キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
コスプレファッションコンテストのコーナーにチャレンジする影人達。影人達は1位を目指してチャレンジするものの、最高点である93点の壁は高く。とうとう夢乃を残すのみとなってしまう。加えて、その最高点も94点に更新されてしまった。
「失礼します……黒霧夢乃です。よろしくお願いします」
そんな中で迎えた夢乃のチャレンジ。彼女は審査員のいる部屋に入るとまずは影人に仕込まれた綺麗なお辞儀を見せる。
「「「「ッ……」」」」
そんな中、夢乃の姿を見た審査員5人の内、真ん中に座っている1人を除いて息を呑んだ。その理由は目の前にいる夢乃にあった。
彼女の姿は学生服に黒タイツを履きつつ髪は金髪ロングヘアのウィッグを被っており、瞳は敢えてカラーコンタクトは入れずにいつも通りの夢乃らしい妹っぽさを演出。また、その仕草からは天使のような可愛さが溢れ出ると両手で手にした緑の傘を握る形で首を少しだけ倒す。
「て、天使だ……」
「何あれ……」
肌の露出が少ないながらも夢乃が生まれつき持っている人を引き込むようなオッドアイの瞳にドリーム・アイの配信をやる中で身につけたちょっとした動きで大人な可愛さを出す仕草。ただし、夢乃の魅力である幼い女の子という部分は最大限に活かすべく大人っぽい部分は必要最低限だけ残して全てカット。
そのためぷりんやめろん達のような高校生並みの容姿を持っている人達が魅力を出すためにやっていた露出は逆にほぼゼロに抑え込む。
「(大事なのは私の妹っぽい魅力を見てもらう事。……無理に私の勝てない所で勝負する必要なんて無い。他の参加者には絶対真似できない妹成分で、私は一番を取る!)」
そして、夢乃にはそれができるだけの素材が揃っていた。何しろ、影人に鍛えられた影響で他の小学生達には真似できないような知識量と大人っぽさを出せる動き方。家族から貰った他人を惹きつける事ができる目。それらをフル活用して審査員の心を落としにきた。
尚、モチーフはパッとしない主人公のお隣に住む幼馴染の女子高生でその能力の完璧さや可愛らしい姿から天使様と比喩される程の美貌を併せ持つ文武両道の美少女キャラである。
同時に今の夢乃にだったらどれだけ甘やかしても良いと学生審査員の4人が思える程の魅力を持っていた。
「(学生の審査員さん達の評価は良さそう。後は……1人だけいるプロの審査員さんだけ)」
夢乃が注目するのはこのコンテストの難しさが表面化している原因、1人だけ校外から呼ばれたプロの女性ファッションモデルの評価である。彼女の評価の厳しさがこのコンテストのレベルを引き上げているという事で、実際この評価値の高さがそのまま得点の差にほぼ直結していた。
「………」
「………」
どうやら、審査員の女性は評価を下すのを迷っているらしい。少しの間、その場には静寂が流れた。そして彼女は優しく息を吐くと少しだけ微笑む。
「ふぅ……ふふっ」
「えっ……」
それから部屋にいた審査員以外の生徒が評価を書いた5枚紙を受け取るとその合計値を計算。評価を読み上げる。
「……黒霧夢乃さん」
「はい」
「99点です」
「……えっ?」
夢乃は自分の点数を聞いて呆気に取られたような顔をする。何しろ、95点超えという成績というだけでもとんでもなく高い壁だというのにあと1点。あと1点あれば満点が取れたという凄まじい点数が叩き出されたのだ。
そう考えるとまだ年齢的に幼い夢乃が喜びの実感よりも先に困惑の感情が出てしまうのは無理もない。
「な、何かの間違いじゃないんですか?」
「いいえ、間違いではありませんよ。その点数がここにいる5人の評価の結果です」
すると審査員であるプロのファッションモデルがそう告げる。夢乃は少しの間、未だに実感が湧かずにボーッとしてしまう。
「う、嘘……私が……」
夢乃は困惑したような感じでどうにか気持ちを正気に保とうとする。しかし、考えれば考える程に自分なんかが選ばれる事が信じられなかった。ただ、いつまでもボーッとするわけにはいかないと彼女の理性が働くとサッと頭を下げる。
「あ、ありがとうございます」
そして、それから夢乃は審査員達のいる部屋から出ると着替えを済ませてから受付のほうに報告。夢乃からの報告を受けて順位の記録は瞬く間に塗り変わった。
「あっ、あれ見て!」
「嘘、夢乃が……99点の1位になってる」
「凄い!凄いよ!!」
なな、めろん、ぷりんが夢乃がランキングの1位の数字を塗り替えたという事で祝福するうた達。そんな中で誰よりも夢乃の事を知っているであろう影人もまた驚いていた。
「夢乃が……1位を取った……」
「はい!あそこの順位が変わってるのでこれは紛れもなく本当の事ですよ!!」
そして、そのタイミングで夢乃が戻ってくると早速彼女の元にうた達が駆け寄っていく。
「夢乃ちゃん凄い!超キラッキランランだよ!」
「あはは、大袈裟ですよ」
「いや、大袈裟なわけ無い。俺達が頑張っても取れなかった1位を取ったんだ。もっと喜んでも良いんだぞ」
夢乃はうた達から褒められても謙遜するばかりで年齢相応のはしゃぐような喜びを見せない。
すると影人がそんな夢乃の前に立つと彼もまた夢乃が成し遂げた快挙が
嬉しかったのか。夢乃の事を褒める。
「夢乃、おめでとう」
「お兄ちゃん……だけど、私がこんな結果を取っちゃっても……」
「何言ってるんだ。夢乃は凄い事をやってるんだぞ。……素直な気持ちで喜ぶくらいやっても良いんだぞ」
それを聞くと夢乃の中にようやく少しずつ自分の実力で1位を手にできたという実感が湧き上がってきた。
「あ……ああ……」
そして、彼女の瞳からからポロポロと少しずつ嬉しさによる涙が頬を伝って溢れ始める。
「あれ……あれっ……何で……私、泣いてるの……?」
「……夢乃、折角嬉しい事があったんだ。それが当たり前の反応だよ。俺達に遠慮なんてしなくて良い。むしろ、しなくて良いんだよ」
「う……うん。あ、ありがと……おにいちゃ……うああ……」
そのまま夢乃は嬉しさのあまりその場で兄に抱きつくと泣き出してしまう。そんな彼女の背中を影人はゆっくりとさする形で安心させる。
そして、夢乃にとって昔から一番安心する場所というのは兄である影人の胸の中だった。
「ありがと……それと、私……上手くやれたんだ……」
「ああ。だから、そんな自信無い顔ばかりになるな。夢乃にはきっと才能があるんだ。今回の事でよくわかっただろ?」
「うん……」
こうして、夢乃が今回の学園祭巡りで一番行きたかった場所ことコスプレファッションコンテストにおいて彼女は暫定ながらも1位を獲得するという快挙を成し遂げる事に。
それから少しして。夢乃は暫く影人の元で泣き、落ち着く。ただ、自分が弱みを見せている所を思いっきり公共の場で晒してしまった事は自覚しているのか……。顔を赤くして恥ずかしさに悶えつつ会場の外に出た後に影人達に謝る事にした。
「あの、皆さん……先程はあんな所を見せてしまいすみません……」
「ううん、全然大丈夫!」
「それにしても夢乃ちゃんにあんな才能があったなんて」
「きっと将来は素敵なモデルさんとかできますよ!」
夢乃の謝罪に対し、うた達は今回の件を全然気にしていないようで。こころが夢乃に将来にモデルができると言われて夢乃の胸はドクンと高鳴る。
「ッ……大袈裟ですよ。今回は偶々上手く行っただけで……私なんかにはそんなの」
「いや、俺は偶々だとは思わないな。少なくとも、夢乃ちゃんは今日のコスプレファッションコンテストに本気で望んでたから」
「えっ……」
夢乃が謙遜しているとレイからそう指摘を受ける。そのため彼女はレイからの言葉にビクリとしてしまった。
「わ、わかってたんですか?」
「そりゃあ、あれだけ夢乃がソワソワしてたら皆気がつくわ」
「夢乃、服を選ぶ時も凄くキラキラしてた!あーっ、折角なら写真撮りたかったよ〜!」
「嘘、ぷりんちゃんにまで!?」
夢乃はこういう時に察しが悪いぷりんにまで気持ちを察知された事に唖然としてしまう。つまり、今回の彼女の気持ちは全員に筒抜けだったという事だ。
「うぅ……だったら尚更恥ずかしいですよ」
夢乃は顔を両手で覆い、耳まで真っ赤になるくらいで恥ずかしさでいっぱいだった。
「ま。それで何が言いたいかと言うと、プロのファッションモデルが高評価をくれたんだからもっと自信持てよって話」
「は、はい……」
夢乃は未だに恥ずかしさでいっぱいになりながらも、自分の事を認めてくれる人がいるというだけでそれは彼女の中で大きな自信へと繋がっていた。
こうして、影人達はコスプレファッションコンテストを終えたタイミングで丁度お昼時になりつつあったためにひとまずは全員で食事を摂るために移動を開始する事になる。
それから少し後、学校の一角にて。チョッキリ団の3人もそれぞれ行動を進めていた。
「はぁ、それにしても上質な暗闇なんてそんな簡単に見つかる物なのかね」
ここにいるのはチョッキリーヌこと千切キリーヌである。彼女は2人と別れて少しだけ気持ちが楽になったものの、それでも強力な闇を探すのに一苦労していた。
「それと、普段は空から見てるから見つけやすいというのはあるかもね。今は飛ぶの禁止されてるし」
尚、他の人に紛れるため今回は空を飛んでの移動ができない。そのため、捜索に少し苦労していた。
「誰か良い奴は……うん?」
そんな時だった。キリーヌはとある光景を見つける。それは学園祭を楽しみつつクラスの出し物をサボった結を探している金髪女子の宮崎閏と彼女が探している音楽ガチ勢女子、繭森結がバッタリ出会う所だった。
「ゲッ……」
「あーっ!オムスビいたぁああっ!」
結と閏が出会った瞬間、キリーヌはその姿から凄まじい量の闇が出ている事に気がつく。
「うん?これは……」
それはかつて夏休みの際、登校日に喧嘩をしてしまっていた2人だけが持っている相手への苦手意識だった。勿論、あれから時間が経っているのである程度は落ち着いている。
しかし、今回の喧嘩は夏休みから約3ヶ月も引き摺る程の大きな物だった。結は普段おちゃらけている閏が当時かなりの剣幕で怒鳴った事に対する苦手意識を。
閏は結が部活動というある程度は手を抜いても良いと思っている場所で病的なまでに完璧を求めた結のガチ勢っぷりに苦手意識を抱いていたのだ。
「コイツは良い。2人纏めて使えそうだね!」
その頃、カズマは校舎内を歩いているとある2人組とすれ違う。それは影人達がつい先程会わせる事に成功した小牧嬉歌と熊井弥子の2人であった。
「うぅ、まさか私達の直前で売り切れちゃうなんて……」
「仕方ないよ。かなりの人気だったし……」
どうやら2人は学園祭で売られているお守りを買おうとしたものの、その際に2人の番が来る直前に売り切れを起こしてしまってギリギリ購入できなかったようだ。
「はぁ、この程度の闇じゃあ大したダークランダーは……うん?」
カズマはこの2人の闇は大した事無いという事で一旦スルーしようとする。しかし、その直前に2人から何かを感じ取ったのか振り返った。
「……っと、この闇は……!」
カズマは2人の心の奥底から大きな闇を感じ取った。それは今日のアカペラライブに対する大きな不安である。勿論、大成功させるためにこれまで沢山練習してきた自覚はあった。しかし、それ以上に今回のアカペラライブは夏休みの登校日ライブのリベンジの側面が大きく。
今回のライブで結に自分達の成長を見せ、彼女とも手を取り合いたいと考えたために余計に気負っている所があったのだ。
「ふふっ、丁度良い。こっちの闇なら上手く使えそうだ」
キリーヌ、カズマが次々と闇を見つける中、スラッシューこと天城切音もタイミング良く闇を見つけていた。
「ふふっ、この闇……面白そうね」
天城の視線の先にいたのはアカペラ部の先輩コンビこと古城愛莉と近衛玲音である。彼女達は学園祭を楽しむ中で胸の中に大きな不安をそれぞれ抱えていた。
「(ウタちゃん達は皆変わっていく。……私だけずっと同じ場所にだけ取り残されてる感じがする。レイレイも最近何だか変で。……ずっとこのままが良いのに……)」
愛莉が感じているのは嬉歌達1年4人組がアカペラを通してどんどん変わろうとしている事に対する不安であり、同時にずっと自分の側にいてくれるはずの玲音も何だかここ最近変化の兆しが見えてる事にも不安を抱いていた。
「(どうしよう。私はミズキさんの所で。Parabolaでアカペラをやってみたい。だけど、こんな気持ちをアイリに伝えて……受け入れてくれるかな。……ううん。でも、今日のライブで本気を出すって決めてるんだ。だから、ちゃんと言わないと……)」
玲音の方はこの時点でParabolaへの加入に関してはある程度覚悟を決めていた。しかし、だからと言って愛莉に一言も言わずに黙って立ち去るのは幼馴染としてやりたく無い。それでも、現状から変わりたく無いという気持ちの持ち主である愛莉にこの気持ちを言っても良いのかという不安が大きく。中々決心が付かなかった。
「ふふっ、この2人。抱えてる闇は違うけどどっちも大きな闇を持ってる。これなら強力なダークランダーを2体生み出す事も可能だわ」
そして、天城はターゲットを見つけたと言う事で念話を他の2人へと送る。それを受けて2人もそれに応えた。
『スラッシュー様、ここで連絡っすか』
『スラッシュー、これを寄越したって事は……』
「ええ、私の方は見つけたわ。2人はどう?」
『バッチリですよ』
『ふん、ならやるかい?』
「そうね。早速やりましょうか」
その瞬間、3人はすかさずその姿をチョッキリ団としての物に変化。それぞれが準備万端となる。
「さぁ、この学園祭を真っ暗闇に染めましょう」
こうして……スラッシュー、ジョギ、チョッキリーヌの3人はとうとう学園祭をメチャクチャにするべく本格的に動き出す。果たして、アイドルプリキュアはこの総攻撃に対抗できるのだろうか……。
また次回もお楽しみに。