キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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うたに届いていたななからの勇気

ハロウィンに向けたうたのお化け(ジャック・オ・ランタン)克服作戦が進行する中、その開始から一夜が明けた翌日。学校での昼休みにいつも通り外の溜まり場で集まった影人達。すると何故かななが得意げな様子を見せていた。

 

「ふふっ、今日のお弁当頑張ったんだ!」

 

「お弁当……?」

 

「えっ、何々?」

 

影人達が珍しく自分のお弁当を強調していたために影人達は気になると自然とななを真ん中にして囲む形になる。

 

「ほら、見てみて」

 

「えっと……」

 

それからななが蓋を開けるとそこには様々なカボチャで作れる料理が入っており、煮物に天ぷらと言った正にカボチャ尽くし。

 

色合いだけで見ると本当に皮の緑の部分を除けばオレンジ一色と言わんばかりのお弁当だった。

 

「「「「「「わぁ……!」」」」」」

 

「ななちゃんのお弁当、カボチャがいっぱい。美味しそう!」

 

「クッキーやスープもあるよ!」

 

なながお弁当とは別の容器に入れたカボチャクッキーにスープ用のボトルも取り出すとその量からも彼女がどれだけカボチャの料理を作ってきたかがよくわかるだろう。

 

「蒼風さん、そんなに大量にカボチャを使うって……あ」

 

「……影人も気づいたか?多分だけど蒼風さんの狙いは……」

 

影人は正直、何故ここまでカボチャの料理を一度に持ってくるのかが疑問だった。普通カボチャを料理に使用する際、ここまでの量を一回の食事のためだけに作るなんて事は無い。

 

そのためななには別の意図があるのだと予想。そしてその予想は影人とレイで一致していた。

 

「これ、折角だから皆で食べない?」

 

「良いの!?」

 

「ななの料理……ッ」

 

「レイ、凄い食べたそうな反応だな」

 

レイはななが作った料理をお裾分けしてくれるという事で嬉しい気持ちが一気に湧き上がってくる。そして、影人も流石のレイもお付き合いしてる彼女の手料理を食べられるとなると目の色が変わる点は他の男子と何も変わらないのだと再認識した。

 

「それじゃあ皆で……」

 

『いただきまーす!』

 

こうして、影人達はななからカボチャ料理を分けてもらう形で食べる事に。勿論ななにはお返しとして自分達の分の弁当を少しずつななにあげる形になった。

 

「カボチャの煮物、甘くて美味しい……!」

 

「天ぷらも美味しいです」

 

「スープも滑らかで絶品ね」

 

「クッキー食べるの止まらないよ!」

 

影人達はななのカボチャ料理に舌鼓を打っており、その美味しさから笑顔が溢れていた。

 

尚、プリルンとメロロンは学校に来ているという事で流石に人間態のぷりん、めろんとして食べている。

 

「わかってはいたけど、ななは料理上手いな」

 

「ああ。カボチャ尽くしだからこそカボチャの味の隅々まで堪能できてる気分になる」

 

そんなご満悦の一同を見たななは微笑むと早速影人達が気がついた彼女の真の目的を果たすためにうたに話しかける。

 

「良かった。こうして食べるとカボチャって美味しいよね!」

 

「うんうん!こんなにどうしたの?」

 

「実は、ジャック・オ・ランタンを作った時に出た材料で作ったんだ」

 

「……へ?」

 

うたはななから聞かされたまさかの事実に固まってしまう。何しろ、このタイミングでジャック・オ・ランタンという単語が湧いて出るとは思わないからである。

 

「やっぱりか……。カボチャを丸ごとくり抜かないと作れないもんな。ジャック・オ・ランタンって」

 

「うん!題して……“食べて克服!ジャック・オ・ランタンの中身は、ただのカボチャだった作戦”!!」

 

「名前そのままだなぁ……」

 

このカボチャ尽くしのお弁当こそが前日の夕方に思いついた作戦であり、なながうたにジャック・オ・ランタンを克服してもらうための第一歩にしてもおうと早速実行したのだ。

 

しかしななからネタバラシがあった瞬間、うたの全身に寒気が駆け抜ける。そしてやっぱりこの作戦にしてもダメだったようで。

 

「ひぎゃああああっ!うわぁあああああっ!」

 

「あっ……」

 

そのままうたは叫び声を上げながらその場から大慌てで逃げ出してしまう。これは完全に作戦として大失敗のようであった。

 

「そんな、今のでもダメ……?」

 

「うーん、私としては良い作戦だと思ってたんですけど」

 

「多分このまま放置したら休み時間終わりまで帰ってこない事もあり得るな……」

 

「それだったらひとまず咲良さんを探すか」

 

こうして、影人達は一旦その場を片付けると逃げ出してしまったうたの事を探しに行く事に。

 

「うたちゃーん!出てきてー!」

 

「それにしても、ジャック・オ・ランタンって単語が出た時点でアウトか……もうこれアレルギーと反応と似たような感じなのかもな」

 

「でも、アレルギー反応とは違って理論上改善はできるはずなんです。だからうた先輩ならきっと……」

 

「お、あそこ見てみろ」

 

影人達が話しつつうたを捜索していると学校の敷地の端の方。植え込みから生えている茂みが揺れているのを確認する。

 

「あっ!」

 

「ッ……」

 

それから影人達が茂みに近づくとその中からうたが少しだけ頭を出す形で姿を見せる。ただ、その目はまるで恐怖の対象が近くにいない事をそっと確認するようだった。

 

「うぅ……やっぱり無理……」

 

「うたちゃん……」

 

そのままうたは茂みの中に引っ込んでしまうと影人達のいる校庭とは茂みを挟んで反対側に隠れてしまう。

 

「うたちゃん、怖がらせてごめんね」

 

「……ううん、ビックリしちゃって」

 

ななはジャック・オ・ランタンという単語をいきなり聞かせたせいでうたを怖がらせてしまったと後悔して謝罪。ただ、うたも今の一件でななを嫌いになったわけでは無かった。

 

「私、カッコ悪いね……えへへ……」

 

「私も……。うたちゃんの力になりたいのに、全然上手くできない……」

 

うたはジャック・オ・ランタンという他の人が平然としていられる物に対してビビってしまう自分が情けないと考えており、同時にななもそんなうたのジャック・オ・ランタン嫌いをどうにかしたいと色々やってるのにどの作戦も上手く行かず。

 

普段自分を助けてくれるうたのようにはできないのだという事実を重く受け止めてしまう。

 

「うたちゃんはいつも……私に勇気をくれるのに」

 

ななは普段は自分の事を助けてくれるうたを今回は逆に助けられるようにしたい。そう願って今回の件を主導するつもりだった。

 

しかし、現実はそう上手くはいかない。ななはうたを助けられない現状に悩んでいると隠れていたうたは茂みから飛び出してきた。するとななに抱きついて悩む彼女へと声をかける。

 

「大丈夫だよ!もういっぱい勇気貰ってる!まだちょっと怖いけど……ななちゃんとなら頑張れそう!」

 

「うたちゃん……」

 

うたはななが自分のために頑張ってくれる。ななの先程の言葉を聞いただけで心の中が温かくなるのを感じていた。そして、その温かさが自分の中に勇気が湧き上がるキッカケになる。

 

1人では怖くとも2人でならできるかもしれない。そんな予感がうたの中に浮かびつつあった。

 

「ハロウィンの仮装、どうしよっかな……」

 

「あ、その事なんだけど。あのね……」

 

頑張る勇気が出たのなら次はハロウィンの仮装コンテストに向けた衣装決めだが、ななの頭の中には何で出るかの案が既に整っていた。そのため、うたへのコッソリと耳打ちする。

 

「おお!それ良い!」

 

「良いかな?」

 

「うん!今すぐこころに相談を……」

 

うたがそう言った所でここまで2人が話す様子を伺っていた影人達が合流。うたの中にある程度の勇気が出たという事が確認できたために彼らは安心したような顔つきを見せていた。

 

「私に相談というのはハロウィンの衣装の話ですね!」

 

「うた、出られるようになったんだ!」

 

「完全克服……までは行かないけど、ハロウィンの日に出歩けないのは致命傷だからな。これで一歩前進……って所?」

 

「皆!」

 

影人達もうたがハロウィンの日に一緒に行動できるというのは嬉しい事である。そして、ななの提案でこころへとお願いする衣装も決まった。

 

「衣装も決まったっぽいし、後はハロウィン当日だけだな」

 

「私達もうたができるだけ楽しくハロウィンを過ごせるようにするわ」

 

「うん!絶対、キラッキランランなハロウィンにするぞ〜!!」

 

そんなわけでハロウィンに向けたうたの弱点克服の話は一区切りとなる。勿論、まだ完全克服してない事に変わりはないのでこれから数日で少しずつ手を打つ必要はあるだろうが、少しだけ可能性が生まれたのは間違いないだろう。

 

「さてと、こころ。話は通ったか?」

 

「はい。……でも良いんですか?」

 

「当たり前だろ。そのための今日の放課後から数日間頑張るんだからさ」

 

影人とこころの2人が何やら自分達に内緒で話をしているのを見てうたやななは気になった。

 

「あれ、こころと影人君は何の話をしてるの?」

 

「あー、ちょっとハロウィンで着る衣装についての相談だ。俺も仮装するって決めてるんだから別に良いだろ?」

 

「それもそうだね!」

 

影人からの説明を受けて一応納得したうたとなな。ただ、実際の所は少し違う。

 

「それじゃあこころ、よろしくな」

 

「はい。放課後、待ってますね」

 

それから影人達は昼休みのお弁当を続きをする事になり、先程まで食べていた場所に戻ると昼食を済ませることに。

 

その後、更に時間が経過して放課後になった。影人とこころは今日、早めに家に帰宅するという話をしてうた達と別れるとそれぞれが帰宅。影人は既に家にいた夢乃へと声をかけた。

 

「夢乃、そろそろ準備してくれ。こころが待ってるぞ」

 

「う、うん……」

 

影人は夢乃に準備を促すと彼女は兄妹が相手なのにどこか余所余所しい返事を返してしまう。

 

「(やっぱ夢乃はこの前の件を気にしてるな……。今回お願いしてきたのもそういう理由だろうし……)」

 

改めてだが、影人は夢乃が色々と悩んでいるのを知っている。そのため、今回夢乃が頼み込んできたのもそれが原因だと予想。

 

一方の夢乃は影人の予想通り、自分の中に出来てしまった夢の件で頭を悩ませていた。また、この話を相談したくても元々影人を助けるために覚悟を持ってまで始めた配信者としての活動。それを自分の都合で勝手に辞めるのはダメなのではないかという考えが脳裏を過って中々影人相手に言い出す事ができない。

 

「(お兄ちゃんはもうとっくに立ち直って、自分のやりたい事をするために頑張ってる……。だから私が夢を見つけたかもしれない事くらい言っても良いはずなのに……何でこんなに胸が痛むの……)」

 

夢乃はそれでも前を向いている兄にこんなにも悩んでいる事を悟られるのは絶対にダメだと思っていた。

 

「(ッ、今変に考え過ぎるのはダメ……まずはこころ先輩の家に行かないと)」

 

それから黒霧兄妹は準備を終えると2人揃ってこころの家に移動して玄関のチャイムを鳴らす。

 

「はーい」

 

すると早速こころが出てくると影人達が来た事を確認。早速家の中に招き入れる。

 

「こころ、待たせたな」

 

「いえ、お二人共すみません……本当なら私がやるべき事なのに…-」

 

「はぁ……あのな、こころ1人でやるには限界がある事くらいわかるだろ?あと数日しか無いんだ。さっさと終わらせるよ」

 

影人は未だに自分1人では限界がある事に悔しさを感じているこころを咎める形で話すと彼女と共に紫雨家へと入る。そして、影人達がやり始めたのはハロウィンの衣装作りだった。

 

「カゲ先輩はこれとこれをお願いします。夢乃ちゃんはこっちを……夢乃ちゃん?」

 

「は、はい!わかりました!ここをやれば良いんですね!」

 

影人達が早速役割分担をする中で夢乃はまた先程の件でボーッとしてしまっており、そんな姿を見られて慌てて取り繕うと作業を初める。

 

「カゲ先輩。ハロウィンの衣装作りを夢乃ちゃんがやりたいって言ったことと言い、今の反応と言い……どうしたんですかね?」

 

「……まぁ、色々複雑な気持ちなんだと思う。俺も詳しくはわからないけど……」

 

こころも流石に夢乃がこんなに不審な姿を見せていては気になってしまう。ただ、影人は夢乃の事に関しては本人が自分の口から言い出すまではそっとしておくように伝えた。

 

「カゲ先輩、それと改めて……手伝ってもらってありがとうございます」

 

「流石に1人でこれ全部はキツいと思ったしな。それに、俺は裁縫が別段苦手ってわけじゃない。手伝える範囲をやってるだけだよ」

 

「それでも助かりました。こうして見てみると8人分はどう頑張っても無理でしたし……」

 

「だろうな……」

 

影人、こころ、夢乃の3人はそれから手分けしてハロウィンの衣装を制作していく。ちなみに8人分と言ったが、これはアイドルプリキュアのメンバー6人に加えてレイ。そして、衣装作りをやると言い出した夢乃の分も含まれている。

 

「こころ先輩、こんな感じでどうでしょうか……」

 

「ありがとうございます、夢乃ちゃん。凄い上手ですね!」

 

「い、いえ……。先輩程じゃありませんよ……」

 

夢乃も裁縫に関しては影人同様に下手というわけでは無い。かと言って特段優れているということも無いわけで。夢乃がやりたいと感じつつある夢もこの裁縫の事ではない。

 

「……あの、先輩」

 

「何ですか?」

 

「……先輩の作ってる仮装の衣装……可愛いですね」

 

「そう言ってくれると嬉しいです!夢乃ちゃん、可愛い衣装とかに興味があるんですか?」

 

「ッ!?え、えと……」

 

夢乃はこころにどう返事を返そうか迷いつつ、少ししてから小さく頷いた。

 

「そうなんですね。夢乃ちゃんも女の子ですし、好きな人ができたら可愛くなりたいって気持ちはわかりますよ」

 

「へ?べ、別に私は好きな人は……」

 

「こころ、あまり夢乃を困らせる事を言ったらダメだからな?恋人は夢乃のペースで作れば良いし。あ、でもできれば恋人を作ったら相手の人は兄として気になるけど……」

 

「カゲ君こそ夢乃ちゃんを困らせるような事言わないでくださいよ……夢乃ちゃんだって兄にこう色々口出しされるのは嫌な時だってありますし」

 

そんな風に影人達が話をしているのを聞いた夢乃は何となく2人が自分の異変に気づきつつあると感じる。

 

「(ッ……やっぱり2人共私の異変に気付いてる。だから気を使おうとしてくれて……)」

 

夢乃は気を使ってくれる2人に申し訳ない気持ちが浮かびつつも今はまだ自分の気持ちを話すことはできないため、まずは自分からやると言い出したハロウィンの衣装作りを真剣に取り組もうと考えて作業を進める事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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