キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
玲音とのアカペラ練習が進み、ひとまず影人達は休憩時間に入った。そんな中でうた、なな、こころ、ぷりん、めろん、夢乃の六人は玲音から紹介されて彼女と同じ部活の後輩でめろんと声の雰囲気が似ている子の動画を観ることになる。
「あ、これだね。ウルルンTV」
「あの、名前がまんまあの有名動画配信者過ぎません?」
このウルルンこと宮崎閏。彼女は某有名動画配信者のように動画で一発当てる為にまずは名前から彼に寄せてるそうで。
「まぁまぁ、もしかすると中身は普通の動画かもしれないよ?」
「これですかね。レイレイ先輩達の部活動の動画」
それからうた達は玲音の所属するアカペラ部の部活動の練習風景を観る事になった。勿論、玲音もこちらでは実際に歌ってるわけで。
「綺麗な歌声!」
「うん。凄くキラッキランラン〜♪」
「……」
すると夢乃は玲音の歌声を聴いて違和感を覚えた。それは普段から配信者として歌を歌ったりしているからこそ気がついた要素である。
「……レイレイ先輩、もしかして……本気でやってない?」
「えっ、夢乃ちゃんどういう事?」
ななも夢乃の呟きに何かを感じたのか彼女へと問いかけた。その為夢乃もその違和感を口にする事に。
「い、いや……何となくなんですけどね。レイレイ先輩、周りに合わせてるような気がするって言えば良いのかな」
「夢乃ちゃん、周りをよく見てる……。こういう所は影人君に似てるのかな」
ただ、夢乃にあるのは予感だけで確証は無い。その辺りはまだまだという事だろう。
するとうたは閏の動画を遡る中で気になる物を見つけた。そこにあったのは“天才的!?1000℃のメメントスをコーラに入れてみた”という字面だけ見たら割とヤバそうな事を言っている動画だった。
「これ……何だろ」
「もしかして音楽動画以外にも出してるのかな!?」
「でも、再生数見てくださいよ」
こころがそう言うとそこには音楽動画よりも圧倒的に少ない再生数が表示されおり、しかも投稿順で見るとこれの方が古い。割とこういう事に鈍いうた達でも既に嫌な予感がぷんぷんしていた。
「どうする?」
「辞めておいた方が良いかも……」
「えー!?そんなの勿体無いよ!面白そうなのに!」
「ちょっ、お姉様!?」
うた達が顔を強張らせているとやはりここでもぷりんがいつもの好奇心を発動させて容赦無く再生のボタンを押してしまう。
「えーい!」
『あっ……』
一同が唖然とする中で動画が始まってしまう。すると閏がやはりどこぞの有名な男性配信者がやりそうな挨拶をするとやはり案の定動画のタイトル通りの事をやりだした。
「メントスとコーラを混ぜてメントスコーラにする?」
「いや、名前はそうなるかもだけど……実際は別物だよね」
「というか動機が1000℃に熱した鉄球をコーラに入れてる人とメントスをコーラに入れてる人がいるから両方やろうって……」
「………」
「そもそも1000℃のメントスなんて家で用意できる物なんですか?」
一応実際に販売されている商品にメントスコーラという物はあるため実現は可能……ではあるが、ハッキリ言ってこんな事を家でやって良い物では無い。それどころか一歩間違えたら大惨事待った無しである。
そのためうた、なな、こころ、夢乃は不安がっており、めろんも無言だったが明らかに呆れ果てた様子だった。
「ねぇ、夢乃。本当にこの子が私と同じ声質なのよね?」
「あはは……でも年齢的にはレイレイ先輩の部活の後輩で高1だから先輩だよ?メロちゃん」
「うぅ、正直この人を先輩って呼ぶの抵抗感あるんだけど……」
「わくわく……わくわく……」
尚、ぷりんだけはいつも通りのマイペースさである。本当に彼女は良い意味でも悪い意味でもそこはブレない。それから早速メントスをバーナーで炙って1000℃まで上げる事になった。ちなみにバーナーの火力は物にもよるが、業務用で2000℃を超える物もあるので理論上1000℃には上げられる。ただし、だからって大惨事のリスクが消えるはずも無く……。
『臭っ!?あ、臭い!変な煙出てきた!?目に染みるぅう!?臭い!痛い臭いぃい!』
「ああ……」
「やっぱりこうなっちゃうよね……」
「1000℃に熱するのも鉄球だったから可能なんですよ……。そもそも食べ物を粗末にしないでほしいです」
“コメェエエエ!!”
うた、なな、こころは案の定大惨事を起こした閏を観て呆れており、こころの近くに霊体のような姿で出てきていたキツネの妖精は食べ物を遊びに使った彼女への怒りを露わにしていた。
「……ねぇ、本当に何で私と声質が似てる子はこんな変人ばかりなの?」
「まぁまぁ落ち着いてメロちゃん……」
「あははっ!面白ーい!!」
「プリちゃんも何て事言ってるの!?」
めろんは閏へと不快感を示してしまっており、対照的にぷりんはこの大惨事に対して面白がる始末。結局これ以降、ぷりん以外の満場一致で閏の動画を観る際は部活の風景を映した音楽動画だけにしようという話になる。
そして、この場にいない影人とレイはと言うと……別室で休憩中の玲音の元に二人で来ており、二人は玲音の許可の上で部屋に入っていた。
「あ、影人君にレイ君。どうしたの?」
「……すみません、レイレイ先輩。少しだけお話しが。勿論練習の邪魔はしませんので時間が来たら終わりで大丈夫です」
「……うん。良いよ」
玲音は何となく自分の所にこの二人が来ると思っていたのか。案外すんなりと了承してくれた。
「それで話というのは?」
「レイレイ先輩、Parabolaにはまだ所属はしてないんですよね?」
「あはは……うん。まだ正式所属では無いよ。聖さんから勧誘を受けてる段階……って言ってももうしつこいくらいに言われてるけどね」
影人もレイもそれを聞いて苦笑いする。影人は兎も角、レイは聖を一度見ているために余計に彼女なら目的のために他人にどう思われようとも関係無く手段を選ばない人であると予想ができた。
「……それで、レイレイ先輩にはParabolaに行きたい意思はあるんですか?何だかこの前のレイレイ先輩を見てると、余計に無理矢理入れられてるんじゃないのかって」
「あー……」
「先程気にしないでと言われたのにすみません。やっぱりどうしても気になって」
それを聞いて玲音は少しだけ迷った後にこの二人はここではぐらかしてもきっと本心を引き出すまでは引き下がらないだろうと判断。素直に話す事にした。
「……私ね、迷ってるんだ」
「「迷ってる……」」
二人はそれを聞いて意外そうな顔を浮かべる。少なくとも二人視点だとレイレイがParabolaに入りたがらないと思っていたため意表を突かれたという事だろう。
「私には幼い頃からずっと一緒にいる幼馴染がいて。私にとってアカペラはその子とする物だと思ってやってきた。……だけど、私の部活の後輩達はさっきの夏休みの一件からどんどん変わろうとしてきている」
「それは、地雷を踏んでしまった子もアカペラガチ勢って子もですか?」
「うん。だけど私の幼馴染は……アイリは今の現状から変わりたく無いって言ってて」
影人達はそのアイリという子が何故変わりたく無いと言うのか、その理由を知らない。だが、影人達が変わる事を望んだようにアイリは今のままの自分が……この環境が好きなのだろう。
「私にとって、アイリの意見は絶対だと思ってて。でも、ミズキさんに今のアイリとの関係性が共依存って言われた時……私はそれを否定できなかった」
「つまりレイレイ先輩は、変わりたい側って事になるんですか?」
「……うん。だけど、Parabolaに入ったらきっと今の部活動は辞めざるを得ないと思う。聖さんはそういう人だから……」
玲音は自分がParabolaに行くのはそのアイリを裏切るのという行為ではないのかと考えている。だが、玲音にその気があってParabolaに行きたいと言うのならそれを無理に引き止める権利は誰にも無い。
「こんな感じかな。……私の話なんて聞いてもつまらなかったでしょ」
「いえ……前々から妙に辛い顔をしていた理由がわかりましたよ」
「そっか」
「……その上で一言だけ良いですか?」
影人はそう言って玲音へと問いかける。そして、いきなりそう言われた玲音は少し驚きつつも影人の方をしっかりと見た。
「ッ……うん。良いよ」
「レイレイ先輩がどんな選択をするかは先輩の自由です。ただ、俺は自分の気持ちをしっかりと伝えられればそのアイリさんも最後には受け入れてくれると思ってます。……だから、自分の信じた道を貫いてください」
「ッ……うん。多分これが解決するまでは時間がかかるけど、ちゃんと自分の気持ちに整理を付けて答えを出すよ。アイリや聖さんの事はまたその後で考えるね」
レイもそれを見てホッとしたような顔をする。今回の件、珍しく影人もレイも深く玲音の気持ちに触れようとしなかった。理由として、玲音の意思決定に自分達があまり関与してはいけないという事。そして何より、自分達ではこの複雑な人間関係をどうにかする手段が無いという事が挙げられる。
だから今回の影人達はこの件への深い関与を避けたとも見て取れた。もし仮に玲音がParabolaに行かない選択をしたとして、自分達ではParabolaの方まで責任を取れないからだ。今まで影人達が説得してきた人の殆どは当人の気持ちだけで解決したり、身近な人達だけで悩みの原因を取り除く事が可能だった。
しかし流石にParabolaの内部事情やこの場にいない玲音の幼馴染の事にまでは関与しきれない。そしてそんな中途半端な対応は逆に玲音にとって迷惑に繋がってしまうだろう。
「すみません、レイレイ先輩。こんな話を……」
「ううん、大丈夫。……寧ろ二人に話せて良かった。こういう事はアイリ本人や後輩には相談しづらいし……。もしまた私が迷ったら相談しても良いかな……中学生に相談しに行くってちょっと情けないけどね」
「俺達は大丈夫ですよ。それに、レイレイ先輩の中で解決できる話なら俺達に無理に話さなくて良いので。事情は今のである程度理解できましたし」
「うん、じゃあ練習に戻ろっか」
「はい!」
それから影人達は練習を再開するために休憩中のうた達の元に戻って行った。ちなみにそのタイミングで閏の件の話が終わって一緒に来た玲音共々影人達は気不味い思いをしたのは余談である。
それはさておき、それ以降影人達は時間が許す限りアカペラの練習に真剣に打ち込んだ。そして、玲音もそんな一生懸命な影人達に同じく練習に励んでいる自分の後輩達の事を思い浮かべる事になる。
「はい、じゃあ今日はここまでだね」
『お疲れ様でした!』
こうして、この日の指導は終わりを告げた。うた達が全力で練習して疲れたような顔つきをしつつも、やり切った達成感の方が強く。玲音は自分の指導でここまで頑張ってくれる影人達に感謝の気持ちだった。
「今日はありがとう」
「こちらこそ、教えてくれてありがとうございます!」
うたと玲音が微笑みながら握手を交わす中でこころが今日限りの指導だと思うと勿体無いと感じたのか……。玲音へと名残惜しそうに話しかける。
「レイレイ先輩、指導の方はもう来ないんですか?」
「うーん。またこれから何日か指導員として来るけど、今の所はまだ未定かな。少なくとも私にも学校やそこの部活で練習があるし……あったとしても土日のどっちかだけ。それに来れてもあと2〜3回が限度かな」
やはり玲音にも自分の部活がある関係上そこまで頻繁に来る事はできない。何しろアカペラは合わせ練習の回数の多さがどうしても必要になるためサボってばかりだとそれこそ玲音が足を引っ張りかねなくなってしまう。
「そうですか……」
「んー……あ、そうだ。ミズキさんから預かってた物。私がこの依頼を引き受ける代わりにって事で譲ってもらったんだ」
それから玲音が影人達に手渡したのは五枚のチケットだった。そしてそこには大学アカペラのコンサートで使える入場整理券である。
「これって……」
「来週の休みに大学の学園祭があって。そこでParabolaがアカペラライブをやるんだけど」
「あー、レイレイ先輩はそこに入るから」
つまり、玲音に今のParabolaを見せるための招待券のような物だ。そして、玲音が頼んだというのはそこに行くためのチケットである。
「人数分用意できなかったのが申し訳ないけど、ぷりんちゃんとめろんちゃんは最悪妖精になれるから大丈夫かなって。あとレイ君はこの日来れないらしいから……」
Parabolaは大学アカペラを知る者の中では有名なグループ。普通は事前予約しないとダメなのだが、今回は玲音の頼みという事と今回の件の交換条件という事で聖も許可を出したのである。勿論チケットは抽選結果発表前だったので割と滑り込みではあったが。
「あれ?そういえば座席指定は無いんですね」
「うん。今回は座席の指定は無くてフリーなんだ。とは言っても六人が纏まって座るってなると結構早く集まらないとだけどね……。それか当日お願いするか」
何にせよ、これで玲音と関わる機会が増えたのと自分達が目指すべき大学アカペラの最高峰を生で観れるのならこれ以上無いチャンスだ。影人達からは断る要素が無い。
「レイレイ先輩、ありがとうございます」
『ありがとうございます!』
「うん。それじゃあ、当日はよろしくね」
最後に影人達はスマホを持ってないプリメロ以外の全員が玲音との連絡先を交換。こうして影人達は玲音からの指導を貰うのと、近日開かれる大学アカペラライブに招待される事になるのだった。
今回でオリジナル回は一旦終わりとなり、次回からはまたアニメ34話という事で本編に戻ります。それではまた次回もお楽しみに。