キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アイドルプリキュアが2曲の歌唱を終えると早速挨拶のために次の曲へと突入する。一方その頃、チョッキリ団アジトではチョッキリーヌが未だに動いてないジョギに対して慌てたような声を上げていた。
「おいジョギ!アイドルプリキュアのライブが始まったじゃないか!」
「そうっすねぇ」
「スラッシューの命令はアイドルプリキュアのライブを潰す事。なのに何でこんな事になるまで放置したんだい!」
チョッキリーヌの声色は明らかに焦ってる時のそれであり、それ程までにアイドルプリキュアのライブを潰すどころか開演時間になっても一向に攻撃しようとしないジョギへの不信感を募らせる物だった。
「まぁまぁ、僕が狙っていたのはこの瞬間ですよ」
「はぁ?」
ジョギはそう言うとアイドルプリキュアのライブの様子を見るためだけに購入した配信チケットによるライブ映像をバーにあるテレビに自身のスマホを接続させる事で流している。
そしてそこにアイドルプリキュアのライブが予定通り流れており、その映像がライブを止められなかったという事実を物語っていた。
「まさか、ライブを予定通りスタートさせる事が狙いとでも言うのかい?」
「ええ。そして今なら……アイドルプリキュアはライブ会場の外に現れたダークランダーへの対応はできないって事ですよ」
そう。ジョギがアイドルプリキュアのライブを敢えて無事にスタートさせたのは自分にとって邪魔なアイドルプリキュアを自分達のライブに専念させるためだ。
要するに、今なら多少外で暴れたとしてもすぐに対応する事ができないというわけだ。
「ッ……それがアンタの狙いってわけかい」
「そうそう。いやぁ、本当に楽で良いですよね。たったそれだけでスラッシュー様の命令を達成できるんですから」
そもそもの話、スラッシューの命令はアイドルプリキュアのライブを潰すという事。だから過程はどうあれ、最終的にライブを続行不可能にするなりして台無しにしてしまえば良いわけだ。
「という事はそろそろ行くのかい?」
「まぁそうなりますかね。それじゃあ、チョッキリーヌ先輩も凄く心配してるみたいなんでそろそろ行きましょうかね」
ジョギはそう言ってアイドルプリキュアのライブを公演中止にさせるために移動を開始。それを見届けたチョッキリーヌは無言になっていたがこの場にいないスラッシューの事を考える。
「(スラッシューの奴、アイドルプリキュアのライブを潰す事に関しては相当な執念があった。……一体何がスラッシューをあそこまで突き動かしているんだい……)」
スラッシューはアイドルプリキュアのライブを止める事に関して話す際にかなり神経質だったイメージだった。それ程までして止めさせたい理由があるのだろうとチョッキリーヌは考えるが、その核心にまでには至らない。
「(まぁ、今はスラッシューもいないしジョギもライブを壊しに向かった……私はライブが壊されるまでの間までライブを観ているか)」
チョッキリーヌはジョギが残していったスマホと接続したテレビから映っているライブ映像を観ることにした。これはせめてジョギがライブを壊すまでの間だけでも観ておこうという考えである。
こんな事をしている時点でチョッキリーヌもアイドルプリキュアへと気持ちが傾きつつある決定的な状況証拠であるのだが……本人にそう言ったって恐らくは否定の言葉で返すだろう。
そんな事はさておき。宣言通りアイドルプリキュアのライブ会場の外。パシフィコ横浜の付近に姿を現したジョギ。彼は周囲に真っ暗闇を持つ者がいないか探していた。
「さ〜てと。良い真っ暗闇はどこかに無いかな……っと」
ジョギはパシフィコ横浜の周辺に真っ暗闇が無いか探す。……とは言え、すぐ近くでアイドルプリキュアのライブが絶賛開催中であるために真っ暗闇を纏う人間というのはどうしても限られる。
恐らくチョッキリ団の初期の思考であるキラキラの力で召喚するマックランダー、クラヤミンダーの二種類ならすぐに召喚できただろう。ただ、それでもジョギは悲観的な気持ちにはなってない。何故なら……。
「確かにアイドルプリキュアのライブがやってるだけあって真っ暗闇が全然見当たらない。だけど、光がある所に闇は必ず姿を現す。さてと……うん?」
するとジョギの視線の先。そこにはパシフィコ横浜の所に来ているにも関わらず、明らかに暗い雰囲気を持った青年を見つける。
「うぅ……チケット争奪戦に負けた……俺にできるのはこうして外からライブの音を聴いて想像するくらい……うわぁあああっ!ちくしょおおっ!」
それはライブのチケットの申し込み後に行われた抽選において選ばれず。アイドルプリキュアのライブを間近で観たいのに観る事ができない者だった。そして、ジョギは彼の抱える闇が凄まじく大きいのを感じ取る。
「ふふっ、やっぱりいたね。しかもアイドルプリキュアのライブが観れないとなるとその闇は強大だ」
ジョギはご機嫌そうな顔つきになるとそれからチラッとライブ会場を見て笑みを浮かべた。
「その真っ暗闇の力でアイドルプリキュアのライブ……潰してあげよう」
ジョギは凄まじい量の真っ暗闇を出してしまったこの青年をターゲットとして定める。そのままの流れでダークランダーを召喚するための掛け声を言い放った。
「光の中にも闇がある。君の闇を……見せてごらん」
「うわぁあああっ!」
ジョギが指を鳴らすと同時に青年の胸から心の闇を現す漆黒のリボンが飛び出してしまう。
「綺麗だね……呑まれると良い」
すかさずジョギがそう告げると結ばれていたリボンは勝手に解かれてしまい、青年の体がリボンから発生した闇のエネルギーで包まれていく。それからジョギは赤い色の水晶を出すと二つを合わせて地面に叩きつける。
「さぁ、おいで!ダークランダー!」
「ダークランダー!」
これによりダークランダーが召喚。その姿は両腕に今回のライブで発売していた発光するペンライトを片手に持ちつつもう片方の腕には手提げ鞄のようなバッグを肩からかけていた。また、そのバッグには沢山の丸い缶バッジが付けられている。
ダークランダーが召喚されたタイミングでセトリの進行は8曲目まで進んだ後のMC①が終わる所だった。
「それじゃあ次の曲は皆も大好きな私の歌!“笑顔のユニゾン”だよ!」
アイドルが観客達にそう告げると会場は湧き上がると共に“笑顔のユニゾン”のイントロが始まる。
「キミに届け♪ありったけのこのキラッキランラン〜♪Let’s go!」
そして、キュアアイドルのステージのために他のメンバーが裏に引っ込むとその直後にズキューンがダークランダーを感知してブルッと体を震わせる。
「ッ、ブルッと来た!?」
「「「えっ!?」」」
「はぁ!?」
ステージに出ているアイドルを除いたアイドルプリキュアの四人はズキューンの闇のセンサーが異常を感知したという事で慌てたような顔つきになる。
そして、事情を知らないプリキュアシンガーの3人はきょとんとして話しかけてきた。
「えっと、どうしたんですか?」
「い、いえ!」
「何でもありませんよ!」
ウインクとキュンキュンが急いでシンガー達を誤魔化しているとソウルビートは深刻そうな顔つきになる。
「今はライブ中なのに……アイツらマジで……」
「どうする?ライブを中止にはできないよ!」
「けど、かと言って私達でステージと戦いを両方こなすには……」
キッスがそう呟いているとソウルビートがある考えを脳裏に浮かべた。しかし、それをやるにはアイドルプリキュア全員の協力が必須である上に時間管理をミスしたら一発アウトの話だ。
「でも、この策で行くしか無いか。キュンキュン、ズキューン、キッス、俺と一緒に来てくれ!」
「うえっ!?」
「わ、わかりました!」
ソウルビートの指示にキュンキュンやズキューンは困惑しつつも了解し、キッスはすんなりとソウルビートの言葉を信じて受け入れた。そして、それと同時にウインクにも言葉を残す。
「ウインクはインカム付けてそのまま待機。概要はインカム越しに話すから」
「うん、お願い」
ソウルビートがそう言ってその場にウインクを残すとインカムを装着。そのままキュンキュン、ズキューン、キッスの3人を連れてステージ側の道から繋がっていると思われる荷物の搬出入口を目指す。
そこからなら客が出入りする場所を通らずとも外に出られると思ったからだ。すると搬出入口へと移動をしている最中にキュンキュンがソウルビートへと話しかける。
「ソウルビート、これって……」
「ああ。ダークランダーが出た場所次第だけど……ライブとダークランダーの処理を同時並行で行う」
「ッ、そんな事できるの!?」
「レイが言ってただろ?出番の一曲前の1番を歌い終わるまでには待機場所にいろって。それさえクリアできるのならフリーになってる俺達がダークランダーと戦うこともできるはずだ。連絡はインカムで行う。ズキューンとキッスはショータイムマイクの通信機能をオンにしっぱなしにしてくれ」
そうこうしている間にソウルビート達はダークランダーのいるパシフィコ横浜の屋外に到着。そしてそのタイミングでダークランダーはパシフィコ横浜の建物に直接攻撃を仕掛けようとしていた。
「ッ、それはヤバい!?」
「お願い、チュッ!ハートガーデン!
ダークランダーが拳を振りかぶった瞬間。咄嗟にキッスはハートガーデンを展開。その中に全員が転移する事で間一髪でパシフィコ横浜へのダイレクトアタックを封じたソウルビート達。そしてそれを見たジョギが意外そうな顔を向けていた。
「あれっ、何で君達がここに来てるのかな?まさかと思うけどライブを放棄してたりするの?」
「残念だけどそうじゃ無いわ。あなた達こそ嫌なタイミングで来ないでもらえる?」
「あはっ、なるほど。出番に合わせて入れ替わり立ち替わりで僕達を止めるつもりか。良いよ、それでいつまでライブを壊さずにいられるか。ゲームと行こうか!」
ジョギの言葉に対してソウルビートはダークランダーとの交戦前にキッスへと声をかけた。
「キッス、ハートガーデンから直通で会場の控室に繋がるゲートを。あそこなら俺達の関係者以外は入らない」
「わかったわ」
キッスがゲートを接続すると後はこちら側から任意で開ける状況が完成。これで心置きなく戦える。
「良い加減お喋りは止めてほしいかな!」
「ダークランダー!」
するとジョギがそろそろお喋りするのも飽きたと言わんばかりにダークランダーへと攻撃を指示。ダークランダーは手にしたペンライトを発光させると暗く光る○イトセイバーみたいな武器を構えた。
「行くよ!」
「はい、お姉様!」
それに対して普段ならアイドルが先陣を切る所を彼女が不在なのでズキューンが先陣を切る。そしてズキューンに連動すること形でキッスも飛び出し、ダークランダーが二人を纏めて切り裂こうとした。
「ダークラン!」
「「たあっ!」」
二人はダークランダーに近づいた所で両サイドに散開。ダークランダーよ攻撃を回避するとすかさず同時攻撃で挟もうとする。
「ダークランダー!」
しかし、ダークランダーは肩からかけていた缶バッジ付きの鞄を横に薙ぎ払うように振り回すとズキューンとキッスは纏めて吹き飛ばされてしまう。
「「うわぁああっ!?」」
その直後にすかさずキュンキュンがブローチをタッチして自らの技を使う。
「キュンキュンレーザー!」
「ダークランダー!」
キュンキュンからのレーザー攻撃に対してダークランダーは鞄を盾にするとレーザーを全て凌いでしまう。
「何あの鞄!?」
「缶バッジ、オタク……痛バッグか!!」
痛バッグとは、オタク等が推しキャラや推しアイドルの缶バッジなどをバッグに大量に装飾として付けるバッグの事である。
「もしかしてアイドルオタクのダークランダーですかね」
「くっ、あの鞄に殴られると文字通り痛いわね……」
「いや、その痛いとは意味が違うけどな?」
するとそのタイミングでキュンキュンのインカムの方に連絡が入る。それはウインクが自分の出番が来るという話だった。
「ッ、そろそろウインクの出番来ちゃいますよ!」
「わかった。キュンキュンは交代で戻ってくれ」
「お願いします!」
キュンキュンがハートガーデンから出るための人間用の小さなゲートを通るとライブへと戻っていく。
それと同時にウインクの曲である“まばたきの五線譜”が始まるとここでようやくステージ裏に戻ったアイドルがこのヤバい状況を知った。
『ソウルビート、ダークランダーが出たって言うのは……』
「ああ、マジだ!だからアイドルはそのまま控室へ戻ってくれ。そこからならこっちにすぐに来れる!それとキュンキュンが交代でそっちに向かうから入れ違えるはずだ」
『オッケー!』
アイドルはこれから暫くは自分の持ち歌が無いのである程度時間に余裕がある。ただ、そんな会話をしていてもダークランダーは攻撃の手を緩めるなんて事はしてくれない。
「ダークランダー!」
今度はダークランダーが右手に武装しているレーザーサーベルを振るとエネルギーの斬撃波が飛んできた。
「くっ!?」
ソウルビート、ズキューン、キッスの三人はそれを回避するが、ダークランダーは追撃として痛バッグの缶バッジを飛び道具のように射出してくる。
「うわあっ!?今度は缶バッジを飛ばしてきた!」
「コイツ。早く倒したいのに……」
どうにか素早くダークランダーを倒したいプリキュア達。しかし、こういう時に限ってダークランダーが普通に手強いために3人は苦戦した。
するとそのタイミングで駆け込んでくる足音が響くと共に3人の近くを何かの影が通り抜ける。
「「「ッ!?」」」
「アイドルグータッチ!」
「ダ!?ンダァアアッ!?」
ただ、タイミングでアイドルが合流すると挨拶代わりのグータッチが炸裂。ダークランダーが吹き飛ばされるとアイドルが3人へと声をかけた。
「お待たせ!ここから反撃だよ!」
「うん!」
こうして、ダークランダーとの戦闘は更に激化していく。果たして、アイドルプリキュアのライブを上手く繋ぎつつ戦う事ができるのだろうか……。
また次回もお楽しみに。