キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
翌日に控えた単独ライブのためにそのリハーサルをするべく現地入りした影人達。彼等はプリキュアに変身すると早速扉を開けてホールの中へと入る。そこに広がっていたのはアイドルプリキュアに合わせたステージの姿であった。
「「「「「「わぁ……」」」」」」
「キラッキランラン〜!!」
中央にデカデカと存在するスクリーンの下にあるピンクの蝶々結びをされたリボン。そしてリボンを中心にしてスクリーンの周囲を取り囲むようにしてあるハートマーク。
リボンの両サイドには五線譜があると中央からそれぞれのトレードマークであるハート、キラキラマーク、雫、音符、二つの音符が連なった連符、星が左右対称に存在。ステージには中央に登場するための入り口とそこから下に広がる大きな広間に行くための階段。両サイドにはその場所だけ高くなるように作られた二つの台とそこから伸びる階段があった。
加えてアイドルプリキュアに合わせているからか、全体的にキラキラとした雰囲気が感じられるようになっているのもまた大きな特徴と言える。
「可愛いセットだね!」
「心キュンキュンしてます!」
「これは想像以上のステージの出来だな……。設営したスタッフさん、お疲れ様です」
ソウルビートは興奮しつつもこの会場の設営するための苦労を考えると会場準備をしてもらったスタッフさん達への感謝の気持ちが湧き上がってきた。
「大きいハートがある!」
「大きい音符もあります、お姉様!」
また、当然ながらズキューンやキッスもこの光景に嬉しそうにしており、色々とステージに対する発見を見つけていく。
そんなわけで早速リハーサル……と行きたい所ではあったのだが、田中が進行のリーダーの人に改めて確認するとまだリハーサルはやらないようで……。
「皆さーん!リハーサルはお昼ご飯の後にスタートです!一度楽屋に戻りましょう!」
「「「「「「はい!」」」」」」
アイドルプリキュアはその指示を聞いてこれ以上ステージにいても邪魔になるという事でひとまず楽屋への移動を開始することになる。
「素敵なステージだったね」
「うん、明日が楽しみ!リハーサルも頑張らなくっちゃ」
アイドルとズキューンが早速ステージを見た感想を話しているとソウルビートが考えつつ話す。
「そのリハーサル開始は昼ご飯の後ってなるとまだ少し先か」
「あはは、結構張り切っちゃったけど恥ずかしいね……」
「ですが、折角こうして舞台裏に来れていますし今のうちに色々と見て回るのも……」
そんな中でキュンキュンが今の時間があるうちにステージ裏の色んな場所を見るという事を提案する。ただ、ソウルビートの考えは少し違った。
「うーん。結果的にステージ裏を回ることにはなりそうだけど、その前にもっとやらないといけないことがあるかな」
「え?それってどういう……」
キュンキュンが疑問符を浮かべていると六人の進む先。カーブした廊下の向こう側から一人の男性が高く積み上がった何かの箱のような物を急いでいるような様子で運んでいた。
「急いでこれを……って、うわっ!?」
男性は急いでいたせいかちゃんと前を向いておらず。六人とぶつかりそうになってしまう。そのため、慌てて止まると前を見れていなかった事を謝った。
「すみません!」
それから男性は急いである場所に向かっていく。それを見たソウルビートは何となく彼の立ち位置がわかってきた。恐らくこの男性はステージ設営をやり始めたばかりの新人であり、そういう立ち位置であるために雑用の仕事を引き受ける事が多いのだろう。
それからソウルビート達がまた廊下を楽屋に向けて歩いていると先程の男性が今度は後ろの方から走ってくる所だった。
「あれ?さっきの人また……」
「あー……。やっぱり雑用系全般を任されてる感じかぁ」
その証拠に男性は先程とは違って沢山のペットボトルのお茶を抱えており、今度は各所に飲み物を配っているのだと察せられる。
『あれ……ヤス、お茶が足りないぞ』
「い、今持っていきます……ッ、うわぁあっ!?」
ヤスと呼ばれたその男性はお茶を持って急いで走っていたが、片手に連絡用のトランシーバーを持ってしまったがためにバランスを崩して転んでしまう。同時に床へと彼が持っていたペットボトルが散乱。ヤスは慌ててそれを拾い始めた。
「っと……」
すると、ペットボトルの中の一本が床を転がってアイドルの元にまでやってきていた。そのため彼女はそれを手に取るとヤスの方を向く。
「うぅ……どうしよ……」
ヤスはペットボトルを落とした事でお茶に泡が立ってないか心配しており、現に何本かは多少なりとも泡が立ってしまっていた。そして、やらかしをして落ち込んだような顔の彼を見てアイドルが歩いて行くと優しい笑顔で話しかけた。
「はい、どうぞ!」
「ッ!?きゅ、キュアアイドルさん!?すみません、ありがとうございます!」
ヤスは出演者のアイドルに拾わせてしまった事に慌てた様子で差し出されたお茶を手に取る。
「どういたしまして!」
「失礼します!」
そして、また慌ただしくその場から走り去って行く。それを見たアイドルはヤスの事が心配になったのか……他の五人にある事を提案する。
「ねぇ、皆。あの人が大丈夫か……見に行っても良いかな」
「ふふっ、アイドルならそう言うと思ってたよ」
「はい!」
それから六人は男性の後を追う形で廊下を移動するとスタッフ達の控室にまで到着。そこでは部屋の中でヤスが彼の上司と思われる人物から指摘を受けている所だった。
「慌てて走るなって」
「すみません!」
どうやら、先程までの慌てた状態で廊下を走り回っていたのが他の進行の邪魔になってしまったのか……はたまたただ単に危ない事を指摘されただけなのか……もしかすると転ぶ所をトランシーバー越しに聞かれてしまったのか。何にせよ危険だった事に変わりは無く、それを言われている所だった。
そして、その様子をアイドルプリキュアの六人が物陰に隠れて見ているとその中のアイドルがある事実に気がつく。
「そっか……。ライブって、私達だけじゃなくて……沢山の人達がいてできてるんだ」
「ああ。ステージで歌って踊る俺達だけがいればそれでライブができるわけじゃ無い。照明、音響、舞台装置を運び、設営する人。また当日では観客達を誘導する人、物販でグッズを売る人達。もっと言うならこの会場を確保してくれた田中さん達やこのライブその物を告知する人。一回のライブ開催のために多くの人が関与している」
ソウルビートの解説を聞いてアイドルは物陰から出るとそんな彼女の意図を察した五人もその後に続き、目の前の控室でやり取りをしているヤスやその仕事仲間に上司達の前に出て行く。
「ほら、お前の分」
「すみません……」
「失礼します」
「あの!」
そして、六人はスタッフ達の前に並ぶと早速今回のライブを開くために尽力してくれている彼等への感謝の気持ちを表す事になった。
「私達、必ず最高のライブにします!よろしくお願いします!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
ライブをするために彼等の力が必要不可欠だとわかり、その気持ちをこうして伝える事で彼等もまたアイドルプリキュアのために頑張る力が湧いてくると言う物だった。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
「………」
スタッフ達も同じように挨拶で返す中、新人であるヤスはアイドルプリキュアがこうやってお礼を言ってくるのが意外だったのかすぐに反応する事ができず……。そのため上司はそんな彼へと挨拶するように促した。
「ほら、ヤス」
「えっ、あっ!!よ、よろしくお願いします!!」
そしてそうなるとヤスも頭を下げざるを得ず、慌てて挨拶をする事になる。それから改めてソウルビート達が楽屋に向けた移動を再開しようとするとキッスがソウルビートに話しかけた。
「ソウルビート、もしかしてさっきあなたが言おうとしたのって」
「ああ、このライブを作ってくれているスタッフの皆さんへの感謝をちゃんと伝えないとなって思ってさ」
「やっぱりそういう所はソウルビートらしく気が回ってますね!」
「それじゃあ折角だし、挨拶回りしに行こう!」
こうして、昼ご飯前に六人は会場の挨拶回りのために裏方の方を移動する事になるのだった。
その頃、パシフィコ横浜の建物の屋上ではスラッシューが姿を表すとその顔つきは明らかに不機嫌な物だった。
「アイドルプリキュア……許さない……絶対にライブを潰して真っ暗闇を……うん?」
スラッシューは未だにライブをやろうとしているアイドルプリキュアへの憎悪の気持ちが強く出ており、ライブを潰すつもりで動いていた。そんな時、彼女が下を向くとその視界には丁度建物から出てきた新人スタッフ……ヤスを捉える。
「はぁ……」
ヤスは溜め息を吐くとパシフィコ横浜の外にある海が見える広場のような場所に通じる階段部分で一人弁当を手に落ち込んでいた。
「はぁ……またドジしちゃった……。何で俺はいつもこうなんだろう……」
スラッシューはそれを見るとターゲットとなる闇を見つけたという事でそれを狙う事を考えるが、僅かに渋そうな顔を見せる。
「ッ……ダークランダーを呼べるだけの闇は見つけた。……だけどあの程度で今のアイドルプリキュア相手に勝てるかしら……」
どうやらスラッシューはアイドルプリキュアに勝てるだけの質の高い闇を探しているらしく……。ヤスの持っている闇だけでは物足りなさそうな顔つきを見せていた。
「ッ、だけど他に眼に見える闇は無い。というか、誰も彼もこのライブをやりたい気持ちでキラキラしてて……」
スラッシューはアイドルプリキュアのライブに関連してキラキラしているのを見るうちに苛立ちがどんどん高まっていく。そして、使える闇が他に無いのならこれ以上は待てないという事でヤスの闇を使おうとする。
「仕方ないわ……あの闇でアイドルプリキュアに勝てるかは微妙だけど……私も加われば行けるはず。あなたの闇を……うっ!?」
スラッシューがヤスから闇を呼び起こそうとした時だった。突如として頭に痛みが走るとまた声が響いてくる。
“お願い……もう止めて!!私、皆が苦しむ姿なんてもう見たく無い……”
その声はスラッシューの声に近かったものの、今の彼女よりは優しそうなそんな雰囲気を与えるような声であった。どうやら、その声はスラッシューがダークランダーを呼んでライブをメチャクチャにされるのが嫌らしい。
「ッ、うる……さい……。ライブなんてもう懲り懲りよ……あんな、あんな、あんな惨めな想いをするだけの場所なんて消え去ってしまえば良い!!」
スラッシューは脳内から聞こえた声を力で無理矢理捩じ伏せるとすかさずターゲットにしていたヤスへと再度視線を向ける形で彼をターゲットにする。
「あなたの闇……頂くわ」
その言葉と同時にスラッシューがヤスの持っている闇……つまり黒いリボンの所に直接ワームホームを生成。そのままリボンを掴むと引き抜いてしまう。
「うわぁああっ!?」
ヤスの持っていた闇の黒いリボンがスラッシューの前に出てくるとそのままスラッシューは闇を解き放つ言葉を言い放つ。
「光を切り捨て、闇へと呑まれなさい」
そのまま黒いリボンが解かれてしまうとヤスは闇の中に力が閉じ込められてしまう。同時にスラッシューはダークランダー召喚用の赤い水晶を持ち、彼女はダークランダーを呼び出す。
「現れるのです、ダークランダー!」
「ダークランダー!」
今回の個体はお弁当箱のボディに両肩に当たる部分にはペットボトルを装着したような武装をした物であった。
その頃、ソウルビート達はある程度の挨拶回りを終えたという事で楽屋入りすると早速昼ご飯という事で置いてあった弁当箱の蓋を開ける。その中には色とりどりの具材が所狭しと入っており、とても美味しそうだった。
「わぁああっ!」
「美味しそうです!」
「うん!」
お昼ご飯の弁当を開けた所で早速六人は食べようとする。……しかし、ダークランダーの出現が影響してズキューンへといつものように闇の気配の悪寒が駆け巡ってしまう。
「ッ、ブルっと来た!?」
「えっ……」
「嘘だろ。アイツら、俺達のご飯前に来るなよ……」
ソウルビートは昼ご飯直前に襲撃を仕掛けてきたチョッキリ団への怒りを露わにするが、もう来てしまったものは仕方がない。放置するというわけにはいかないために現場に向かうという流れになった。
「皆、行こう!」
そして、パシフィコ横浜の建物の外ではスラッシューがダークランダーに暴れるように指示を出している所である。それは彼女の怒りを表しているようにも思えた。
「ダークランダー、遠慮や容赦は要らないわ。まずはライブ会場付近をメチャクチャにして人が近寄れないようにしなさい」
「ダーク……ランラン!!」
ダークランダーは両肩のペットボトルからエネルギー弾を砲撃のように射出。周囲に被害を与えて人々は恐怖のあまり逃げ惑った。
「ダークランダー、もっともっと破壊しなさい!ライブ会場に寄ってきた人を全て追い返すのです!」
「ダーク……」
「そんな事させない!」
するとこのタイミングでソウルビート達六人が到着。スラッシューは邪魔が入った事で苛立ちを露わにする。
「チッ……アイドルプリキュア!」
「ッ……中にさっきのお兄さんがいる!助けなきゃ……」
するとズキューンがいつもの癖で中を見るとそこにヤスが閉じ込められているのを確認した。
「ッ、あの新人スタッフさんか」
「キッス!」
「はい、お姉様!」
キッスが跳び上がると先に変身を済ませているためにいきなり投げキッスを使用。
「お願い、チュッ!ハートガーデン!」
これによりいつも通りにハートガーデンを展開するとダークランダーごと自分達をその中に移動させるのだった。
また次回もお楽しみに。