キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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夢と心の初会話 意気投合した二人

新しくはなみちタウンにオープンしたPretty_Holicのお店の前に到着したこころは影人へとこっちにまで来て欲しいと連絡を送る。そして、影人を待つ間に彼の妹の夢乃と会っていた。

 

「あの、こころ先輩。初めまして!黒霧影人の妹、黒霧夢乃です。兄がいつもお世話になってます」

 

「こ、こちらこそ。カゲ先輩の友達……の紫雨こころです……」

 

こころはこの時友達という表現をして僅かにモヤっとした気持ちがした。だがそのために言葉が詰まってしまうと夢乃に不審に思われると考える。しかし、夢乃は気にして無い様子だったためにこころは話を続けた。

 

「あの、夢乃さんって小学生ですよね?」

 

「はい。小学生六年生なのでこころ先輩の一つ下です」

 

こころは夢乃から先輩呼びされるのが少しむず痒い気持ちだった。何しろ自分の心がキュンキュンするぐらいにぞっこんになってる影人の妹である。むしろ自分の方が夢乃に対して敬語にならないといけないと考えている状態だったのだ。

 

「……あの、その歳でそんなに敬語って流暢になるのかなって……。年齢の割に話し方が大人っぽいと言いますか……」

 

「?それならこころ先輩も私に対して敬語で話してるじゃないですか。私は先輩から見たら歳下ですしタメ口にしても大丈夫ですよ」

 

「うっ……。それはそうなんですけど、その……私もこの口調は長々とやってて身についてるだけなので。夢乃さんみたいに小学六年の時点でこんなにゆとりを持った大人な対応ってできるのかなって……」

 

それを言われた夢乃は僅かにビクッとなる。夢乃は内心で慌てていた。夢乃はこころの話を兄から時折り聞いており、暗くなっていた影人の心が今のように明るい物へと変われたのはこころが側にいてくれたお陰だと思っている。

 

だからこそ彼女に対して失礼な態度を取ってはいけないと夢乃は気を張ってしまうとつい仕事モード……つまり彼女の裏の顔であるドリーム・アイに寄った話し方をしてしまったのだ。

 

「え、えっと……私が敬語に慣れてるのにはちょっと事情があって……。それで話し方を使い分けてるんです。今はラフじゃない真面目モードに入ってたと言いますか」

 

「そうなんですね。……私はきっと夢乃さんが沢山の努力をしてその話し方を身につけられたと思いますし、素直に尊敬します!」

 

「こころ先輩……。ありがとうございます!」

 

夢乃はドリーム・アイの事がこころにまでバレるのはあまり良くないと思って伏せていた。前にななに身バレしたばかりというのもあって前まで以上に身バレについては慎重になるべきだと思っているのだ。

 

夢乃のVtuberとしての姿であるドリーム・アイについて、自分と同年代やそれ以下である小学生ぐらい相手になら殆どバレるリスクは無い。だが、配信とかのメインターゲットである中学生以上〜二十代前半とかの若い年代が相手となると話し方をミスするだけでバレてしまうリスクが伴う。

 

幾らマイク越しで多少声質を変えていると言ってもネットの人々は僅かなヒントから正体を簡単に炙り出しては幼い少女さえも話のネタとして平気な顔で玩具にしてくる。そして、自分の学校で話す人は全員が全員安全というわけでは無い。

 

中学生とかになってクラスメイトにバレれば好奇心で正体を平気でネットに晒す者も出るだろう。そうなれば瞬く間にそれは世界中に伝播する。自分のアンチはそれを聞いて黙っていないだろうし、不特定多数の人から心の無い言葉も沢山投げかけられるだろう。

 

影人や両親、友達も巻き込むかもしれない。だからこそ夢乃は身バレに関してはかなり気を張っているのだ。

 

「(多分私が中学生ぐらいになったら下手したらクラスの友達とかが私の目の前でドリーム・アイの配信とか観るようになるんだろうなぁ……。取り敢えず、自分で身を守れない学生の間だけでもバレないように気をつけないと)」

 

まだ今の自分は成長途中で幼く、弱い。世間に身バレするような最悪の事態は避けなければならない。身バレしてしまえば最後、自分のような弱い存在はネット民の玩具にされて兄のように不特定多数の人から言葉でリンチにされて心をへし折られてしまうのだから。

 

「あ、そういえばこころ先輩。私の事はさん付けしなくて良いですよ。こころ先輩の方が歳上ですし。できれば私の事は呼び捨てにしてもらいたいです」

 

「いえいえ、そんな……。むしろカゲ先輩にはお世話になりっぱなしですし、その……どうしても呼び捨てにはできないと言いますか。そう言ってしまうのが気まずくて」

 

こころもこころで自分が夢中になっていて大好きな影人の妹である夢乃の前で失礼な事なんてできないと考えていた。更に彼女には割とブラコンな気質があるというのは影人から多少なりとも言われていたため、影人に寄る変な人だと感じられて敵視されたく無いと思って後輩相手なのに距離の詰め方を迷って余計な気を使ってしまう。

 

「私の方こそ先輩相手にそんな感じにさん付けされると調子が狂うと言いますか……その……呼び捨てがダメでしたらせめてちゃん付けにして貰いたいです」

 

「うぅ……わかりました。ゆ、夢乃……ちゃん。これからよろしくお願いします」

 

「はい。こころ先輩もよろしくお願いします!」

 

夢乃に頭を下げられたこころは内心で慌てる。こころは夢乃に頭を下げさせてる現状が何だかむず痒くて仕方ない。一応年齢は自分が上なのでその行為も向こうが敬語を使うのも間違ってないのだが、どうしても気まずいのだ。

 

「うぅ……面と向かってここまで慕われるのって意外と気まずいんですね……」

 

こころは影人も自分からグイグイ行かれて同じ気持ちだったのかなと考えてしまう。でも夢乃はニコニコと笑っていた。そして、その姿は影人やアイドルプリキュアを慕う自分と重なって見える。そのためこころは夢乃へと問いかけた。

 

「あっ、そういえば夢乃……ちゃんはアイドルプリキュアは知ってますか?」

 

「ッ!?今、アイドルプリキュアって言いました!?」

 

すると夢乃はいきなり興奮したような顔つきになるとアイドルプリキュアの話に食いつく。

 

「私、大好きなんです!私の一推しはキュアウインクで……こころ先輩は?」

 

「私も心キュンキュンするぐらい大好きです!むしろ、大好きが溢れて止まりません!私は箱推し派ですね!二人共私の心をキュンキュンさせてやまないんです!」

 

そんな風に二人がアイドルプリキュアの話に花を咲かせているとグリッターから出てきた影人が店の近くにまでやってくる。

 

「……おーい。待たせたな、こころ……あれ?夢乃もいるのか」

 

「お兄ちゃん!」

 

「カゲ先輩!」

 

「……なんか二人共凄い仲良くなってない?」

 

影人は隣に並んで親しい女友達が意気投合したような構図を見せている二人を見て困惑する。

 

「私達もうお友達ですよね!こころ先輩!」

 

「はい!夢乃ちゃんとお話ししてすっかり仲良くなれました!」

 

「……俺が来るまでの時間で何があった……?てか、二人共初対面だよな?」

 

影人はあっという間に仲良くなって親しい友達のように体を寄せ合う姿は見方を変えれば仲の良い従姉妹のようにも見える。

 

「……まぁ、仲良くなったのなら俺は大丈夫だけど」

 

影人としては夢乃がこころと会った際にこころへと敵対視の視線を向けないか不安だった。大好きな兄を女友達に取られるような事態になれば夢乃も黙っていないような気がしていたからである。

 

「そういや、結局夢乃は何でここに来たんだ?」

 

「えっとね、丁度私もこのお店で新作コスメとかを見たくて。……あっ、でももしこころ先輩とお兄ちゃんの良い所の邪魔になりそうならすぐに帰るから。二人きりになりたかったら言ってね」

 

「いや、何でそうなるんだよ。こころとはそういう関係じゃねーし」

 

「むーっ。お兄ちゃんはタダでさえネガティブ思考なんだからこころ先輩のようなしっかりした人にちゃんと引っ張られた方が良いよ!」

 

「し、しっかりした人……」

 

こころは影人の妹の夢乃に褒め言葉を連発されているせいで元々親しくなっていた心が何度も撃ち抜かれつつあった。こころも夢乃の姿や話し方に思わず引き込まれるような感覚を感じていたのだ。

 

この辺は夢乃のカリスマ力だろう。影人はこころの気持ちさえも掴んだ夢乃を見てやはり人を惹きつける才能が夢乃にはあると考える。

 

「……夢乃、まさかと思うけどこころの事を認めたのか?」

 

「……何当たり前の事を言ってるの、お兄ちゃん。私はむしろ、こころ先輩にしかお兄ちゃんの隣は似合わないと思ってるから!」

 

「……はぁ!?」

 

夢乃がとんでもない事を言い出して慌てる影人。こころは恥ずかしさのあまりその隣でポンと顔を赤くしてしまう。

 

「待て待て待て!夢乃、お前マジで言ってるの?まだそういう関係じゃ……」

 

「じゃあお兄ちゃんはこころ先輩とはお付き合いしないって言うの?こんなに真面目な人でお兄ちゃんにピッタリの人なのに!」

 

「お付き合いしないなんてそんな事言った覚えはねぇよ!!それと、こころが真面目で努力家っていう所は否定しないし俺もそう思ってんだけどさ。何で俺達がそういう関係になる事前提みたいになってるんだよ」

 

影人も影人で恥ずかしさが爆発しつつあったために顔も赤くなるとつい周りの事を忘れて声を張り上げてしまう。すると周囲から微笑ましい物を見るような目線を受けて影人は更に恥ずかしくなってしまった。

 

「私、そろそろ邪魔になりそうだから先に入っちゃうよ。あとは二人で仲良くしてね」

 

「ちょっ、夢乃お前!」

 

夢乃の言葉に影人はツッコミを入れようとするとこころは影人の手を掴んで赤らめた顔を影人へと見せた。

 

「……先輩は私と二人きりは……嫌ですか?」

 

こころはそう言いつつも上目遣いのような目を影人へと向けてきた。そんな彼女を見て影人が断れるわけがない。

 

「嫌……じゃねぇよ」

 

「じゃあお店には二人で入りましょう。そうすればカゲ先輩も心配無く入れますよ」

 

「ぐっ……わかった……今日はこころに付き合うよ」

 

「ふふっ。ありがとうございます!」

 

こころが影人へと笑顔を向けるとそんな二人を見た夢乃はやはり自分が二人の近くにいるのは邪魔だと判断。一応挨拶だけして離れる事を選択する。

 

「じゃあ、二人で行くって話だからそんな二人の大切な時間を邪魔するのは悪いし、私はさっさと並んじゃうね。……こころ先輩。私にとって大好きな兄の事をよろしくお願いします!」

 

夢乃は礼儀正しくペコリとこころへとお辞儀をするとさっさと一人で列の最後尾へと並んでしまう。影人はそんな夢乃に呆れの感情が湧くと手に置いて頭を抱えた。そして夢乃に色々とベタ褒めされた挙げ句ここまで言われればこころの方も無理にでも影人を再度意識せざるを得ない。

 

「じゃ、じゃあ行きましょう。先輩」

 

「ああ」

 

それから二人は夢乃の並んだ位置から数人後の位置に並ぶと丁度列の案内をされていた森に発見されてしまう。

 

「あっ、影人さん。前はCMの事……」

 

「ちょっと、ストップです!……あの、CMの件はできれば内緒にして貰いたいです。すみません……」

 

「わかりました。……隣の可愛い子は彼女さんですか?影人さんにお似合いですよ」

 

「………」

 

影人は夢乃どころか初めてこころと並んでいる所を見せた森に対してもこころを自分の彼女扱いされて内心今にも叫びたかった。だが、こころに迷惑はかけられないために我慢する事に。

 

「あっ、そう言えば先輩。アイドル研究会の次の回の日、決まりました」

 

「そっか。それでいつ?」

 

「明日です!」

 

「そっかそっか。明日……ええっ!?」

 

「はい!みこと先輩達他の部員の皆さんと話し合ってできる限りフルメンバーが揃える日にしようと思っていたので。少し遅くなってしまってすみません」

 

こころの目はとても真剣だった。自分を迎え入れるための日程をここまでちゃんと考えてくれたのであれば影人も誘いを断れるわけがない。

 

「わかった。じゃあ、明日活動する部屋に行けば良いんだな?」

 

「はい。場所は研究会専用の部室として借りられた空き教室を使います!」

 

影人はその言葉を聞いて混乱。そもそもの話、学校の空き教室をアイドル研究会とか言うポッと出てきた訳のわからない部活に貸せる物なのかと。

 

「……こころってもう既にとてつもなく凄い事をしてるのかも」

 

影人はこころの持っている大好きを追求するためならどんな努力も怠らないひたむきな姿勢に感心。それと同時に普通なら納得させられないはずの教師陣をどうやって納得させて研究会設立にまで持って行ったのかがとてつもなく気になった。

 

「あっ、そろそろですよ!」

 

それから二人は雑談をしながら順番が来るまでを過ごし、ようやく店の中に入る事に。

 

尚、その時にこころがキュアアイドル、キュアウインクのリボンをイメージしたリップなどのメイクアイテムを見て大興奮し、影人が何とか彼女のフォローに奔走するまでにそう時間はかからなかったという。




また次回もお楽しみに。
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