キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ズキューンとキッスがダークランダーを1体浄化に成功して他の戦線の元に移動を開始する少し前。スラッシューとの交戦を継続中のソウルビートの元に場面が移る。スラッシューを助けようとするソウルビートだが、彼女からの猛攻の前に倒れてしまっていた。
「ふふっ。キュアソウルビートと言えど他愛も無いわね。最早あなたでも私の相手にすらならないとは」
「………」
ソウルビートが倒れている状態からスラッシューを見上げる中、彼女は痛みに悶えているソウルビートの元に一歩ずつ近づいていく。
「ただ、あなた達の諦め悪さはもうとっくにわかっているの。だからそろそろ終わりにしてあげるわ。
スラッシューは再度手元に炎の剣を出現させるとソウルビートへと突きつける。するとソウルビートがスラッシューへと話しかけた。
「……なぁ、スラッシュー。ダークイーネに着いて行って、世界を真っ暗闇にして。それでお前の未来に光はあるのか?」
「チッ、また小賢しい説得をして私をおかしくさせるつもり?」
「そうじゃねぇよ。スラッシューがダークイーネに従って世界を真っ暗闇にした後の未来って見てるか?」
「……ふん、未来ねぇ。……逆に聞くけどあなたは未来を見ているのかしら。アイドルプリキュアとして成功して、ダークイーネ様からキラキランドを取り戻した後の未来を」
スラッシューはソウルビートからの質問の意図が気になったのか。逆にソウルビートへと問いかけた。この答え次第でどうするか決めるつもりなのだろう。
「ああ。俺は一度諦めた夢、芸能界への道を声優になる事で叶えるつもりだ。そのためにキラキランドを元の姿に戻すし、スラッシューの事も助け出す」
「私の事を助ける?ホント、いつも思うけど馬鹿も休み休み言わないでほしいわね。そもそも、私がいつ助けてほしいって言ったのよ。世界は私に一度、光を与えておきながら輝けなくなった瞬間に私という存在を見捨てて闇の底に落とした。そんな人の事を世界の光しか見てないあなた達が助けられるとでも?」
スラッシューの中にはこの世界その物に対する憎しみの気持ちが見え隠れしており、そんな彼女を救うのは難しく思えてしまう。ただ、ソウルビートには絶望の二文字なんて存在しないとばかりだった。
「ああ、助けられるさ。少なくとも、俺は世界が持ってる光と闇の両方を知ってる」
「チッ……Utakoの事も私の事も何も知らないくせに。特に、Utakoがどれだけ血を吐く程の思いで努力してきたか。それなのにポッと出の新米アイドルが、もうドームでのライブですって?努力している他のアイドルグループ達も纏めて馬鹿にして」
スラッシューが苛立ちを露わにすると悔しさから拳を強く握り締める。自分達アイドルが真面目に努力する中で才能だけで新人ながらアイドル業界の上位人として躍り出たアイドルプリキュアに対する闇の感情を高めていた。
「確かにな。俺達はリアルアイドルとして考えたら新米アイドルグループだ。他のリアルアイドルグループをごぼう抜きにしたのも事実。……だけどな」
ソウルビートはアイドルプリキュアへの負の感情を向けてきたスラッシューに対して倒れている状態から立ち上がると真っ直ぐ彼女の顔を見据える。
「その結果はアイツらの努力の成果だってあるんだ。世間に認知されたのはプリキュアとしての不思議パワーも関与してるかもしれないけど、そこからこの半年で普通じゃないスピードとはいえファンを増やして行ったのも確かな事実だ。これがどういう事かわかるか?」
「ふん。それも不思議パワーの力でしょう?他のアイドルグループからしてみればインチキ以外に何が当てはまるというの」
「インチキか……その言葉一言で片付けられるのが俺は一番納得が行かないな」
「はぁ?」
「アイドルも、ウインクも、キュンキュンも、ズキューンも、キッスも。アイドルプリキュアとして自分達を観てくれる人々をキラキラの笑顔にしたい。そんな想いを背負って必死に努力してるんだ。アイドルとして活動してきたあなたならわかるはずだろ。そんな努力も無しに芸能界で生きて行くなんて無理だって事はさ!」
ソウルビートは自分達を否定してくるスラッシューに対して毅然とした態度で反論。スラッシューはそんなの知ったことでは無いとばかりにソウルビートを挑発するが如く、アイドルプリキュアを貶すような言葉を更に口走る。
「だから何なのよ。その不思議パワーに頼って本来踏むべき道を幾つも飛ばして……気に入らないのよ。死ぬ気でアイドルをやってないあなた達がどんどん先に進むのが!確かさっきあなたの夢は声優って言ったかしら」
スラッシューはそう言いつつ自身の周囲に多数の炎の剣を生成。その鋭利な先端がソウルビートの方を一斉に向いた。
「ほんと、中途半端な気持ちでアイドルをやってるお前らが何でそんな簡単にUtakoの努力を否定するの!!Utakoは、Utakoは本気でアイドルを目指して頑張ってたのに。私なんかよりももっと高く飛べたはずなのにっ!!」
スラッシューが手にした剣を振り下ろすと召喚された多数の炎の剣がソウルビートに向かって一斉に放たれる。
「受けなさい!」
「ッ!!」
スラッシューが空中に生成した炎の剣の一斉攻撃をしてきたのに対し、ソウルビートは最初の波は後ろに跳ぶことで回避。スラッシューが間髪入れずに第二波として次々と炎の剣を飛ばすとソウルビートが走って避けながら手にしたレーザーサーベルでどうしても躱せない物を弾く。
「Utakoさんの事、大好きなんだな」
「ええそうよ!あの子は、私なんかよりもずっと輝いてて。人々の目を釘付けにするくらいの力があった。絶対的なアイドルで、昭和のアイドル界の希望の一番星。正直、私なんかが隣に立てる存在じゃ無かった。なのに!!」
スラッシューはソウルビートへと突撃すると手にした炎の剣とソウルビートのレーザーサーベルが激突して何度も火花が散る。
「たった一度の事故があの子の未来を奪い取った。あの子の事は私が殺したのも同然なのよ!!だから私は世界から嫌われた。あの子がいなくなったのは私のせいだから、私があの子の未来の輝きを奪ってしまったの!!」
スラッシューの瞳には悲しさによる涙が流れていた。それは、自分の犯してしまった罪の意識ともう二度と会う事ができない相棒との別れの辛さによる物である。
「だから、ダークイーネに着いて行って世界を闇に染めてもらいたいのか」
「ええ。それに、そうすれば私の存在を否定したこの世界も一緒に消えて無くなる。私の存在を誰もが受け入れてくれる!!」
スラッシューがそこまで言った所でソウルビートはこれまでの逃げから一転。走る方向を変えるとすかさずスラッシューへと詰め寄って行く。
「ふざけんな……ふざけんなよスラッシュー!!」
「ッ!?」
「キュンキュンの力、ソウルビートレーザー!」
その瞬間、ソウルビートのレーザーサーベルを突き出す事によって放たれたレーザーがスラッシューからの炎の剣を全て粉砕して相殺。スラッシューへと接近した。
「チッ……」
スラッシューがすかさず手にした炎の剣を構える中ソウルビートは殺気を乗せたような振り下ろし攻撃を放とうとする。
「……は?」
しかし、次の瞬間にスラッシューは目を見開く。ソウルビートがレーザーサーベルにしたソウルリンクライトを両手で持って上から振り下ろすと思っていた彼女は太刀を振り下ろす途中でいきなりソウルリンクライトその物を消失させたソウルビートの行動に目を見開く。
「な、何を……ッ!?」
スラッシューが混乱する間にソウルビートは太刀を振り下ろす動きの流れのままスラッシューの目の前で手を叩く……所謂猫騙しだ。
しかし、その猫騙しの際に響いた“パァン”という音がスラッシューの耳に入った瞬間。いきなり体が動かなくなる感覚に見舞われた。
「(な、何……これ。体の動きが……)」
何故スラッシューがいきなり動けなくなったのか。その理由は今ソウルビートが行った猫騙しにある。攻撃対象の意識が最大限自分自身に向いている瞬間に合わせて予期せぬ大きな音を立てるとその相手は一瞬だけながら思考がフリーズして動きが完全に停止するわけだ。
ソウルビートはこの話をとある中学生殺し屋達の漫画で見ていたのだが……それは割愛するとして。すかさず彼はスラッシューの胸ぐらを掴んで押し倒した。
「ッ!?」
「スラッシュー、本当にそんな事思ってるのかよ……。世界を真っ暗闇にすれば、Utakoさんの事を殺してしまったという罪の意識が消えるとか……世界が闇に堕ちた自分を受け入れるとか。そんな夢見たいな話を信じてるのか!!」
ソウルビートは自らが胸の内に秘めていた想いを全力でぶつける。彼はそれ程までにスラッシューの身勝手な意見に怒っていた。
「Utakoさんがそんな事をやるKotoneさんを受け入れるとか本当に思ってるのかよ!」
「煩い!煩い!Utakoと実際に会った事も無いくせにあの子の事を知ったような口を効かないで!」
スラッシューがソウルビートから詰められた事に対して言い返すと同時に体の自由が戻ったために彼を倒された状態から押し返す。
そのためソウルビートは後ろに下がりつつ今度は武器は使わずに拳でスラッシューを攻撃する。
「そう思うのなら何故Utakoさんを一番知ってるはずのKotoneさんがそれを知らないんだ!」
「知ってるわよ!Utakoは歌を愛して、ファンを愛して……必死に努力を続けてた!それを私が……私が……台無しにしたの!Utakoのいない世界になんて眩しさは要らない。だから全部終わらせるの……。もう私は人殺しをした実行犯だから……あのキラキラした世界は私なんてもう受け入れてくれないから!!」
スラッシューの中から凄まじい量の闇のエネルギーが放出すると自分が背負った罪に対する罪悪感に今にも押し潰されてしまいそうな様子だった。そして、その罪悪感があるからこそ世界を闇に堕とすことで光となる存在を纏めて抹消。そうすれば外道という闇に堕ちた自分を異物にする者はいなくなるという事だった。
「何でだよ……何でそんな捻くれた考えばかり……。スラッシュー、何でそんな考えになるんだ」
ソウルビートはスラッシューの主張に今にも頭を抱えたい気持ちになる。今の彼女は自分の罪の意識に追われるあまり、周りが全く見えなくなっていた。それはつまり、見ないといけない物に背を向けてずっと蓋をしているという事を意味する。
「Kotoneさん。だったら、今あなたがやってる事。Utakoさんの目の前で胸を張って言えるんですか?あなたがやってるのはそういう事なんですよ?」
「黙って!!黙ってよ……UtakoはUtakoはもういないの!!私のせいで!私なんかの事を助けてしまったのだから!もう戻って来ない人に直接伝えるとか……できるわけ無い事で私を惑わさないで!!」
スラッシューが両手を真上に掲げるとその瞬間に自身の闇のオーラを一点に集約。それは相当なエネルギー密度を誇る強力なエネルギー砲として生成される。
「Kotoneさん!!」
「目障りなのよ……あなた達アイドルプリキュアが!!特にキュアアイドル……Utakoそっくりの顔に声まで出してくれて。アイツがいるから……私の中に浮かぶざわめきが止まらないの。アイツが活躍する度にUtakoがいなくなる間際、海の中で私に見せてくれたあの顔を思い出してしまうのよっ!!」
スラッシューが高密度のエネルギー砲をソウルビートに向けてぶっ放す。対してソウルビートはその一撃を切り札を解禁して耐えようとする。
「ソウルビートアトラクト!」
「無駄よ!お前のその程度の輝きで私の闇の深さを止められるなんて思わないで!!」
その瞬間、ソウルビートの姿をエネルギー砲が呑み込むとそのまま彼の体を包み込みながら凄まじい速度で痛みを与えていく。
「ぐ……ああっ……」
「これで……終わりなさい!」
すかさずスラッシューがエネルギー砲に包まれて動けないソウルビートを一気に潰すべく手に炎を纏わせると拳を叩き込もうとする。
つまり、スラッシューの拳で一気に高密度のエネルギー砲を破裂させてソウルビートを葬ろうとしているのだ。
「ぐ……ああ……ッ!!忘れたのかよスラッシュー……」
「ッ!?」
「お前が言ったんじゃないか。俺の力は……闇相手にも作用するって!!」
「何!?」
その瞬間、突如としてソウルビートを蝕んでいた闇が一気に彼の体へと吸収され始める。スラッシューはソウルビートが自分の闇さえも取り込んだソウルビートに驚愕。腕に纏った炎を消してしまう。
「嘘……あ、あり得ない。あれだけの闇を取り込んだら……あなたは」
「が……ああああああっ!?」
当然ながら、闇の力を無理矢理取り込んでいるのでソウルビートの肉体には尋常じゃないほどの負荷がかかっている。それでも彼はその闇を取り込んでしまう。
「はああっ!」
同時にソウルビートが気合いを入れるとスラッシューが放った闇を全て自らの中で銀の輝きとして変換してしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
勿論ソウルビートは負担の大きさから膝を着く程に消耗。ソウルビートアトラクトも解除されてしまう。
「まさか、ソウルビートアトラクトを使ったのは……」
「ああ……瞬間的に俺の中の光の総量を底上げしてこの負担に耐えるためだ」
ソウルビートはとんでもない無茶技によってスラッシューからの猛攻に耐え切る事に成功。そして、フラフラと立ち上がりながらスラッシューへと改めて話しかける事になる。
また次回もお楽しみに。