キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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知ってしまった真実 折れた心

マックランダーが世界を真っ暗闇にするために暴れ回る中、こころはプリルンと共に到着。だが、初めて見るマックランダーにこころは困惑していた。

 

「何アレ!?」

 

「マックランダープリ!キラキラをチョッキンして、世界を真っ暗闇にしようとしてるプリ!」

 

「えぇ!?何言ってるの?ステージは?」

 

こころはアイドルとして観客の前でライブをやる心づもりだった。だからこそステージなど存在せず、人々が逃げ惑うこの状況がどうしても飲み込めなかったのである。

 

「……む?初めて見る顔ですぞ。あの命知らずの小僧と同じか……どちらにせよ、邪魔者は排除するのみ。マックランダー、やるのですぞ!」

 

「マックランダー!」

 

カッティーの命令が飛ぶとマックランダーが手にした高枝切りハサミを持ったまま歩くと近くに生えていた街路樹を剪定として枝を切るようにアッサリと切ってしまう。

 

「ええっ!?きゃああっ!」

 

慌ててこころとプリルンはその場から離れると二人のいた場所に木は落下。あと一歩反応が遅れていたら確実に木の下敷きになっていたためにこころは戦慄してしまう。

 

「な、何なの……?」

 

「大丈夫プリ!こころは絶対にアイドルプリキュアプリ!」

 

「何!?プリキュアですと!?」

 

カッティーはアイドルプリキュアという単語に反応。こころの存在に危機感を抱く。何しろ二人でさえ手こずっている今の状況下に三人目まで増えたとなればこれはもう只事では済まない。

 

「むぅ。アイドルプリキュアであるなら容赦の必要は無いのですぞ、マックランダー、やれ!」

 

「マックランダー!」

 

マックランダーがこころの前に歩いてくるとこころはマックランダーへの恐怖で腕で視界を隠すと顔を背けてしまう。

 

「こころ……?」

 

「おや?怖がっているのですかな?……そんな姿でどこがアイドルプリキュアなのですぞ?」

 

そんな風にカッティーが言う中、突如として何者かが走ってくる音が聞こえた。そして、その影はどこからか拾ってきていたペンキの入った缶を手にするとそれをマックランダーの顔面目掛けて投げた。

 

「チッ……これでも……喰らっとけやコラァアッ!」

 

影人が投げたペンキ入りの缶。ただ、そのままではただの固い鈍器でしか無い。しかし、影人は分かっていた。マックランダーが次に何をするのかを。

 

「無駄ですぞ!」

 

「マックランダー!」

 

マックランダーはそれの直撃を避けるために手にしたハサミでその鉄製の容器を切断。普通ならハサミで鉄の切断は難しい。だが、マックランダーになった影響でハサミの切断力も増大している。だからこそ影人の打った手は刺さった。

 

「マックラン!?」

 

その瞬間、切られた容器の中に入っていたペンキが空中へと飛び出す。それによってマックランダーへとぶちまけられる大量のペンキ。しかもペンキの一部はマックランダーの顔面に届くとそれによって思い切り目潰しをしてしまう。

 

「なっ!?まさかの目潰し目的なのですぞ!?」

 

「こころ!!大丈夫か?怪我は無いか?」

 

その間に影人はこころへと寄ると彼女へと体の安否を問いかける。こころは未だに放心状態で少しの間影人の声が届かなかったが、我に返ると影人に心配されていると気づいて返事をする。

 

「う、うん……そのカゲ先輩……これって……」

 

「ちゃんとした説明は後でする。今はとにかく安全な所に」

 

「プリ……影……」

 

その瞬間、プリルンへと向けられた影人の目は今までに無い程に怒りの目つきであった。そんな彼を見てプリルンはようやく自分が何をしでかしたのかを理解する。

 

「影人、ごめんなさ……」

 

「煩い……。お前への説教は後回しだ。多分もう二人も来る。それまで持ち堪えてやる」

 

「えっ!?カゲ先輩まさか……」

 

「悪いなこころ……。黙ってて。でもこれが今の俺にやれる事だから!」

 

こころに一旦マックランダーから距離を取らせると近くの街路樹の木陰に隠れさせる。そして、自分はマックランダーの前に出て行った。

 

「カゲ先輩……何で……」

 

こころはそんな影人を見て感じてしまう。どれだけ自分が影人に近づくために頑張っても影人との差がとんでも無く遠いと思えた理由を。

 

「(そうか……だから、私……。あぁ……ダメだ……。私じゃ、私なんかじゃ……)」

 

「やっと前が見えるようになったのですぞ!」

 

「マックランダー!」

 

カッティーは影人達が一旦隠れるまでの間に公園内部にある給水機を使うとマックランダーの目の部分のペンキを落としており、何とか視界を確保した。

 

「おい、マックランダー。俺がお前の相手をしてやるよ」

 

「む。アイドルプリキュアでは無いお主が相手とは。片腹痛いですぞ。またいつも通り踏み潰すのですぞ!」

 

マックランダーが迫る中、影人は逃げようとしない。そんな彼を見てこころは胸が締め付けられる。このままじゃ、影人は死ぬ。そう思うと我慢ができなくなってきた。

 

「カゲ先輩、逃げてください!」

 

「……馬鹿。逃げねぇよ……。俺が今逃げるわけには行かないんだ!」

 

するとその瞬間、こころの持っていたアイドルハートブローチが影人の心に反応すると強制的にこころの手元から離れて影人の元へと飛来。影人の前に来るとエネルギーバリアを展開。それはマックランダーからの攻撃をマックランダーの体ごと弾き飛ばした。

 

「なっ!?ま、まさか三人目のアイドルプリキュアというのはコイツなのですぞ!?」

 

影人は驚きの目をしたまま自分を手に取れと言わんばかりにフワフワと浮かぶブローチを手にしようとする。影人は覚悟を決めて伸ばしたその手がブローチに触れようとした瞬間。いきなり影人の中から溢れ出てきたヴァイオレットの色合いの電撃のようなエネルギーがアイドルハートブローチを拒絶したのかそれを弾き飛ばしてしまった。

 

「「……えっ!?」」

 

影人とこころが驚きを隠せない中、戦えないこころを見限り、影人の中に眠る何かには拒絶されてしまったアイドルハートブローチは巡り巡ってプリルンのポシェットに戻ってしまう。

 

「……む?む?訳がわからないのですぞ?」

 

てっきり今度こそ三人目が来ると思っていたカッティーは困惑の顔を見せたままだった。するとそのタイミングでうたやななが到着する。

 

「お待たせ、影人君!」

 

「あれ?プリルンとこころちゃんは?」

 

「ッ……」

 

影人は覚悟を決めたのは良かったのだが、自分をプリキュアとして認めて飛んできたブローチを拒絶してしまった自分の中の何かが気になって仕方ない。

 

「影人君?」

 

「あっ、ごめん……。プリルンとこころならちゃんと隠れてる」

 

「オッケー、だったら変身して……」

 

「待って!こころちゃんも近くにいるんでしょ?じゃあ、今変身するのは……」

 

ななは今こころが近くにいるこの現状で変身は身バレして危険と判断。変身はリスクが高いと迷う。

 

「……二人共、変身してくれ。事情は俺の口からこころに説明する」

 

影人は今は自分がブローチを手にできなかった理由を考えるよりも目の前のマックランダーの対処が優先だと考えて二人に変身を促す。

 

「ななちゃん、これ以上ここで被害を出す訳には」

 

「……分かった。影人君、ごめんね」

 

ななはこれからこころへと重い話をしないといけなくなる影人へと謝罪の言葉を述べると二人はプリキュアへと変身する。

 

「「プリキュア!ライトアップ!キラキラ!ドレスチェンジ!」」

 

「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」

 

「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」

 

これにより、うたはキュアアイドルへ。ななはキュアウインクへと変身完了。二人はプリキュアとして姿を現した。

 

「出ましたな!いつもいつもお邪魔ばかりしてくれて!」

 

「マックランダー!」

 

すると先制攻撃としてマックランダーは背中の麦わら帽子を掴むとフリスビーのように投げつける。

 

「ッ!危ねっ!?」

 

影人が慌てて伏せる中、二人が影人とは別の上方向に逃げると三人の中間を通るように麦わら帽子は物凄い切れ味を持ったまま近くの街路樹をあっという間に切り倒していく。

 

「切れ味強っ!?」

 

影人が驚きを上げる中、こころとプリルンの近くの街路樹は何とか切られずに済んだ。しかしもう彼女の心は折れかけてボロボロになっていた。

 

「嘘……うた先輩がキュアアイドルで、なな先輩が……キュアウインク?」

 

こころが困惑した声を上げる中、マックランダーは投げた麦わら帽子を掴むとその間にアイドルが駆け出す。

 

「マックランダー!キラッキランランにしちゃうからね!」

 

「マ?」

 

「私もいるよ!はあっ!」

 

マックランダーはアイドル、ウインクからのダブルキックを喰らうとダメージで若干怯む。だが、その怯みは影人が次のアクションを決めるには十分な時間だった。

 

「そんな温い攻撃、効かないですぞ!」

 

「マックラン……ダー!?」

 

マックランダーが手にしたハサミを振り回そうとするが、いきなりハサミを後ろに引っ張られる感覚がした。その方を見るとそこにはハサミが何故かロープで纏められており、それが近くの街路樹に固定されていた。

 

「何ですと!?」

 

「流石にハサミだから刃の外側の切れ味は皆無だよな!」

 

ハサミに切れ味があるのは刃と刃の内側だけ。それを利用して二本の刃をロープで作った輪っかを使って纏めさせるとすぐに縛って固定したのだ。

 

だが、マックランダーが怯んだ僅か一瞬のタイミングでカウボーイのように輪っかをハサミに投げ入れるという行為を一発で成功させたのは割と奇跡に等しかったが。

 

「だったらマックランダー、ハサミを捨てるのですぞ!」

 

カッティーはハサミを持っていては自由な行動を制限されるとハサミを手放して頭にあるジョウロの水を模した液体の飛び道具を飛ばした。

 

「そんなの、当たらないよ!」

 

三人が攻撃を回避する中、こころはアイドルプリキュアや影人が戦う現状を見て呆気に取られている。

 

「アイドルが戦ってる……。一体どういう事?」

 

「アイドルプリキュアはただのアイドルじゃないプリ。真っ暗闇をキラキラにしてくれるプリ!」

 

「……え?そんなの、私達普通の人には……」

 

こころはそこまで言いかけた所で唇を噛み締めた。その言葉がただ戦えない自分を慰めるためのただの言い訳だということを感じ取ったからである。

 

「ううん。それはきっと、私が自分なんかには戦えないと勝手に納得するための身勝手な考え……。カゲ先輩はあんな怪物と戦ってて……。しかも、アイドルプリキュアじゃ無いのに」

 

こころの底から湧き上がるのは自分には影人のように戦えない。そして、このままではどれだけかかっても自分なんかには影人に追いつくなんて不可能だという考えが芽生える。その考えは彼とのどうしようもない絶対的な距離感を感じてしまった。

 

「キラキラじゃ無くなった人がいるのなら」

 

「絶対にキラッキランランにしてみせる!」

 

「アイドルプリキュア!頑張るプリ!」

 

プリルンがペンライトで応援しまくる中、アイドルからの拳、ウインクからの蹴りが続け様に命中。マックランダーは流石の猛攻にハサミという最大の武器無しでは対応し切れない。これも影人の機転で一度ハサミを置かさせたのが大きいだろう。

 

「マックランダー……」

 

マックランダーは元気の無さそうに倒れ込むとかなり体力が落ちた様子で、ウインクがアイドルへと声をかける。

 

「アイドル、お願い!」

 

「うん!」

 

ウインクに言われてアイドルは自身の領域を展開。マックランダーを浄化しにかかる。

 

「クライマックスは私!盛り上がって行くよー!」

 

アイドルがインカムを装着するとマックランダーは強制着席。それと同時にアイドルが音楽に合わせて歌い始める。

 

♪決め歌 笑顔のユニゾン♪

 

「キミのハートにとびっきり♪元気をあげるね♪」

 

そんな中、こころは無数のペンライトを振る観客の中に紛れていた。そんな彼女の目に自分を魅了したライブをするアイドルがいる。……その光景はこころにとって自分が影人に並ぶために目指したアイドルプリキュアという存在も影人と同様に凄まじく遠い世界の存在に見えてしまう。

 

「ゼッタイ!(ゼッタイ!)アイドル!(アイドル!)ドキドキが止まらない!急接近♪笑顔のユニゾン、応えてほしいな〜サンキュー♪最高のステージで〜キミと歌を咲かそう♪……プリキュア!アイドルスマイリング!」

 

「「キラッキラッタ〜」」

 

マックランダーは自身に命中したハートによって浄化されるとキラルンリボンが生成。プリルンが付けてポーズを決めた。

 

「プリ!ラブハートプリ!プ〜リ!」

 

プリルンが尻で描いたハートはプリルンの謎空間から飛び出すとカッティーに命中。

 

「のはあっ!?」

 

「いや、それ当たり判定あるのかよ」

 

影人が半ば呆れる中、カッティーはマックランダーを倒されては撤収するしか無かった。

 

「アイドルプリキュア……眩しいですぞ!」

 

そんな中、スラッシューは一人物陰から三人の戦いぶりを見終えるとクスリと笑った。

 

「ふふっ。流石アイドルプリキュア。やっぱり彼女達は見ていて飽きないですね。……影人君も大活躍で満足よ。さ、私も帰りましょうか」

 

アイドルプリキュアの力を見て満足したスラッシューも人知れず撤退。これにより、戦いは終結すると壊された景色は全て元通りとなった。そのため、こころは安心したようにその場に座り込む。だが、改善した状況とは裏腹にその目から光は失せ始めていた。

 

「(ダメだ……ダメだ……アイドルプリキュアも、カゲ先輩も……私なんかが目指せるような場所にいない。まるで、立ってる世界が違いすぎる)」

 

「こころちゃん、大丈夫だった!?」

 

そこに駆け寄るアイドル、ウインク、そして座り込んだこころを心配するように手を差し伸べる影人。

 

「こころ、ごめん。俺達のせいでこんな危険な目に……」

 

「……カゲ先輩……。ごめんなさい、私……カゲ先輩みたいになんかなれない。アイドルプリキュアも無理……」

 

そんなこころの目を見た影人には驚きと絶望が広がる。こころがしていた目は先程までの憧れのために走れるようなそんな水晶のような物では到底無かった。

 

「心キュンキュンしてません……」

 

その宣告は影人にとって一番最悪の言葉だった。……彼女が宿していたはずの眩い光はこの時完全に消え去ったのである。




また次回もお楽しみに。
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