キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人が呼び出しをかけてから三十分の時間が経過。喫茶グリッターでは制服から私服姿になった影人、うた、なな、そしてレイもいた。
「おい、レイ。なんでお前も来たんだよ」
「ダメか?俺も一応プリキュアの関係者だが」
「……こころと既に知り合いでアイドルプリキュアとの繋がりがバレてる俺はともかく、何でまだこころに繋がりが知られてないお前もいるのかって話だよ」
「別に完全な無関係者じゃないし、俺はアイドルプリキュアの監督役だからな。基本的には放任主義だけど、なんかありそうな予感あるし。聞くぐらい良いだろ」
影人がジト目でレイを見る中、本人は自身の勘を持って影人の指示に何かの意図があると判断。この場にいた。
「……それで、私達が呼ばれた理由というのは?」
「二人にお願いプリ!こころに会ってあげてほしいプリ!」
「それって、アイドルプリキュアの姿でって事?」
「プリ!」
プリルンの言葉に二人が少し困惑する中、影人が改めて事情を説明。プリルンの存在がこころにバレてしまった事。そのまま芋づる式に自分がアイドルプリキュアと繋がっている事も知られたという事だった。
「こころちゃん、本当に私達の事が好きなんだ〜」
「それは嬉しいけど……プリルンってば、こころちゃんに姿を見られてお友達にまでなっちゃうなんて」
ななの言葉にプリルンはバツの悪そうな顔になる。彼女にも今回の件で多少罪悪感はあるらしい。
「……おかげさまでこころに色々知られたしな。一番肝心のプリキュアの活動についてはギリギリバレてはないけど、かなり危険な状態にはなっちゃったし」
影人は今の現状に危機感を抱いていた。過程はどうあれ、プリルンが見つかった事で、影人がアイドルプリキュアの関係者だと一般人であるこころにバレてしまった。こうなればこころが戦いに巻き込まれるのも、アイドルプリキュアの本当の正体に気がついてしまうのも時間の問題となってしまう。
「どうにかして今からでもこの件に関わらないようにするにするには……」
影人は無駄な抵抗かもしれないが、こころがアイドルプリキュアへと干渉しないようにするにはどうすれば良いのか思考する。だが、やはり良い案はこういう時に限って出てこない。
「プリ〜!プリルンはこころと仲良くなりたかったプリ〜!」
そんな風にプリルンはななへと飛びつくとバタバタとしながら言い訳を言う。
「……俺は反対だ」
「「……え?」」
「こころをこれ以上、アイドルプリキュアに深く近づけたら取り返しが付かなくなる。何より、こころにアイドルプリキュアの本当の姿を見せるなんて論外だ」
影人は割と厳しめな口調でそう言う。影人の声色はいつもよりも低い。それは彼がどうしてもこころとアイドルプリキュアを会わせたく無いと言わんばかりだった。
「でも、今日はもう約束しちゃったんだよね。今からそれを破るのは……」
「プリ!もう待ち合わせの時間プリ!」
プリルンはハッと思い出すように声を上げるとうたとななの二人は声を合わせて驚く。
「待てよ。そんな簡単に……」
「影人。何をそんなに怖がってるのかは分からないけど、今日は会うだけなんだし大目に見てやりなよ」
レイは取り乱す影人に冷静にそう告げる。レイとしてはこれ以上、この場を混乱させるのは良く無いと判断。影人を宥める事にした。
「プリルンにだって気持ちはあるし、もう会う約束はしたんだ。お前はあの子のアイドルプリキュアと会いたいっていう心の底からの願いを否定するのか?」
「それは……」
影人は口籠もる。このまま約束を破れば、こころは悲しむだろう。下手をしたら強そうに見えて繊細な心を持つ彼女は泣いてしまうかもしれない。何より、自分を信じてくれているこころの気持ちを裏切るなんてできなかった。
「……わかった。この際仕方ない……。ただ普通に会うだけなら良いよ。でも、もうこれ以上余計なことは吹き込んだらダメだからな。特にプリルン。間違っても戦いの場にこころを近づけさせるなよ」
影人はプリルンへと釘を刺すともう約束の時間が近いので一同は移動を開始する事になる。ただ、レイは用事の関係でこの後家に帰らないとダメなのでここで別れて家に戻る事になるのだった。
それから影人とプリルンは先行してこころとの待ち合わせ場所に向かう。うたとななはその後を追いかける形で移動し、近くにある隠れられる場所で変身するとアイドルプリキュアの姿へと変わった。
「……二人にサイン貰わなくちゃ」
待ち合わせ場所ではこころが用意してきたサイン用の色紙をチェックしており、彼女は二人にサインを貰う気満々である。
「こころー!お待たせプリ〜!」
プリルンが飛んでこころの元に行く中、影人もプリルンの来た方と同じ方向から歩いていく。
「アイドルプリキュアの二人に話は付いた。もう来るよ」
「本当ですか!?」
「ああ」
影人がこころの前から横に退くとこころの前の視界が開ける。その先の階段の上から二人の少女……アイドルプリキュアの二人が歩いてくるのが見えた。
「ッ……本物のキュアアイドルにキュアウインク!!」
「こんにちは!私達に会いたいって影人君やプリルンから聞いたよ!」
「ありがとう、こころちゃん!」
アイドルとウインクが手を振りながらこころの元に歩いていくとこころは一推しのアイドルプリキュアの二人に会えて興奮した顔つきになると声を上げる。
「私の名前……はわわわわ〜!!」
いつものキリリとした真面目な顔はどこへやらと言わんばかりに顔付きが崩れるとその場でバタバタと足踏みをした。
「そうなんです!どうしてもお会いしたくて、カゲ……っと、影人先輩やプリルン先輩にお願いしちゃいました!」
「先輩プリ?」
「プリルン先輩って……」
プリルンは先輩という言葉に疑問符を浮かべ、影人はプリルンが先輩呼びされた事に僅かに困惑する。
「私、キュアアイドルとキュアウインクの大・大・大ファンなんです!」
するとこころは鼻息を鳴らし、目がグルグルと回る程に憧れの二人に会えて嬉しかった。
「わぁ〜!嬉しいな!そんな風に思ってくれてるなんて!」
「うん!」
二人がこころに大ファンだと言われて嬉しそうにするとこころは二人を見かけてファンになった理由を話し始める。
「私、何となくネットを見ていたら……偶然見つけたんです。でも、その瞬間に心が吸い込まれて……。画面で見ているはずなのに、目の前にキュアアイドルがいるみたいで。ホント、自分でもよく分からないんですけど……」
そんな風に夢中にアイドルプリキュアの事を語るこころを見て、影人はこころの気持ちはアイドルプリキュアという存在一色に染まっているのを改めて感じ取った。
「お二人のステージに吸い込まれて……あの日から。そう!あの日からずっとずっと一秒も途切れずに……心、キュンキュンしてます!」
それは彼女が部屋にいる時も、歯を磨く時も、学校に行く時も……朝練でダンスのトレーニングを頑張っている時も。毎日ずっと二人の事を考えて思わず踊っちゃうぐらいには。こころの中でも何故ここまで大好きになったのかわからなかった。
こころは両手を胸に当てると目を閉じて考える。そんな、アイドルプリキュアの事を考えて止まないこころを見ると影人の胸は騒ぎ始めてしまう。
「(……ダメだ。こころが夢中になってるのは俺にじゃ無い……。アイドルプリキュアに対してだ。自分は、こころから見たらただの先輩だ。……だから、こんな気持ち抱いたらダメなんだよ)」
影人はこころを前にして気持ちがグチャグチャにかき混ぜられるような感覚に見舞われた。今、彼女の目の先に見えてるのはキュアアイドル、キュアウインクという眩い光を放つアイドルプリキュアの二人だけ。自分という存在は二人の影にひっそりといるだけだと思えてしまう。
「(我慢しろ……今の自分を見てみろ……明らかに釣り合うわけないだろ。こころは毎日努力してる。アイドルプリキュアという一つの大きな憧れに向かって……。俺は何をしてる?ただアイドルプリキュアを輝かせるための舞台装置のような事しかやってないだろ……)」
影人のこの考えは大きな間違いである。今まで、アイドルプリキュアの二人がやってこれたのは多かれ少なかれ、影人の行動ありきだ。それが無ければ詰んでいた場面さえもある。
加えて、こころの気持ちは確かにアイドルプリキュアへと傾いていた。しかし、こころがアイドルプリキュアに憧れているのには彼女達の大ファンだからという理由とは別の理由も存在するのだ。それは前々からこころが考えて口にしていた事だが、影人と並ぶためにアイドルプリキュアのような眩い光を放てる人になりたいという心理がある。
「……何だか、一目惚れみたいな気持ちなのかも……」
「「一目惚れ!?」」
「一目惚れ……」
アイドル、ウインクが驚いた顔をする中、影人は“一目惚れ”という単語を聞いてやっぱりこころの視線の先に自分がいない事を感じてしまう。
「ああ、いや……えと、だって!“ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)♪”の所とか元気いっぱいで可愛いし、キュアウインクの五線譜を書く所も心キュンキュンで!私も二人みたいに素敵に踊ってみたくて!だから毎日毎日練習してます!」
こころは二人のダンスの振り付けも見せながら自分が好きな歌詞を歌ってみせる。そんな彼女を見てウインクは微笑む。
「そっか……。そこまで真剣に練習してるから影人君も付き合ってあげてるんだね」
「……え?」
「影人君、私達と初めて会った時とか凄く素っ気なくて。今は明るくなれてるけど、そうなる一因はやっぱりこころちゃんの頑張りを毎日のように見てるからだと思う」
そんな風に二人に言われてこころは気恥ずかしいのか、僅かに赤く顔が染まる。一方の影人はその話になる手前まででかなり落ち込んでしまっているのか、肝心な自分への褒めの話が頭に入ってなかった。
「……ねぇ、こころちゃん。いつか私達と一緒に踊りたいね!」
そう言ってアイドルが手を差し出す。それはアイドル、ウインクからの頑張るこころへのメッセージだった。二人の言葉はアイドルプリキュアとして一般人のこころにまた一つ、大きな夢を与えたのだ。
「……私が、一緒のステージに……はい!」
こころが嬉しそうにしてアイドルと握手をするとアイドル、ウインクの二人は帰っていってしまう。そんな二人をこころは嬉しそうな顔つきで見送った。
「カゲ先輩、その……今日はありが……」
こころが影人にお礼を言おうとすると影人の目つきは暗い物になっているのを見かける。
「カゲ……先輩?」
「ッ!?ごめん、ちょっと用事を思い出して」
「えっ、先輩今日はフリーだって……」
「ごめん、こころ。じゃあな」
影人はこころへと今の自分の情けない姿なんてこれ以上見せられないと考えたのか、無理矢理その場から逃げるように理由を付けていなくなってしまった。そんな風に素っ気ないようにその場からいなくなってしまった影人を見てこころは困惑。プリルンへと問いかける。
「……プリルン先輩。カゲ先輩って何かあったんですか?」
「……プリルンは何もわからないプリ。あんなに焦ってる影人、初めてプリ」
それから、こころとプリルンが二人で話をする。そんな中、影人は今、色んな負の感情に押しつぶされそうだった。こころがアイドルプリキュアになる。そういう話になってしまえばダメだとあれだけ言ったのに。
「……でもこころが現実を知って尚、もしやりたいって言ったら」
影人はこころに輝いてほしいとも思っていた。あの目標に向けて真剣な姿を見て、彼女の中に確かな輝きがあるとも感じている。多分、今アイドルプリキュアの本質を教えたらきっとこころの気持ちは折れてしまう。
だが、何らかの形でそれを乗り切れば彼女はきっと素晴らしいアイドルプリキュアになれる。その確証が影人にあった。
「……くそっ。何だよ、俺……どれだけ我儘なんだ」
影人はそう言って自分の我儘な気持ちに悔しさを滲ませる事になる。時間は少し遡り、チョッキリ団のアジトにて。そこではカッティーとザックリーがとある勝負をしていた。
「ぐぬぬぬ……」
カッティーが見つめているのはダーツの的であった。今回はダーツで負けた方が出る事になっているのである。
「へっ、ザックリ言って諦めろ。毎日やってる分、俺の方が上手に決まってるだろ」
スコアの差は40点。今は後攻のカッティーの番でラスト一本のダーツ。ど真ん中を射抜ければカッティーが勝つと言った所だった。
「ここですぞ!」
カッティーがダーツを投げるとそれはど真ん中に命中……する事はなく、真ん中に当たった直後に刺さらずに弾かれてしまった。
「がーん!?」
「あははっ!今回は俺様の勝ちだぜ!」
「……いつまで遊んでるんだい?さっさと出撃するんだよ」
チョッキリーヌはやっと終わったかと言わんばかりに出撃を催促。キリも今ので付いたという事で今回はカッティーが出る事になった。
「こうなれば仕方ないのですぞ……。今日こそプリキュアに勝つのです!」
カッティーが行く中、またローブを被った影が姿を現す。チョッキリーヌはそんな影を見て声を上げる。
「……アンタもいつまで様子見するつもりだい?スラッシュー」
「……ふふっ。確かに私もそろそろ片付けたいなとは思ってますよ?でも……知っての通り群れるのは好きじゃないんですよ。今日はまたあなたの部下さんが頑張るみたいなので譲ってあげますから」
そう言って去っていくスラッシューを見てチョッキリーヌはやはり気に食わない顔つきをする。
「……やっぱりアイツとは合わないね。まぁ良い。カッティーが上手くやればそれで終わる話なのだから」
チョッキリーヌは去っていくスラッシューを一瞥するとカッティーが仕事を済ませるのを待つのであった。
また次回もお楽しみに。