キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アイドルプリキュアの生ライブが大成功に終わり、最後に残されていた観客達が退場する間際に行われた本拠として握手会も無事に終了。影人達はようやく自分達の楽屋に戻ると改めてライブを終えての挨拶を行う事になった。
「皆、今日は一日、お疲れ様でした!!」
『お疲れ様でした!』
うたの音頭で全員が挨拶をすると早速うたは今回のライブをやってみての感想を一言で言い表す。
「今日のライブ……皆本当に……キラッキランランだったね!」
「はい!と〜っても楽しかったです!」
「途中ハプニングこそあったけど、皆が満足して帰ってくれたのなら大成功だよ」
「プリルンも楽しかったプリ!」
「ねえたまと同じなのメロ」
5人が口々にそう言う中、影人は未だにライブの余韻が抜けないのかボーッとした顔つきをしていた。
「プリ?」
「メロ?」
「カゲ先輩?」
「えっ、あっ。悪い。ちょっとボーッとしてた。なんかライブをやり切れたんだっていう実感がまだ湧かなくて」
影人がそう言うと一同は納得したような顔つきを見せる。それもそうだろう。ライブの熱が抜けてないのは他の5人も一緒なのだ。
「お前ら、お疲れ様」
「レイ君!」
「最高のライブだったぞ」
「それにしても疲れました……」
影人達はライブが終わって緊張が解けたせいか、少しずつ肉体に疲労感を感じつつあった。それに今の時間が遅めな事もあって段々と眠気さえも来始める始末である。
「皆、疲れた体で悪いんだけどさ。これから挨拶回り行くぞ」
「そっか。私達のために頑張ってくれた皆にお礼を言わないとだよね」
「そうそう、そんな感じ」
ライブが終わったためにこれから即撤収……というわけにはいかない。まだ影人達には今回のライブでお世話になった人達への挨拶が残っている。何しろ彼等の働きを無くして今回のライブをやり切るなんて事はできなかったのだから当然と言えば当然の話だ。
「それじゃあ変身解いちゃったけどもう一回変身しないとだね」
「流石にこのまま挨拶には行けないのメロ」
一同は変身解除してしまったが、挨拶のために再変身。加えて、楽屋から出る時も変身解除してはいけない。入る時に変身状態で来ているので生身の状態で出ていけば違和感だらけになってしまう。
「そういえばレイ。夢乃はちゃんと帰ってるんだよな?」
「ああ。姫野さんに送ってもらっている。彼女も今日はそのまま直帰だな」
姫野が夢乃の送りをやってくれているのならそこまで心配をする必要はないだろつ。
「それじゃあ皆に感謝の気持ちを伝えに行こ!」
「「「「「おー!」」」」」
それから5人は準備を済ませると挨拶回りをするために部屋を出ていく。6人ともライブだけで無くダークランダーとの戦闘もこなすという超ハードモードのライブをこなしており、かなり消耗していた。それでも自分達でやると決めたライブなのだからそういう挨拶も含めてやり切るべき。そう考えているのである。
そんなわけで影人達がアイドルプリキュアとしてライブ後の裏方への挨拶を進める中、チョッキリ団アジトではチョッキリーヌがライブを潰せずに帰ってきたジョギと対面していた。
「あーあ。結局無理でしたよ」
「アンタの策、大外れだったじゃないか」
「まぁまぁ、ベストは尽くしましたよ?タイミング的にも向こうは結構ギリギリみたいでしたし」
「………」
チョッキリーヌは負けてもそこまで深刻そうに捉えていないジョギに違和感や底知れぬ不気味さを感じつつあった。何しろ、普通であれば任務が失敗した時点で落ち込むなり何なりがあるはずだ。
それなのに今の彼はまるで出ていく前と何も変わらない空気感を纏っている。どうしてここまでの失態をしておきなら平然としていられるのか。チョッキリーヌには理解できなかった。
「お、おい。何でそこまで平気なんだい?上司の命令を守れなかったんだぞ」
「そうですね〜」
「………」
チョッキリーヌは先程からずっといつも以上にのらりくらりと自分の尋問を躱し続けるジョギに向ける疑惑の目線がどうしても止められない。
「ま、まさかアンタ……わざ……」
「ジョギ」
チョッキリーヌがジョギへと“わざと失敗したのか”と聞こうとした時。それよりも早くスラッシューがやってくるとジョギへと話しかけていた。
「お、スラッシュー様。どうなさいました?」
「……貴様、何で失敗した?」
その瞬間、珍しくスラッシューが激昂した様子でジョギの胸ぐらを掴む。それを受けてジョギはあくまでも冷静な様子で話をした。
「スラッシュー様、落ち着いてくださいよ」
「ふざけるな!あれだけアイドルプリキュアのライブを潰せと言ったのに!」
スラッシューは感情に任せた怒り全開の当たり方であり、それだけ彼女の心が追い詰められている証拠なのだろう。
「そんな事言っても仕方ないじゃないですか。ライブとの同時進行中なら手薄になる可能性が高いことくらいわかるでしょう」
「ッ……ソウルビートの身体能力強化は初見では無かったはずだ。アレの対策を取る事だって出来たはずだろう!!」
「いやいや、確かにあの力は厄介ですけど勝てると思ってたんですよ」
「思ってただけじゃ意味が無いだろう!!」
そのままスラッシューはジョギを突き飛ばすかのようにして胸ぐら掴みを放すとジョギは床に背中を打ちつけた。そして、それを見たチョッキリーヌがスラッシューへと話しかける。
「ちょっ、スラッシュー。何もそこまで……」
「はぁ?アンタこそザックリーにパワハラばかりしてたくせに他人の事言えないでしょ。それに、アイドルプリキュアのライブが完遂されてしまった以上、それを潰す事に燃やしたこの執念をどこにぶつければ良いのよ!!」
スラッシューはそう言って苛立った様子でチョッキリーヌにも辛く当たっていた。ここまで来るともう手が付けられない。少なくとも、チョッキリーヌやジョギではスラッシューを実力で止めるには力不足過ぎる。
「クソッ……何で、何で……私達の苦労も知らないあんなひよっこ達があんなステージに立てるのよ……。私なんて、私なんて……Utakoのいない私にアイドルとしての価値なんて無かったのに……」
「ッ……またこれですか」
ジョギはスラッシューが無意識で過去の事をまた言い出したためにこれはもう一度洗脳の上塗りがいると考えるが、今のスラッシューではジョギに止める事ができない。また大人しくしている所をやるしか無いとジョギは考える。
「どうしてアイドルプリキュアばかり……ッ……」
「スラッシュー様、今日はもう休んではどうですか。最近怒ってばかりでお疲れでしょう」
「ライブ妨害を失敗したあなたが何をぬけぬけと……。チッ、でも今更仕方ないのは事実だわ。今日は休ませてもらうわよ」
スラッシューはその言葉を最後にようやく自分の居住スペースに戻っていく。それを見送ったチョッキリーヌは日を追う毎にスラッシューがどんどんおかしくなっているのを見て不安な気持ちが大きくなりつつあった。
「ああ、そうそう。さっきチョッキリーヌ先輩が言いかけたあの質問にお答えしてませんでしたよね」
「……は?」
するとジョギは先程スラッシューが来る前にチョッキリーヌが言おうとしていた質問に関しては何となく察しが付いていたのか……。そうやって言ってきたためにチョッキリーヌは困惑する。
「うん?言ってませんでしたっけ?僕がわざと任務失敗したんじゃないのかって事」
「いや、確かにそれは言ったけどまさか本当に……」
「ふふっ、さぁどうでしょうねぇ」
「ぐ……」
チョッキリーヌは何となく聞いてもいつものようにはぐらかされるとは予想しており、ここはそれ通りにはぐらかされてしまう。
しかし、ジョギも少しだけ無言で考えてから改めてチョッキリーヌへと話を続けた。
「……でもまぁ。確かに意図的と言えば意図的に負けはしましたね」
「……は?」
ジョギからのまさかのカミングアウトにチョッキリーヌは唖然としてしまう。恐らくこの場にスラッシューがいたら再度逆鱗に触れそうな事を普通に言ってのけたのだ。背筋が凍り付いたのは間違いない。
「じょ、冗談じゃないのかい?」
「ええ。あ、でも最初からでは無いですよ?ソウルビートが戻ってきて彼がダークランダー相手にあの身体能力強化の技を使った時点で僕に勝ち目が無いと思ったので意図的に負けたのはそこからですかね」
「そ、それはどうしてだい?」
「だって、スラッシュー様は更に心の闇を解放したじゃないですか。ダークイーネ様からして見たらそれだけでも十分ですよ」
「なるほど……」
チョッキリーヌはジョギの言葉に納得はできた。何しろ、今回の件でのダークイーネからのお咎めが無いのが良い証拠である。
それにアイドルプリキュアのライブを潰す事自体はスラッシュー個人の私怨でしか無い。だからダークイーネが介入して来ないというのは理解できるのだが……。
「(……スラッシュー、このままじゃまたカッティー達のように……)」
スラッシューの調子はどんどん悪くなっている。アイドルプリキュアという存在自体が彼女にとってのノイズになりつつあるのが現状だった。
「それじゃあ僕もそろそろ休みますよ」
「ああ。わかったよ」
ジョギも去っていくのを見届けたチョッキリーヌ。彼女は一人どうするのが正解なのかわからずに悩んでしまうのだった。
それから少しして。時間としては23時前後になってしまったが影人達アイドルプリキュアの面々は解散してそれぞれの家に帰宅していた。
だが、本来なら中学生が親の許可を得ずにこんな時間まで外を出歩く事自体危険な行為である。
「……まだ二人が帰ってないのが一番だけど……」
しかし、現実はそう上手くは行かず。影人が家の玄関にある扉を開けるとそこにはしっかりと電気が付いた居間が視界に入ってしまう。
「……ただいま」
「「お帰り」」
そして、影人が居間に足を踏み入れると影人が帰ってくるのを待っていたかのように彼の両親である魁斗と理沙が揃っていた。
「………」
影人はこんな時間まで外をほっつき歩いていたと言う事で流石に二人は怒っている考える。そのため、話しかけるのも気不味くさっさと風呂に入って寝るために荷物を片付けようとした。
「影人、こっちに座りなさい」
「ッ……」
すると、魁斗が影人を呼び止めると居間の椅子に座るように言う。もうこうなったら誤魔化すのはほぼ不可能だ。大人しく話をするしか無いと感じて影人は椅子に座り、テーブルを挟んだ反対側に座っている魁斗と理沙に視線を向けた。
「父さん、母さん。こんな遅くまでごめ……」
「話は田中さんから聞いてるよ。お友達とアイドルプリキュアのライブを観に行ったんだってね」
「影人、楽しかった?」
そんな時、影人が思っている以上に二人の声がそこまで厳しく無かったために彼は驚いたように二人の顔を見る。
「そ、それはもう楽しかったけど……」
「ふふっ、良かった。影人、いつも以上に機嫌良さそうだったから」
「これも影人と友達になってくれたうたちゃん達のおかげだな」
「ちょっ、こんな時間まで帰って来れなかった俺を怒るんじゃないのか?」
影人は両親に怒られるのは覚悟していた。何しろ、両親には帰ってくるのがここまで遅くなる事を伝えておらず。まず間違いなく心配をかけてしまったと思っていたからだ。
「まぁ、こんなに遅くなるのなら一言言ってはほしかったけど、どっちかと言えば影人が凄い幸せそうにしてるのが気になってさ」
「本当に良い友達と出会って明るくなっていく影人を見てるのが親として凄く嬉しいの」
「……」
影人は二人からのカミングアウトに思わず拍子抜けすると逆に唖然とした顔つきを見せてしまう。するとそんな時、魁斗がふと気になったように話しかける。
「そうだ、お前の彼女さん……こころちゃんはいつになったら家に泊まりに来るんだ?」
「……へ?」
影人はまさかの質問に一瞬脳内がバグを起こして顔が凍りついてしまう。そして、そんな爆弾発言をした魁斗と理沙はかなり前のめりな様子で影人へと詰め寄っていた。
「だってほら。こころちゃんの家でお泊まりはしたんだろ?そろそろこっちに連れてきても良いんだぞ」
「そうそう。影人ってば付き合ってからもうかなり経つのにまだ家に連れてきた事無いな〜って」
「あのさぁ、折角泊まりで連れてくるのなら二人揃ってるタイミングじゃないとダメだろ」
影人としても前にこころの家にお泊りをしに行ったのだから自分も家にこころをお泊まり込みで呼ぶべきだとは思っており、実際何度かそれを考えてはいる。
しかし、両親の職業柄二人が揃っているタイミングが少なく。尚且つこころの都合の合う日に限られるのでまだ現時点でもこころを家に呼んでお泊まり……まではできていなかったのだ。
「お泊まりをして欲しいのなら二人の休みのタイミングを合わせてくれ……」
すると二人は顔を見合わせるとクスリとした様子で微笑み、影人へと答えを返す。
「わかった。だったらこころちゃんの合うタイミングを早めに教えてくれ」
「それに合わせて私達が合わせて有給を取れば良いから」
「それ、会社側は大丈夫なのか?」
「「大丈夫!……なはず!」」
「不安な答えだな……」
影人はこんな両親だが、こころにちゃんと家へのお泊まりをしてほしい気持ちはあったためにその意見には納得した。
「ふぁああ……眠い……。俺はもう寝るからな」
「ああ、先に帰ってきた夢乃も同じ感じでもう寝たしな」
「ふふっ、お休み。影人」
「お休みなさい。父さん、母さん」
こうして、アイドルプリキュアとしてライブと会場防衛をやり切った影人は翌日も学校があるために早速寝る準備を済ませてから眠りにつく事になるのだった。
これにてアニメ36話分から始まったキミプリライブ編は終了となります。次回はアニメ37話部分からスタートしますのでまた次回も楽しみにしてください。