キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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レイ達の学園祭 パート3

占いのコーナーがある1年2組から出たレイ達。ただ、4人の中の1名が落ち込んだような様子でありもう1人はかなり不機嫌な様子だった。

 

「やっぱり私がやろうとしてる事はダメな事なのかな……」

 

「あんな占い結果だなんてあり得ないわ……絶対あり得ない絶対あり得ない……」

 

「何があってこうなった?」

 

「あはは……」

 

レイは夢乃とめろんが教室から出てきた際の様子を見て完全に呆気に取られてしまっていた。ななもどうにか事情を聞こうとする。

 

「え、えっと2人共。大丈夫?」

 

「聞いてよなな!占い結果がかなり酷いのよ!」

 

その瞬間、めろんが珍しく不機嫌な状態のまま勢い良くななへと詰め寄っていく。対してまだ落ち込んだ様子の夢乃の方にレイが話しかけた。

 

「夢乃ちゃんの方はどうだった?」

 

「え、えと……実は……」

 

レイは夢乃から占い結果が芳しくない事を話すと“うんうん”と頷く。こういう時は変にアドバイスを送るのでは無く相手の主張を聞くこと自体が大事だ。それだけで相手は自分の話を聞いてもらえているという気持ちになれる。

 

「なるほどな」

 

「レイ先輩はどう思いますか?」

 

夢乃は自分のやりたい夢の内容に関しては話さずにふんわりと誤魔化す形でレイに相談。ただ、レイの答えは割とあっさりしていた。

 

「俺だったらその夢っていうのがどうしてもやりたい事ならやるべきだと思う」

 

「ッ……それは大失敗するリスクを背負ってでもですか?」

 

「リスクの話をしちゃうか。……そういうリスクを気にしてる間はやらない方が良いと思うかな」

 

「え?えっと、どっちですか?」

 

レイの答え方に夢乃は困惑してしまう。これではやれば良いのかやらない方が良いのか肝心な事がわからない。

 

「わかりやすく言うなら、夢として最後まで追えるだけの気持ちがあるならやるべき。ただ、後ろ向きな考えが邪魔をして迷ってる間はやらない方が良いって事かな。だから、今の夢乃ちゃんはまだやるって決めない方が良いって事」

 

「うーん……それは私がやるべきかやらないべきか迷ってるからですか?」

 

「そうそう。そういう将来にかかる事はやりたい気持ちを最後まで押し通せる覚悟が無いと厳しいからね。もし迷いがあるとちょっとした小石で躓いた時にすぐに立ち止まってしまう。俺はそれじゃあダメだと思ってるからな」

 

レイの言葉を聞いて夢乃は何となく理解できたような顔つきを見せていた。

 

「お兄ちゃんも私が配信をやるって言い出した時同じような事を言ってましたし、確かにそれが正しいと思います」

 

「そっか」

 

そんな事を2人で話しているとななとめろんの方も話し終わったのか。ななが声をかけてきた。

 

「そろそろ私の行きたい場所に移動しても良いかな?」

 

「おう。こっちも話がついたしな」

 

「はい!」

 

それから4人は早速移動を開始。校舎内を歩く中、廊下は多くの人で賑わっていた。

 

「それにしても人が多いわね」

 

「うん。それだけこの学園祭が楽しいって事になると思う」

 

「歩いている人達は皆笑顔だしな」

 

するとレイ達はななの行きたいと言っていた場所にもうすぐ到着するというタイミングでとある光景を見つけた。

 

「………」

 

それは、この学園祭の女子生徒と思われる人がキョロキョロと誰かを探しているかのように忙しなく周りを見渡している様子である。

 

「あれは……」

 

「この学園祭の生徒かしら」

 

「誰かを探してる?流石に学園の生徒だし迷子は無いと思うけど」

 

「あれ、それにしてもあの人。どこかで……」

 

レイ達が女子生徒について話をしていると夢乃が何かに気がついた。それは彼女の事をどこかで見たことあるという既視感である。その子はえんじ色の髪でロブぐらいの髪の長さ。そして左目が前髪で隠れているのが特徴的だった。瞳の色は緑である。

 

「……レイ君」

 

「ああ。咲良さんなら絶対」

 

「だよね。私、話しかけてみる」

 

ななとレイはそっと2人で話すとこういう時にうただったら絶対に彼女の事を助けると判断。そのため、話しかける事にした。

 

「あの」

 

「………ッ」

 

「どうしました?」

 

ななが優しく女子に話しかけるものの、女子は中々答えを返してくれない。レイ達を警戒しているのか。それとも話せない何かの理由があるのか。とにかく少し待ってみても彼女からの返事は無い。

 

「……もしかして、声が枯れていたりします?」

 

「ッ……」

 

ななはこのままでは会話ができないという事で喋れない理由について聞く事に。すると彼女はいきなり喋り出した。

 

「そ、そんなに気にしなくても大丈夫よ」

 

「……無理して声の音程を上げなくても大丈夫ですよ。熊井弥子さん……ですよね」

 

「ッ!?」

 

そのタイミングでレイが少女へと踏み込んだ問いかけをする。できればこういう踏み込んだ話をするのは避けたかったが、このままではどちらにせよ会話が成立しなかった。そのため、どうにか彼女の地声での言葉を聴きたいのである。

 

「どうして私の事を?」

 

「信じてもらえるかはわからないけど実は俺達、レイレイ先輩の知り合いって言えば良いのかな。彼女と面識があって。その時に部活動で活動している熊井先輩の事を見ていたんだ」

 

「ッ!?レイレイ先輩の……」

 

レイは玲音の名前を出す形で弥子に警戒を解いてもらおうとした。ただ、やはりまだ警戒は続いているのか……どうしても声色に緊張感が残っていた。

 

「あの、熊井先輩のアカペラ部での練習風景をウルルンTVで観て。凄く綺麗な歌声でした」

 

「ウルルンTV。なるほど……閏ちゃんの」

 

「パート別でのあなたの声、とても凛々しくてカッコ良かった。あの低い声……」

 

「ッ……それ、本気で言ってるんですか?」

 

めろんが弥子の声について褒めていると彼女は確認するように強めの口調で問いかけてくる。どうやら、彼女が人前であまり喋らないのには自分の声について何かの不安があるからに思えた。

 

「ええ。あなたの低くてカッコ良い音が混ざる事でアカペラに厚みが増して、歌がとても気持ち良く聴けたわ」

 

「………」

 

めろんは心の底から弥子の歌声を褒めていた。それに対して弥子もめろんがお世辞でそういう事を言っているわけじゃ無いと感じ取ると少し嬉しそうな顔を見せて答えを返す。

 

「そう……。あの、もしかしてあなた達もアカペラを?」

 

「そうです!実は私達、7人くらいでアカペラに挑戦していて。だから弥子先輩の存在って凄い重要だと思ってます!」

 

「女子であそこまでの低い声が出せるなんて、他の人にはできない唯一の武器って感じでカッコ良いですよ!」

 

ななや夢乃が弥子の声についてまた褒めの言葉を話す。そして、その言葉に弥子は自分のアカペラチームの子達と同じような感覚を感じるとようやく警戒を解いてくれた。

 

「そんなに心の底から私の声を褒めてくれたの……アカペラ部の人達以来で……ありがとう」

 

「自己紹介が遅れました。俺は音崎レイ」

 

「黒霧夢乃です!」

 

「私は蒼風なな」

 

「田中めろんよ」

 

「初めまして。私、知ってる通り熊井弥子って言います」

 

改めての自己紹介を終えた所で改めて彼女との話をする事に。まずはここで何かを探している理由についてだ。

 

「あの、先程この辺りで周りを探していたのって……」

 

「うん。私の友達を探してたの。実は2人で学園祭を回るつもりだったけど、私が間違えて先に行ってしまって」

 

「そうだったんですね」

 

どうやら、弥子は本当なら一緒に学園祭を回る相手がいたらしい。ただ、その子と離れてしまったせいで困ってしまったようで。

 

「その子の特徴とかわかります?」

 

「あなた達ならわかると思うけど小牧嬉歌ちゃんって子。同じアカペラ部の」

 

「あっ、リードの方ですね!」

 

「そうそう」

 

弥子は閏の動画で自分達の部活の事を知っているなら話は早いとばかりに嬉歌の名前を出しつつ話を進める。彼女の名前を出した方が当然レイ達もわかりやすいからだ。

 

「なるほど、嬉歌先輩を探しているんですね」

 

「うん。アカペラ部の中でも一番仲の良い子だから」

 

「こういう時影人達なら何か知ってるかもだし、連絡しておくか」

 

それからレイが影人のスマホに向けてメッセージを送っておいた。そして、それを終えるとなながレイにそっと話しかける。

 

「レイ君、弥子先輩も一緒に……」

 

「ああ、俺も同じ事を言おうと思ってた」

 

ななの意見にレイも賛成すると2人はそっと頷き合う形でコンタクトを取り、双方の意見が一致している事を確認。ななが提案した。

 

「そうだ、もし弥子先輩が宜しければですけど私達と一緒に嬉歌先輩を探しませんか?」

 

「えっ……良いの?」

 

「良いよね?めろん、夢乃ちゃん」

 

「ええ、勿論よ」

 

「はい!その方が楽しそうです!」

 

ななは2人の同意を得たという事で改めて弥子に向き合う。そして、弥子からしてみても自分から他人へと話しづらいのだとしたらレイ達が一緒にいてくれた方が他人と喋る回数は必然的に減る。それにレイ達は自分の声が低いのを聞いても特に気にして無い様子であり、これなら嬉歌の事を探しやすいように思えた。

 

「皆が良いなら……お願いします」

 

「うん!」

 

「良し、話は纏まったな。俺達が行こうと思ってた場所から順番に探そう」

 

こうして、レイ達も影人達と同様に弥子も含めた5人で嬉歌を探しつつ学園祭を回る事に。尚、その影人達の方はとっくに探し人である嬉歌と合流しており……後は影人がレイからのメッセージに気がつけば万事解決という段階ではあった。

 

「弥子先輩はそれでも大丈夫そう?」

 

「う、うん。私は元々嬉歌ちゃんが見つかるまで探すつもりだったし」

 

「一応連絡は入れておきました?」

 

「……あっ!?」

 

どうやら慌てたせいで連絡を入れるという考えが抜けていたらしい。それから慌てて弥子がスマホを探すが体のどこにも無い。

 

「あれ?あれ?」

 

「もしかしてスマホを落としちゃってたりします?」

 

「ううん。その可能性は低い。よく思い出したら教室を出る時にスマホを通学用の鞄の中に入れたままかも」

 

そういう話であれば嬉歌側からの連絡に気が付かないのはある意味仕方ない。

 

「それなら仕方なさそうだな」

 

「ごめんなさい、折角学園祭に来てくれたのに」

 

「大丈夫ですよ。じゃあ気を取り直して、行こっか」

 

こうして、レイ達は5人での行動を開始した。その後少し移動して5人が到着したのはとある3年の教室である。そこにあったのは謎解き迷路だった。

 

「これは謎解き迷路……」

 

「確かにこれは面白そうだな」

 

「制限時間も決まってますね。20分以内に脱出の必要があるようで」

 

このクラスは段ボールで作られた迷路のようだった。ただし、途中にある3つの謎を解かないといけないらしく。その謎を解いた上でのゴールが必要だ。

 

ここに制限時間を設ける事で常に人が来るであろう学園祭での回転効率を少しでも上げるのと心理的に焦らせる狙いがあると言える。

 

「えっと、基本的に2〜3人で1チームになるらしいですね」

 

「ここは公平にグーかチョキかで別れましょう」

 

それからレイ達は2チームに分かれて謎解き迷路にチャレンジする事に。チームはなな、めろん、夢乃の3人とレイ、弥子の2人である。

 

「それじゃあレイ君、行ってくるね」

 

「おう」

 

「あ、あとそれと……弥子先輩に変な事したらダメだよ?」

 

「わかってるさ。わかってるからそのちょっとだけ殺気を出すのを止めてくれないか?」

 

「えー?良いじゃん」

 

どうやらななはレイと一緒になれなかったのが悔しいらしい。そのため、せめてレイが他の女に手を出さないように釘を刺したのである。

 

レイとしては元からそんなつもりは無いのだが……この辺は仕方ないだろう。

 

「もしかして、ななさんって彼女さん?」

 

「ああ。ちょっと嫉妬深い所はあるかもだけど、そういう所も含めて俺は彼女を好きになったから」

 

「大変だね」

 

それから2人が迷路の中に入りつつ話をする。そして、迷路内を歩きつつレイは弥子へと問いかけた。

 

「……弥子先輩は自分の声が嫌いだったりするんですか?」

 

「……うん。昔からこの低い声のせいで色々苦労して。ほら、全然声からして女の子って感じじゃないでしょ?だから気持ち悪がられたって言えば良いのかな。少し前までは他人に声を聞かれるのも嫌で」

 

「なるほど、だから俺達との初対面時に喋るのをあんなにも嫌がったんですね」

 

弥子は生まれつき声が低い。そのため周りは女子とは思えないくらいの彼女の声の低さを見て揶揄い、馬鹿にした。

 

「だからできる限り周りと喋る時は女子らしい声を作ろうと頑張ったけど……結局はあまり喋らない方が自分も楽って気がついて」

 

「心を閉ざすようになったんですね」

 

レイ達は早速一つ目の謎を見つけるとそれを解き終わり、次の場所へ移動しつつ話を続ける。

 

「でも、今は少しだけこの声に感謝してる」

 

「それは、アカペラ部の皆さんと出会ったからですか?」

 

「うん。さっき言った嬉歌ちゃんは私のこの声を聞いても普通に接してくれて。アカペラをやる上で私が必要だって言ってくれた。普通の生活では邪魔なこの声もアカペラでは立派な個性になる」

 

レイはそれを聞いて頷く。彼女達の部活は女子だけで構成されている。人にもよるが、1st〜3rdまでなら比較的出せる人はいる。しかし、更に下のベースまでカバーできる女子となると貴重だ。何しろ影人達のアカペラだってベースは男である影人が担当しているくらいである。

 

そのため弥子のような低音域の女子というのは女子だけのアカペラにおいては大変有り難い存在と言えるだろう。現に音楽ガチ勢である結は弥子の存在を知った際、音楽絡みの事だったとはいえ初見で彼女の存在に好感を持っていた程だ。

 

「なるほど、確かにそれは弥子先輩にとっては嬉しい事ですよね」

 

「うん」

 

そうこうしている間に2人は二問目もクリアし、三問目にまで突入していた。

 

「だから今私はアカペラをやれてるのが楽しい。部活内は色々あってギスギスしちゃってるけど……」

 

「アカペラをやれてるのが楽しい……それはアカペラ部に誘ってくれた嬉歌先輩にとってはとても嬉しい言葉だと思いますよ」

 

レイは弥子の言葉に微笑みを向けつつ2人で最後の問題を解答し、迷路の外へと出る事になるのだった。




また次回もお楽しみに。
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