キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
うたが周囲の視線を気にして慌ててカイトを連れてその場から離れた頃。それぞれのデートでもまた動きがあった。
海ではキュンキュン、ズキューン、ソウルビートの色をした貝殻を探すこころとぷりん。ただ……やはり先程のように目的の物が三つ固まっているという事自体が稀なため、見つからない。
「うぅん……中々見つからない」
「プリルン!ちょっと離れて!」
ぷりんが手にした砂遊び用のスコップを使って探しているが、砂浜が広大過ぎて埒が明かない。そんな時、こころがぷりんへと話しかけた。
「へ?こころ、何を……」
ぷりんが振り返るとそこにはこころが満面の笑みを浮かべつつ両手に何かを持っていた。それはどこから取り出したのか自分の顔以上のサイズ感がある巨大なハートの団扇である。しかも片手に一本ずつの件二本持ってるためにそのサイズ感は更に際立つ。
「それって……まさか!?」
そしてぷりんは何かを察すると慌てて横に退く。その瞬間、こころは両手にした団扇をメチャクチャ振って扇ぐ。その反動で体が“く”の字になるくらいだったが、それ程までに凄まじい風量を出していたのだ。
「ふんぬっ!うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃーっ!」
「こころ凄い……」
こころが起こした凄まじい風によって正面の砂浜の砂が吹き飛ばされていき、先程ぷりんがやっていたようなスコップだけの捜索よりも更に多い量の砂を退かしていく。
「あっ、あったー!!」
そして、こころによって砂が大幅に退かされた事でその下に埋もれていた三枚の貝殻が露出。そしてそれらは丁度探し求めていた紫、白、銀の色合いをした物である。
「アイドルプリキュア、揃った!」
「ファン心、キュンキュンしてます!」
二人は手に入れた六枚の貝殻を並べるとアイドルプリキュアの貝殻が揃った事に満足そうな顔つきを見せた。ちなみに、こころは先程団扇を全力で扇いだ影響で疲れたような声を出している状態である。
場面が変わり、ここは他野図書館。そこではななとめろんが先程目的の本が無かったために移動し、その移動先にあった図書館だ。
「ありがとう、付き合ってくれて」
「ううん。メロロンの探していた本、あって良かった」
丁度その図書館から出てきたななとめろんの内、めろんが大切そうに一冊の本を抱えていた。この本こそがめろんの探していた本である。
「……うん?」
「ふんふふ〜ん」
すると、突如としてななが上機嫌に鼻歌を歌い始めるとめろんはそれが気になって彼女へと問いかけた。
「なな、何でそんなにご機嫌なの?」
「メロロンが嬉しい時は私も嬉しいの。友達って、そういう物でしょ?」
ななはめろんからの問いに自然な様子で今自分は嬉しいという気持ちを彼女へと伝える。それを聞いてめろんは驚いたような顔つきを見せた。そして、その言葉が嬉しいのと同時に気恥ずかしいのか顔をほんのり赤くする。
「ッ!?」
そして、ななは突如としてそんな顔を見せためろんの事が気になって彼女へと逆に質問する。
「メロロン、どうしたの?」
「私が嬉しいからななが嬉しくなって……。そうしたら私はもっと嬉しくなったの……」
ななとめろん。お互いの嬉しいという気持ちが相乗効果によって高まっていくこの現象は正に嬉しさの連鎖とも言うべき物だった。
「ふふっ、そっか!」
それからめろんにそう言われてななもまた嬉しそうに微笑む。こうして、ななとめろんも幸せ空間を満喫する事になる。そして、今回の件はプリルンとのデートでは決して味わえない特別な嬉しさでもあった。
そんな風にななとめろんの図書館デートも成功となり、それからまた場面が変わって影人とレイの方へ。二人はバッティングセンターのブースに来ており、日頃溜まったストレスを発散していた。
「うぉおおりゃああっ!」
影人は凄まじい勢いで出てくるボールを的確に打ち返しており、その場には快音が響き渡る。
「やるな、影人。あんな速い球を打てるなんてさ」
「いや、最初こそ見切るの難しいけど‥‥ある程度やったら慣れるし。それに、そんな事言ったらレイだって打てているだろ」
影人の言う通り、レイもしっかりと飛んできた豪速球ボールを打ち返しており。彼も彼でここには慣れているような状態だった。
「そりゃあ、俺は前々からこういうバッティングセンターで日頃の鬱憤を晴らしていたからな」
「なるほど、どうりでそういう場所に詳しいと思った」
影人はレイが何故こういう場所に詳しいのか、彼の話を聞いて何となく納得。
「それじゃあ影人、お前が慣れてきた所で……この辺でひと勝負する?」
「へっ、そりゃあ良いな。その方が緊張感があるし」
レイの提案に影人は割とやる気満々であり、レイもそんな影人の返しに笑みを浮かべた。
「へっ、お前なら乗ってくれると思ってたよ。ただ、それだけやる気なら熟練度の問題で俺が勝っても文句言うなよ」
「上等だ、レイ。俺だってコツは掴んだし、少なくともバスケ対決するよりはまだ勝ち目があるからな。
こうして二人はバチバチと火花を散らすとそのままバッティング対決を始める事になるのだった。
それからまたまた場面転換。最後はカイトの手を引いて遊園地の中を移動中のうただ。すると二人で走っている最中にそんなうたへとカイトが声をかけた。
「うたちゃん、どこまで行くの?」
「もうちょっと待ってください!今、どこに行くか探してますから!」
うたは焦っていた。このままカイトと周りに人がいる場所で一緒にいたらまた騒ぎになってしまうのではないのか……と。
「だったらこんなに走らなくても……」
「あっ!乗ります!乗りまーす!」
するとうたの視線の先に何かの乗り場があり、彼女がそれを見ると丁度良いとばかりに声を上げて乗車の意思を露わにするとスタッフに案内される形でそこに乗り込む。
「うたちゃん、凄い慌てていたよ。もしかして、そんなに観覧車に乗りたかった?」
そうして二人が乗ったのは観覧車であり、カイトはうたが大慌てでここに乗り込んだために彼女がどうしても観覧車に乗りたかったのだと勘違いする。ただ、うたとしては観覧車に乗ったつもりは無く。カイトにそう指摘されてようやく気がついた。
「実はさっき……ん?観覧車?」
「そうだよ。観覧車」
うたはそれから少しだけ唖然とした顔で周囲を見渡すと確かにそこは観覧車であり、その後状況を理解して焦った様子で叫んでしまう。
「って、ここ観覧車ぁああ!?」
そして観覧車というのは乗っている間、一つのゴンドラに乗り込んだ人以外に途中で他人が入ってくる事は無い。つまり、密室の中に男女が二人きりという状況が完成するのだ。更に言えば、自業自得とはいえうたは唐突にこの状況に放り込まれた形である。そのためかなり気不味かった。
「(カイトさんの正体がバレたら大変だと思って突っ走っちゃったけど……二人きりなんて……)」
「うたちゃん?」
ただ、二人きりの状況下で無言になってしまえばカイトもカイトで気にしてしまう。そのため彼は眼鏡を外しつつうたへと話しかけた。
「は、はぃいい!?」
うたは返事を返したものの、声は緊張でガチガチでどうにかカイトと上手く話さないといけないという気持ちでいっぱいになってしまう。この辺りはうたの慣れの問題だ。
「(緊張しちゃうよぉおお!?)」
「どうかした?」
「え、え、え、いぇええ……その……あの……」
ただし、状況に慣れていようがいまいが乗ってしまった以上は会話はしないといけない。なので、うたはどうにかこの状況下で話をしないと考えて慌ててしまう。
「(何か話さなきゃ……)」
そうしてうたはどうにか回らない頭を回して何かの会話をするために話を始める。
「お腹空きましたよね?」
「そうだね、何食べたい?」
「えっとぉ……ソフトクリームとか?」
うたは先程ソフトクリームを食べたばかりなのにまた食べ物の話題に持って行ってしまうと、そのままの流れでソフトクリームを提案してしまう。勿論カイトも食べたばかりのソフトクリームの話題を持ち出すうたに思わず聞き返してしまう。
「え?また?さっきも食べてたよね」
「あっ……そうだったぁ!?あは、あはは……」
うたはカイトから指摘されてそれに気がつくとまた焦ってしまう。彼女はどうにか話題を変えようとするが、咄嗟に何も浮かんでこない。
「(どうしよう……何話したら良いの……)」
こういう時に大好きな歌の話ができれば良かったのだが……。慣れてない物は仕方がない。そんな時、うたの視線がこの日襷掛けしていたクリーム色のショルダーバッグの中に入ったある物に気がつく。
「(あっ、そうだ……これ!)」
それは、以前お泊まり会をした時に制作したキュアアイドルの人形であった。同時に彼女はこれを受け取った経緯を思い出す。
〜回想〜
時間はうたがデートの話を受けて影人達とその話題について話をしたあの時に遡る。
「先輩、これ」
「これって……前に作ったキュアアイドルの……」
こころはうたへと人形を手渡すとうたはキョトンとした顔つきでそれを受け取った。
「カイトさんとのお話に困った際の話題作りに必要かなって」
「でも、これ……こころのでしょ?」
「良いんですよ。先輩のデートが大成功に終わればそれで十分ですから。どうぞ、使ってください!」
こころとしてはうたが最終的にカイトとのデートを楽しんでくれればそれだけで嬉しいわけで。そのためならこの人形を貸す事に何の抵抗感も無かった。
何なら、この人形も影人達全員で作った物であるためにこういう時に貸す事くらいは大丈夫である。
〜現在〜
うたはそんなこころに感謝しつつカイトへと早速その話題であるアイドルプリキュアについて振る事にした。
「カイトさん。これ、誰かわかりますか?」
「キュアアイドルだよね?うたちゃん、ファンなの?」
カイトからの流れるような質問にうたはまた慌ててしまう。アイドルプリキュアの話題に持って行ったのは良かったが、今度は正体バレのリスクを背負ってしまった形なのでどうにか誤魔化そうとした。
「うえっ!?え、えーっと……はい!」
「そうなんだ……俺も注目している。大勢を笑顔にしていて凄いよね」
「うええっ!?ありがとうございます!」
ただ、うたは性格上こういう時は素直に反応してしまう子であるために褒めの言葉に対してお礼を言ってしまう。そして、カイトはうたの見せた反応に困惑したのか思わず素で聞き返してしまう。
「えっ?うたちゃんが何でお礼を?」
「え?ああっ、いえ……。ほら、私ファンなんで!あは……あはは……」
それからうたは笑って誤魔化したものの、このままではボロが出るのは時間の問題だ。
「ふふっ、そっか」
「(わぁ……カイトさんが褒めてくれた)」
うたはカイトからの褒めに改めて嬉しさを感じると同時に先程風で飛ばされた帽子をキャッチした事実を思い出す。
「(カイトさんこそ、皆を笑顔にしてるのに……)」
「……ん?何考えてるの?」
うたは自分へとそう言ってくれたカイトこそレジェンドアイドルとして普段から人々を笑顔にしていると感じるとカイトがうたへと改めて視線を向けつつ問いかける。
「うぇえっ!?あぁ、えっと……カイトさんはやっぱり凄いなって!ステージじゃ無い所でだって誰でもキラッキランランにしちゃうから!」
「ありがとう」
カイトはそう言うとふとゴンドラの外に広がる景色を見つつある事を思い出す。そして、彼はまるで何か後悔をしたかのように雰囲気が変わった状態で呟いた。
「……誰でも笑顔に……。ああ、そうしたいと思ってる」
「えっ……」
うたはそんなカイトの様子の変化に気がつくと思わずその姿にキョトンとしてしまう。そして、この時のカイトは過去に何か未練を残しているように思えるのだった。
同時刻、遊園地の上空にチョッキリ団アジトから出撃していたジョギが出てくる。それから彼は遊園地を見下ろした。
「久しぶりだな、この遊園地」
どうやらジョギはかつてこの遊園地に来た事がある様子であり、その景色を懐かしむと早速切り替えて彼はダークランダーを生み出せるターゲットを探す。
「おい、回し過ぎだって……」
「うぅ、ごめん……」
「調子に乗り過ぎた……。俺っていつもこうだ……」
するとジョギの視線の先にはコーヒーカップから降りてくる男子三人組……つまり先程カイトが飛ばされた帽子をキャッチして返した時の子達を見つけていた。更にコーヒーカップでの回し過ぎを気にした子は真っ暗闇を出してしまう。
「ふふっ、良い真っ暗闇……持ってるね」
ジョギはタイミング良く真っ暗闇を出してしまったこの少年を早速ターゲットに。そのままの流れでダークランダーを召喚するための掛け声を言う。
「光の中にも闇がある。君の闇を……見せてごらん」
「うわぁあああっ!」
ジョギが指を鳴らすと同時に少年の胸から心の闇を現す漆黒のリボンが飛び出してしまう。
「綺麗だね……呑まれると良い」
すかさずジョギがそう告げると結ばれていたリボンは勝手に解かれてしまい、少年の体がリボンから発生した闇のエネルギーで包まれていく。それからジョギは赤い色の水晶を出すと二つを合わせて地面に叩きつける。
「さぁ、おいで!ダークランダー!」
「ダークランダー!」
これによりダークランダーが召喚。その姿はコーヒーカップの姿をしており、その場に降り立つ事に。
そして遊園地の外側にいる三ペアの内、いち早くこの事態に気がついたのは勿論ダークランダーを察知できるプリルンとそのペアであるこころだ。
「ブルっと来た!?」
「うえっ!?このタイミングで……」
ぷりんの言葉にこころも緊急事態を悟ると二人で現場に向かう。尚、この時ぷりんは以前とは異なり妖精態に戻る事は無かった、どうやら、持田先生の時とは違ってこの感覚に慣れたからだろう。
そして、図書館から街中を歩いていたななとめろんの二人も上空の真っ暗闇で気がつく。
「これからどうするの?」
「そうだなぁ……って……」
「「ええっ!?」」
「大変、遊園地の方!」
「なな、影人達に連絡しないと。あの二人の行き先は……」
「そっか!」
そして、めろんの機転で建物内にいるせいでこの状況を察知しにくい影人達二人に連絡するという事に。
最後にその影人達は始めたバッティング勝負が互角で進んでおり、互いにラスト一球ってタイミングだった。
「影人……やるな……」
「ああ、次でラストだ。決着を……」
その瞬間、影人とレイのスマホが同時に震えると着信が入る。二人がスマホを出すとそこにはななとこころというそれぞれの彼女からの電話だった。
「「ッ……」」
「ここでななから?」
「待て、こころからも来てるってなると……」
「マジか、多分ダークランダーが出たな」
そして二人は状況的にダークランダーが出た可能性が高い事を察すると勝負をお預けにしてすぐに向かう事になる。
また次回もお楽しみに。