キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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響カイトが必要とする存在

プリキュアプリティーストアのお手伝いを終えてお店が一旦閉まった後。影人達がお店の中に集まっている状態で田中が姫野やカッティン、ザックリンを後ろにしてある事を話す。

 

「皆さん、お手伝いの方をありがとうございました。それでは、私達はこれから品切れになったグッズを取りに行ってきます」

 

「あー、あの人気でしたもんね。グッズも飛ぶように売れて……」

 

「それにしてもグッズの在庫は出張所にあるんですね。ここに直接配送とかは無理なんですか?」

 

こころはアイドルプリキュアグッズがあっという間に売れる様子を見たために納得していると影人が疑問を浮かべる。彼の言う通り、グッズをここに直接届けて貰えばわざわざ出張所にまで取りに行かずともすぐに補給する事ができるはずだ。

 

「そうしたいのは山々なのですが……その場合、届いたグッズの置き場がどうしても狭くなっちゃうんですよね」

 

「確かに、私がさっき取りに行った時も倉庫がそこまで大きくなかったし……これ以上グッズを置いたら今度は出すのが大変になりそう」

 

「このお店を作る構造上、あそこを倉庫にするしか無さそうだし……仕方ない所ですよね」

 

田中からの説明に影人達は納得する。実はこのお店の倉庫は今言及された通りそこまで大きく無い。また、ここ最近はアイドルプリキュアの人気の高さからグッズを生産して一回に届ける量を増やしている都合上ここに直接送ると倉庫に入り切らなくなってしまう。

 

そんな事情もあって面倒な手間にはなってしまうがその都度休憩時間に補充する形で対応中であった。普段ならサウンドプロダクションで働いている人間に変身できるキラキランドの妖精達がサポートとして入っているのだが、残念ながら今日はそのシフトは無い。

 

「そういう事なので私達4人で出張所まで取りに行かないといけないんです」

 

「うん、わかった!」

 

「ここは任せて」

 

「お掃除しておきます!」

 

また、田中達が在庫を取りに行く間で影人達はお店の掃除をする事に決定。それを話した所で田中達裏方妖精4人組はキラキランドの出張所に向かう事になる。

 

「お願いします。では……」

 

「んじゃあザックリお疲れぃ!」

 

「失礼します、ですぞ!」

 

「よろしくお願いしますね」

 

こうして、4人を見送った影人達7人。それから早速影人達はお店の中の掃除を開始する事になった。

 

「お掃除〜♪お掃除〜♪」

 

「こころ、やる気十分だな」

 

「勿論です!こういうお掃除もアイドルプリキュアとしての大事な仕事ですから!」

 

「え?そうなの?」

 

こころがそう言うのに対してぷりんは首を傾げる。するとそんなぷりんへとレイが補足での説明を入れた。

 

「それは実際そうだな。テレビ局のスタッフ達の目が届かない所でそっと気配りができるアイドルはスタッフ達からの印象が良い。そういう日頃の印象の積み重ねが大事な場面で活きるからな」

 

テレビ局のスタッフというのは常に時間に追われている。そのため、どうしても細かい所に目が届かない場合がでてきてしまう。しかし、そういう場面で気配りができる芸能人というのは現場からの印象が向上してそれを突き詰める事で信頼ができる。

 

今回の掃除というのも全くの無関係ではない。例えばテレビに出る際に楽屋を綺麗にして返すという事を自然にできるようになるのだ。

 

「へぇ……日頃の行いって本当に大事なのね」

 

「まぁ私は楽しい事なら何でもオッケーだよ!」

 

「プリルン……やる気があるのは助かるがその考え方はちょっと危険だな……」

 

めろんがこの説明に感心しているとぷりんはいつも通りの無邪気さを見せる。そのため影人は頭に手を置きつつぷりんの思考はいつも変わらないと感じるのだった。そんな時、ななが苦笑いしつつプリティーストアのある場所を指差しつつ声を上げる。

 

「あはは、それはそうとさ……」

 

「……ぬん、ぬん、ぬん、ぬん」

 

そこには考えるのを放棄したような完全に泳いでいる目やボーッとしたような顔を見せたうたがおり、彼女は壁を相手にモップを延々と進ませようとするという謎行動を見せていた。

 

「先輩、その先は壁です!?」

 

「……え?あっ……」

 

こころの慌てた声かけにようやく気がついたうたは自分が何をしてるのかようやく自覚。恥ずかしそうに苦笑いしつつ影人達の方を向いた。

 

「あはははは……」

 

「あはははは……じゃねーよ。今度はどうした!?」

 

「え、今度は?」

 

「お前がそういうトンチキ行動を取る時は何かしら悩みがある時だってここまで過ごしてきて俺達の中では丸わかりなんだよ」

 

「うっ……」

 

笑って誤魔化そうとするうたに対して影人は流石に今の謎行為は看過できないとツッコミを入れる。そして、同じ事を感じたのかなながうたに質問をした。

 

「……うたちゃん、最初に確認だけどカイトさんと話せた?」

 

「へ?あ、えーっと……声、かけられなかったんだ」

 

うたはななから問われた質問に対して言いにくそうにしつつも誤魔化しても無意味だと感じ、正直に先程の事を話す事に決めた。

 

「えっ、どうしてですか?」

 

「ッ……」

 

うたのカミングアウトに一同はその理由が気になる。うたとカイトはこれまでに何度も話をしてきた仲だ。そのため、話しかける時に緊張する事はあっても話しかけられないなんて事態にはならないはず。しかし、それでも話しかけられなかったという事は何かしらあったという事で。

 

「うーん……寂しそうな顔をしてたから、話しかけられなくて」

 

うたは先程のカイトの事を思い出す。それは遠目だったものの、確かにカイトが寂しそうな顔を見せていたという物だった。そして、うたはそんな空気感のカイトに話しかける気持ちになれなかったそうで。

 

「カイトさん、何か悩んでるみたいだった」

 

「レジェンドアイドルのカイトさんにも悩みが……」

 

「ううん、きっとレジェンドアイドルだからこそ……自分の悩みを他人に話せないと思う」

 

カイトが悩みを持っているという事実に驚くこころとそれに対してレジェンドアイドルだからこそ悩みの捌け口が無いと指摘するなな。影人やレイもななの意見には納得している顔であり、“うんうん”と頷く。

 

「……私にはお姉様や影人、皆がいてくれるけど、彼にはそういう人がいないのかも……」

 

「あっ……」

 

続けてめろんが自分を例えに出してカイトの現状を予想する。めろんは少し前まで自分が闇を抱えた妖精として疎外感を感じていた。ただ、彼女の場合はプリルンや影人という頼れる人がいて……2人が繋いでくれたからこそ今こうしてうた達とも友達になれている。

 

だが、カイトは違う。彼の場合は見た所、すぐ近くに自分が本音でぶつかれる相手がいなさそうであった。そしてそれは自分の中に存在する闇を周りに照らしてもらえない事を意味する。

 

「確かに、レジェンドアイドルだから余計に赤の他人には頼りづらいだろうな。そんな姿を見せても大丈夫な相手、信頼できる相手がいれば話は別だろうけど……」

 

「そうだな。……誰かがそういう役割を担える存在になれれば……」

 

「ッ……!」

 

そして、めろんの話から繋ぐようにしてレイ、影人の順で話を繋ぎつつチラッとうたの方を見る。それはまるで彼女にある事を促しているようだった。そして、うたも2人の意図に気がついたのか目を見開くと覚悟を決めたような顔を見せる。

 

「でも、そんな都合の良い人……カイトの周りには……」

 

「あのさ!」

 

ぷりんが困ったように言っているとその途中を遮るようにうたが声を上げた。そして、一同に自分の気持ちを話す。

 

「急にごめん!私、ちょっと行ってくる!」

 

「おう、ここは任せろ」

 

「うえっ!?うた、どこに行くの!?」

 

うたが急にどこかに行くと言い出してぷりんは困惑。しかし、その間にも影人は平然とした顔でうたからモップを受け取る。そして、そのままの流れでうたはお店の出入り口の方を向いた。

 

「きっとあそこにいると思う。私が、私が行かないといけないから!」

 

「ッ……うた先輩……」

 

こうして、うたは急いで駆け出すとあの場所へと走り出す。こうなった彼女はもう止まらない。そのままうたは自分の直感が示す場所に……響カイトがいるはずの場所に向かうのだった。

 

「(今までカイトさんにはいっぱい助けてもらった。私に何ができるかはわからないけど……。今度は私が……カイトさんをキラッキランランにしたい!)」

 

それからプリティーストアの中、うたをカイトの元に送り出した影人達の方では影人とレイが顔を見合わせて微笑む。するとななとこころが2人に話しかけた。

 

「やっぱりさっきの一言、お二人で上手く誘導しましたね?」

 

「ああ。その方が良いと思ったからな」

 

「もう、でもおかげでうたちゃん……今度こそカイトさんと話せそうで良かった」

 

「全く、手間かけさせてくれて。こういう時くらい俺達が背中を押してやらないとな」

 

影人達がそんな会話をしている中、ぷりんは未だに状況理解が間に合ってないのか……キョトンとした顔のままだった。

 

「えっ、えっ?どういう事?」

 

「二人はうたの背中をそっと押してあげたんですよ。お姉様」

 

「???」

 

めろんの解説に頭にハテナマークを浮かべまくるぷりん。そんな彼女に影人達は苦笑いを浮かべる。

 

「それじゃあ、俺達は後をつけるのも無粋だし掃除をやるぞ」

 

「はい!うた先輩の分までこのお店の中をキラッキランランにしちゃいますよ!!」

 

「そうだな。咲良さんが戻ってくるまでの間にこの作業を終わらせるか」

 

影人達は完全に掃除を再開するムードになる中、ぷりんは訳のわからない内に話がどんどん進むので何が起きてるのか気になって仕方がない。

 

「ええーっ!?皆、わかるように説明してよーっ!」

 

「後で説明はしますから我慢してください、お姉様」

 

「むうーっ……」

 

めろんが膨れるぷりんをどうにか宥めると影人達はようやく掃除を再開。後の展開はうたの頑張りに委ねられる事になる。

 

一方その頃、チョッキリ団アジトでは……。チョッキリーヌが一人席に腰掛けているとそこにスラッシューがやってきた。

 

「ッ、スラッシュー。アンタ、大丈夫なのかい!?」

 

「……チョッキリーヌ。……えぇ、何とか落ち着いたわ。けど、まさかあなたが最初に心配するなんてね?」

 

スラッシューはまだ不機嫌そうな声色だったが、前のように怒り狂っていたあの最悪のテンションは抜け出していた。

 

「……それで、ジョギはどこに行ったの?」

 

スラッシューはギロリとチョッキリーヌを睨みつけるような目線を向ける。これを受けたチョッキリーヌは怯えるかのように体をビクンと震わせた。

 

「ッ……じょ、ジョギは……出かけてる。今はスラッシューと顔を合わせづらいって……」

 

「………」

 

チョッキリーヌがスラッシューへと答えを返すとスラッシューは少しの間チョッキリーヌを睨むようにして見ていた。しかし、彼女の発言が出まかせでは無いと感じたのか。チョッキリーヌへの鋭い目線は緩んだ。

 

「……そう、アイツも少しは反省したみたいね。わざわざ自分から行くだなんて」

 

「なぁスラッシュー。お前はここにいて幸せなのかい?」

 

チョッキリーヌはそんなスラッシューを見て思わずそう問いかけてしまう。その瞬間、スラッシューの動きが止まるとチョッキリーヌへと振り返る。

 

「……そうね。私の事をこんな目に遭わせたこの世界が丸ごと闇に堕ちる様を見れるもの。幸せ以外にどんな感情が湧くのかしら?」

 

「ヒッ……」

 

チョッキリーヌはスラッシューからの目線を向けられて思わず体をすくめてしまう。何しろ彼女の声色はまるで今更当たり前の事を聞くなと言わんばかりであり、その心の中には凄まじい闇の感情が溢れていた。

 

「(ッ、ジョギが言っていた狙いってこういう事かい……。確かにスラッシューの中の闇が極限にまで高まっているね。ただ、ジョギや私への当たりはかなり強くなってるけど……)」

 

「チョッキリーヌ」

 

「何だい?」

 

するとスラッシューはチョッキリーヌの方を向くと彼女へと高圧的な態度で再度睨みつける。

 

「さっき私に言った事。そっくりそのまま返すわ。あなたの方こそ、チョッキリ団にいて本当に幸せって言い切れるかしら?」

 

「なっ!?あ、当たり前だよ!馬鹿にしないでほしいね!」

 

「本当かしら?……私にはカッティーやザックリーに固執し過ぎたあまり……彼等とのキラキラに溢れた生活を自分の幸せと考えているように見えるのよ」

 

チョッキリーヌはそれを聞いて背筋に寒気が走る。次の瞬間、チョッキリーヌはスラッシューに詰め寄られると壁際にまで押し込まれて彼女から壁ドンされた。

 

「ッ……」

 

「……あなたの方こそ、せいぜいアイドルプリキュアに心を絆されないようにね?それと、あまりダークイーネ様を困らせたらダメよ。あなたも、私も……そしてここにはいないジョギも。光の中で生きる事なんて絶対にできない者達の集まりなんだから」

 

スラッシューはそうやってチョッキリーヌへと半分脅しのような言い回しでそう告げるとようやく自分の部屋に戻っていく。それを見届けたスラッシューは俯いた。

 

「……確かにアンタの言う通りだよスラッシュー。……だけど、スラッシュー。アンタがそんな事を言う日が来るなんてね……」

 

こうして、チョッキリーヌはスラッシューがここ暫くですっかり変わってしまったと思い知る事になる。




また次回もお楽しみに。
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