キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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落ち込む影人 運命の分かれ道

こころとプリキュアが出会ってしまい、影人はこころの気持ちがプリキュアに釘付けになってしまったという事で嫉妬の気持ちが湧き上がってきていた。

 

「……何で、何で俺は……」

 

影人の心は荒んでしまうと共にプリキュア達の輝きによってこころを奪われたと考えるとすっかり自信を無くしまう。そのため、彼は落ち込んだような暗い顔つきをしながら歩いていた。

 

「はぁ……ッ!?」

 

すると影人は落ち込んだせいで前をよく見れておらず。そのせいで前から歩いてきた人影にぶつかってしまった。

 

「きゃっ!?」

 

「あっ!すみません!大丈夫ですか!?」

 

影人がその影へと手を差し出すとそこにいたのは中ニの自分よりも背が高めでななの髪よりも黒がかかった深い青……紺色の髪をセミディの長さに切っており、ウェーブがかかっていた。更に瞳は紫よりの黒で胸囲は普通より一回り大きめである。年齢は高校生〜二十歳前後だろうか。そんな美しい若い女性だった。

 

「……ッ、すみません!私の方こそ……」

 

彼女の方も影人とぶつかるまで前を向けていなかったのか、慌てて謝罪の言葉をかけてくる。

 

「立てますか?」

 

「は、はい……大丈夫です」

 

女性が差し出された影人の手を取ると立ち上がる。影人はそんな女性を見ているとその美しさに目を一瞬奪われてしまっていた。

 

「……あの、私の顔に何か付いてますか?」

 

「い、いえ……。ごめんなさい」

 

影人はそんな彼女に謝ると慌てて目を逸らすと内心で心に喝を入れる。それと同時に影人は僅かな違和感を感じていた。幾ら何でも自然に目を奪われすぎだと。確かに彼女には美しさという目を奪われる要素がある……のだが、それがあまりにも自然すぎる。

 

「(……何でだ?俺はこころにぞっこんなはずなのに……ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ彼女に好きという気持ちを完全に支配された。でも、彼女に悪意は無さそうで)」

 

「……あの、どうかされました?」

 

「いえ、すみません。取り乱しました」

 

影人は冷静さを取り戻すといつもの他人への対応モードに切り替える。いずれにしろ、自分のせいで彼女とぶつかってしまったという事実に変わりは無い。

 

「あの、すみません。ぶつかってしまった後に申し訳無いんですけど、ちょっと教えて欲しい事があって……」

 

「え?……あ、はい」

 

「あの……私、最近この街に引っ越してきたばかりでまだこの辺に詳しく無くて。Pretty_Holicってお店に行きたいんですけど、確か街中の方にあるって感じで道が合ってるか不安で……。教えてもらってもよろしいですか?」

 

女性は困ったような顔つきで影人へと頼んできた。影人もこういう困っている人からの頼みなら幾ら警戒の気持ちが湧いたとしても見過ごすわけにはいかない。

 

「わかりました。Pretty_Holicでしたらここから……」

 

それから影人は彼女へと丁寧に道を説明。女性は影人からの説明を真摯に聞くと理解できたように頷いた。

 

「すみません、わざわざ見ず知らずの私に……」

 

「いえ、俺も最初この街に引っ越しをした時は覚えるのに苦労したので……」

 

「そうなんですね!すみません、助けていただきありがとうございました!」

 

彼女は丁寧な口調で頭を下げると影人はそんな彼女を見て先程の警戒心は薄れていた。彼女から感じた気持ちはただの一時的な物であると。この話し方を見ていると真面目な良い人なだけだと。

 

「えっと……」

 

「すみません、申し遅れました。私、天城切音って言います」

 

「天城さんですか……。俺は黒霧影人です。それでは、失礼します」

 

「はい!改めて、助けていただきありがとうございました!」

 

天城はそう言って頭を再度下げるとトテトテと走って去っていく。どうやらそれなりに急いでいる状況だったらしい。それだったら言ってくれれば説明もそれなりに簡略化できたのにと思った影人だが、行こうとした所で影人は目を見開く。

 

「ッ!?あの暗い空……まさか!?」

 

影人の視線の先に見えたのはマックランダーが現れた際に発生する暗い空であった。しかも自分が行った先に天城がいなくなったのを思い出す。

 

「ッ、マジかよ……。こんなタイミングで出てくるなよアイツら!」

 

影人がそんな風に言いつつマックランダーのいる方向へと走り出す。せめて彼女に危険を伝えなければならないと。この街に来たばかりならまだマックランダーの脅威を知らないリスクがあるからだ。

 

ただ、影人はこころを取られたという失意と先程の天城とのやり取りで完全に失念していた。自分が長時間こころと離れてしまった事によって起き得るリスクを……そして、それは起きてしまった。彼女の運命を変える大きな出来事として。

 

時はアイドルプリキュアが帰って行った後にまだ遡る。プリルンと一緒に残っていたこころは一人未だに夢見心地でボーッとしていた。先程のアイドルからの言葉。一緒にステージに立とうという言葉の影響でついついサインを貰うのを忘れてしまう。

 

「私、キュアアイドルとキュアウインクに会えた……」

 

でもこころはそんな些細な事どうでも良いと思えるぐらいにアイドルプリキュアの二人と会えて幸せ気分だった。

 

「……ありがとうございます。プリルン先輩のおかげです」

 

「こころが二人に会えてよかったプリ!」

 

「はい。でも、それだけじゃ無くてどうしてこんなにも心キュンキュンしているのか……二人に会えてようやくわかりました。キュアアイドルの言葉……あの言葉のおかげで自分の気持ちが改めてわかりました」

 

アイドルが言っていた“いつか一緒に踊りたい”その言葉はこころの胸に響いて止まなかった。

 

「……ずっと二人の事を考えるのも、つい踊っちゃうのも、私が心キュンキュンしてる理由……ずっと前から思っていた答えが正しかったんです」

 

「それって何プリ?」

 

「それは、私が二人みたいになりたいから!同じステージに立ちたいからなんだって!こんな気持ち、生まれて初めてなんです!」

 

そんなこころの姿はプリルンにとってはキラキラでいっぱいに見える。そしてそれは……プリルンがこの日の朝、夢の中で見ていた紫の星が輝く現象にそっくりだった。

 

「……紫のお星様……キラキラ……プリ!あの夢は本当の事だったプリ!」

 

「もっとダンス、頑張ろう!カゲ先輩……影人先輩にももっと手伝ってもらいたい。連絡しなきゃ……」

 

こころがスマホを出そうとするとプリルンはそんなこころへと声をかける。

 

「こころ、カゲ先輩って何プリ?」

 

「ああ、すみません。カゲ先輩っていうのは影人先輩の事で。私にとって、アイドルプリキュアみたいになりたいって思わせてくれた人なんです」

 

「影人がプリ?」

 

プリルンにはわからなかった。プリルンから見れば影人がうたやなな程の強く眩しい輝きがあるかと言えばそうでは無い。日に日に輝きが強くなってるのはプリルンもわかってはいるものの、やっぱり二人と比較するとまだプリキュアとして見るにはあと一、二歩届かないのだ。

 

「……先輩は、幼い頃私を助けてくれました。ダンスを始めるキッカケにもなって……。その時はすぐに別れちゃったんですけど、私にとっては超えるべき目標でした」

 

そんな風にこころは影人の話を始める。その話をプリルンはちゃんと聞く事にした。

 

「影人先輩はダンスを知らなかった私にキラキラを教えてくれて。いつか先輩みたいになりたい。先輩みたいになって驚かせようと思って頑張ってきたんです。でも、この街で改めて会った先輩は酷く暗い顔つきをしていて」

 

こころが思い出したのは再会した時の影人の暗さだった。プリルンもそれについてはちゃんと理解しているつもりである。何しろ、そのくらいの時期にプリルンも影人と出会ったからだ。

 

「私はどうしてでも先輩を助けたかった。あの時助けてくれたお礼をしたかったんです。でも、それは同時に先輩の本来の輝きが私なんかよりももっと眩しい事を気づかせました」

 

こころは悔しかった。沢山努力しても尚、自分は影人の隣に立つには不十分と思えるぐらいに影人は輝いていたのだ。

 

「……私、先輩の隣に立ちたいんです。先輩と並んでも恥ずかしく無いぐらいの輝きが欲しいんです!……アイドルプリキュアに惹かれたのもそれが大きな理由なんだと思ってます。キュアアイドルやキュアウインクのような眩しい輝きを身につけられれば……今度はきっと、カゲ先輩の隣に自信を持って立てるから!」

 

その情熱の炎は熱く燃えており、彼女にとってアイドルプリキュアは憧れであると同時に自分を変えてくれる存在だと信じているのだ。

 

「プリ〜。こころ、さっきよりもますますキラキラしてるプリ!」

 

「あっ、そうだ!プリルン!新メンバーのオーディションとか無いのかな?合格したらキュアアイドル達と一緒のステージに立てるみたいな!」

 

こころはアイドルプリキュアに入るためのオーディションが無いのかとプリルンへと問いかける。

 

「プリ!それならプリルンがオーディションしてあげるプリ!」

 

「うえっ!?プリルン先輩が私のオーディションの審査を!?」

 

「その通りプリ!」

 

こころが驚く中、プリルンは自信満々にそう言う。うた達がその場にいたら速攻で止められただろうが、まだこころはアイドル達の変身前の正体は知らないため、プリルンと一緒にはいられない。唯一止められるであろう影人は今、別の場所で天城と話をしているためにここには来られないのだ。

 

「キュアアイドルを見つけたのはプリルンプリ!」

 

「という事は敏腕スカウト先輩!?オーディション、よろしくお願いしま……」

 

「合格プリ〜!」

 

「す……え?」

 

こころが頭を下げるのと同時にプリルンはこころへと合格だと言ってしまう。そのため、こころらジト目になるとプリルンへと質問した。

 

「まだ何も……」

 

「オーディションしなくてもプリルンにはわかるプリ!今日からこころもアイドルプリキュアプリ!」

 

そんな風に興奮したようにプリルンが言う。この場に影人が居たら割とブチ切れ案件になりかねないが、本人がいないせいでその展開にはなっていない。とはいえ後で確実に怒られるだろうが。

 

「うえ?今日……から?」

 

同時刻。喫茶グリッターでは丁度働いていた田中が休憩時間に入っており、二階でうた、ななと共にこころとの件の話をしていた。

 

「なんと、そんな事があったのですか」

 

「プリルン、こころちゃんを応援してるみたいだったしね!」

 

「うん!」

 

「成る程……プリルンの考えは私とは違うみたいですね……」

 

「どうしたんですか?」

 

田中は手を顎に当てて考え込む中、ななに問われて自身が知っているある事実を口にする。

 

「実はプリルンはもう一つ持っているのです」

 

「何を?」

 

「あなた方がプリキュアに変身する際に使うアイテム。アイドルハートブローチです」

 

その言葉を聞いて二人は自分の分のブローチを出す。そして、うたは嬉しそうな声を上げた。

 

「って事はつまり、私達の仲間が増えるって事!?」

 

「それは心強いけど……でも、一個不安が……」

 

「何?ななちゃん」

 

「うん。影人君も言ってたけど、こころちゃんが知ってる私達ってあくまでステージで踊る普通のアイドルだから……。マックランダーの事、ちゃんと言わないとダメなんじゃないのかな」

 

ななの言う事は最もだ。むしろ、言わずにこころを戦場に連れ出せば危険が伴う事になる。更にその時仮に変身できなければ影人のように沢山傷ついてしまうだろう。

 

「私の方からも気になっているのが……アイドルプリキュアの最後の一人は影人さんなのでは無いのかと感じているんです」

 

「影人君が!?でも、言われてみれば確かに……プリキュアになれそうではあるんだけど」

 

影人はマックランダーとの戦闘の際に鋼の精神力とその場での思いつきと行動力でマックランダー撃破のサポートをしている。むしろ、今までプリキュアになれていない理由がわからなかった。

 

「恐らく、プリキュアになるための最後のピースが埋まれば彼も変身する資格は得られるかと」

 

どちらにせよ、今はこころの方だ。彼女はまだアイドルプリキュアの本質がわかってない。そんな状態でマックランダーの前に連れて行かれればどうなるか……。ひとまず彼女と接触できる影人へと連絡をしようとすると外の景色が暗くなるのが見えた。

 

「あれって……」

 

「マックランダー……出ちゃったよ!?」

 

普段ならプリルンが探知して知らせてくれるのだが、そのプリルンがいないために二人の初動が遅れてしまった。ひとまず話を切り上げて二人は街へと走っていく事になる。

 

再び少し前に戻るとプリルンが合格の発表をした後にこころの分のアイドルハートブローチが手渡された。

 

「それがアイドルプリキュアの証、アイドルハートブローチプリ!」

 

「へぇ……。これがアイドルプリキュアの証なんですね。これを持ってメイクして……衣装を着たら……私も二人みたいなアイドルになれるんだ!」

 

そんな風に輝く自分を想像する。そんな自分を想像するだけで彼女の心は高鳴っていく。

 

「心キュンキュンしてます!」

 

その直後、彼女達の近くにある自然公園の上空にカッティーが出現。ただ、ザックリーとの話の後なので僅かに不機嫌だったが。

 

「ザックリーめ、仕方ないので今日は自分の出番なのですぞ!」

 

カッティーが周りを見渡す中、下に植木職人の男性を見つける。彼は咲いているチューリップを見て和やかな目を向けていた。

 

「ふぅ……。綺麗に咲いてくれたね」

 

「ふぅむ。早速目障りなキラキラがありますなぁ。お主のキラキラ、オーエス!」

 

「うわぁああっ!」

 

カッティーが綱引きのモーションでキラキラを引き抜くと早速マックランダーを召喚する。

 

「カッティーン!出でよ!マックランダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にするんですぞ!」

 

今回呼び出されたのは植木職人の服と麦わら帽子を背中にしたマックランダーであり、右手には巨大な高枝切りハサミを持っていた。

 

「マックランダー!」

 

マックランダーの出現により、プリルンの方もその存在を探知すると身震いする。

 

「ブルっと来たプリ!アイドルプリキュアの出番プリ!」

 

「えっ!?いきなり……?」

 

こころはいきなりの出番に困惑するがそれでも自分の輝きを、やってきた事を信じると向かう決意をする。

 

「ずっと歌って踊ってきたんだもん……大丈夫!」

 

それからこころがプリルンに先導されてマックランダーのいる方角へと向かう。ただ、こころはまだアイドルプリキュアの本当の役割が街を闇に染める怪物との戦いだと知らない。そして、それを唯一彼女に伝えられる人間である影人は今こころとは別方向にいる。現場からの距離的に見ても先に到着するのはこころの方だ。……運命の分岐点はすぐそこにまで迫っていた。

 

同時刻。マックランダーの暴れる場所付近では、一人の影が一瞬の暗い光と共にローブを来た姿へと変わるとそれはチョッキリ団と行動を共にするスラッシューとなる。そして、その影は女性の声色で小さく呟いた。

 

「ふふっ。さてと、アイドルプリキュア……今日もその力を見せてもらいましょうか。それと、あなたもね……黒霧影人君」

 

スラッシューはその名前の割に性別は女性だったのだ。そして、彼女はプリキュアと影人の存在を待つ。彼女はプリキュアの登場を心待ちにする事になるのであった。




と言うわけで今回の話はここまでです。このタイミングでスラッシューのCVを公開します。

スラッシュー……CV:藤本侑里さん

次回はいよいよあの回になります。果たしてどうなるか。楽しみにしてください。
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