キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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近衛玲音とのアカペラ練習

くりきゅうたの件が解決した翌週の土曜日。影人達はキラキランドの出張所へと向かっていた。理由はまた動画のためのアカペラ練習があるからである。

 

「今日、私達の練習のための新しい講師さんが来るって楽しみだね、お兄ちゃん!」

 

「ああ……」

 

「む、ちょっとお兄ちゃん顔固いよ?」

 

この日が丁度Parabolaのメンバーである玲音が来る日なのだが、楽しそうにする夢乃に対して影人の雰囲気は緊張した物だった。

 

「いや、その講師がプロを目指してる系の人なんだよ。山上さん達も実力は高いけどどちらかといえばエンジョイ勢寄りだからな」

 

影人の講師である山上達は確かに能力があって講師ができるだけの実力ははある。何しろアカペラ大会の本戦に出られるくらいなのだから。しかし、Parabolaというグループは本戦に出た上で優勝を狙えるくらいのチーム。

 

そう考えると今回の講師は新人とは言え、少なくとも山上達よりも上手いと思った方が良いだろう。

 

「ふーん。だけど、私達どんどん上手くなってるって言われたし大丈夫だよきっと!」

 

「きっと……かぁ」

 

影人はどこか不安を抱きつつ夢乃と共に出張所へと到着。それから少しして来ていなかったメンバーも到着すると出張所に影人、うた、なな、こころ、ぷりん、めろん、レイ、夢乃。そしてマネージャーの田中、姫野がいた。ちなみにカッティンとザックリンの二人はプリキュアプリティストアでの勤務があるためにここにはいない。

 

「これで全員揃ったな」

 

「そうだね!講師の人、どんな人なのかな〜。今から楽しみだよ!」

 

「そうですよねうた先輩!」

 

「咲良さんもウキウキなんだな……」

 

影人は先程夢乃に指摘したばかりなのにうたも同じようにワクワクしている様子を見て苦笑いを浮かべる。

 

「確かレイ君の話だと高校生って事だよね」

 

「高校生なのにプロと同じくらい上手いなんて凄い事ですよ。私も少し緊張してきました……」

 

「えー?私は平気だよ!」

 

「ぷりんの場合は楽観視し過ぎな気がするけどな?」

 

「え?そうなの?」

 

このようにメンバーごとで気持ちは様々であり、講師が来るのを待つ。そしてレイの元に田中が来ると彼は頷く。

 

「皆、講師の方が来たから整列。俺がここの部屋まで連れてくるから」

 

それを最後にレイは玲音を迎えに部屋から出ていく。影人達はレイが戻ってくるまでの間に玲音が来ても大丈夫なように並んで待機。

 

それからレイは待機室で待っていた玲音の元に移動すると彼女のいる部屋をノックした。

 

「入ってもよろしいでしょうか?」

 

「どうぞ」

 

部屋の戸を開けるとそこには玲音が準備万端な様子で用意してあった椅子に腰掛けており、彼女がレイを見ると少し驚いたような顔を見せる。

 

「君はあの時の……もしかしてハジメさんの息子さんの……」

 

「改めて音崎レイです。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ。近衛玲音。よろしく」

 

その話し方を見てレイはやはり何かが引っかかった。今の玲音の話し方は前と比べると明るめであり、少なくとも前に感じたような暗い感情は無いようにも思えた。そんな時、玲音はレイへと質問を投げてくる。

 

「……どうしたの?いきなり気難しそうな顔して」

 

「え?ああ、ちょっと考え事です」

 

すると玲音はレイからの答えを聞いて何かを思ったのか、その後更に続けてきた。

 

「ふーん。……もしかしてそれってこの前の私の事?」

 

「えっ……」

 

「やっぱり。……あれはあまり気にしなくて良いよ」

 

玲音はレイが何で難しい顔をしていたのか。何となく察していたようであり、彼女からの指摘を受けてレイは少し驚いたような顔を見せるがすぐに元の平常心を戻した。

 

「聖さんから色々言われるのには慣れてるし。……それに、私自身の意思でここに教えに来たいって思ったのは本当の事。だから大丈夫。それに、君達に教えられるのは凄い楽しみにしてるからさ」

 

玲音はそう言ってレイの隣を歩いて行くと出口の扉に手をかける。それを見てレイは一旦この事への言及はしないようにしてまずはアカペラ指導の方に集中するべきだと切り替えるのだった。

 

それから改めて玲音を影人達の前に連れて行くと早速玲音が挨拶をする事になる。

 

「初めまして。今日講師を務める事になった手鞠沢高校の二年、近衛玲音。私の後輩達からはレイレイ先輩って言われる事が多いし、玲音だとそこにいる音崎君と名前が被るからレイレイの方にしてくれると嬉しいかな」

 

『よろしくお願いします』

 

玲音からの挨拶を終えると早速アカペラ指導に入る……の前に影人達は思った事があるのか口々に呟き始めた。

 

「レイレイ先輩カッコ良い……」

 

「凄く女子からモテそうです!」

 

「そうだね。自分で言うのもなんだけど、私は結構モテるよ。女子からラブレター受け取った時もあったし」

 

「典型的なイケメン女子ってやつね……」

 

玲音は女子の中では中性的な見た目をしており、元々の容姿端麗さに加えて文武両道で何でもこなす事ができる点等から彼女の通う高校でも女子人気が高い。

 

「それに、何だかうたちゃんと似たような雰囲気を感じる」

 

「えっ、私!?」

 

うたはまさか自分が玲音と似た雰囲気を感じると言われるとは思っておらず。そのため驚きの声を上げる。

 

「それ、俺も思ったんだよなぁ……」

 

「ふふっ、うたと言えば……私の後輩にも嬉歌(うた)って名前の子がいてね。こっちの意味でも親近感が湧くんだよね」

 

「うええっ!?え?え?」

 

うたは更に玲音の後輩にいる自分と同名の後輩に唖然としてしまった。そして、そんなうたの反応を見てめろんや夢乃が二人で話す。

 

「ちょっと、大分ややこしい事になってない?」

 

「あはは、メロちゃんもそう思うよね……。それに、うた先輩とレイレイ先輩。雰囲気は全然違うのに何でここまで近い何かを感じるんだろ」

 

「ええ、そのせいで私も混乱してきたわ」

 

そして玲音はそんなめろんを見てから何かを感じつつ再度特大の爆弾を投下する事になる。

 

「あー、二人で私とうたちゃんの話をしてる所悪いんだけど……めろんちゃんだっけ。あなたと親近感を感じる子もいるんだよね、うちの後輩に」

 

「……は?」

 

「本当に!?めろんと似てる子と知り合いなんだ!」

 

めろんと似ていると言われてぷりんが興味津々に食いつくと玲音は少しだけ苦笑いを浮かべた。

 

「でも似てるって言っても声に親近感を感じるってだけで性格は全然違うよ」

 

「そうやって言われたら余計に気になるわね。どんな人なの?」

 

「うーん、めろんちゃんと同じなんだけどその子もボイパ担当で。名前はウルルって言うんだけど……あ、ウルルは渾名だから本名は閏か。その子、金髪で動画配信をやってるんだよね」

 

玲音がそう言うとめろんが凍りつく。以前影人から聞いた自分と声の雰囲気が似ているアニメキャラを影人に言われた際、彼から出てきたアニメキャラは割と癖があったためにどうしてもその記憶が出てしまうのだ。

 

「そ、それってもしかして変な子じゃないよね?」

 

「ううん。変な子では無いよ。練習は真面目にやってくれるし、最近はもっとボイパを上手くなるためにベースの子と一緒に頑張ってる。配信で上げてる動画の中にはうちのアカペラ部の動画もあるし、この後の練習の合間にでも観ようか」

 

「レイレイ先輩のアカペラ活動……!」

 

「今から観るのが楽しみだね!」

 

「それじゃあ、良い加減指導の方を始めようか。時間は有限だしね」

 

こうして、そこそこ長かったもののようやく前置きが終わり本題であるアカペラ練習に入るという流れになった。

 

「まずは基本の発声練習。それから最初に一回合わせてみよっか。私も一応どのくらいの物かは動画として見させて貰っているけど実物を見た方がわかりやすいからね」

 

『はい!』

 

影人達は玲音からの指示通りに発声練習をしてからすぐに一度目の合わせをする事に。それから玲音はそれを聴きつつ考える。

 

「……今一回聴いてみて思った事なんだけど、やっぱり全員のリズムがあっているようで微妙にバラバラだね」

 

『えっ?』

 

玲音からの指摘を受けて影人達は唖然とした顔になる。そしてこれは影人もわかっていない問題だった。

 

「特に影人君とめろんちゃんかな。本来ならアカペラにおいてかなり重要な役割であるリズムキープの二人がほんの少しだけ微妙に合ってない」

 

「そんな、私が影人と合って無いって……」

 

「……まぁ、確かにアカペラを知らない人が聞いたら誤差の内かもしれないんだけどね。だけど、アカペラを知ってる人やその手のプロが見たらその多少の誤差が気持ち悪いって人もいるんだ」

 

玲音からの言葉にめろんは受け入れられないような顔になっていたものの、影人は何となく現在の自分達の立ち位置を聞いてある意味納得していた節があった。

 

「なるほど。という事は俺達二人に釣られて……」

 

「そうだね。他の五人もバラバラになってる。勿論周りから見たら綺麗に揃っているようには見えてるからバラバラとは感じにくいかもそれないけどね」

 

「アカペラ……奥が深いです。私達、ずっとピッタリ合ってると思ってたので……」

 

こころは悔しそうな声色でそう呟くと他の五人も同じような気持ちだった。

 

「ここからは個別の指摘になるんだけど。ぷりんちゃんは前々から言われてる通り全体的に遅い」

 

「えー、でも私だって全力で……」

 

「ちょっ、ぷりる……じゃなくてぷりん、指摘なんだから」

 

影人は思わずプリルンと言おうとしてしまったが、玲音はぷりんが妖精だと知らない側の人間だと思ったために慌てて訂正。しかし玲音はあまり気にして無い様子で。

 

「ああ、あと言い忘れてたけど私はぷりんちゃんとめろんちゃんの正体については知ってるよ。だからいつも通りで大丈夫」

 

「えっ、でも驚かなかったんですか?」

 

「ふふっ、そりゃあ最初はビックリしたけどね。だけど案外動画で実物を見たら慣れたって言えば良いのかな」

 

玲音の言葉に一同は唖然とする。普通動いているプリルンやメロロンを見たり知ったりしたら何かしらリアクションしそうな物なのだが、事前情報があったとしてもこの順応の早さには驚かざるを得なかった。

 

「それで、話を戻すけど。ぷりんちゃんのスピードに合わせようとしてるせいかめろんちゃんもボイパとしては若干遅めになってる。ただ、影人君はあくまで通常速でやろうとしてるからまずここで微妙に噛み合ってないんだ」

 

「もしかしてお姉様に合わせてるのが間違いなの?」

 

めろんはリズムの中で重要な自分が一個人に合わせている行為が間違っているのかもしれないと感じると玲音へと問いかける。しかし、彼女は首を横に振った。

 

「それは正解でもあって間違いでもあるんだよね」

 

『えっ?』

 

玲音の答えを聞いて一同はまた疑問符を抱く。普通の音楽において一人だけ遅いや一人だけ速いは確実に間違いとなる。だが、アカペラにおいてはこの限りでは無い。

 

「そもそも、アカペラって元となる音楽が無いからリズムとかも全部自分達で決めないといけない。音だって厳密に同じ音を毎回出すのは無理でしょ?」

 

「そうですけど……」

 

「まだ君達はそこまで無理に意識しなくても良いよ。確かにプロレベルに近づけないといけないのはそうなんだけど、まだ君達はやり始めだし中学生ばかりなんだからさ。だから大切なのは心を重ねる事。例えば間違ったリズムや音だったとしても全員がハモりを作り出せばそれは歌の中では正解となる」

 

「確かに、一人二人が正しい速度……正しいリズムで歌っていてもそれが他の人からズレて浮いてしまえばそれはハモりにはならない」

 

「ただし……プロに近づけば近づく程に厳しくなるのも確かだけどね」

 

プロレベルとなると正しいリズム、正しい音、全てを完璧にした上で声を重ねて綺麗なハモりとして完成させてくる。例を挙げるとParabolaの歌がそれに当たるだろう。そして、今の影人達が目指さないといけない地点としてあるのはどちらかと言えばこっちの完璧コースである。

 

「普通の中学生アカペラならまだもうちょっとハードルを低くするはできたけど、君達はアイドルプリキュアというプロチームを背負っているんだから……」

 

「当然求められるレベルは上がってしまうって事ですね」

 

「そう。……ここからが本当の戦いだよ。私ができる限りあなた達をParabolaのようなプロの仕上がりにする。勿論山上さん達の教え方と多少変わってしまうかもしれないけど……君達がやる気でいる限り、私は最後まで見捨てないって約束する」

 

玲音の目は本気であり、影人達もそんな彼女の気持ちに応えるべくアカペラの練習に気持ちを入れる事になるのだった。

 

そんな様子をレイが一人見ているとそこに父親であるハジメが姿を現し、彼へと話しかける。

 

「やぁ。調子はどうかな?」

 

「……順調ですよ。皆頑張ってくれている」

 

「それは何より。それにしても難しいものだね。アカペラを純粋に楽しむのと、プロとして真剣にやるのを両立させるというのは」

 

「……それは山上さん達のやり方が間違ってたって事ですか?」

 

レイは今回わざわざParabolaから玲音を呼ぶ事にした際に本来の講師である山上達の気持ちを蔑ろにしたのかもしれないと思ってハジメへと問う。

 

「……それは違うかな。確かに彼等も手は尽くしてくれていた。あと少しで他人に聴かせられるレベルに達したのも確か。だけど、玲音君のようなプロレベルの子を講師にしたいと言い出したのも山上君達の方だ」

 

「そうなんですね……なら、これは必要な事……という認識で良いんですか?」

 

「そういう事さ。ま、私としても良い刺激になると思うよ。山上君達以上にアカペラに真剣に取り組もうとしている人達の意見を聞く事はね」

 

そう言ってハジメはこの後の予定があるのかその場を去っていく。そして、レイは影人達がこの機会を上手く生かして成長してくれる事を願うのだった。




また次回もお楽しみに。
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