キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
手鞠沢高校の学園祭にて影人達が全員で参加したコーナー……それがコスプレファッションコンテストである。
そして、影人達は受付を済ませると早速コーディネートタイムへと突入した。
「わぁ……こんなにも服にバリエーションがあるなんて!!」
「あ、あれとか面白そう!!」
そこにあったのはごく普通の私服に学制服、メイド服や作業着、スーツや水着に面白シャツ等。兎に角どうやって集めたのかと言えるくらいのバリエーションがあった。
「うーん、ここまでバリエーションがあると上手く選べるかな……」
「俺は変に考えず直感で良いと思う。自分でやりたいコンセプトを見つけて、それに合う服を探してこれば良い。多分自分の感性を信じないと迷いまくって選べないだろうし」
ななが少し自信を無くしているとレイが彼女へとアドバイスを送る。その隣ではめろんが黙々と自分の直感に合う服を探していた。
「私がやりたいと思う服……今の私に合うのは……これじゃない、これも違う……」
その頃、影人の方ではこころと2人で話しつつ服を吟味中である。尚、今回のコスプレファッションコンテストでは男性が女装する事や逆に女性が男装をするという制限は一切無い。ただし、自分が着た服を破損させる事や脱ぎっぱなしにするという行為はやった瞬間に即退場&弁償というペナルティがある。
当然の事ながら戻す時は会場側から支給される消毒液とタオルでしっかりと拭き取る事で某ウイルスや感染症への対策も取っていた。
「それにしても、本当にこれだけの服をどうやって集めたのでしょうか?」
「うーん。玲音先輩曰く、今年の3年の先輩の中にそういうツテがある人がいて。借り物として色々借りてきたんだとさ」
「借りてきたにしては相当な量じゃないですか?というか、これちゃんと終わった後に全部揃ってるか確認するんですよね……」
こころは借りている物を返すためにこの量の服やら靴やらが揃っているのを確認して片付ける手間を考えると思わず寒気がしてしまう。
「まぁ、どうにかはするんだろうな……そうしないと借りれないし」
「ひぇえ……」
影人とこころはこのコーナーを担当している人達が学園祭終了後に味わうであろう苦労を想像すると思わず同情の気持ちが湧いてしまう。
「……どうしよ。色々候補はあるけれど、どれが私にとっての正解だろう」
すると、別の場所で服を選んでいた夢乃は自分にとってどんな答えが正解かわからずに迷う。
「このコーナーでの採点基準は沢山ある。だけど、多分大事なのはその人その人に合った選択。私の場合……大人っぽさで勝負しても年齢的に絶対周りには勝てない」
夢乃は自分の年齢では大人に近づける方式ではあまりにも幼すぎるせいで他のライバル相手にまるで太刀打ちすらできないと判断。そのため、大事なのはそれ以外で勝負できる所を探す事だと考える。
「あの子可愛い……」
「小学生かな?でも私もあのくらいの妹がいてくれたら良いのになぁ〜……」
夢乃が小学生離れしている頭でどう考えるのが正解か悩む。すると、自分の方に向けられる視線に気がついた。
「ッ……」
夢乃がその視線の先を見るとそこにはこの学校の女子生徒と思われる他の参加者達がいた。そして、彼女達の会話を聞いて頭の中にある考えが浮かぶ。
「(あ……そっか。私の場合、そこまで
夢乃は彼女達の発言からある事に気がつく。それは自分という存在がこのコンテストに於ける一つのアドバンテージであると。理由は今回のコンテストの参加者は中高生がその大半を占めるという点にある。
つまり、それよりも幼い自分は小学生である事自体が個性として使う事ができるのだ。だから後はそれに合わせるように服を選べば良い。
「私に求められてるのはきっと妹としてのキャラだ。配信での私は背伸びして大人っぽさを無理矢理引き出してたけど、今は等身大としての可愛らしさを引き出せば十分。後はその範囲で可愛くなるだけ」
夢乃はヒントを得られたためか衣装探しが少し捗り始める。こうして、影人達が自分達の個性を引き出せる物を探す。尚、ぷりんだけは精神的な幼さからか自分の興味に忠実になっていたが。
それから少しして、順番に衣装を決定するとそれを審査員の人に見せていく。
「次の方、どうぞ」
「はーい!田中ぷりんでーす!」
まずはぷりんである。彼女は特に考える事なく自分の心にキュンと来たものをかき集めていた。その姿は偶然にも高身長中学生の良さを引き出した高校生姿であり、髪はウィッグを使った金髪のポニーテール。
また、カラーコンタクトとして水色のコンタクトを入れていた。ここまで来るともう既視感しか無いが、トドメとばかりにある決め台詞を言い出す。
「賢い可愛い〜ぷりるんるん〜♪」
その台詞はかつてキュアチューブ撮影の時にキュアズキューンバージョンとして言っていたあのアニメのパロディ台詞だった。尚今回は動画としてでは無くコスプレファッションとして言ってるので一応そのキャラをモチーフにしたファッションと言えばカバーが効いてしまうという。
そして、実際に審査員の中には何人か大人っぽい見た目と子供っぽい言動のギャップにハートを撃ち抜かれたのかハートをズキューンされていた。
「田中ぷりんさん、90点です」
「ハラショー!!」
ぷりんの結果は一番では無かったものの、初っ端から十分過ぎる成績として残る事に。そんなわけで次はななである。
「蒼風ななです……よ、よろしくお願いします!」
ななは緊張した様子で服装を見せる。それはタンクトップにショートパンツというななからしてみればかなり勇気が必要な服装だった。何しろ肩や脚が割と露出するからである。
ただ、それはななのスタイルの良さが前面に出るという事でもあった。そして、胸はパッドを使う事で少し増量。髪は金髪ロングのウィッグを被り、頭には角が生えている帽子を被っていた。その姿はまさしくナイスバディな美少女という物である。
尚、元ネタは酔ったOLが偶々助けた異世界のドラゴンが擬人化して彼女の家に住み込みでメイドをやるというアニメに登場する大人っぽい姿をした女性キャラだ。勿論このキャラも竜が擬人化した物である。
「蒼風ななさん、87点です」
「あっ、ありがとうございましゅ……」
ななは正直目を回してしまいそうなくらいに恥ずかしかったが、それでも高得点を貰えて一安心だった。恐らく、彼女が恥じらった姿も含めての評価なのでそれも一つの味と見做されたのだろう。
「紫雨こころです。よろしくお願いします!」
ななの次はこころの番だ。彼女は学生服に黒髪ショートのウィッグを被るとメガネをかけてクールな学生を演出。それはこころの幼いながらも侍のようなクールさとマッチしており、キリッとした凛々しさが強調されていた。
尚、こころはななとは違ってこのコスプレをするのに思い切る必要は無くあくまで平然とした顔のままである。
元ネタは平凡な高校生がある日堕天使に誘惑された後に殺されてしまった後、彼を助けた悪魔の下僕になり悪魔達の戦いに身を投じるという学園青春とバトルが合わさった人気ライトノベルシリーズのキャラである。
「紫雨こころさん、86点です」
「86点ですか……むむむ、中々厳しいですね」
勿論衣装がこころに合わなかったわけではない。むしろ、そのキャラの性格はこころの真面目でストイックな性格にマッチしている。だが、上位の壁は高かったらしく。こころにとっては少し不本意な結果となった。
「音崎レイ、行きます」
レイが選択したのは黒いロングコートであり、瞳は黄色いカラーコンタクト。また、銀髪のウィッグを被ると一見無害そうなにこやかな笑顔を浮かべる青年を演出。ただし、レイの他人相手に本心を隠すという性格を利用した底知れない雰囲気は存在しており審査員達の目を引き込んだ。
レイが選んだコンセプトというのは他人への殺意を聡明な青年を演じる事で隠しているという物であり、レイはあくまで普通さを引き出す服装を着ると足りない隠した殺意というのは自身の高い表情管理能力で表現していた。
元ネタは月を破壊した超生物を地球が壊されるまでの一年間で暗殺するという漫画のキャラでありその中の人間だった時の唯一の弟子で師匠に認められるためにスキルを磨いて最凶の殺し屋として君臨していた男だ。
「音崎レイさん、88点です」
「あらら……」
「レイ君でもダメだったんだ……」
「うーん、そうみたいだな」
レイは手応えは感じていたものの、ダメだった事に残念そうにする。この時点で4人が終わり、次はめろんであった。
「田中めろんです。よろしくお願いします」
めろんはまさかの地雷系と言わんばかりのメイド服であり、髪は敢えてウィッグを付けずに頭の後ろでツインテール。胸をパッドで少し盛ると豊満なボディに元々彼女が持っている小悪魔のような姿が上手くマッチした雰囲気を出す。
「き、決め台詞行きます。美味しくな〜れ、こんこんにゅ〜♪」
そして、トドメとばかりのメイド喫茶あるあるの美味しくなるおまじないをやってみせためろん。勿論めろんにしてはこれをやる際に相当甘ったる声を出すものだからそのギャップが凄まじかった。
「田中めろんさん、90点です」
めろんはまさかのぷりんと同点という超高得点を叩き出しており、それだけ今回のコスプレが似合ってたらしい。元ネタは言うまでも無く悪の道を極めるため日々努力する真面目な女子高生が主人公の漫画に登場するかな〜り不憫な扱いを受けまくる配信者の女の子だ。
「ダメだった……」
ただ、結局ぷりんと同着という事は1位は取れてないという事になる。続けて今度はうたの番だ。
「咲良うたです!よろしくお願いします!」
うたがそう言うと早速自身の衣装を見せる。それは黄色いアイドル風ドレス姿であり、普段は降ろしている髪を黄色いリボンでポニーテール風に纏めていた。両腕には薄い黄色のロング手袋を装着。そしてそれは昭和に一世を風靡した伝説のアイドル、Utakoを模した衣装であった。
勿論手には小道具としてマイクを持っており、うたの容姿も相まってUtakoが実際にこの場にいるような感覚を与える。ただ、審査員の人達は年齢的にUtakoの事を知らない人が殆どであるため初見でそのモチーフがわかった人はいないが。
「咲良うたさん、91点です」
「あーっ、惜しい!!」
「あと2点が遠い……」
うたはそのアイドルとしてのカリスマ性を出す事で審査員の目を釘付けにしたものの……それでも1位にはあと一歩足りず。
これで残るのは黒霧兄妹の2人だけ。先にここにやってきたのは影人の方であった。
「黒霧影人です。よろしくお願いします」
影人が来ているのはまるで料理人のような衣装であり、上は黒いシャツ。腰からは白い前がけをかけていた。また、頭は赤いウィッグを被り、白い鉢巻を巻いている。瞳には黄色いコンタクトを付けており、手には味見の小皿を持っていた。
それからこの小皿に入ったスープを味見するように啜る仕草を見せる。勿論中には何も入ってないし、啜る仕草もあくまで審査員達に見せるための物だった。そのため口も付けてない。
モチーフは定食屋の息子である青年が料理を通して成長していく人気漫画の主人公である。しかも作中で登場する料理方法の中には実際の料理でも使える割とガチ系の料理漫画であった。
「影人君、意外な物を選んだね」
「だけど、変に現実離れしてない物を選んだから逆にリアル思考の影人らしさが出てる」
「はい!心キュンキュンします!」
それから審査員達の採点が終わり、早速今回の評価点が発表される事になる。
「黒霧影人さん、91点です」
「ッ……マジか」
「ああ……。カゲ先輩でもダメ……」
こう考えると95点クラスとなると一種の超えられない壁みたいな物があるらしい。今の時点での最高点が93点であるのを見るとやはり95点以上というのは相当高いレベルになるのだろう。
勿論挑戦者の殆どの人が90点手前の点数ばかりのため、90点を超えている時点で影人達4人は十分凄いのだが。
「最後は夢乃ちゃんだね」
「影人、夢乃ちゃんはどうだった?」
「夢乃か……俺が着替え終わる頃くらいに着替え室のある部屋に来てたからもうちょっとしたら来ると思うけど……」
そんな時だった。先程からずっと不動だったランキング上位の1位の枠がズレた。
「ッ、94点!?」
「こんな時に1位が塗り変わった……」
ちなみにもし点数が同点の場合、先にその点数を取った人が上位として扱われる。つまり、夢乃が1位を取ろうと思ったら95点は必要だ。そしてその95点自体が突破困難なラインなのである。
「これじゃあ……」
「いや、夢乃なら行けるはず……」
影人は先程の夢乃の覚悟を決めたような顔を思い出す。それだけ彼女がやる気であるという事。そして、昔からあの顔をしている夢乃は大体の事で成功を収めてきた。
「……失礼します」
同時刻、夢乃の着替えが終わると審査員のいる部屋の扉を開ける。そして、審査員達の前に姿を現すのだった。
また次回もお楽しみに。