キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ハロウィンが近くなったという事で影人達はハロウィンの行事として街で行われる“はなみちハロウィン仮装コンテスト”に向けて参加する事を決定。早速そのコンテストに向けた会議が始まった。
「それじゃあ、何の仮装をするか考えよう!」
「「「「おーっ!」」」」
「勿論お化けとかは無しで……」
勿論会議を仕切るのはうた……なのだが、やはり彼女の中でお化けは苦手な部類に入るために身内の中だけでもお化けの仮装はNGにしたかった。
「そういえば、仮装ってどういうのプリ?」
「ズコーッ!?」
すると、会議冒頭からプリルンは仮装についてよくわかってない発言をかますと影人が思わずズッコケてしまう。
「プリ?」
「お前なぁ……。さっきの言い回しは自分がどういう仮装を着るとか分かった上でしてた事じゃないのかよ」
「カゲ先輩、ここは私に任せてください。……コホン。ハロウィンで着る仮装というのは魔女や吸血鬼、狼人間。後はジャック・オ・ランタンとか……」
「ジャック・オ・ランタン!?」
こころがプリルンにわかるようにハロウィンで着る仮装を幾つか例として挙げる中、またうたが苦手なジャック・オ・ランタンが話題に挙がったという事で彼女はその恐ろしさにビビってしまう。
「ああ……すみません、うた先輩……」
「そんなに怖がってたら外にも出られないのメロ」
「うぅ……」
ここまで来るとお化けその物と言うよりはジャック・オ・ランタンがお化け嫌いの大元に見えてきてしまうくらいの反応だが……それは一旦さておくとして。今のままでは仮装コンテストどころかハロウィン当日に街中を歩く事さえ叶わない。
「レイ、はなみちタウンのハロウィンってジャック・オ・ランタンはどのくらい出てる?」
「うーん、普通に装飾の一つみたいな扱いをされちゃってるからそこそこ数はあるかな」
「それじゃあ街中を歩く事自体が無理だろ……」
これはジャック・オ・ランタンの克服を早い段階でしておかないとうたはハロウィンを楽しむどころの話では無くなってしまう。
「確かに……うた先輩は仮装の前にお化けの克服をしませんとね」
「うたちゃん。特訓しよう!」
「特訓!?」
うたの中にお化け嫌いの気持ちがある以上、本当の意味でハロウィンを楽しむ事はできない。それならば、お化け嫌いを克服してしまえば良いという事で。早速うたはななの提案により特訓をすることになった。
「題して、“お化けなんて怖く無い作戦!”はどうかな?」
「良いと思います!」
「名前がそのまんまな気がするが……でも咲良さんのお化け嫌いを克服できるというのならその作戦に賭けてみるか」
「それにしてもななが仕切るのは珍しいな」
レイは普段はあまりこういう作戦会議の時に仕切るようなポジションでは無いななが仕切っているという事で、嬉々とした顔つきでそれを見守る事に。そんなわけで早速うたがこの作戦に対して質問した。
「え、えっと……お化けって克服できるものなの?」
「できると思うよ。……理論上は、だけどね」
「この辺は本人の気持ち次第な所があるからな。色々試すには試すけど、最終的に克服できるかは咲良さんの気持ちの問題になるかもしれない」
「なるほど……」
何しろ、お化けは食べ物や生き物に対する苦手とは違って実際には存在しないものだ。そのため、最終的にはうたの気持ちの持ちようになる可能性もあり得る。それを留意した上で今回の作戦をやる必要があるだろう。
「それじゃあ、最初にだけど……うたちゃん。お化けが怖いのは、お化けがいるって思ってるからじゃない?」
「えっ?」
「どういう事プリ?」
「ねえたま、お化けはメロロン達や他の生き物と違って実際に存在するわけじゃないのメロ。だから、お化けをいない物として考えるのメロ」
プリルンの疑問にメロロンが補足するとななはそれに頷き、早速うたに暗示をかけるかのように話す。
「お化けがいるから怖いのなら、お化けなんていない。お化けなんていない。お化けなんて……はい!」
「なな、もう脳内からお化けがいるという考えを削除したのか」
その証拠に先程まで少し不安そうだった彼女の顔つきがどこか晴れやかに見えていた。次はうたのターンである。
「それじゃあ、うたちゃんもやってみて」
「う、うん……。お化けなんていない、お化けなんていない、お化けなんていない!」
うたはどうにか脳内に巣食うお化け……と言うよりは苦手なジャック・オ・ランタンの存在を抹消しようとする。それから彼女は目を閉じつつ何度か言い続けてようやく頭の中から消えそうになったその時。
「ちょっ、馬鹿!メロロン!?」
「お化けなんて……」
影人がメロロンが何かをしている事に気がつくと慌てて止めようとする。しかし、お化け(ジャック・オ・ランタン)を脳内から抹消する事に夢中になっていたうたはメロロンのその行動に気がつく事は無く。
彼女が薄らと目を開けるとそこには下からライトを自らの顔に当て、尚且つ自分の耳をピタッと顔に寄せる事で怖さをマシマシにしたメロロンがうたへといかにもお化けのような声色で話す。
「恨めしやメロ……」
「いたァアアッ!?ギャァアアアアッ!?」
うたはそんなメロロンを目の前で直視したせいで驚いてしまうと叫び声を上げつつ慌ててこころの後ろへと逃げ込む。同時にななやこころも驚いており、影人とレイは呆れ果ててしまう。
「メロロン!?」
「ビックリしたぁ……」
「お化けが怖く無くなったのかチェックしたメロ」
「どう見ても怖いままの反応だったけどな?」
影人はデフォルメで怒りマークを頭に浮かべており、余計な真似をしたメロロンへと苛立ちを露わにする。
「やれやれ、折角治るかもって時に……」
「メロロンのこのヘアアレンジ気に入ったプリ?」
「地味にお前も片棒を担いでいたのかよ、プリルン……」
影人達はプリルンに言われてようやくメロロンのツインテールが地味にヘアアレンジされた後の物であると気がつく。
「ぜんっぜん気に入って無いよ!?」
「今のは聞くタイミングが悪い。というか、今度からこのヘアアレンジやったら余計にトラウマが呼び起こされるようになっただろ……」
プリルンがいつも通りマイペースな言い方をするとうたは首をブンブンと横に振って否定。何なら影人の言う通り、聞くタイミングか最悪過ぎるくらいだった。
それから気を取り直して、何度かチャレンジしてみるが……今のメロロンの脅かしが原因で悉く失敗。ある程度暗示をかけた所で先程のメロロンの顔が脳裏に浮かぶくらいにさっきの光景が変に焼きついてしまったのだ。
「うーん、それじゃあ次はお化けと会ったらウインクする作戦はどうかな?」
「お化けと会ったら……?」
うたはななからの提案にキョトンとした顔を浮かべる。なながこれを提案した理由は単純。ウインクが彼女自身の緊張を解すルーティンであるからだ。
「そう、うたちゃんが教えてくれた勇気が出るおまじないだよ!」
「なるほど!片目を閉じるので、怖い物も見えにくくなりそうですね!」
ななは幼い頃にうたから教えてもらったこのおまじないを使えば彼女のお化け嫌いもどうにかできると考えたのである。ただ、この作戦には弱点があった。それは……
「う、う、ウインク!!」
「出来てないぞ、咲良さん」
「うたちゃん、両目閉じちゃってるよ!?」
お化けを見たく無いがあまりに両目を閉じてしまえばそれはただの目を閉じると何も変わらないという点だ。
「だって怖いんだもん!!」
「これじゃあウインク作戦が機能しないぞ?まずはリラックスを……は?」
そんな時だった。影人は両目を閉じてしまったうたにどうにかウインクをさせる方法を伝えようとするが、その直前にうたの顔の目の前に入り込む影が見えてしまう。
「ッ、おま……」
「う〜た〜?」
影人はその影が何をやらかすか何となく察しが付くと慌ててその影を強制連行しようと手を伸ばすが、それよりも早くうたが恐る恐る両目を閉じた状態からウインクをしようと片目を開けてしまった。
そこにいたのは先程のメロロンと同様に顔の下側からライトで照らしたプリルンである。ただし、先程のメロロンと決定的に違う点として何故か頭に包帯で巻く形で蝋燭……では無くキラキライトを二つ程こめかみ辺りに付けていた。
「プリプリルンルン……ぬぅ〜!」
「あ……あぁ……」
恐らく日本の伝統の呪い方である“丑の刻祭り”で頭に火のついた蝋燭を付けるのと同じような事をしているのだろうが、こんな物を見せられたうたは当然恐怖心が一気に襲ってくるわけで。
そのままうたの顔から血の気が引くとそのまま白目を剥いたまま気絶してしまう。
「わぁああ!?うたちゃん!?」
「大丈夫ですか!?」
「プリィイ!?」
ななとこころがそんなうたへと慌てて駆け寄る中、幾ら悪戯でもここまでの事態にするつもりは無かったプリルンも大慌てで声を上げる。そして影人も流石に我慢できなかったのかプリルンへと怒りをぶつけようとした。
「プリルン、お前ぇえええっ!?」
「影人、お前はひとまず落ち着けって!」
それから影人の方はレイが後ろから羽交締めした事でどうにか大暴走するのは防いだが、これのせいでうたのお化け嫌いの弱点克服どころの話では無くなってしまう。
うたはそのまま暫く気絶する事になり、彼女が目を覚ますともう日が沈みかけるくらいに傾いていた。
「うぅ……怖がり疲れたよぉおお……」
「大変だったね、少し休もっか」
結局、うたは弱点であるお化け嫌いを克服する事はできず。先程の気絶の影響ですっかり気力ゲージが0になったのか……。今はななに膝枕してもらっている形で休んでいた。
「(……咲良さん、羨ましいなぁ……)」
尚、レイはうたがななから膝枕をしてもらっているこの様子を見て羨ましそうな顔を向けるのだがそれはさておくとして。このままではうたのお化け嫌いを克服するなんて不可能に近い。
「うーん、この調子だと仮装も決まらなさそうですね」
「はっ……キュアアイドルの仮装とか!?」
「え?キュアアイドルですか?」
うたは妙案が浮かんだかのようにバッと起き上がるとキュアアイドルの仮装を提案。それから影人達はハロウィン仮装コンテストに出るキュアアイドルのうたを思い浮かべる……が、勿論そんな事をしたらアウトなわけで満場一致で反対された。
“イェーイ!トリック・オア・トリート!”
「アウトだな」
「アウトだね」
「ダメに決まってるだろ?」
「うーん、最早それは仮装とは言わないのでは?」
うたの発言に彼女は影人達から総ツッコミをを受ける始末。ただ、今のお化けを克服できない現状ではうたがハロウィンを楽しむなど夢のまた夢。
ひとまず、この日は一旦解散という事で影人達はうたや彼女の家に住むプリルン、メロロンと別れて家に帰る事に。
「何の仮装をするか決まったら、いつでも連絡をください!」
「ありがとう、こころちゃん!」
夕焼けの空の下。影人、なな、こころ、レイの4人が帰る中で会話をしているとレイがこころへと少し申し訳なさそうに話しかける。
「そうだ、それとこころ。本当に大丈夫なのか?俺達全員分をあと数日でだなんて」
「ッ、言われてみればこころへの負担の大きさは考えてなかったな……」
影人やレイが心配している通り、ハロウィンまで残り数日。この状況下でこころは自分の分も含めた7人分の仮装を作る必要性があるわけで。幾ら何でもこころへの負担が大き過ぎるのではないのかという話だ。
「大丈夫ですよ!気合いで何とかします!」
「気合い……か……」
影人はそれでもこころが1人でそこまでの負担を背負うのが納得行ってない様子で少し考える。すると街中にハロウィンの装飾として設置されたジャック・オ・ランタンを見つけた。
「あ、ジャック・オ・ランタン」
「これから街中ジャック・オ・ランタンだらけになりますよね」
ハロウィンの間までとは言え、これではジャック・オ・ランタンが嫌いなうたにとって地獄と化してしまう。
「……うた先輩、大丈夫でしょうか?」
「何とかはしないといけないよな……」
「……あっ、そうだ!」
すると、突然ななが何かを思いついた様子であった。そのため、影人達は彼女の方を向く。
「蒼風さん?」
「ジャック・オ・ランタンを克服する方法、思いついたよ!」
「なな、それは本当か!?」
「どういう方法ですか!?」
影人達はなながうたのジャック・オ・ランタン嫌いを克服する方法が見つかったという事でどんな方法か気になって問いかける。すると彼女はニッコリとした笑顔を浮かべた。
「ふふっ、それは明日のお楽しみ!」
こうして影人達はななにはぐらかされた中身が気になるが、翌日にはわかるという事で一旦はななの考案した克服方法に託す事になる。
その後、ななやレイと別れた影人とこころ。そんな中で影人はこころへと声をかけた。
「……なぁ、こころ」
「うん?何ですか、カゲ君」
「……ハロウィンの仮装だけどさ。……俺と夢乃も作るのを手伝っても良いか?」
「えっ……」
影人からの提案を聞いてこころは少し固まるが、すぐに影人に心配をかけまいと取り繕おうとする。
「だ、大丈夫ですよ。このくらい……」
「こころ。……俺にだって最低限裁縫をする能力くらいある。それに、今のままだと間に合わせられてもこころが相当無理するだろ」
「ッ、でもカゲ君は兎も角夢乃ちゃんもだなんて……」
こころは彼氏である影人が手伝うだけならまだ許容できたが、流石に夢乃もとなると話が変わってくるようで。そのためどうにか反対しようとする。
しかし、影人はスマホをこころに見せると夢乃とのメッセージアプリのトーク画面を開いた。
「さっき夢乃から俺に頼みが来ていた。これを見てくれ」
「えっ……」
それからこころは影人が見せた画面の中身を見て驚いたような顔になる。そして、影人は改めてこころへと頼むように頭を下げた。
「こころ、頼む」
「……わかりました。そういう話でしたらお願いします!」
こうして、影人とこころは夢乃と3人で仮装作りをする事が決定。今日はひとまず何を着せるかわかっているプリルン、メロロンの分から取り掛かる形で始めるのだった。
また次回もお楽しみに。