キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
チョッキリーヌが撤退し、ソウルビートがハートガーデンを解除するとそのタイミングでアルカナ・シャドウはその場を去ろうとした。
「あ、あの!」
「……何?」
するとキュンキュンが去ろうとしていた彼女へと声をかける。それを聞いたアルカナ・シャドウが振り返るとまずはキュンキュンがお礼を言う。
「助けてくれてありがとうございました!」
「強いんですね」
「……別に。私はそのペンライト?に宿ったマコトジュエルを守っただけ」
「マコトジュエル……」
ソウルビートがアルカナ・シャドウにペンライトにマコトジュエルが宿っていると聞いて思わずペンライトを見つめる。
「そうだ。アルカナ・シャドウってこの時代のプリキュアじゃないって言ってたけど」
「……うん。過去から来た」
「へぇ、過去から……ってええっ!?」
「タイムスリップして来たって事?」
ウインクやキュンキュンはアルカナ・シャドウがあまりにもサラッと事実を言うものだから混乱した様子であり、ソウルビートはまだどうにか平然とした様子を保つと少しだけ無言になってからアルカナ・シャドウへとキラキライトを差し出す。
「これ、あなたのでしょ?」
「ああ。だけど、マコトジュエルってやつを守ったのはアルカナ・シャドウだ。だからマコトジュエルはアルカナ・シャドウに渡すよ」
「……良いの?」
「ああ」
ソウルビートから許可を貰ったためにアルカナ・シャドウが手を翳すとキラキライトの中から銀色のソウルリンクライト型の宝石のような物が出て来た。そしてそれをアルカナ・シャドウがそっと手に取る。
「……確かに受け取ったよ。それじゃあ私は元の時代に帰るわ」
「えっ、もう行っちゃうんですか?」
「私は本来この時代にはいない人物。あまり長くここにいるのは危険」
アルカナ・シャドウの言う事は正しい。この時代の人間では無い彼女が下手にこの場に存在し過ぎるのは危険だろう。
「わかった。アルカナ・シャドウ、元の時代でも頑張れよ」
「そのつもり」
その言葉を最後にアルカナ・シャドウはソウルビート達の前から立ち去る事になる。そのタイミングでダークランダーから解放して気絶していた聖が少しだけ意識を取り戻したかのように小さく動く。
「んん……」
「そうだ、聖さん!」
ソウルビート達は周りに誰もいない事を確認して変身解除。まずは聖の体調を確認しようとすると彼女は薄らと目を覚ます。
「ここは……」
「ッ、聖さん。大丈夫ですか?」
「影人君達……私、どうしてここに?」
聖はキョトンとした様子であり、何故自分がこんな所にいるかわからない様子だった。要するに他のダークランダーに取り込まれた人達と同じ反応である。
「えっと……聖さんが急にいなくなったという話をレイレイ先輩から聞いて、探しに来たらここで倒れていたんです」
「……そっか、もしかしたら疲れていたのかもね」
「聖さん、アカペラライブ。大丈夫そうですか?」
「それなら問題無いよ。開始時間はちょっと過ぎちゃったけどすぐに準備するわ。あなた達も自分達の席に戻りなさい」
聖はもう大丈夫と言わんばかりに立ち上がるとライブのために控室の方に行こうとすると数歩歩いた所で止まる。
「聖さん?」
「それと、今回の事で心配をかけたね。心配をさせた分、最高のライブを届けるから」
それは聖なりの探しに来てくれたお礼だった。影人達はそのいつも通りの聖を見てこれ以上の心配は無用と判断。それから三人は会場に戻ると待っていた夢乃と玲音が気がつく。
「お兄ちゃん達、どうだった?」
「無事に戻って来れたよ。多分今、控室に行ってる」
「影人君、ななちゃん、こころちゃん。お疲れ様」
玲音から労いの言葉をかけられて三人は自分達の戦いが無駄にならなかった事にホッとする。するとアナウンスが鳴り響く。それは公演を30分後ろ倒しにするものの、開演自体はできるという物だった。
「良かった……」
「うん、これでParabolaのライブを心置きなく見られるね」
それから少しして。Parabolaメンバーの準備が整ったという事でアナウンスが挟まれてからステージの上に五人が姿を現す。
尚、この少し前。聖が控室に帰ったタイミングで鈴蘭が本番直前にいなくなった挙げ句、開演時間を超過したタイミングで帰って来た聖への色々物申したのだが……それはここで語るのを割愛しよう。
それはさておき、Parabolaのメンバーが出てくると観客達は拍手を送る。その中で五人がステージ中央で横に並び、頭を下げると早速公演の演出のためか照明がゆっくりと消えていく。
そして、暗くなったステージの上で鈴蘭は手に音叉と呼ばれる音合わせのための道具を持つ。彼女が音叉を振ると佳凛以外の四人が声を出して調子を確認。
「「「「んー」」」」
四人のハーモニーが重なって綺麗な響きが聞こえる中、その声出しが終わると早速佳凛が付けていたマスクを外してマイクを構える。そして、佳凛によるボイパが始まった瞬間にParabolaによる歌唱が始まった。
〜挿入歌 Risky Business〜
すると演出として照明が点灯し、コーラス隊であるゾーイ、喜歌、鈴蘭の歌による三重奏で前奏が入るとリードボーカルである聖が歌い始める。
「Risky〜♪I can't turn back now♪この先に待ち受ける運命♪」
影人達を含めた観客達は最初のワンフレーズが歌われた時点で既に曲に魅入ってしまっていた。それ程までに完成されたハーモニーがそこにあったのである。
「Risky〜♪Hell or heaven?神のみぞ〜知る God only knows baby〜♪」
すると照明の色が変化すると同時にリードが喜歌へと変化。Parabolaの特徴としてリードが複雑に入れ替わるというものがある。何しろ五人のうち、ボイパの佳凛とコーラスがメインの鈴蘭を除く三人は全員リードも可能となっているわけで。
それは正に能力値でゴリ押しするかのような質による暴力とも言えるような圧倒的な歌声がParabolaの魅力だった。
「答え無くても〜♪この世界は廻る♪容赦なく時はやってくる〜♪Yeah〜 oh eh eh eh♪未来はきっと素敵だって♪」
更にリードが変わってここからはゾーイのターン。彼女のリードを中心に歌がサビに向かって盛り上がっていく。
「時に優雅♪また乱暴なこの風のように〜♪I wanna live, wanna live…〜♪」
ここで上からの照明が変化して暗めな雰囲気に変えつつ聖のリードへと戻る。
「Wanna trick me or break me down?♪隠された光の中♪Gonna hurt me and get me back?♪What a risky business♪」
影人達四人はこの時点で改めて認知した。今の自分達ではまだまだプロとしてアカペラの歌を届けるには遠いという事実を……。また、ここにはいないうた達にもこれを伝えないといけないとも感じ取る。
「それでも意味があるなら♪何度だって I'm a fighter♪掴めるまでやめないわ〜What a risky business♪」
そうこうしている内に照明が変化。暗めの雰囲気から上からの白い照明に照らされる形で一筋の光が差し込むような演出が入る。
「Wanna trick me or break me down?♪真実さえ闇の中〜♪Gonna hurt me and get me back?♪……Risky♪」
曲はとうとうラスサビに入り、コーラス隊の三人を中心に声による音色を奏で、それに照明が混ざる事で会場の空気を圧倒。
「What a risky business♪」
Parabolaのメンバーが最後のフレーズを歌い終わると曲が終了。会場内には素晴らしい歌を披露してくれたParabolaのメンバーに向けた拍手で埋め尽くされるのだった。
それから暫くして。日がほぼほぼ落ちてきた頃。影人達は会場から出てくるとParabolaのライブの余韻に浸っていた。
「Parabolaのライブ……圧巻過ぎてあっという間に終わってしまいましたね!」
「これが大学アカペラの最高峰……」
「私達が少しでも近づくべき場所」
これまでアカペラに関しては他のチームの物をちょくちょく履修してきた影人達。だが、生でアカペラライブを目撃したのは初めてであったのに加えてParabolaによる圧倒的な個性と個性のぶつかり合いの先に存在するライブを見て玲音以外の全員が心を鷲掴みにされていた。
「それにしても改めてレイレイ先輩の凄さがわかりますよ。あのチームに勧誘されるなんて」
「あはは、そんなに大した事無いよ。むしろ入ってからの方が大変だしさ」
玲音が思い浮かべるのは聖によってあっさりメンバーから外された人達の事だった。Parabolaは常にベストメンバーでやるべきでそれから外れた者は容赦無く落とす。それが聖の方針なのだから仮に玲音がここに入ったとしても彼女が納得できるだけの質を確保できないのなら結局は外されて終わりなのである。
「改めてですけど、レイレイ先輩はParabolaに入りたいんですよね?」
「……そうだね。本音を言えばそうなるのかな」
ただ、今の玲音の言い回しを見るにまだ決心はつかなさそうだった。それでも前よりは迷いが薄れてきているのは影人に何となく伝わってくる。
「でしたら、俺達は楽しみに待ってます。レイレイ先輩も加わったParabolaのアカペラ。今日のライブを観て楽しみになったので」
「ふふっ、そっか」
それから四人は時間帯的にもうはなみちタウンに戻り始めないといけないために大学を出て駅に向かう。玲音も折角ならという事で四人と一緒についてきた。
「それじゃあ、レイレイ先輩。私達はこの辺で」
「うん。今日はわざわざ来てくれてありがと」
「全然大丈夫ですよ。むしろ、お礼を言うのは私達の方ですから」
「Parabolaのレベルを観て、私達ももっと上手くならないといけないと思えました。できればここにいない三人のために録画とかできれば良かったんですけど……」
Parabolaに限らずこういうライブは原則撮影禁止になる物が多い。そのため、こればかりは仕方ない所だろう。
「うーん、それなら私が聖さんに頼んで今日のライブを撮っておいた物を動画としてもらえるようにしよっか」
「うえっ、良いんですか!?」
「うん。それに、今日の事を考えたら聖さんも嫌とは言わないと思うよ」
それは聖がダークランダー化してしまった件である。そして、聖も影人達のお陰でアカペラライブの会場に戻れた事を何となく察していた。そう考えると玲音と言うよりは影人達からのお願いを断るわけにもいかない。
つまり、次の玲音のレッスンの時には今日のアカペラライブの動画を確保できる可能性が高くなるわけだ。
「そうだ。ライブと言えば……今度の11月の頭。うちの学校、手鞠沢高校で学園祭があるんだけど……。その時に私の所属してるアカペラ部の方でライブがあるんだ」
「えっ、レイレイ先輩のライブ!?」
「心キュンキュンします!是非行きたいです!!」
玲音からの言葉にこころと夢乃は一発で食い付くと行きたいという意思を示す。
「私も行きたいです!きっとうたちゃん達も行きたいって言うと思いますよ」
「それなら全員行きたいって事で決まりだな。……ただ、今度は今回みたいな宿題やってないせいで行けないオチにだけはならないようにしないとだけど」
何にせよ、予定が変に被らない限りはこの日に文化祭に行く事が決定。そして、再びそこで会う事を約束して影人達は玲音と別れてはなみちタウンへと帰っていくのだった。
その頃、大学の近くではキュアアルカナ・シャドウの変身者……森亜るるかがマシュタンと合流した。
「るるか、今日もお疲れ様」
「うん……。でも、マコトジュエルを貰えるとは思わなかった……」
「あらあら。ま、でもそれは本人が良いって言った上で……でしょう?」
「うん。それに、持ち帰れる記念品が欲しかった。お金はあんなが持ってきていた分と一部交換したけど……できる限りは戻さないといけないし」
尚、るるかがこの時代のお金を持っていたのは彼女が元いた時代にタイムスリップしてきた子から借用したらしい。勿論等価交換してるので問題は無いわけだが……。
「マコトジュエルを記念品って……。持ち帰ってもポチタンが吸収するでしょ」
「それでも手ぶらで帰るよりはマシ」
「やれやれね……っと、そろそろ帰る時間かしら」
その瞬間、二人の目の前に時間移動をするためのトンネルが出現。そして、るるかとマシュタンはその中に入ると元いた時代……1999年へと帰還するのだった。彼女達がここから先どうなるか……それを影人達が知る事は無い。
〜おまけ 宿題組の結末〜
「「お、終わったぁあ……」」
影人達がはなみちタウンに向けて帰っている頃。一日かけてようやく宿題を終えたぷりんとめろん。二人は姫野に連れられてグリッターに来ており、そこにうたがココアの淹れたマグを持ってきた。
「お疲れ様、二人共」
「うた、ありがと……」
「ふぅ……やっと一息ね」
ぷりんとめろんがココアを飲んで一休みする中、姫野も姫野でホッとした顔を浮かべる。
「はぁ……どうにか終わって良かった。と言うか、何で一日もかかる量を溜めてたんですか。あなた達、学校に通い始めてからまだそこまで時間経ってないでしょ?」
「えーっと……宿題を出されてから後回し後回しにしてたら……こんなに溜まっちゃった」
「溜まっちゃったじゃ無いですよもう……」
いずれにせよ、今回の分の宿題は完了した。これからもちょくちょく定期的に宿題はやらせないといけないなと思いつつ姫野はこれ以上二人を責めない事にする。
「うたも読書感想文終わったの?」
「えへへ、何とかね」
めろんの問いにうたが苦笑いしつつ頷く。どうやら彼女の方もどうにか終わったらしい。こうして、アカペラライブの裏で進んでいた宿題組の作業も無事に終了するのだった。
今回、玲音が影人達を学園祭に誘う描写がありました。ちなみに、この作品はうたミルの話とリンクしているのでうたミルの時系列的には手鞠沢高校のライブはアニメ9話と同じ日付です。
ただ、うたミル9話にある学園祭は11月4日の火曜日……平日なんですよ。それだと影人達が行けないためここだけ原作と日付が変わる形になってしまいます。そこだけご理解の方をよろしくお願いしますね。
また次回も楽しみにしてください。