キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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ハロウィン前の悩める少女達

カイトとの一件が終わった翌日の夜。影人はこの日もグリッターでうた達と集まって色々と話をしたのだが……その内容に関しては一旦置いておくとして。

 

「……今日の夢も楽しんでもらえたかな?それじゃあ、また次の夢の中でも会おうね〜」

 

この日もいつものように夢乃がドリーム・アイとしての配信をしており、丁度それが終わった所であった。そして、そのタイミングで姫野が夢乃の部屋に入ると彼女に話しかける。

 

「ふぅ……」

 

「お疲れ様です、夢乃さん」

 

「ありがとうございます……」

 

夢乃のドリーム・アイとしての配信は順調だった。登録者もどんどん増えてきており、配信者としてのランクも上がりつつある。何なら、ドリーム・アイとして既に他の有名配信者達からのコラボ配信のお誘いも増え出しているくらいだった。

 

「………」

 

「夢乃さん?どうされました?」

 

配信者としては大成功。このまま行けば半年もすれば登録者が100万人を突破してもおかしく無いくらいだった。……しかし、その大成功している配信を終えた夢乃の顔つきは何故か優れない。

 

「ッ!!い、いえ……何でもないです」

 

「………」

 

姫野は目の前にいる夢乃がここ最近配信時のモチベーションが下がりつつあるのを感じており、今はまだ大丈夫だがその内配信に支障をきたすのではと不安も浮かびつつあった。

 

「夢乃さん、ここ最近配信の方の気持ちの低下が顕著になりつつありますよ。……無理をなさっていませんか?」

 

「ッ……大丈夫です……。このくらい、お兄ちゃんなら平気な顔をしてやります……」

 

夢乃はそう言って姫野の前から去ろうとする。その瞬間、姫野が夢乃の手を掴んだ。

 

「ダメです。そうやって隠さないでください。……悩みがあるのならちゃんと……」

 

「話して何になるんですか。こんな事言ったって……姫野さんをもっと困らせちゃうだけです」

 

この様子から夢乃はやはり何かを無理を通す形で隠しており、姫野はそんな夢乃をマネージャーとして見過ごすわけにはいかなかった。

 

「……それでも話してください。私は社長から任されているあなたの、ドリーム・アイのマネージャーです。今のままでは配信に支障が出ますし、もしそれであなたの配信を楽しく観てくれているファンの皆様に心配をかけさせるなんてあってはいけないんです」

 

「……そんな事、わかってます。でも……こんな気持ち、許されたらいけないんです……。プロの配信者として……こんな中途半端な気持ち……誰かに話して良いわけ……良いわけ……」

 

夢乃はそこまで言った所でその先の言葉を言えなくなってしまった。その顔つきは明らかに自分の気持ちに整理が付かなくて悩んでいるような物である。そのため、姫野がそっと夢乃の側に寄り添うと優しく声をかけた。

 

「大丈夫ですよ。……私はそれが夢乃さんの本当の気持ちなのでしたらどんな話だったとしても受け入れます。それに、あなたのご両親も兄である影人君も話せばきっとわかってくれますから」

 

「ッ……」

 

夢乃はそれから少しだけその場で泣いてしまうとそれからようやく気持ちを落ち着けて姫野へとその事を話し始めた。

 

「私……ドリーム・アイとしての配信以外で……やりたい事ができちゃったのかもしれないんです……」

 

「!!」

 

夢乃はその後、少しの間姫野へとその経緯について話した。そして、それが終わると姫野は夢乃と答えを返す。

 

「……わかりました、それが夢乃さんの考えなんですね」

 

「はい……でも、やっぱり他の人には言い出せません。特に……兄には……」

 

夢乃の言葉を聞いて姫野は何となく彼女の心境を予想する。恐らくだが、夢乃が自分から配信をやりたいと影人相手に言い出した事。

 

また、当時精神的にかなりやられていた頃の彼に相当な苦労をかけさせたのに今更そんな心変わりなんてあってはいけないのだという罪悪感が彼女の中に根強くあるのだろう。

 

「……わかりました。まずは夢乃さんの中で気持ちを整理してみましょう」

 

「整理……」

 

「はい。今私に話してくれた事を自分が本当にやりたいのかどうか整理するんです。影人さんや周りの人に話すのはそれからで大丈夫ですよ」

 

「ッ、でも皆さんはきっと姫野さんみたいに心配するんじゃ……」

 

夢乃は姫野からの意見を聞いて、やはり不安な点が大きいのか声が震えてしまっていた。

 

「そこは私が何とかします。……それが夢乃さんのマネージャーの私の役割なので」

 

「ッ……。わかりました……苦労をかけてしまいすみません……」

 

「大丈夫ですよ。それではまたお願いしますね」

 

「はい……」

 

それから姫野は夢乃の部屋から出ていくと配信が無事に終わったということで帰宅していく事になる。

 

そんな中、夢乃と姫野の会話を密かに聞いていた者がいた。それは勿論、夢乃の兄である影人である。

 

「(……マジか。夢乃がそんなにも……)」

 

影人は夢乃の気持ちに気づけなかった事に後悔を感じつつも、本人がまだ言うつもりが無いという事でここで無理に詰め寄るのはダメだと判断。

 

夢乃へとあれこれ言うのは彼女の気持ちが纏まって、直接相談を持ちかけられてからにしようと考えるのだった。

 

そんなわけで日付が変わり、翌日の放課後の時間。喫茶グリッターのいつもの二階スペースに集まった影人、うた、なな、こころ、プリルン、メロロン、レイ。このいつものメンバーが集まっている中でなながスマホのとある画面を見せる。

 

それは前日の夜に初日を迎えた響カイトのライブツアーについてのネットニュースであった。

 

「あっ、見て見て!カイトさんのツアー。無事に始まったんだって!」

 

「良かったですね!」

 

「う、うん……」

 

ななやこころがカイトのライブツアーのスタートを喜ぶ中でうたはどこか不安そうな顔つきだ。

 

「……何だか浮かない顔だな。咲良さん」

 

「えっ、あ……うん」

 

「もしかして一昨日の事をまだ気にしてたりとかするのか?」

 

うたの脳裏に浮かんだのは一昨日の事。カイトが過去に残してしまった後悔……カズマとの話である。

 

「うん……」

 

「……まぁ、俺達も事情を聞いて色々と考えてはいたが」

 

影人達はうたを1人カイトとの会話のために残した後、彼女がプリティーストアに戻ってきた時……厳密には翌日だったが話を聞いた。

 

「それにしてもカイトさんの親友、カズマさんとジョギが同一人物かぁ」

 

「影人君や花さんの話を聞いてるから私達はある程度理解できたけど……」

 

「ジョギには周りに誰かいなかったのでしょうか……話を聞く限りだとカズマさんって明るい人に思えるんですよね」

 

影人とうたの会話にななやこころも入ってくるとレイもカイトとジョギの関係性については思うところがあるようで。

 

「……もしかすると、そういう存在がいなかったからこそ逆に見つけたかったんじゃないのか?一緒にアイドルという世界に挑戦する人を求めたのかもしれない」

 

「「「あー……」」」

 

影人達やカイトさえも知らない事情として、もし仮にカズマ……ジョギの身近に彼の夢を肯定してくれる者、心の支えになってくれる何かが全く無かったのだとしたら夢破れたジョギが絶望の底に堕ちたとしても何の不思議も無い。

 

「(それこそ、スラッシューも同じ事が言えるんだろうな……)」

 

影人はジョギの話に自分が調べていたスラッシューの件も重なるとこの2人が闇堕ちしたのには案外似たような理由が存在するわけだが……それはさておくとして。

 

「カゲ先輩の時は両親や夢乃ちゃんが受け止めてくれて、その後こっちに来て私達がいたから立ち直ってましたし……花さんの時はそれこそアイドルプリキュアという推しがいたから踏ん張れてましたからね」

 

「人間、支えてくれる何かが無いと絶望の底に堕ちるまでが早いからな」

 

「うーん……だとしたらジョギの闇をどうにかするには……」

 

うたは続けてジョギを助ける方法が無いかを考えるが……そう都合良くポンポン考えは浮かばない。そもそもの話、前回の戦いでジョギはうたの説得に聞く耳すら持たなかった。そして、この事実からもしかすると影人達アイドルプリキュア側のメンバーが説得しようとしてできるものでは無いのかもしれないと感じてしまう。

 

「「「「「うーん………」」」」」

 

「きっと大丈夫プリ!」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

そんな時だった。プリルンがいきなり声を上げると悩む影人達を元気付けるように一番最初に出していたカイトのライブツアーの話に持っていく。

 

「ジョギの事は難しく考えたって仕方ないプリ!今はライブを頑張るカイトが大事プリ!」

 

「ねえたまの言う通りなのメロ!今はカイトがライブでキラキラしているのを素直に喜ぶのが一番メロ!」

 

「プリルン、メロロン……うん。そうだよね!」

 

プリルンとメロロンのフォローによりうたはカイトの件での少しモヤッとした気持ちは少し残っていたが、今はそれよりもカイトが無事に全国を回るライブツアーを無事に始める事ができたという確かな事実がある。

 

そのため、自分達はあくまでポジティブな考えになるべきだと頷いた。そのままプリルンに続く形で話の流れを変えるべくこころが声を上げる。

 

「そうですよ!色々悩む事はありますが、今は活動を再開してから初めてのライブが始まりましたからね!カイトさんに応援パワーを送りましょう!」

 

「応援するプリ!」

 

「メロ!」

 

こころはそう言って立ち上がり、興奮したようにピンクのキラキライトを両手持ちにして振った。そんな彼女に妖精組であるプリルン、メロロンも便乗してキラキライトを振る。

 

「ほら、咲良さんも」

 

「影人君……!」

 

「今は考えた所で何かを解決できるわけじゃない。ここ最近続いているスラッシューの事もそうだけど、悩んでいる人を助けるためにはまず自分達がポジティブな気持ちでいないとな」

 

「ッ……!うん!カイトさんが悩んでいる今だからこそ私達が応援しないと!」

 

こうして、先程までカイトの件で悩んでいたうたも影人のフォローを受けて気を取り直すと彼を応援するために自分の分のキラキライトを振った。

 

「そうと決まれば……頑張れー!!カイトさーん!」

 

「プリプリプリ〜ッ!!」

 

やはりチームの太陽たる存在のうたは落ち込むよりもこうして明るくしている方がよっぽど彼女らしい。そんな彼女を見て影人はホッとする。

 

「「「(いぇーい)(メロ〜)!」」」

 

「良かった。咲良さんがいつも通りの調子に戻って」

 

「ああ、影人も咲良さんの事をメンタル面でフォローする事も増えたよな。前まではあんなにネガティブな発想ばっかしてたのに」

 

「ッ、うっせぇよ……」

 

そして、そんなうたに合わせてなな、こころ、メロロンが嬉しそうにキラキライトを振っているとレイは少しだけ影人を揶揄うように話す。

 

ただそうは言っても実際の話、影人が前と比べて比較的ポジティブ思考になっているのは間違い無い。それに彼自身、自分がこうなったのはうたの強いポジティブ思考に当てられた影響が大きいと考えているのだ。

 

「まぁ、でも……俺があのネガティブ状態で耐えられたのは咲良さんのおかげだし……そういう存在が無かったら今頃どうなっていたか……」

 

「……影人の心の闇にダークイーネが付け込んでいたとかそういう話?」

 

「ああ」

 

実際、影人の闇の部分に見入ったスラッシューがその闇を引き出そうとしていたくらいだったため……もし仮にこの街に来ていなかったとしてもダークイーネが遅かれ早かれ目を付けたというのはあったかもしれない。

 

「ふっ、だとしたら俺達と出会えた影人は凄い幸せ者って話になるのかもな」

 

「俺もそうである事を願うよ」

 

そんな風に影人とレイが話をしているとそのタイミングでグリッターで働いていたと思われる田中がトレーを持って2階に上がってきた。

 

「お待たせしました。ご注文のバナナマフィン、ハロウィンバージョンです」

 

「おっ、さっき注文したやつか」

 

「グリッターのハロウィン限定のメニュー」

 

田中が持ってきたのは先程影人達が頼んでいたグリッターのハロウィン限定メニューのバナナマフィンである。それはバナナのマフィンをベースにチョコチップが散りばめられており、上には大きめなマシュマロにチョコで顔を描く形で作られたお化けが乗っていた。

 

「そういえばあと数日で今年もハロウィンがやってくるよな」

 

「うちの学校はハロウィンの日に特別な休みは無いけど……代わりに翌日くらいにあるんだよな。そういう一日遅れのハロウィンデーみたいなやつ」

 

影人達の話す通り、街はもう数日後に迫ったハロウィンに向けて準備中。そのため、街の至る所でハロウィンのための飾り付けが増えつつあった。

 

尚、ハロウィン当日は思いっきり平日で翌日が休みであるために今年は一日遅れにはなってしまうがその日にハロウィン関係のイベントが纏めて行われる事になっている。

 

「「「「(わぁ……)(プリ〜)(メロ〜)」」」」

 

「可愛い……!」

 

それはさておき、影人達は早速田中の持ってきてくれたバナナマフィンとご対面するとそれを見てなな達女子組が興奮したような声を上げていた。

 

「これがハロウィン仕様のグリッターのメニューか」

 

「凄い、お化けが乗ってる!」

 

「うえっ!?」

 

「マシュマロをお化けに見立てるなんて面白いよな」

 

影人達はこのバナナマフィンの事について盛り上がっていたのだが、何故かうたは先程から話に参加するどころか少しだけ震えているようで……それ以上耐えきれずに思わず声を上げてしまう。

 

「……お、お、お化けぇえっ!?」

 

「えっ、咲良さん!?」

 

その瞬間、うたはお化けという単語が相当嫌なのか……それに過剰反応すると慌てて逃げ出した。

 

「うわぁあああっ!?」

 

「ちょっ、うた先輩どこに行くんですか!?」

 

こころが呼びかけるものの、うたが止まる事は無く。そのままお店の出口にまで猛ダッシュして直行。扉を思い切り開け放つと店を飛び出してしまう。

 

「「「「えぇ……」」」」

 

この様子を見た影人、こころ、プリルン、メロロンの4人は唖然とした顔になっており、未だに状況を飲み込めていないように思えた。

 

「……お化け?」

 

「この感じだと咲良さん、お化けが苦手っぽさそうだよな」

 

そして、ななが首を傾げるとレイも流石にここまでの反応を見せたうたのお化け嫌いを想像する。

 

「レイ、ひとまずは……」

 

「そうだな。咲良さんを探しに行こう。もし彼女がお化け嫌いを拗らせているのなら直さないといけなさそうだし」

 

もし仮にうたがこのままお化けに対する拒絶反応を持ち続けたままだと数日後に迫ったハロウィンを全員で楽しむなんて事はできなくなってしまう。そのため、影人達は早速逃げ出してしまったうたを追いかけて探しに行く事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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