キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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グリッターの謎を知る男、小原井ヒロシ

影人達は田中を連れてきたプリメロと合流すると田中の案内でとある場所に向かっていた。そこにあったのは一面に草が地面に生えた敷地に建っている木造住宅である。また、人が住まなくなってからかなり時間が経っているのか……屋根は蔓植物が覆っており、家その物も手入れされてないためにボロボロだった。

 

「何ですかこの家……」

 

「これ絶対ニュースとかで度々問題視されてる放置空き家ってやつだろ」

 

「屋根とかに植物が沢山生えてるのメロ」

 

「まるで緑のカーテンみたいプリ!」

 

今現在、影人達はこの明らかに放置空き家と化した家の前に揃っており、田中曰くこの家にグリッターのメニューの謎を解く鍵があるそうだ。ちなみにプリルンとメロロンは田中の帽子の上にしがみついている。

 

小原井(おわらい)ヒロシさん……」

 

「当時のパトロール日誌によれば、グリッターに頻繁に通っていたのはこちらの小原井ヒロシさん」

 

「何だかこの時点で癖のある名前だな……」

 

影人がそう呟いている間にも田中は日誌の読み上げを続けるのと同時にうた、なな、こころの三人が家の事を探り始める。

 

「職業は会社員、趣味はお笑い。特技は卓球……好きな食べ物はもつ鍋、嫌いな食べ物はパクチー。犬派猫派で言えば犬派」

 

「色々調べてるんだな……って、先代の担当者はそんな個人情報まで調べてるのかよ!?」

 

影人は妙に詳しく書かれているパトロール日誌に思わず唖然としてしまう。そして、その間にうた達三人は調査を進めていたが……扉をノックしても返事は無く。その扉を開けようとしても扉のレールが錆び付いているのかそもそも鍵がかかっているのか開かず。

 

窓やガラス張りの扉から中を見るものの目ぼしいものは見つからない。壁や扉に耳を当てて音を聞くもののまるで何も聞こえて来ない。何ならこころはスマホで何かを調べた後に何故か庭の枯れ木の近くに行ってボーッと突っ立っているくらいである。そして、これらの事から三人の結論が出た。

 

「このお家、誰も住んでないみたいだけど」

 

「だろうな。流石に人が住んでるにしては老朽化やら腐食化が進みすぎてる。それに、ここまで植物が生えてるのを放置してるとなるとな」

 

ちなみに普通はこういう放置空き家にはあまり近づいたり、下手に触らない方が良い。腐食化がどこまで進んでいるか外面では判断しづらいのに加えてその影響で少し触っただけでも建物が壊れて倒壊するリスクもある。

 

影人達は調査のためにこうして近くに来ているが、様々な危険が潜んでいるために普通はこういう事をしない方が良い。

 

「……小原井さんならいないよ」

 

「ッ!?」

 

その瞬間、突如として田中は後ろから声をかけられて一同がその方を向くとそこには一人の老婆がいた。首からはネックレスをかけ、目にはサングラス。また、何故か左肩にインコを乗せているその女性は無情にも小原井がいないという事実を告げる。

 

「えっと、あなたは?」

 

「小原井さんがいないというのはどういう……」

 

影人や田中がそう聞くと老婆は平然とした様子で話を進めた。ちなみにプリメロは田中の帽子にしがみついたまま人形のフリをするべく動きを止めている。

 

「小原井さんはもう10年以上戻ってないんよ。会社を辞めて、ずっと夢だったお笑い芸人になるんだって都会に行ったままでね」

 

「そんな……」

 

「折角古い常連さんを見つけたのに……」

 

「あれ?だとしたらどうして表札がそのままなんですか?都会に行ったって話なら流石に契約を切ったはずですよね」

 

影人はひとまず何故小原井の表札がそのままそこに掛けっぱなしなのかを問いかける。もう住んでいないのなら表札も他の人が入って変えるはず。そのため何故か10年前に小原井がいなくなってからもずっと小原井のままの表札を指摘した。

 

「ああ、それかい。実はそもそもこの場所自体が人気無くてね」

 

「……へ?」

 

「小原井さんがいなくなった後もここを空き家として売っていたんだけど誰も買わなくて。しかもあまりに買わなさ過ぎるせいでここの存在自体を一度忘れてしまって」

 

影人は大家からそう言われたのを聞いて頭の中が混乱してしまう。つまり、今目の前にある家が放置空き家と化している原因の大半を占めているのは……この目の前にいる大家本人だという事だ。

 

「そうしたらいつの間にか草が生えてこのザマなのよ。撤去費用もお高くついちゃうからどうしようかと悩んでてね」

 

「……カゲ先輩、これって」

 

「ああ……取り敢えず、この家にはこれ以上関わらない方が良いかもしれない」

 

大家の管理不足が原因でここまでの有様になった旧・小原井家。そしてここまで草木が生い茂った状態だと当然この家を廃棄するためのお金も凄まじい金額となる。そのために大家もここを放置する選択を取っているという事であった。

 

そして同時にこれ以上この空き家に関して色々関われば碌な事にならない事も証明されたために一同はこの場から退散する……その前に、大家に情報を聞くだけ聞く事にした。

 

「すみません、最後に。今、小原井さんが何処にいるかわかりますか?」

 

「さぁねぇ。芸人として売れたら帰ってくると言ってたけどねぇ」

 

大家から告げられたのはわからないという宣告。しかも10年前に出て行った上に今現在も街に帰ってないという事は……。

 

「そう言い残して10年以上音沙汰無しという事は……」

 

「「「もう帰って来ない!?」」」

 

「あー……これはもう小原井さんを探すのも諦めた方が良いかもな……」

 

影人達は絶望的な状況に追い込まれてしまった。しかもグリッターには他に古い常連と呼べるような客はいない。つまり、蓮司がダメで小原井とは会えないとわかった時点でほぼ積んでしまっているのだ。

 

「でもそれじゃあどうやって謎のメニューを解き明かすって言うの!?」

 

「カゲ先輩、何でも良いのでキュアっと解決してください!」

 

「だーかーら、俺は名探偵じゃなくてどっちかと言えば盗む方だって!!」

 

“ライライサー!”

 

こころがヤケと言わんばかり影人に無茶な話題をネタとして振ると影人も同じようなネタで返す事になる。また、何故か影人の後ろには黒のシルクハットに黒いマントを身につけた美青年の幻影が現れるとポーズを取りつつ彼の所属する組織の掛け声を言うのだった。

 

そんなメタ話はさておき。同時刻、はなみちタウンに存在する駅では都会から繋がっている電車が到着していた。そして、そこから赤い服にハリセンを持った男性が降りてくる。

 

「……帰って来たぜ!!」

 

そうやって帰って来た喜びを叫ぶかのように声を上げたこの男の名は小原井ヒロシ。……そう、影人達が探していたグリッターの古い客である彼はこの街に無事に帰ってきたのだ。

 

「(苦節、四捨五入して20年。やっと深夜のレギュラー番組を持つ事ができた)」

 

どうやらは15年以上の期間を経て小原井はようやく深夜のレギュラー番組を勝ち取り、このはなみちタウンへと戻って来たらしい。そのレギュラー番組というのはよくあるテレビショッピングの事である。

 

お笑いで成果を出すとは少し趣旨が違うかもしれないが、何にせよ結果は残した。そもそもこの手の業界は何かしらの結果を残せるというだけでも大きな成果を出したと言える。

 

そのため小原井は嬉々としてこの街に帰ってきた。10年以上前にした誓いを胸に秘めながら……。

 

「……そう、俺はビッグになって生まれ故郷のこの街に……帰って来たぜ!!」

 

「ワン!」

 

小原井が再度駅の入り口でそう叫ぶと彼のすぐ近くを犬を連れて散歩中の老人が歩いてくる。そしてそれに気がついた小原井は頬を緩ませると犬を可愛がった。

 

「犬!よ〜しよし、可愛いね〜。よ〜しよし」

 

それはさておき、未だに蓮司と一緒にいた夢乃達は先程蓮司が話していたオートヴァッサン・ジェリー・ド・グランディエールグを実際に作るべく材料を揃えようとしていた。

 

「伝説のお料理を作るために食材を揃えるのゾナ」

 

「えぇ……はもりちゃん、そのオートヴァッサン・ジェリー・ド・グランディエールグって料理作るの?」

 

「当然ゾナ!」

 

夢乃ははもりのやる気に思わず苦笑いしてしまう。作り方はネットで調べればわかるだろうが、蓮司が食べた味に近づけられるかは別問題である。ただ、このやる気になってる小さな名探偵を止めるわけにもいかないためにひとまずはそのままやらせる事に。

 

「ええと、あと必要な物は……」

 

「ワン!」

 

「相棒、どうしたゾナ?」

 

そんな時にきゅーたろうが軽く鳴くと一同の向かう先に八百屋があり、そこにはまさかの伝説のジャガイモが売られていた。

 

「おお、伝説のジャガイモがこんな所に」.

 

「でかしたゾナ相棒!」

 

「……んんんー?もしかしてオートヴァッサン・ジェリー・ド・グランディエールグを作るには“伝説の”が付く食材じゃないとダメだったりするのかな」

 

夢乃はもしこの仮説が当たっているのならもう無理ゲーだと察してしまう。そもそも“伝説の”表記の食材なんて普通に売っていたらそれはもう伝説では無いのではとさえ感じている始末である。

 

「「「「しょぼーん」」」」

 

「皆、元気出せって。まだ他の手を探せば何とか……」

 

そんな時、小原井の件でグリッターのメニューの謎が解けないとわかってしまったうた達が落ち込みつつ八百屋に向かって歩いていた。更にそんな一同を珍しく影人が慰めて元気づけている所でもある。

 

「うん?何かあったゾナ?」

 

「お兄ちゃん、何で先輩達はこんな事になってるの?」

 

「ああ、それについては今から話す」

 

「実はね……」

 

それから一同は先程まで夢乃達がいたベンチのある自然公園のような場所へと移動するとそこで改めて小原井の事を蓮司へと聞く。

 

「おお!見た事があるぞ。ワシが常連一号なら、彼は二号だった」

 

蓮司の発言からどうやら小原井の事は彼も見知った仲らしい。流石はグリッターへと古くから通っている男である。

 

「……それでお兄ちゃん達、尾行止めたんだ」

 

「ああ。それと悪かったな。勝手に尾行してて」

 

「えっ、夢乃ちゃん……私達の完璧な尾行に気づいてたんですか?」

 

そして小原井の件を知った事で夢乃も何故影人達が自分達の尾行を止めたのかも納得していた。同時に影人は勝手に尾行した事を夢乃へと改めて謝罪する。尚、このやり取りははもりには聞こえていない。

 

「はぁ、気づいてたも何も最初からバレバレですよ。私だって昔から一人で何かをする度に兄に心配されてきたんですから。うた先輩の思考ならはもりちゃんを心配して後をつけてくるかもって思っただけです。そうしたら思ったより気配がわかりやすかったので」

 

「私のはもりへの心配までバレてる!?」

 

「改めて見ると夢乃ちゃん、小学生なのにハイスペック過ぎる……」

 

そんな事を小声で話を進めているとはもりと蓮司の方も話が進んできていた。

 

「ふーむ、確かに彼であれば古いメニューを知ってるかもしれんな……」

 

「後は小原井さんがどこにいるかわかれば良いんだけど……」

 

ただ、大家さん曰く成功するまで帰って来ないという事で未だに音信不通ならもう可能性はかなり低い。そう思って影人はスマホで調べ始める。

 

「えっと、じゃあ小原井さんの事を調べてみるか」

 

もし何かしらの動きが都会であればネットに表示されるはず。これでもヒットしなかったらもう絶望的だがここは信じるしか無かった。

 

「えっと小原井さん小原井さん……」

 

「ワンワン……」

 

そんな時、突如としてきゅーたろうがどこかを向くといきなり走り出す。そのためリードを握っていたはもりはビックリするわけで。

 

「うわぁああっ!相棒、どうしたゾナ〜!?」

 

「ワンワン!ワン!」

 

そして、きゅーたろうの向かう先にはハリセンを背中に背負った男がおり彼がきゅーたろうを撫でる事になる。どうやらきゅーたろうはこの男の気配で走り出したらしい。そして、ハリセンを背中に背負っているという事は……。

 

「よ〜しよし。可愛いね〜」

 

「そ、そなたは……」

 

“小原井ヒロシ42歳、お笑い芸人。犬派猫派で言えば犬派”

 

まさかの奇跡的な出会いによりグリッターの古いメニューの謎を解く鍵を握る男。小原井ヒロシに事情を聞く事に成功したのだ。

 

「お兄ちゃん、こんな事もあるだね……」

 

「ああ……一応検索結果で小原井さんがつい最近深夜のレギュラー番組を獲得したってのはあったけど、本当に会えるとは……」

 

影人達もここで会うのが絶望的と思われていた小原井と邂逅できるとは思っておらず……。この奇跡の出会いに驚きを隠せなかった。

 

「ッ、これは……」

 

「その黒く塗り潰されたメニューが何だか知ってるゾナ?」

 

小原井は古いメニューを受け取ると早速その黒く塗り潰された部分を見る。そして同時に目尻に涙を浮かべた。

 

「ッ……ああ、これは……俺が都会に行くキッカケをくれた……メニュー」

 

影人達はまさかの反応に唖然とする。同時に小原井の目から涙が零れ落ちるとこのメニューを懐かしんでいた。

 

「ずっと夢だったお笑い芸人に挑戦する勇気をくれたメニューなんだ」

 

「勇気を……。それってどんなメニューだったんですか?」

 

「これは食べ物じゃ無いんだ」

 

まさかの小原井からのカミングアウトに何かの料理だと思っていた蓮司の予想は外れる事になってしまう。そして同時に蓮司はガックリとしてしまった。

 

「ガーン!?閃きの蓮司、閃き違いだったか……」

 

「まぁまぁ、そんな事もありますよ……」

 

「食べ物じゃ無いなら飲み物ゾナ?」

 

「飲み物でも無い」

 

「ガーン……」

 

はもりは飲み物を予想したが小原井からそれも違うと言われ、彼女も一緒にガックリと項垂れてしまう。

 

「じゃあ、キラッキランランなスマイルとか?」

 

「それも違う」

 

「ガーン!?」

 

「いや、それはもう“お”から始まって“グ”で終わるに当てはまらないだろ」

 

影人は最後にキラッキランランも違うと言われて項垂れたうたへと更なる追い討ちをかけ、同時に小原井は何かを思い出したように顔を上げる。

 

「そうだ!こんな事している場合じゃ無い!グリッターのマスターにお礼を言わなくちゃ!」

 

小原井はその瞬間、急いでグリッターへと駆け出してしまう。そのため、メニューの謎の答え合わせをスルーされた事にはもりが思わず声を上げる。

 

「あっ!?結局メニューは何なのゾナ〜!?」

 

「ひとまず追いかけるか。夢乃、はもりちゃんと蓮司さんを頼む」

 

「え?あ、うん。グリッターにいるのはわかってるからだよね」

 

「ああ。あと田中さんも」

 

「ええ、でしたら」

 

こうして、長距離を走らないであろう蓮司や急がせた場合に注意が散漫になるであろうはもりを夢乃に任せ、田中にも一緒に残ってもらうために帽子にしがみついたプリメロを受け取ると影人達はグリッターへと移動した小原井の後を追いかける事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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