キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
玲音からのアカペラ指導が入った翌日。喫茶グリッターではまたいつものようにうたとはもりが朝からお店の手伝いをしていた。
「いらっしゃいませ!蓮爺ちゃん」
「いつもの、で」
「いつもので!」
はもりは伝票を片手に蓮司からの注文を受けてそれを書いていく。するとはもりが蓮司へと話しかけた。
「そういえば蓮爺ちゃん、最近声がちょっと変わったよね」
「そうかな?ワシはいつも通りじゃよ」
「そうなんだけど……うーん」
はもりは蓮司の声が若干変わったような気がして首を傾げてしまう。……尚、メタ話をしてしまうとこの回からある事情があって蓮司の中の人が変わってしまっているのだが……それについて触れるのはここまでにしよう。
「クリームソーダランチ、お待たせしました!」
「わぁ、美味しそう!」
うたの方も料理が乗ったトレーを今日も店を訪れていた絵真へと差し出す。そして興奮したように話しかけた。
「絵真さん、今度新刊出すんですよね!楽しみにしてます!」
「ありがとう、うたちゃん!」
どうやら絵真は前に発売開始していた漫画の新刊が出るとの事で。愛読者であるうたは彼女へと応援のメッセージを送りたかったらしい。
すると影人、夢乃がグリッターの扉を開けて入ってくる。その後ろには両親である魁斗、理沙の姿もいた。
「いらっしゃいま……あっ!夢乃ちゃん!」
「おはよ、はもりちゃん」
夢乃がはもりへと挨拶しているとうたも嬉しそうな顔で影人達への接客を始めた。
「影人君達もいらっしゃいませ!」
「ああ。ここで朝食を済ませようと思ってさ。うちの両親も揃ったし」
「あー、そういえば影人君の家って二人が揃うタイミングが限られちゃうもんね」
影人の両親である魁斗も理沙も何だかんだで二人揃うというパターンが少ない。大体はどちらかがいないか、下手したら両方いないと言う事もあり得る。
「うたちゃん、はもりちゃん。改めていつも影人と夢乃の二人と仲良くしてくれてありがとうね」
「うん!」
「ささ、四名様。こちらの席へどうぞ!」
そのままの流れで影人達が席へと案内されて座る。それからうたからメニューを手渡されると四人は早速それを見る事になった。するとうたが影人へと質問する。
「そういえば、まだ聞いてなかったけど影人君の両親ってどんな仕事をしてるの?」
「父さん母さんの仕事?」
「私はね、エステシャンをしてるの」
「エステシャン!?」
理沙がまさかのエステシャンを仕事にしていると聞いて驚いたような声を上げた。
「まぁ、咲良さんは知らなくても仕方ないよな。……うちの母さんはその界隈では割と有名なんだよ」
「えっ……」
「うん!お母さん、個別指名が沢山入るくらいの人気エステシャンでね。接客されたお客さんが皆幸せそうな顔をして帰る事からヒーリングプリンセスの二つ名があるんだって」
「もう、夢乃ってばその二つ名をここで出さないでよ……」
本人はその二つ名に少し恥ずかしそうだった。何しろもう彼女も中学生くらいの二人の子供がいるし、年齢的にももうそこまで若く無い。いつまでもプリンセス呼びされるのは色々と恥ずかしいのだろう。
「へぇ……」
「理沙さん、この前はありがとうございます!」
「えっ、もしかしてお母さんも……」
「ええ。理沙さんのおかげで体が綿毛のように軽くなってね。本当に凄い人よ」
そして、うたの母親の音も理沙にマッサージをしてもらったようで……。その際は疲れた体が一気に全回復……どころか若返ったかのように軽くなったらしい。
「ありがとうございます。また必要だったら言ってくださいね」
「キラッキランランだね。それで、お父さんの方は?」
「父さんはシステムコンサルタントだよ」
「しすてむ……こんさるたんと?」
影人からの言葉にうたは上手く理解できてないのか唖然としてしまう。そのため魁斗が自ら補足説明をする。
「要するに、企業のITシステムの課題に対して解決策を提案して実行する専門家って言えば良いのかな」
「ちなみに、システムコンサルタントになるには専門的な資格が幾つもいる。その中には合格率が20%に満たないものもあるな」
「うえっ!?つまり超頭良いって事!?」
前に理沙が中々魁斗相手に告白できなかった事を姫野に対して話をした際に彼の勉強を邪魔するからと気にしていたが……それは彼自身が当時からIT技術者としてのスキルを磨いてきたからである。
そして同時にうたはこのトンデモ両親から黒霧兄妹の優秀さの理由の一端を見る事になるのだった。
「そろそろ注文良いかな?」
「えっ……あ、はい!」
こうして、うたはそんな話をしている間に影人達が頼む物を決めたために慌てた様子で注文を受けるのだった。こうして、黒霧一家がグリッターで朝食を摂っているとうたの父親である和が声を上げる。
「うた、ちょっとこっち手伝ってくれ」
「はーい!」
「はもりも手伝う!」
このタイミングで和に呼ばれたうたや手伝いに行ったはもりの二人が厨房裏に入るとそこでは和が何かを探していた。
「超特大ギガ盛り専用のお皿……確かこの辺りにしまっていたはずなんだけど……」
「滅多に注文する人いないもんね」
うたの言い分は最もである。恐らくこの街の住民でそれを注文するとすればこの前のくりきゅうたぐらいである。そもそも超特大ギガ盛りなんてサイズがある時点で色々とツッコミ所満載なのだが……それはさておこう。
「あ、あった!」
「お。ありがとうな、うた」
するとうたが無事に皿を見つけたようで。棚の中に入っていたかなり大きめな皿を取り出していると後ろでそれを見ていたはもりが何かに気がつく。
それは探す際に色々出していた食器等の物の中に何故か置いてあり、これだけ古びているために余計に気になって声を上げる。
「うん?……ねぇ、これ何?」
「お、懐かしいな。グリッター開店当初の古いメニューだよ」
すると和がその古びた物を見るとその正体について解説。そして彼がメニューと言う通り、開けるとそこには様々な料理の名前や値段がかいてあった。
「……あれ。ねぇ、これは?」
「……何々……うん?」
うたは妹であるはもりからの指摘を受けてその場所を見ると思わず目を見開く。そこに書いてあったのは何かのメニューであった。
「お……グ?」
「どうして消してあるの?」
しかし何故かそのメニュー名には横棒があって消されており、今明確にわかるのは頭文字が“お”末尾が“グ”という部分だけ。そのため二人共このメニューが何なのかわからずに困惑する。そして、開店当初からあるとの事で創業者の和なら知ってるだろうと質問した。
「あぁー……それは……」
「ちょっと、ダメよお父さん」
和がそれについて答えようとすると厨房からお店の方に繋がる場所にあるのれんをかき分ける形で姿を現したうた達の母親、音の言葉で言わないように口止めされる。
「へ?……ああ……そ、そうだな」
「ええっ!?何、何!?」
和は音からそう言われると消した理由を思い出し、慌ててそれに同意。勿論父親に思わせぶりな反応をされてからこうやってしらばっくれられると娘であるうたやはもりは気になってしまう。だが、だからと言って和や音が口を割ることは無いわけで。
「何でも無いよ。……というか、忘れちゃったなぁ」
「えぇ……」
「うーん、何だろう?」
「私も忘れちゃったかしら〜。一体何だったんでしょうねぇ、ほほほほほ」
「はははは、はは、はは、さらっ」
そんな風に適当にあしらうかのようにその場からいなくなるうた達の両親。その様子にうたもはもりも怪しんでしまう。むしろ怪しまない方が無理な話だ。
「何あれ……」
「怪しい……」
それから少しして。うたとはもりがお手伝いを終えるとグリッターに来ていた影人や夢乃と共にうたが居住区の二階へと移動。
そしてこの日も集まる事を約束していたなな達と咲良家にあるうたの部屋で合流する事に。その際に集まったのは影人、うた、なな、こころ、プリルン、メロロン、夢乃の七人。レイは来てなかったが、彼はいつもの家の事情で来れないとの事でこのメンバーで話をする事になった。
『うーん……』
「昔のグリッターのメニューにある消されてしまったメニューか。確かに興味深い話題だな」
勿論話題はグリッターにあった初期のメニュー表とその中にある塗り潰された謎のメニューだ。ただ、影人達がどれだけ考えても未だにその答えに辿り着く事はできていない。
「“お”で始まって、“グ”で終わるメニュー……」
「試しに幾つか出してみようよ」
「そうですね」
「え?」
影人が何故かメニューの予想大会をするとの事で混乱しているとひとまず“お”で始まって“グ”で終わるメニューを考えてみる事にした。
「大盛りハンバーグでしょうか?」
「それはここにあるよ」
しかし、残念ながらこころの案は既にメニュー表に載っていた物だったためにうたに指摘されてしまう。次は妖精組である。
「わかったメロ!お魚とハムエッグ……メロ」
「おむすびとタコさんウインナーエッグも捨てがたいプリ」
「待って、それだったら喫茶店だしオムライス
「夢乃までそのネタに乗るなって……」
更に夢乃まで流れに乗って自分の意見を話していく。影人はそれに呆れてしまっていた。最後に残ったのはななからの意見なのだが……。
「面白い意見だけど、そんな普通のメニューならわざとらしく隠す必要は無いはず。それでも誤魔化し切った二人のコンビネーション、ベリーグー」
「……確かに!」
「蒼風さん、その感じだとまた前に見せた天然モードに入ってるな……あと咲良さんはそこに同意してどうするんだよ」
ななは最早食べ物ですら無い言葉で無理矢理“お”から始まって“グ”で終わるを達成する辺り、彼女が偶に入ってしまう天然化現象が起きてしまっていた。
「そういや、タコさんウインナーと言えばプリルン。ウインナーコーヒーには反応しないのか?」
「プリ?確かにウインナーは入ってるプリ。だけど、タコさんが無いから気が付かなかったプリ」
「あー、なるほどそういう事か。精神年齢的にもまだコーヒーのよりもジュース派だろうしな」
どうやらプリルンのタコさんウインナーセンサーが反応を示すのは名前にタコさんウインナーまで全て入ってる場合のみらしい。また、影人はプリルンの幼さからしてコーヒーの方にまでは興味が回らなさそうだとして納得する事になる。
「それにしても普通の料理じゃ無いと考えると……まさか門外不出の伝説のメニューでしょうか?それとも何かの暗号?」
「いや、流石にメニューに書く以上はお客様に提供する物だろ……ただ、料理とは限らないけど」
それを聞いて一同は疑問符を抱く。理由は勿論メニュー表に書いてあるのだから普通料理であるはずなのに何故料理とは限らないという話になるのかという点だ。
「影人君、それってどういう事?」
「さっき蒼風さんも言ってたけど、普通の料理ならこうやって後から消す必要性が無いというのと俺達は料理だけに縛られ過ぎてもっと別のサービス系とかの可能性を見落としてるのかなって」
「なるほど、……だけど料理じゃ無かったら何になるの?」
「それは……わからん」
影人が何かしらあるという思わせぶりな発言をしておいて結局キッパリとわからない宣言をしたことに一同はその場で滑ってしまう。
「カゲ先輩でもダメとなると……本当に何なのでしょうね。正に大いなる謎です」
「ゾナゾナゾナ!」
そんな時。うたの部屋の入り口から謎の掛け声を発しながら一人の少女……いや、名探偵が入ってくる。それと同時にプリメロはぬいぐるみのフリをするためにその場に落下して本物の人形のような状態となった。
「「コテン(プリ)(メロ)」」
「その謎、吾輩が解いてみせるゾナ!」
そしてそこにいたのはうたの妹ことはもりである。彼女は何故か探偵のようなインバネスコートを羽織り、鹿撃ち帽を被っていた。更に顔には目元を覆う仮面を付けて上で虫眼鏡を片手に手に持っており、いかにも名探偵のコスプレって感じである。
「へ?」
「何者ですか?」
「わかった!最近はもりがハマってる探偵アニメの……ズンドコ探偵だ!」
「あー、確か前にそのアニメが好きって話をしてたよね」
ななとこころは何故はもりが探偵衣装に身を包んだのか疑問だったが、身内であるうたやはもりから話を聞いていた夢乃はピンと来ていた。
「どんな事件もズンドコ解決!名探偵はもりん!」
そして、影人は決め台詞を言い放つはもりを見てその内心ではヒヤヒヤしてたのか……ホッとしたかのような顔になる。
「良かった。キュアっと解決だの、はなまる解決だの言い出さなくて……」
「へ?カゲ先輩は何言ってるんですか?」
「いや、何って……何となくさ。もしその二つを言い出したら俺……ライライサーって返さないといけなくなるからよ」
「らいら……何ですかそのよくわからない掛け声は」
こころはいきなり影人が変な事を言い出したためにまるで意味不明と言わんばかりの反応を見せる。ちなみに、影人のイメージでの中の人も……なので余計に不安に思ったのだろう。
そんな雑談はさておき、はもりはこの古いグリッターのメニューの謎を解き明かすべくズンドコ探偵のコスプレをしながらノリノリで捜査に乗り出す事になる。
「ズンドコ行くゾナ!相棒、夢乃ちゃん!」
「ワンワン!」
「え!?ちょっ、私も強制参加なのぉおおっ!?」
はもりは夢乃の手を引くと彼女をズンドコ探偵の相棒役として無理矢理連れて行く事に。また、きゅーたろうも散歩がてらはもりと一緒に行く事になるのだった。
そして、当然そんな事をすれば影人達は困惑するわけで。特にうたは妹であるはもりが断りも無く出かけるという事態に慌ててしまう。
「あーっ!?ちょっとちょっと!!」
こうして、名探偵はもりんによるグリッターのメニューの謎解きが始まる事になるのだった。
また次回もお楽しみに。