キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人達一行は玲音から招待されたアカペラライブに行くためにはなみちタウンから電車で移動。東京の方に到着するとそこから更に移動して集合場所であるアカペラライブが行われる大学にやってきた。
「ここが東京の大学……大きくて心キュンキュンします……」
「うん。私達の学校よりも大きい」
「そりゃあ、大学だしな。うちの学校は公立だし、基本的に集まるのは地元の子ばかり。大学は地元とか関係無しに全国から人が集まるからな」
この大学も都内の大学の中では比較的規模が大きく。その学園祭であるために尚更多くの人で賑わっていた。
「さてと、まずはレイレイ先輩を探さないとだけど……」
「あっ、いたよお兄ちゃん!」
影人達は自分達をライブに誘ってくれた張本人である玲音との合流を目指して移動を開始すると彼女は比較的簡単に見つかった。恐らく彼女も人だかりができるのは予想しており、簡単に見つけられる場所で待っていてくれたのである。
「お待たせしてすみません。レイレイ先輩」
「こんにちは!」
「こんにちは。ううん。私もそこまで長く待ってないから大丈夫だよ」
玲音は落ち着いた雰囲気で答えを返すと微笑む。それからまずはは予めメッセージとして送っておいたうた達の件について話す事に。
「まずは折角のお誘いだったのにこっちの都合で咲良さん達が来れなくなってすみません……」
そもそも影人達は最初から来れないとわかっていたレイを除く人数分のチケットを貰ってしまっている。それなのにうたが急に来れなくなったとなれば埋まるはずの席が一つ空いてしまうのだ。
尚、プリルンやメロロンは人形として中に入れるつもりのためチケットが無くても問題は無い。
「あはは……それは気にしなくて大丈夫だよ。チケットについても一人分余るのは問題無いって」
「えっ、余るのが問題無いってどういう……」
「実は、Parabolaのメンバーの一人であるキッカさんが一枚チケットを欲しがってて」
キッカ……つまり、Parabolaのメンバーの一人である仙石喜歌がチケットが一枚欲しいとの事であるらしい。恐らく彼女の知り合いの中にParabolaのライブが観たいという人がいるという事だろう。
「それなら良かったです……」
「ふふっ、それじゃあ早速ライブ会場の方に行こうか」
それから影人達五人はParabolaのライブがあるという会場に向けて歩き始める。すると夢乃は何かに気がついて声を上げた。
「あれ、でもまだ開演までに結構時間ありません?」
そう、まだ今はお昼前ぐらい。アカペラライブの開演は夕方の時刻であるためにこれからライブ会場に行ってもそこそこ時間が余ってしまう。
「それなら大丈夫だよ。今はミズキさん達の所に挨拶しに行くだけだから。それに、折角大学の学園祭に来てるんだし……ついでにそこも少しだけ回ろうと思ってる」
「なるほど、言われてみれば……」
夢乃もそういう事情であれば挨拶は大事な事であるために納得したような顔になる。それに、今回は身内特権でチケットを何枚か譲ってもらっている。そのお礼も直接言う必要があるだろう。
「Parabolaの皆さんに会えるなんて何だか緊張するなぁ……」
「はい、心キュンキュンします!」
「……ミズキさん、レイから話は聞いてるけど実際どんな感じなのだろうか」
ななとこころはParabolaのメンバーと会えるとの事で緊張感とワクワクの気持ちが湧いてくる中、影人も生でParabolaのメンバーと会うのは初であるために余計にレイが会った事のある聖の問題のある性格が気になった。
それから玲音に案内されるまま、影人達はParabolaのメンバーが控えている控室の方へ。一応関係者以外立ち入り禁止の裏のエリアであるために関係の無い他の人はスタッフを除き誰も入ってこない。
「失礼します」
「その声……レイだね。良いよ」
聖からの許可が降りると玲音は早速扉を開けて部屋の中へと入っていく。その後に続く形で影人達三人も入った。そこは如何にも控室と言った場所であり、テレビ番組とかで芸能人達が出番が来るまで待機している場所に近い雰囲気を与える。
そして、そこにいたのは藤代聖、環木鈴蘭、ゾーイ・デルニ、仙石喜歌、南佳凛の五人。つまり、Parabolaメンバー揃い踏みだった。
「ッ……」
「凄いですね、目の前にいるだけなのにオーラを感じると言いますか……」
「うん、カリスマ性って言えば良いのかな。メンバーを一目見るだけでもう圧倒されちゃいそう」
このParabolaメンバーが五人揃っている状況を見たなな、こころ、夢乃はその圧倒的な存在感に圧倒されている様子である。そして、影人は同じく圧倒されそうになりつつもうたがいない今は自分がアイドルプリキュアの代表的立ち位置であるために毅然とした姿を見せた。
「ミズキさん、今日は席の手配の方をありがとうございます」
「ふふっ、良いんだよ。それに交換条件とは言え君が講師をすんなり引き受けてくれたからハジメさんとの取引もトントン拍子に進んだ。こっちからしたらその見返りの意味もある」
「(やっぱり思ってたけど、ミズキさんってこういう所は現実主義って言えば良いのか。自分達の利益になる物は何でもやりそうな所とかハジメさんと似てるなぁ)」
実際問題、聖はParabolaのメンバーを集める際もかなり強引なやり方を使っているのに加えて解雇する時も割と一方的なので周りに敵を作りやすい人なのは確かにそうなのだろう。
「後ろにいるのは今日連れてきたアイドルプリキュアのメンバー数人とドリーム・アイ本人です」
「わぉ、本当に中学生の子達があのアイドルプリキュアやってるんだ」
「ドリーム・アイについて私はある程度なら知ってるけど、こんな中学生にも満たない子がやってたなんて……わからない物よね」
ゾーイは影人達がアイドルプリキュアであると聞いて改めて驚いたような顔を見せ、鈴蘭も大人な美女配信者(設定)であるドリーム・アイについては一目置いていたために中身が小学生だと聞いて最初耳を疑ったくらいである。
「黒霧影人……キュアソウルビートです。今日はお招きいただきありがとうございます」
「蒼風なな、キュアウインクです」
「私は紫雨こころ、キュアキュンキュンです。レイレイ先輩にはお世話になってます!」
「黒霧夢乃、おに……影人さんの妹でドリーム・アイをやってます」
影人達は自分の名前とそれぞれの活動時の名前も付ける形で挨拶。最初は隠す事も考えたが、そもそも聖がいる時点でその必要性は皆無だ。そのためあくまで一同は普通に挨拶をする。
「よろしく。私はParabolaのリーダーの藤代聖。Parabolaは私がプロデュースしているアカペラバンド。アカペラで日本の音楽界に殴り込むために作った」
「な、殴り込む……」
「メジャーデビューって事ですかね」
「その通りだよ。そのために、大学アカペラのオールスターを揃えている。技術、ルックス、キャラクターも精査してね」
聖の性格がヤバいだの言われるという理由はその精査の部分だろう。何しろ聖の求める基準に達せない人は例え一度認められたとしても後から容赦無く外される。それはまるで、Parabolaのメンバーでいたいのなら前に進むのを止めてはいけないと言わんばかりに。
「それじゃあ順に自己紹介していくねー!私、ゾーイ・デルニ。ゾーイで良いよ。皆の事も下の名前でフレンドリーに呼ばせてもらうね」
「うえっ!?い、いきなりですか!?」
「あはは、ゾーイさん。コミュニケーション力だったらParabolaの中で一番だから」
ゾーイのあまりのフレンドリーさに影人達は唖然としてしまう。そもそもゾーイはアメリカ人の留学生。それなのに日本人以上に日本人と話すのに慣れた対応をしてくるので最初はそのコミュニケーション能力にバグってしまうのも無理もない。
「それで、そっちにいるのが……」
「環木鈴蘭。よろしく」
「レイラさん……インフルエンサーのレイラさんで大丈夫ですか?」
「私のアカウント知ってるんだ。それなら話が早くて助かるわ」
鈴蘭は自分のインフルエンサーとしての顔を影人達が知ってるのなら話は早いとあくまで素っ気ない声色で話す。それに対して鈴蘭がインフルエンサーとして活動している時と今この場での纏う空気感の差に夢乃はキョトンとしていた。
「……夢乃……だっけ?あなたは何でそんな顔で私を見るわけ?」
「え、えっと……鈴蘭さんってアカウントの方だと結構甘々な感じなのに……普段こんなに素っ気ないのかなって」
「はぁ……。こっちの方が私の素よ。大体、ミズキのせいでこっちは毎回苦労させられてる。まぁそれでも私が今ここにいるのはそれだけミズキのやってる事に打算を感じてるからだけどね」
鈴蘭が変に隠しても無駄だと察したのか、それとも相手が同じプロであるからか……あくまで自分の素に近い状態で影人達と接する。
「ふーん、夢乃ちゃんって小学生なのに凄く賢いんだね!」
「別に……兄に教わってこうなってるだけで私自身は大して……」
すると喜歌が興味深そうに夢乃へと話しかけると彼女はいつも通りに謙遜。あくまで自分の実力では無く影人の指導のおかげだと返した。
「あ、自己紹介まだだったね。私は仙石喜歌。よろしくねー!」
「そういえば、喜歌さんってアカペラを初めてたった一年足らずでParabolaに入ったって聞きましたけど……」
「えー?別に私は大した事無いよ。何となく流れるままにアカペラ楽しそうって大学入って始めたら偶々上手く行っただけだし。それに、他の皆と違って私はそこまで知識があるわけじゃないからさ」
「それでもミズキさんに選ばれてるって事はそれだけ才能があるって事なんですよね」
「えへへー、褒められると照れちゃうなぁ」
見た感じ喜歌はゾーイと同じで社交的と言うべきな雰囲気であり、影人の中では話の流れに合わせるのが上手いイメージだった。
「(……うーん?でも何となく喜歌さん、その笑顔の裏に何かありそうな気がするけど……。多分どっちかと言えばあれは愛想笑いに近い感じ。雰囲気に乗って話を繋げているようにも見える。だけど、俺がそんなに気にする事でも無いか)」
影人は喜歌に対して少し考えを巡らせるが、自分が踏み込んだ所で上手く流されるだけだと考えて今は考えない事にした。尚、喜歌は両親関連で少し複雑な事情があり……流れるままに会話するというのもそこから来ているのかもしれない。*1
「………」
するとある程度話が終わったタイミングを見計らっていたのか……佳凛が出てくると特に話しかける様子も無く影人へと手を差し出す。それはまるで握手して欲しいと言わんばかりだった。
「っと、ああ……。南佳凛さんですね……よろしくお願いします」
影人は彼女の名前を言いつつ握手に応えると彼女は小さく頷く。それから握手を終えるとなな、こころ、夢乃の順で同じく握手をする。
「佳凛ちゃん、シャイだから素っ気なく感じるかもだけど影人君達の事は一目置いてるんだ」
「やっぱりメッセージでやり取りしてるんですか?」
「うん。アイドルプリキュアの事もドリーム・アイの事も凄く褒めてたよ」
佳凛とは新人組で割と仲の良い喜歌が彼女の気持ちを代弁。少なくとも佳凛からの心証は悪く無い事は影人達も理解できた。
「一通り自己紹介が終わった所で話を戻すけど、私はこのメンバーならさっき言ったメジャーデビューも可能だと思ってる。Parabolaは大学アカペラのオールスターズを集めているから武器は十分に揃っているし、ハジメさんからの支援を受けられるのならこれ以上無いくらいの起爆剤になるからね」
ハジメには茅原愛衣を始めとして数多くの声優をプロデュースしてるだけで無くドリーム・アイのような配信者系についても明るい。そう考えるとやはり彼と組む事ができた今回の話の意義は大きいわけだ。
「本気でプロを目指してるんですね」
「そうだよ。むしろ、周りが何で趣味の範疇で終わらせてしまうのかわからないくらい」
それを聞いて影人は何となく聖の思考回路がわかるようになってきた。要するに、やり方こそ強引だが彼女もまたプロを目指して必死に戦おうとする人達と同じ。自分の力で音楽界の一線級になろうとしているのであると。
「それで話は逸れるけど、レイ。あなたはParabolaに入るかどうか……そろそろ答えを出してくれても良いんだよ?」
「ッ……それは……すみません、まだ……」
玲音はかなり気不味そうな雰囲気で答えを返す。恐らく、この言葉もずっと前から言われ続けているのだろう。そして、彼女自身もわかっていた。自分の中にプロに向けて頑張りたいという気持ちが胸の中に残っている限り……聖は何度でも同じ質問を繰り返すと。
そもそも聖はチームに欲しいと思った相手を手にするまで執拗に追いかけ回す。ただ、その分チームの人間が必要なレベルを下回ったら掌を返して即解雇するのだが……。
「入るよね?」
「……」
「入るでしょ」
「……」
「入るよ……」
「ストップ、ミズキ。その辺にして。影人達がドン引きしてる」
この聖の執拗過ぎる問い詰め方に影人達は思わずドン引きしてしまっていた。まさかここまで彼女がヤバい人間だと思っていなかったらしい。こんな現場を見せつけられるのなんて中学生達には刺激が強すぎる。
「別に入るのは決定事項なんだからレイが頷けば解決でしょう?」
「勝手に入った扱いにするな」
「ごめんね〜こんな所見せちゃって」
鈴蘭が聖の暴走をどうにか抑えようとしている間にゾーイが影人達の気を紛らわすように話しかけていく。すると影人は何か気になったのか声をかけた。
「……あの、聖さん」
「……何?」
「そこまでしてメジャーデビューできるレベルの人材を求めるんですか?聖さんにとって他人の関係性を壊してまでアカペラで音楽界の頂点を狙う理由って……何なんですか?」
影人は今のやり取りから聖は対人関係のやり取りが致命的にダメなのを察した。そして、そこまでして強引なやり方をしてまで高みを目指す理由が何となく知りたくなったのだ。
それから聖は影人からの質問に対して少しだけ考える素振りを見せると彼に答えを返す事になる。
また次回もお楽しみに。