キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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くりきゅうたの新たなスタート

少し時間を遡り、ソウルビートが軍配ダークランダーの方に向かった頃。また記憶のフラッシュバックのせいで苦しむスラッシューにキュンキュンが話しかける。

 

「スラッシューさん……」

 

「……キュアキュンキュン。あなたも私の事を切音って言うわけ?もうその名前は文字通り捨ててるのに……」

 

「スラッシューさんは何でそんなに苦しそうにしながら戦うんですか……」

 

「そんな物……世界を真っ暗闇に染める以外に理由なんて……」

 

スラッシューはやはりいつも通りの事を言う。それから彼女は記憶のフラッシュバックを振り切ると立ち上がった。

 

「……私達には無理してその使命に囚われてるようにしか見えないんですよ。本当の気持ちを隠して、全部封じ込めて……」

 

「煩い!私はダークイーネ様のために……世界から光を消すためにここにいる!」

 

スラッシューがその手に炎の剣を生成。その切っ先をキュンキュンへと向ける。そして、剣を突きつけられたキュンキュンはその剣に対してビビる事すら無かった。

 

「スラッシュー、ソウルビートから聞きました。あなたは昭和の伝説のアイドルでUtakoさんのパートナー……Kotoneさんだって」

 

「ッ……結局切音って、お前が気安くその名前を呼ぶなぁあああっ!」

 

スラッシューは怒りを露わにするように叫ぶと手にした炎の剣をキュンキュンへと振り下ろそうとする。しかし、彼女の剣はキュンキュンへと当たる直前で止まってしまう。

 

「……ッ……何で……何でなの!?」

 

スラッシューは何故かキュンキュンを攻撃する事ができず、困惑したような声を上げるとまた脳裏に過去の記憶が浮かぶ。

 

「やっぱりあなたは……優しいんですよ。どれだけ記憶が無くなって冷酷な感情を私達に見せても、結局仲間や周りを大切にする気持ちを見失ってなんかないんです!」

 

「くっ……舐めるな……舐めるな……私が本気を出せばお前なんて……うっ!?」

 

しかし、スラッシューはまたまた脳内のフラッシュバックに悩まされてその場に崩れ落ちてまう。そんな時だった。キュンキュンの頭にインカムが展開。同時にソウルビートの声が聞こえる。

 

『キュンキュン、ダークランダー一体を片付けた。今すぐズキューン達の方に来れるか?』

 

「!!わかりました。今行きます!」

 

ソウルビートからの連絡にキュンキュンは了承すると改めてスラッシューと向き合う。そんな彼女は悔しそうにキュンキュンを睨んでいた。

 

「そうは……させない……ううっ……」

 

「スラッシュー。今はまだ思い出せなくても、いつか私達の手で絶対にあなたの本当の記憶を思い出させます」

 

「何でそんな事……見てわかるでしょ。そんな事思い出したら苦しいだけなのに」

 

スラッシューは自分が記憶を思い出せば苦しい思いをしてしまうという事を引き合いに出してキュンキュンを思い留まらせようとする。しかし、そんな事でキュンキュンも他のプリキュア達もスラッシューを助けるのを諦めるわけがない。

 

「それでも、大切な思い出を忘れっぱなしでいる方がきっと辛いと思いますから」

 

「ッ……」

 

「失礼しますね」

 

キュンキュンはそう告げてさっさとその場から去っていく。そんな彼女をスラッシューはただ見送るだけしかできずに悔しそうに地面をドンと殴るのであった。

 

そして、残っていた臼のダークランダーの方もズキューンキッスが二人で上手く抑えている状態でありそこにソウルビート達が合流する。

 

「お待たせ!」

 

「皆、来てくれたんだ!」

 

「勿論だ」

 

「ダークランダー、一体浄化できたよ!」

 

「じゃあ後は……」

 

「このダークランダーを浄化するだけです!」

 

そして、最後に遅れてきたキュンキュンも到着。アイドルプリキュアが六人揃ったのを見てジョギは面倒そうな顔を見せる。

 

「あーあ、ここで六人全員揃っちゃったかぁ。スラッシュー様はまたいつもの不調だし……ここ最近不調で途中退場多くない?」

 

ジョギはもうアイドルプリキュアの勢いは止められない事を感じるとスラッシューのフォローへと動く事になる。

 

そして、この状況になってしまえばプリキュア側の必勝パターンに入る事ができるわけで。

 

「皆、行くよ!」

 

♪決め歌 キミとシンガリボン♪

 

「「「「「「感じてYou and I キズナリボン〜♪」」」」」」

 

六人が歌を歌い始めるとイントロに入り、キラキライトを持ちながらステージの上で動く。

 

「「「「「「クライマックスは私達!」」」」」」

 

そして、掛け声と共にキラキライトは光と共にキラッキランリボンバトンへと変化。その後、プリキュアステージリボンを装填。同時にダークランダーは技の効果で席へと強制着席。そのままイントロが終わり、六人は歌を歌う。

 

「「「「「「重なる想いの強さを歌に乗せて〜♪届けるに来たよ Sing For You 照らしてみせる〜♪溢れる思いを残らず伝えるんだ〜♪どんなときでもYou and I 〜♪私とキミを結ぶキズナシンガリボン〜♪……プリキュア!キラッキランフォーユー!」」」」」」

 

六人が歌いながらキラッキランリボンバトンを回しつつパフォーマンスをしていき、歌が終わると同時に技を発動。六人のシンボルマークを合わせた強力な浄化の光を解放し、虹の光の奔流がダークランダーへとぶつけられた。フィニッシュは六人での決めポーズである。

 

「「キラッキラッタ〜」」

 

これによりダークランダーは無事に浄化されるとくりきゅうたも助け出され、同時にキラルンリボンも生成。今回もズキューンがキラルンリボンを手にする事になる。

 

その後ハートガーデンが解除されると一同は元の世界に戻り、ジョギがスラッシューへと話しかけた。

 

「はぁ、結局こうなるのか。ま、でも暇つぶしくらいにはなったかな。……スラッシュー様、帰りますよ」

 

「煩い……ここまでコケにされて……私の信念を馬鹿にされて……黙って引き下がるなんて……」

 

「そんな事言ったってダークランダーは二体纏めてやられたんですし、今のあなたではこれ以上は戦えない。そんな当たり前の事くらい自分でわかってるはずですよ」

 

「くっ……。プリキュア、次こそは……」

 

スラッシューもこのやられっぱなしの屈辱のまま撤退する事はしたく無かったが、どちらにせよこのままではプリキュア相手にまともな抵抗すらできないためにジョギがスラッシューへと肩を貸す形で二人揃って撤退するのだった。

 

そしてダークランダーから浄化されたくりきゅうたと力が仰向けに倒れていると、先に浄化された力の方がくりきゅうたへと駆け寄っていく。

 

「あれ……力君?僕、どうしたんだろ?」

 

「きゅうたさん……良かった」

 

力が駆け寄った頃にはくりきゅうたの意識も戻っており、力も無事に目を覚ましたらくりきゅうたに安堵の顔を浮かべた。するとそこにうた達も来てくりきゅうたへと声をかける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「うん……。アイドルプリキュアのステージを観ていたような」

 

「まぁ、中の人的にも毎回ステージは観てるしな……」

 

「カゲ君それはメタ発言過ぎますよ?」

 

くりきゅうたはそう言いつつ未だに夢見心地だったが、同時に空へと伸ばした手に力が漲ってくるのを感じ取る。

 

「何だか力が湧いてきたぞ!」

 

そんな時、力が心配そうな顔つきで涙ぐみながら先程の話の続きをする事にした。

 

「……きゅうたさん。その……お相撲、辞めるなんて言わないで……」

 

力はくりきゅうたの事をもっと応援していたかった。自分にとってのヒーローがプレッシャーに負けていなくなってしまうのはとても寂しい気持ちでいっぱいになってしまうのだから。

 

するとくりきゅうたはそんな力を安心させるようにしゃがむと優しく話しかける。

 

「……力君。僕、お相撲続けるよ。怪我を治して、今までよりももっともっと稽古するよ」

 

「きゅうたさん、ありがと!」

 

くりきゅうたはアイドルプリキュアのライブをダークランダーの中にいたとはいえ聞いた。その光が彼に届き、絶望に染まっていた彼の心に希望の光を灯したのだろう。

 

そして、力が辞める発言を撤回してくれたくりきゅうたへとお礼を言うとくりきゅうた本人は首を横に振る。

 

「ううん、ありがとうを言うのは僕の方だよ。力君が、応援してくれる人がいるから頑張れる。もうお相撲を辞めるなんて言わないよ」

 

「ふふっ……うん!」

 

くりきゅうたからの言葉に力は嬉しそうな眼差しを向けると首を横に振って出てしまっていた涙を吹き飛ばし、笑顔になる。そして、その様子を影人達は近くから見守っていた。

 

「くりきゅうたさん、元気になって良かった」

 

「キラッキランランだな〜」

 

「応援してくれる人がいるから頑張れるね!」

 

「アイドルプリキュアと一緒プリ!」

 

「メロ!」

 

「これからもくりきゅうたさんには頑張って貰わないと」

 

勿論影人達の元に避難していた夢乃や田中も合流。プリルンとメロロンは自分達を知らない力の前で喋れるのがバレないように珍しく小声で話をしていた。

 

「力君に元気を貰って、アイドルプリキュアを応援して元気を貰って……。僕はキラキラな横綱を目指します!」

 

「頑張れくりきゅうた〜!」

 

「くりきゅうたさんのステージはやっぱり土俵ですね!」

 

それから最後にイメージとして全員が相撲の会場のような場所にいる事を想定し、くりきゅうたが土俵の上。影人達が観客席で彼を応援する想定でいるとくりきゅうたがその場で軽く四股踏みして構えを取る。

 

「はっけよーい……キラッキランラン〜!」

 

これからもくりきゅうたの挑戦は続く。彼が怪我を治した後にキラキラの横綱になれるのかどうかは……まだ誰も知らない。

 

場面が変わり、その日の夜。この日事務所の方に呼び出されていたレイは社長室に社長で自分の父親であるハジメと共にある二人の人物と向き合っていた。

 

「改めて私はParabolaのリーダー、藤代聖です。今日は以前のお話の答えを話しに来ました」

 

「ふふっ、答えを話す……。いや、その子を連れてきた時点で答えは話すまでも無いんじゃないのかな」

 

そこにいたのはグレー系の髪をショートヘアにして凛々しい顔立ちをした少女であった。そして、その子こそが前にレイが影人へと密かに話をしていた聖が連れて来ると言っていた子である。

 

「そうですね。では早速紹介しましょうか」

 

聖に促されて後ろに控えていた玲音が早速自己紹介の挨拶をするために聖より少し前に出てきた。

 

「近衛玲音です。ご存知だと思いますが聖さんの推薦で話を受ける事にしました。……よろしくお願いします」

 

玲音は落ち着いたような雰囲気で話をする。その時、ハジメの後ろに控えていたレイは玲音から何かを感じ取った。

 

「(玲音さん、この人の声……どこかで聞いた事あるような……)」

 

レイは玲音の声色から何かの既視感や親近感を感じている中で早速ハジメがそれに応えるように自己紹介で返す。

 

「この会社の社長。音崎ハジメだ。よろしく」

 

玲音はそれを受けて頭を下げると先程の位置に戻る。それから改めてハジメは話を切り出した。

 

「それで、改めて確認だけど私が持ち込んだ話……受けてもらえるという事で良いのかな?」

 

「はい。以前提案された話……受ける事にしましたよ。私達にも大きなメリットがあると思いましたから」

 

今回聖がハジメからの提案を受ける事になった一番の要因として、やはり活動のための資金を援助してもらえる事と大手の事務所がバックに付いた事による業界への強い売り込みが可能になるという点が大きい。

 

やはりParabola側もメンバーのほぼ全員が大学生。今この場にいる玲音に至ってはまだ高校生である点から資金面の解決はいずれやる必要があったわけで。一応他のスポンサーもいるにはいるが、まだハジメ程理解を示してくれているわけでは無さそうだった。

 

「それは私達側としても助かる。プロと遜色ならない能力を持った人がコーチをしてくれるのならこちらで進めているアカペラ企画をより盤石にできるからね」

 

「……まぁ、私もあの子達の合わせ練習は見ましたけど……まだまだ拙いですね」

 

「君達基準で見ればそうなるだろうと思ったよ」

 

聖はどうやら影人達がアカペラをやる様子を映像として見た様子であり、初手から手厳しい評価を下す。

 

「大学生と小中学生のアカペラを比べる事自体は確かに間違いだとは思う。だけど、それ以前に彼女達はアイドルプリキュアや配信者ドリーム・アイとしてアカペラをやるのでしょう?」

 

「そうだな」

 

「……だとしたらまだまだ伸ばさないと話にすらならないね」

 

聖の言い方はかなりキツかったが、実際言ってる事は本当だ。もし影人達が中学生アカペラバンドとしてやるのなら今の能力でも十分だろう。しかし、アイドルプリキュアという世間一般的には高校生〜20代前半という年齢の名目でアカペラを出すのなら少なくともそのレベルには達しないと話にならない。

 

「まぁ、だからって私達が直接教える事はしないけど。私達もそこまで暇じゃ無いからね」

 

「ふふっ、わかってるよ。だから玲音君を指導員として力を貸してくれるという約束にしたんだ」

 

「………」

 

玲音はその言葉に僅かに複雑そうな顔を見せていた。それはまるで、今回の件が自分で決めた事では無く他人から無理矢理押し付けられたようにも見えてしまう。

 

レイは彼女のそんな複雑な気持ちに気がついたのか心配な顔つきになる。そんな二人の気持ちはさておき、玲音の指導が入るアカペラ練習の段取りが立っていく。そして、話し合いは最後の確認という所にまで進んだ。

 

「それじゃあ、この日はよろしくね……玲音」

 

「……はい」

 

レイは聖から言われて玲音が返した返事に多少の暗い感情が入っている事に気がついて話しかけようとする。しかし、今この話を持ち出せば確実に空気は悪くなる。折角話が纏まってきているのだ。ここで話を変に拗らせるわけにはいかない。

 

「(………詳しい話は後でするか。アカペラ練習には指導員として来てもらえるし、その時にでもだな)」

 

こうして、この日の話し合いは終了。アカペラ練習を次の段階に進めるため、Parabolaに入る予定の人からの指導を受けるという話の詳しい日程が確定するのだった。




また次回もお楽しみに。
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