皆、行くよ!」

 

こうして、影人達は早速目の前にいるくりきゅうた、力、そしてスラッシューを助けるべく変身する事になる。

 

「「「「「「プリキュア!ライトアップ!」」」」」」

 

「「「キラキラ!ドレスチェンジ!」」」

 

「「キラキラ!ショータイム!」」

 

「キラキラ!ソウルリンク!」

 

「「「「「「YEAH♪」」」」」」

 

「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」

 

「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」

 

「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」

 

「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」

 

「キミと輝く、ハートの鼓動!繋がる魂、キュアソウルビート!」

 

「「「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」」」

 

こうして、アイドルプリキュアの六人が降り立つと同時にキッスが早速投げキッスを使用。

 

「お願い、チュッ!ハートガーデン!」

 

これによりハートガーデンを展開するとダークランダーごと自分達をその中に移動させる事になる。




また次回もお楽しみに。
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