キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
プリキュアシンガーズの3人との顔合わせも終わり、リハーサルも無事に済んだ影人達。そして、とうとうアイドルプリキュアライブが翌日に迫ったこの日の夜。
ここは黒霧家。そこでは夢乃が廊下を歩いており、影人が自室に一人でいるのを確認済みだった。そのため前日と同じような調子で夢乃が部屋をノックする。
「お兄ちゃん、今良いかな?」
「ッ……夢乃、ちょっとま……」
「む、じゃあ開けるね。えーい!」
「は!?」
その瞬間、夢乃は影人が否定的な答えを返したのを聞いてこのままでは埒が明かないと思ったのか……。影人が答えを返し切る前に不意打ちで扉を開けると部屋へと突入。すると影人は自身の勉強机に座って何かと睨めっこしている様子だった。
「夢乃お前、俺が良いって言ってないのに勝手に開けるなよ」
「えー?何の事かな〜」
「はぁ……やっぱ俺がダメって言ったのをわかってて開けたか」
影人は呆れ果てた顔つきで頭に手を置く。すると夢乃は影人が睨めっこしている物を見て予想通りと言わんばかりにそれを指摘する。
「そんな事よりもさ、お兄ちゃんそれ……」
「ッ、そんなの明日のライブでの動きを……」
「ふーん……」
それから夢乃はまた影人が反応するよりも早くサッとライブに関するメモが描かれたノートを手に取った。そしてそこには当日の動きやら注意点やらがビッシリと描いてある。それを見て夢乃は目を細めた。
「うーえっ、お兄ちゃんもしかしてこれ。アイドルプリキュアのメンバー全員分のメモ描いてない?」
「うっ……そ、それは……」
「図星だね。……もう、お兄ちゃんちょっと気にし過ぎだよ?」
夢乃はいつも通りの過度な心配性になっている兄へとジト目を向ける。明日のライブを心配するのは良いのだが、流石にこれはやり過ぎだ。
「明日のライブ、絶対成功させるつもりでいたら……つい何度も確認してて……」
「お兄ちゃん肩の力入り過ぎ。そんな状態だと逆にこころ先輩とから心配されるよ?」
影人はそう言われたものの、やはり顔つきは浮かない。この辺りは彼の悪い癖だ。必要無いのに他人の心配ばかりをする。そして、そのせいで自分の事が抜けてしまうという本末転倒展開のテンプレだ。
「ぐ……そりゃそうだけど……」
「あーあ、こんなにガチガチで緊張やら心配やらしまくってるアイドルプリキュアを観客が観たらなんて思うだろうね〜」
「ッ、夢乃お前……あっ」
影人は夢乃に挑発されてムキになってしまうと彼女への怒りの感情を向ける。……ただ、それと同時に怒りという自然な感情が湧いたからか一瞬だけ肩の力が抜けた。そして、それに気がつくと影人は止まる。
「ね?お兄ちゃんさ。折角の晴れ舞台なんだからもっとリラックスしようよ。皆をキラッキランランにするならハプニングとかが起きてもそれを丸ごと楽しむ気持ちにならなきゃ。固い顔してても誰も笑顔になってくれないよ」
「……そうだな。悪い、夢乃」
「ふふっ、明日。楽しみにしてるからね!」
「ああ、最高のライブ……届けてみせる」
影人は夢乃が部屋から出て行くのを見届けると先程まで緊張と周囲のフォローばかりを考えてメモを必要以上に何度も読み返していた自分が段々と馬鹿みたいに思えてきた。
「すぅ……ふぅ……」
そして、影人は深呼吸をしてから自分の頬をペチペチと両側から軽めに叩く。
「リラックスして、自然にやる……」
すると影人のスマホにメッセージが届くとそこには彼女であるこころからの名前が表示されていた。
「こころ……」
そこに書いてあったのは勿論翌日のライブの事についてである。そして、その中身は夢乃の言った事と概ね似たような内容であった。
「“カゲ君、お疲れ様です!カゲ君の事なのでまた色々背負い込んでガチガチになってるかもしれませんが、明日はそんな事気にせずにリラックスしてライブを楽しみましょうね!”……か。ほんと、お前ら二人揃って同じ事言ってくるなよ……」
影人は彼女からの激励メッセージに嬉しさを感じつつ、こころへのメッセージを返してから翌日のライブに備えてリラックスした気持ちで寝る事になる。
そして、とうとうライブ当日。ライブの時間はこの日の夜だ。勿論、影人達は未成年なので深夜22時以降の労働に引っかからないようにライブ予定時間は18時開演から3時間の21時までの予定になっている。
「最終リハーサル、ゲネは以上です!本番もこれと同じようにお願いします!」
『お疲れ様でした!』
そんなわけで午前中の間に最終修正を加えた上での本番と全く同じタイムスケジュールでの本番前のリハーサル。通称ゲネプロを完全に終了すると本番のある18時までの間はある程度の休憩時間である。
この間はアイドルプリキュア達は控室で時間を過ごす事になるが、基本的に影人達は変身前の姿で待機する事にしていた。
「ふぁあ、疲れたぁ……」
「まだ本番があるからな。気持ちを切らせたらダメだぞ」
「うん、でももう外には5000人の観客達が来てくれているんだよね?」
めろんが疲れたように控室の机に突っ伏す中でレイはモチベーションを維持するように話す。めろんは本番前という言葉で元気になる人間であるうた、こころ、ぷりんの3人と違ってどちらかと言えば影人のように気負ってしまう側だ。
そのため今の内に気持ちを整えておく必要があるため、珍しく疲れのままにペタンと机に突っ伏したのである。
そして、ななの方はもうすぐ開演するライブに対してそれを楽しみに待ってくれている観客達を想像して気持ちが少しずつ上がっていた。
「はい!今頃カッティンさんやザックリンさん達がグッズ売り場で頑張ってくれてますよ!」
同時刻、このライブの際にグッズ販売の売り場では人間態と化したカッティンとザックリンがメインの指揮を執る形で順調にライブを訪れた観客達へと売っていく。
「はいはい!グッズを求める奴はザックリこの列に並ぶんだぜ!」
「オススメは勿論この9色に発光するペンライトですぞ!これを振って会場内をキラキラでいっぱいにするのですぞ!」
このグッズ売り場も大盛況であり、もうこの時点で何点かの商品は売り切れていた。そのため、グッズ販売の方も大成功と言えるだろう。
場面は戻って控室。影人は緊張し過ぎず、かと言って緩み過ぎずの良い具合に気持ちが落ち着いていた。それを見てこころが話しかける。
「か、カゲ君」
「こころ、どうしたんだ?」
「凄い落ち着いてますね……。カゲ君の事だからこういう時凄い緊張して流れとかを飽きる程チェックしてるイメージなんですけど……」
「あー……それは昨日の時点の俺ならそうしてたな」
それから影人が夢乃に喝を入れられた事を話すとこころは苦笑いを浮かべる。ただ、彼女はライブに向けて興奮する一方で緊張感からかソワソワしていた。
「こころ、大丈夫か?」
「えっ、だ、大丈夫ですよこのくらい!全然平気で……」
「……凄い緊張してるだろ」
すると影人がそっとこころの手を握ると彼女は緊張で腕が震えまくっており、顔もほんの少し青ざめているようにも思える。
「カゲ君は平気なんですか?」
「いや、緊張はしてる。だけど、さっきの夢乃の話でも言ったけど今は楽しむって気持ちになってるから大丈夫なだけ」
「うぅ……」
だが、この調子だとこころは先程までの興奮はまるで緊張感を無理矢理打ち消すためにしていたかのような感じなのか……。こころは先程からずっと震えが止まらない様子である。
「こころ」
「は、はい……何でし……」
「「んっ……」」
その瞬間、影人は不意打ちでこころへと口付け……つまりキスをした。そのためこころの脳内は一瞬で真っ白になる。
「「ぷはっ……」」
「か、カゲ君!?こんな時になんで……」
「こんな時だからだよ。……不意打ちでキスしたら気持ちをリセットできるかなって」
「もう、こんなの反則ですよ……」
幸いにも控室にいる他のメンバーには二人のキスは見られなかった。そのため控室で大騒ぎにはならずに済んだものの、こころとしてはいきなりの力業解決に気持ちを持っていかれると手の震えが不思議と止まっていた。
「でもこれで、ライブを楽しむって気持ちをぶち込めるだろ」
「……はい!あ、でも今度はこんな所でその……キスは止めてくださいよ?」
「ああ、気をつける」
こうして、こころの緊張を解決した影人達。それから時間はあっという間に過ぎていくとレイが自分の仕事を終えて田中と共に控室に戻ってくると最終確認のために声をかけた。
「良し、皆。最終確認するぞ」
「ああ」
それからレイが出したのは今回のライブのセトリの改訂版であった。何しろ、プリキュアシンガーズの参加によって当初の予定よりも曲数が増えているのだ。セトリもある程度の改訂が必要なのは当然だろう。……ただし、このライブ会場で練習している時には最初から改訂版の方で申請を通しているためスタッフ側の問題は無い。
「改めてだけど、これが今回のセットリストだ」
それからレイがセットリストの表をテーブルの中央に置く形でアイドルプリキュアのメンバーとレイ、田中の8人がそれを確認する。改訂版のセトリは以下の通りだ。
1、キミとアイドルプリキュア♪Light_Up!
アイドルプリキュア、プリキュアシンガーズ
2、We are! You & IDOL PRECURE♪
アイドルプリキュア
3、エブリデイ♪UTA-OH!!
アイドル
4、Wink!Link!
ウインク
5、GR∞VE_L∞P
キュンキュン
6、なかよしJ♡YFUL
プリルン、メロロン
7、Shining Soul story
ソウルビート
8、Shiny_Shiny_IDOL
吉武千夏
MC①
9、笑顔のユニゾン♪
アイドル
10、まばたきの五線譜
ウインク
11、ココロレボリューション
キュンキュン
12、魂の鎖を解き放て
ソウルビート
13、いざ!アイドル
プリキュアシンガーズ
14、Trio Dreams
アイドル、ウインク、キュンキュン
15、Awakening Harmony
ズキューン、キッス
16、キミと繋ぐ閃光の光
ソウルビート
MC②
17、♪HiBiKi_Au_Uta♪ Solo Arrange Ver
アイドル
18、ひろがるスカイ!プリキュア〜HeroGirls〜
ウインク、キュンキュン、石井ゆみ
19、わんだふるぷりきゅあ!evolution!!
ズキューン、キッス、吉武千夏
20、大好きのキズナ
アイドル、ソウルビート、熊田紅音
21、♪HiBiKi_Au_Uta♪
アイドルプリキュア
22、ライブはきねんび
プリキュアシンガーズ
MC③
23、キミとシンガリボン
アイドルプリキュア
24、GARDEN
アイドルプリキュア
25、キミとルララ
アイドルプリキュア、プリキュアシンガーズ
MC④
26、キミとアイドルプリキュア♪Light_Up!(アンコール版)
アイドルプリキュア、プリキュアシンガーズ
ただし大好きのキズナは本来は石井ゆみの曲であるが、今回は出番数の問題もあって熊田紅音が彼女の代わりに入る形でカバーする事になる。
「それと、どんなに遅れても原則出番のある1曲前の歌の1番を歌唱している時点では待機場所にいてくれ。それを過ぎてもいないとなると流石に進行上問題が出るからな」
「オッケー!」
「お姉様の事は私が責任を持って誘導します」
「えっ、めろん!?」
「当たり前だ、お前さっきのゲネプロでも出番間違えかけてただろ」
「ああっ、影人まで!?」
出番の時に一番いなさそうなズキューンことプリルンは基本的にキッスことメロロンとセットで出るパターンが多い。そのため、彼女の誘導は基本的に一緒に出番があるキッスが担う事になる。
「良し、じゃあ最終確認も終わったし……後は出し切るだけだ」
「「「「「「(うん)(はい)(ええ)(ああ)!」」」」」」
「皆さん、あと30分で開演です」
「なら、そろそろ変身するか」
そして、6人はそれぞれの変身アイテムを取り出すと出番に備えるべく同時に変身を開始した。
「「「「「「プリキュア!ライトアップ!」」」」」」
「「「キラキラ!ドレスチェンジ!」」」
「「キラキラ!ショータイム!」」
「キラキラ!ソウルリンク!」
「「「「「「YEAH♪」」」」」」
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」
「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」
「キミと輝く、ハートの鼓動!繋がる魂、キュアソウルビート!」
こうして、6人が変身を完了するといつものチーム名名乗り……は無かった。それから6人が出番のためにステージ裏の所に行くと同じくライブに向けて待機していたプリキュアシンガーズの3人もいた。
「うう、とうとう本番かぁ」
「そうだ、折角だし円陣やろ!」
「待ってました。こういう時のお約束ですもんね!」
「ゆみちゃん、紅音ちゃん、千夏ちゃんも一緒にやろ!」
「良いんですか!?」
「わーい!」
「それじゃあ私達も!」
こうして本番前に円陣を組む形で揃った9人は手を重ねる。そして、その音頭を取るのは勿論アイドルだ。
「それじゃあ行きますよー!キラッキ〜!」
『ランラン〜!!』
円陣による気合い入れも済んだ所で開演10分前となり、いよいよ運命のプリキュアライブが開始される。アイドルプリキュアにとって初めてのこの世界でのライブ。絶対に成功させるという気持ちで心を一つにした9人は開演の時を待つのだった。
また次回もお楽しみに。