キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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Parabolaを率いる藤代聖のやり方

影人がいきなり聖に投げかけた質問。彼女はそれを聞いて僅かに考える仕草を見せると彼に答えを返す。

 

「そうだね……。さっき言った通り上を目指すため……だけじゃダメかな」

 

「上を目指すために……他人の気持ちを無視するんですかって話をしてるんです。そこまで手段を選ばないやり方をして……それが本人達の幸せになるんですか」

 

「うーん……でも実際幸せなんじゃない?だって、ここで続けられているメンバーがいるという事実が何よりの証拠だよ」

 

影人はそれを聞いて多少納得できる所はあった。少なくとも、ここで活動継続できているメンバーは……嫌々でこのチームにいるわけでは無いという事実があるからだろう。

 

「ねぇ、あなたの疑問を全否定するつもりは無い。私なんて打算でミズキに着いて行ってるって事もさっき話をした通り。だけど、私にとっては他の有象無象とアカペラをやるよりここにいる方が歌う上でのストレスが少ないのは確かね」

 

「もしかして、音感の事ですか?」

 

鈴蘭の話に夢乃が食いつく形で聞く。鈴蘭は音感が良い。それこそ前に話したアカペラガチ勢の子と同じだ。決定的にその子と違うのはメンバーが鈴蘭が気持ち良いと思えるハモリを出せるという点。それだけで彼女にとって歌う時のストレスは小さくて済む。

 

「そ。私は絶対音感って言って少しの音のズレも気になる人なの。だけど、ここでアカペラをやる分にはそれを気にせずに全力を出せる。……とは言ってもコイツのせいでアカペラ以外でストレスが溜まりまくってるのはその通りだわ……。そもそも私、デメリットの方が大きかったらすぐにこんな所辞めてる」

 

鈴蘭が憎たらしそうに聖へと視線を送ると当の聖はそこまで気にして無い様子だった。

 

「歪な関係なんですね……」

 

「そうそう。でも、このくらいどこでも普通だと思うよ?それに、私達にとってここでアカペラをやるのはミズキに振り回される以上に楽しいからさ!レイレイもそれをわかってるから迷ってるんだよね?」

 

「……はい」

 

このままだと鈴蘭がその内爆発すると感じたのか、ゾーイがタイミング良く話に入り仲裁。玲音も彼女からの言葉に頷きを返した。

 

「影人君、聞いての通り。本人達は自分達から出て行きたいって思う程にここが嫌というメンバーは誰一人いない。それでもまだ君は玲音の判断に水を差すつもり?」

 

「……いえ、確かに今の質問は考えが足りてませんでした」

 

「よろしい」

 

「へぇ、意外。結構素直なんだね。ミズキさんと意見が対立してここまで大人しいのは初めて見たかも」

 

喜歌は影人が割とあっさり引き下がった事に対して物珍しそうな顔を見せる。

 

「いえ、俺の中で整理できて無かっただけなので……。もしかしたらレイレイ先輩の気持ちが纏まる前に無理矢理関係を壊してまで引き抜くかもって……」

 

「あー、そっちの心配かぁ……」

 

喜歌がそれを聞いて苦笑いを浮かべた。恐らくこの感じだと彼女もまた聖によって関係性を壊された上で引き抜かれた一人なのだろう。

 

「え?別に普通じゃない?」

 

「「「えっ?」」」

 

聖がキョトンとした顔でとんでもない事を言い出すとなな、こころ、夢乃はまた先程同様にドン引きしてしまう。本当に聖はやるとなったら止まらないらしい。

 

「あはは、ごめんねー。ミズキは人間とって大事なパーツを何個も落としちゃってるからさ」

 

「……なるほど、つまり全てを捨ててでもアカペラで音楽の世界を一新したい……。そのためなら多少の犠牲は致し方無し。そんな感じですか?」

 

「まぁ大体そんな感じかな」

 

「でも、ミズキさんにとってのその小さな犠牲って……その人にとってはとてつもなく大きい物なんじゃ……」

 

影人の話に聖が頷くとこころは彼女の言う小さな犠牲に巻き込まれる側の人の事を心配した様子だった。

 

「ああ、大丈夫大丈夫。ミズキのやり方に着いて行けなくて辞めた人なんて数え切れないくらいはいるし、それが普通の考えだよ」

 

「それでも、私達は普通のやり方じゃ変えられない事をしようとしてる。だからこの馬鹿はこういうやり方をしてるんだけどね」

 

影人は同時に幼い頃の自分を思い出す。それは多少の犠牲を犯してでも役者として頑張ろうとしていた自分と聖を重ねたのだ。ただ、それはその経験のある影人だからこそ納得できる話。なな達他の三人にはまだ完全な理解はできなかった。

 

「まぁ、君達から100%の理解が得られるなんて思わないよ。だって私達視点から見ても君達が趣味の範囲でしかアカペラ活動をしない理由がわからないからね」

 

「「「ッ……」」」

 

なな達女子三人組が聖からの残酷な宣言に唖然とする中で影人は彼女となな達三人との間にある絶対的な距離感の差を感じてしまう。

 

「(確かに言い方はキツいけど聖さんの言葉が理解できないわけじゃない。ただ、俺達がアカペラをあくまで趣味の範疇でやっている内は俺達と聖さんの間にある越えられない壁はきっと無くならないんだろうな)」

 

影人は今回のやり取りの中で聖の考えが常人に理解できないように彼女もまた常人の意見が理解できないのだと考える。

 

「さて、そろそろ質問は終わりかな?」

 

「はい。お時間を取らせてすみません」

 

「ふふっ。君達がスッキリしたかどうかはわからないけど、私達はここで止まるつもりなんて無い。だから日々上を目指してチームは進化する。そのためのベストメンバーを揃えて最高のアカペラを提供し続ければ、私達の理想に届くと信じている」

 

聖がそう言いつつ今回も答えを返す事ができなかった玲音の方を向いて改めて宣告した。

 

「それとレイ、あなたがどれだけ迷ったとしても私はParabolaを最高の布陣で揃えるためにあなたを諦めるつもりは無い。結果的に私の元に来る事になるのだから早いうちに覚悟を決める事をお勧めするよ」

 

「……はい」

 

玲音は色々と複雑そうな顔だったが、今日の所はこの辺にしてもらえたらしい。そして、影人達はこの後のアカペラライブの前に学校を回るという事でParabolaの控室から出る事になるのだった。

 

「レイレイ先輩、先程は余計な話を持ち込んでしまいすみませんでした……」

 

「カゲ先輩は何も悪く無いですよ。ゾイさんも私達の考え方が普通って言ってましたから」

 

「……だけどさ、こうして聖さんを見るとやり方は歪だけど、自分の目標に向かって努力を重ねているのと何も変わらないんだなって事は理解できた。勿論、努力のアプローチの仕方が特殊だから周りからは受け入れられないパターンが多いんだろうけど……」

 

影人は聖との会話を通してParabolaが個人のやる気とその能力が伴っているのなら幸せにアカペラをできる場所なのだと知る事ができた。ただ、その求められているレベルがとてつもなく高いというのは留意すべき事になるのだろうが……。

 

「それと影人君、さっきはありがとうね」

 

「レイレイ先輩?」

 

「さっきミズキさんに質問したの、私が対応に困ったのを見たからでしょ」

 

玲音は見抜いていた。影人が聖相手に話をしたのは自分を助けるためなのであると。そして影人もその質問に頷く。

 

「はい……。あ、でもParabolaのやり方に疑問を覚えたのは実際そうですけどね……」

 

「でもそういう理由で質問するの、影人君らしいよね」

 

「はい。私達もParabolaがどういう所なのか……全部じゃないですけど理解できた気がします」

 

「むしろ、今日うた先輩達が来なかったの……ある意味良かったかもです。あんな話……うた先輩、プリちゃん、メロちゃんが聞いていたらと思うと……」

 

なな、こころが今回の件で影人らしい一面を見られたと納得する一方、夢乃はここにいない三人が今日来れていなくて良かったと感じ取る。少なくとも、歌を純粋に楽しむ目的で歌っているうたは今回の話を聞いたら真っ向から聖相手に物申しそうなのだから。

 

「それじゃあここからは大学の学園祭を回ろうか、アカペラライブまで時間はあるしね」

 

「待ってました!」

 

「どんな感じなのか楽しみ〜」

 

こうして、玲音の提案で大学の学園祭を回る事になった影人達。同時刻、大学の入り口付近では掲示板に貼られたParabolaのアカペラライブの張り紙を見る一人の女子高校生がいた。

 

「……良し」

 

その女子高生が先程影人達が話をしたParabolaのメンバーと直接話をしてバラバラになった自分のアカペラチームをまた一つに戻すためのヒントを得るのだが……それはあくまで影人達とは全く別の話だ。*1

 

その頃、チョッキリ団アジトではスラッシューが食い入るようにアジトにあるテレビでアイドルプリキュアのライブ曲を観ていた。

 

『『『『『『重なる想いの強さを歌に乗せて〜♪届けるに来たよ Sing For You 照らしてみせる〜♪溢れる思いを残らず伝えるんだ〜♪』』』』』』

 

「………」

 

そんなスラッシューがライブ映像を夢中になって観ているのを更に遠目から見ているチョッキリーヌは彼女に話しかけづらそうな顔をしている。

 

「す、スラッシュー……」

 

「………」

 

チョッキリーヌはそれでも用事を済ませるために話しかける……が、やはりスラッシューは画面を観たまま答えない。

 

「なぁ、すら……」

 

「そっとしてあげてくださいよ。チョッキリーヌ先輩」

 

「なっ!?」

 

チョッキリーヌはどうにかスラッシューと話そうとするが、そんな彼女を止める形でジョギが話しかける。そのため彼女はいきなりの事に思わず驚いてしまう。

 

「あ、アンタまた……」

 

「先輩が集中してるスラッシュー様に何度も話しかけるからですよ?」

 

どうやらジョギの言い方から察するに、今のスラッシューは誰かと話せるような状態では無いらしい。そのためジョギが代わりにチョッキリーヌが話しかけるのを止めたのである。

 

「なぁ、何でスラッシューはあんな事してるんだい?」

 

「うーん、弱点克服……って言えば良いでしょうか。ほら、スラッシュー様は最近アイドルプリキュアと出会う度に不調になってるでしょう?ですからこうやってアイドルプリキュアを見ても大丈夫なように弱点を克服しようとしてるんです」

 

チョッキリーヌはそれを聞いて微妙な顔つきになる。正直スラッシューが不調化する原因はアイドルプリキュアとの会話にあると考えており、姿だけを見て大丈夫になった所で無意味な気がしてならないのだ。

 

「……チョッキリーヌ先輩はスラッシュー様の事が心配なんですか?」

 

「ッ!?べ、別に……あんな奴どうなっても……」

 

「ふーん?その割には最近スラッシュー様と話してばかりじゃないですか。少なくとも部下がいた頃とは大違いでしょう?」

 

「ぐ……」

 

チョッキリーヌはジョギにまた痛い所を突かれて口籠もる。正直スラッシューに何も感じてないと言えば嘘になるし、ここ最近の彼女を心配しているのもそうだ。だが、それをこの生意気な後輩であるジョギから一々突かれるのは嫌らしく。

 

「ほらほら、認めたらどうですか?スラッシュー様が心配だ。いなくなったらどうしよう〜とか」

 

「煩いわね!今日は私が出る!世界中をクラクラの真っ暗闇に染めてやるんたよ!」

 

チョッキリーヌはそう言って拗ねてしまうと一人でさっさと出撃してしまう。それを見たジョギは笑みを浮かべた。

 

「本当にスラッシュー様の言う通り単純で扱いやすい先輩ですよ。……それに、スラッシュー様はダークイーネ様にとって必要な存在。そう簡単にアイドルプリキュア相手にぶつけて不調になってもらっては困るからね」

 

どうやらスラッシューをテレビの前に釘付けにさせたのはジョギの仕業らしい。そんでもってアイドルプリキュアの対応を先輩であるチョッキリーヌが自ら動くように仕向ける辺り、本当に食えない男である。

 

それから場面が戻り、影人達が来ている大学にて。チョッキリーヌが姿を現すと誰かターゲットがいないか早速地上に降り立って歩きつつ探す。

 

「ふん、アイツ……本当に生意気な事ばかり言ってきて……」

 

チョッキリーヌが苛々を募らせつつ歩いているとその視線の先にアイスの自販機があった。そしてそこには一人の女子高校生のような少女が立っており、その少女はくすんだベージュ色のセミロングヘア。髪には黒いリボンを結び、頭頂部には2本のアホ毛が生えている。

 

また、彼女の瞳の色は紫で腕には紫の狐のようなぬいぐるみを抱えていた。そして、首からは何かの小さな杖の形をした首飾りをしている。

 

「……あ。デザインが違うけどアイスの自販機、この時代にもあったんだ」

 

少女が早速アイスを購入しようとするが投入口にお金を入れようとした瞬間、手元が狂ってお金を落としてしまう。

 

「ッ……」

 

すると転がったお金がチョッキリーヌの元に行くと彼女は思わずそれを拾う。

 

「これ、落としたよ」

 

チョッキリーヌは反射的にお金を拾うとそこにやってきた少女へとお金を返す。それを受け取った少女は少しだけ無言になってからお礼を言った。

 

「……ありがとう」

 

「ふん、別に……大した事なんてしてないよ……」

 

そう言ってチョッキリーヌは気恥ずかしかったのかさっさとその場から去っていく。それを見送った少女はチョッキリーヌの姿に何かを思う。

 

「……あの人」

 

「るるかも気になった?」

 

すると突如としてぬいぐるみが喋り始める。どうやらこのぬいぐるみもプリルン達同様に妖精らしい。そして、るるかと呼ばれた少女が続ける。

 

「うん、マシュタンの占いの人。多分あの人だ」

 

「ええ。確かに占いに出た特徴と一致するわね」

 

どうやら、この妖精の名前はマシュタンと呼ぶらしい。そんな中でるるかは面倒くさそうな顔を見せる。

 

「それにしても、何でわざわざ私だけ。あの二人に任せれば良かったのに。しかも、転移のせいでアルカナ・シャドウの方にしかなれないなんて」

 

「仕方ないわ。あの子が作った装置で転移できるのが人間一人分だけだったし、あの子達は二人じゃないとプリキュアになれない。変身の件は……まぁ考えても仕方ないわ」

 

マシュタンと呼ばれた妖精がそう説明しつつ黄色い猫の妖精を思い浮かべる。どうやらこのるるかという少女もマシュタンもどこかから転移してやってきたらしい。

 

「兎に角、あまりこっちの時代にいるわけにはいかないわ。さっさとマコトジュエルの持ち主を助けるわよ」

 

「……うん」

 

こうしてこの少女、森亜るるかとそのお供妖精であるマシュタンの二人はマコトジュエルと呼ばれる物を守るために行動を開始するのだった。

*1
この女子高生が具体的にどんな事をParabolaのメンバーと話したかはうたミルのアニメ8話を観ることをお勧めします




今回ラストで本来ならこの時間軸にいないはずのたんプリのキャラである森亜るるかとマシュタンが出てきましたが……一応設定としてはアルカナ・シャドウが名探偵プリキュアとして合流した後の時間軸で尚且つ転移はポチタンの力を利用した装置をジェット先輩が制作。それを利用しています。

ただ、ポチタンの力が不完全なので仮にあんなが乗っていたとしても一日すらこの時代に存在できません。そのため一時的な帰還にしかならないという。何ならここはまだ2025年ですから本来の彼女のいた時間軸では無いので……。

加えてるるかは光堕ちしてる設定ですが、転移の影響でアルカナ・シャドウにしかなれないという状態ですね。

この時点で何ともご都合主義感マシマシですがそこはご了承ください。

それではまた次回もお楽しみに。
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