キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ソウルビートアトラクトによってスラッシューからの猛攻を凌いだソウルビート。彼はそれを受けて動揺するスラッシューへと話しかける。
「スラッシュー。いや、Kotoneさん。確かに世界はあなたの事を受け入れなかったのかもしれない。自分という存在が他人から受け入れてもらえないという状況があなたにとってどれだけ辛かったか。俺も少しだったら理解してあげられる」
「ッ……理解だと……」
「ああ。俺にもあったからな。自分の存在を受け入れてもらえなくて。心が折れてしまった事が」
それを聞いたスラッシューは珍しくその事に対しては反論を一切せずにただ話を聞くのみだった。理由としてはグリッターに潜入した際に影人の過去の事をコッソリ聞いていたからである。
「それでさ。心が折れてしまって。暫くの間、ずっと悩んでたよ。それこそ数年くらい」
「………」
「それから俺はこの街に来て、この悩みを解決する事ができた。何故かわかるか?」
「あなたがアイドルプリキュアになったから?」
「順序が違うな。俺は、俺の事を気遣って手を差し伸べてくれる大切な友達と出会えたからこそこうして過去のトラウマを克服できたんだ」
スラッシューはソウルビートの復活劇を聞いて彼が立ち直れた理由については納得する。……ただし、だからと言ってそれで受け入れたわけでは無い。
「そう。でもそうなったのはあなたに特別な何かがあったからでしょう?友達を惹きつける何かが」
「違う。俺は特別でも何でも無い。俺はただの平凡な奴だ。だけど、そんな俺の存在を認めてくれる人がいた。だかからこうして立ち直れたんだよ」
「あははっ。だとしたら私への説得は無理よ。だって私にはそんな存在はいない。私みたいな奴に寄り添ってくれる人なんていないんだから!私は世界に見捨てられた。必要ないって言われてるの!」
スラッシューはソウルビートの結論に対して捻くれた答えを返す。やはりジョギの時もそうなのだが、闇堕ちする者としない者の決定的な差というのは自分の事を理解して寄り添ってくれる人がいるかどうか……これが大きなターニングポイントなのだろう。
そして、スラッシューには今その存在がいない。だからソウルビートは、影人はメロロンにそうしたように手を差し伸べる。
「だったら!俺がスラッシューの、Kotoneさんの事を理解して寄り添う理解者になる。勿論ずっとは無理だけど……それでもそういう存在がいるって思えるだけでも精神的な負担は軽くなるはずだ」
「私の理解者?……あはははっ!面白い冗談ね。そんなの、ダークイーネ様がいれば十分なのよ!!」
スラッシューが手に炎の剣を生成するとソウルビート相手に戦う気満々である。対してソウルビートは以前ダークイーネがスラッシューを助けに来た事を思い出す。
「なるほど、この前わざわざ出てきたかと思ったらそういう理由か」
「そろそろ退屈なお喋りの時間は終わりにするわ。あなたを倒して……私達はこの世界を闇の世界として染めるの。そうすれば私達の理想の世界が完成する!」
「そんな事させない。Kotoneさん、今からでも遅くはない。もし世界が敵に回ったとしてもあなたの事を心配して受け入れてくれる人はどこかにきっといる……いや、俺がそういう存在になる!Utakoさんに託された以上、俺がKotoneさんを最後まで見捨てない!」
「ッ……さっきからUtakoと会った事あるような話ばかり。嘘を言うのも大概に……」
スラッシューはソウルビートが先程から言っているUtakoと知り合ってるような発言の数々を信用する事ができていなかった。当然だろう。そのUtakoは自分の中ではとっくに亡くなってる人扱いなのだから。
しかし、スラッシューは先程からのソウルビートの話に対して妙に信憑性があるようにも思えてきた。彼女視点だと真実の中に嘘を混ぜた可能性もありえるとはいえ、何かしらの手を使って本当にUtakoに会ってきたという可能性にも辿り着き始めたのだ。
「スラッシュー、Utakoさんはあなたの事を信じてます。それに、きっと彼女自身も辛かったはずですよ」
「違う……違う!Utakoは私の事をそんな風になんて思わない!思うはずが無い!だって、だって……自分を殺した相手の事なんか……想うわけ‥…」
その瞬間、スラッシューの脳裏にUtakoが海の中で永遠の別れをする際に自分に向けてくれた笑顔が浮かぶ。そして、彼女のそれは自分の事を恨んでいるような物では無かった。
「ああっ!あなたと話していると……本当に……ッ!!」
スラッシューはソウルビートから毎度説得を受ける度にこのような気持ちの乱れが起きる事にはうんざりしており、しかも毎回逃れようとしてもしつこく食い下がっては結局気持ちを乱れさせる事に繋げている。
「どうしてなのよ……話す気が無くても話してしまう。あなたに私の事を知る必要なんか無いのに。どうして!!」
「それは、あなたが悲しい気持ちを殺しながらここにいるからですよ。俺の事を闇堕ちさせようとした時だって、本当は一緒にいてくれる人が欲しかったんでしょう。ずっと欠けた相棒の代わりを探していて」
「黙って!!もう黙ってよ……。私は、私は1人でずっとダークイーネ様のために戦ってきた!今更後戻りなんて許されない。それに、ダークイーネ様の事を1人には……」
ソウルビートはスラッシューの反応からあと一歩で彼女の気持ちを押し切れる……そう考えた時だった。スラッシューが“ダークイーネを1人にする”というとんでもない話をソウルビートへと持ち出したのは。
「ッ!?ダークイーネを1人に……」
『お喋りが過ぎるぞ、スラッシュー』
そのタイミングでスラッシューの影からダークイーネが姿を現すとソウルビートの方を睨みつける。
「ダークイーネ様……」
『本当に目障りなものだな。キュアソウルビート』
前回の時と言い、今回もわざわざ出張ってきた事と言い。ダークイーネはスラッシューが心変わりする直前くらいに現れてはその気持ちを妨害してくる。また、ソウルビートはスラッシューがダークイーネを1人にするという発言からもダークイーネがスラッシューを手放したく無い理由に納得する所があった。
「ダークイーネ。何をそんなにスラッシューの事を気に入ってるんだ。どうしてそこまでスラッシューに拘る!」
『……ふん。その考えをお前に話すつもりは無い。そもそも、世界が真っ暗闇に染まればお前達は水晶の中に閉じ込められるのだからな』
「ダークイーネ様……あのような者、私がどうにか……」
『妾からはこれ以上の戦いは許可できない。お前を失うわけにはいかないからな』
スラッシューはダークイーネがわざわざ出張る必要性が無いと彼女に頼み込む事も兼ねてソウルビートの始末を自分に任せるように頼み込むが、ダークイーネはそれを許可する事は無く。そのままスラッシューの後ろに闇に通じる穴を開けた。
「ッ、スラッシュー!!」
『黙れ』
ソウルビートがスラッシューを追おうとするが、ダークイーネがそれを許さないとばかりに闇のエネルギー弾を放って牽制。ソウルビートはそれを回避するが、その間にもスラッシューは背を向けてその中へと入ろうとしていた。
「……アイドルプリキュア。次こそは必ず……」
そして、ソウルビートはスラッシューへとそれ以上声をかける事ができずに彼女の姿は消えてしまう。同時にダークイーネがソウルビートへと話しかけた。
『お前達がどれだけ抗おうが、最後に世界は闇に染まる。……闇に染まった後のスンとした世界。それが妾の望みだ』
「スンとした世界?」
『もう一度警告しておく。……スラッシューの気持ちの邪魔をするな』
その言葉を最後にダークイーネは空気の中に溶け込むようにして消え去っていく。ソウルビートはまた良い所でスラッシューが連れ去られた事に悔しさを滲ませた。
「ッ……ダークイーネ。それだけスラッシューをKotoneさんを手放したく無い気持ちの表れか。……それに何だ?アイツが言った“スン”とした世界って」
ソウルビートはスラッシューを回収しに来たダークイーネの言葉にあったスンとした世界というのが気になる。恐らく何かの比喩表現なのだろうが……。
「考えてばかりでも答えは出ないな。ひとまず、他の所を助けに行かないと」
ソウルビートはそう言いつつ、他の仲間達の待つ戦いの場へと移動する事になるのだった。
その頃、ダークランダーと対戦するウインクはジョギが操る日めくりカレンダー型のダークランダーの戦法に苦戦を強いられてしまう。
「く……ううっ」
「あははっ!ここまで圧倒してくれると久しぶりに気持ち良いね」
ウインクは先程と同じように分身したダークランダーの攻撃をまともに受けてしまうと倒れ込んでしまう。その様子を見たジョギはご機嫌そうに笑っていた。
「ッ……皆が来るまで耐えないといけないのに。私じゃ、圧倒的に手が足りない」
日めくりカレンダー型のダークランダーの特性上、守りに強いだけで多数の敵を相手に制圧する力を持たないウインクでは相性が悪すぎる。
「ダークランダー!!」
するとダークランダーが再度分身をしたままエネルギー波を放ってくるとウインクはその場から走り出す。可能なら防御したかったが、それをやってしまうと火力で押し切られるために守りを固める事ができない。
「ダークランダー、もっともっと攻撃するんだ。キュアウインクを消耗させろ」
「クラ!」
ジョギもウインクが飛び道具による手数攻撃に弱い事を察知しているためにひたすら攻撃を放ち続ける。
「反撃しないとやられっぱなしになるのに……このままじゃ」
ウインクが苦しい戦況を打開したくても今のままでは厳しそうな事に悔しさを感じる中、ダークランダーからのエネルギー波の一発がウインクの回避速度を上回って彼女に迫る。
「ッ!?しまった……」
「さぁ、潰せ!!」
「ッ……」
「ズキューンバズーカー!」
その瞬間、ウインクの後ろから声が聞こえると彼女の真横をすり抜ける形でズキューンバズーカーが飛んでくるとダークランダーからのエネルギー波を押し返して分身体の中の1体に命中。
「クラァアア!?」
そのまま分身体は消滅し、ウインクがバズーカーの放たれた方を見るとそこにはキッスと共にダークランダーを1体浄化したズキューンがいた。
「お待たせ、ウインク!」
「ズキューン……ありがとう!」
「チッ。もう1体ダークランダーがやられたのか。……多分チョッキリーヌ先輩の奴だろうけど」
ジョギは地味にやられたダークランダーの使役者を当てると少し面倒そうな顔をする。ダークランダーの手数が減ったという事は分散していたプリキュアが少しずつ一箇所に集まり始めてしまう。
そうなると普段の戦いと同じように6人揃ってしまってキラッキランフォーユーでやられるリスクも跳ね上がる。
「けどまだ2人なら押し切れるか。ダークランダー!」
「「「ダークランダー!」」」
するとジョギの指示で分身体のダークランダーがウインクとズキューンを数の差で押し切ろうとしていた。更に分身体とは別で本体もいる。そう考えるとまだ数の面でプリキュア側が不利だ。
「私達が2人だけ?ジョギ、そう言うのはちょっと早いんじゃない?」
「まさか……」
「はぁあっ!」
ズキューンからの返しに嫌な予感を感じたジョギだが、もう遅い。そのタイミングで2人を数押しして潰そうとしていたダークランダーの内、1体が何者かに蹴り飛ばされて何度か地面に激突。そのまま元の紙の姿に戻ると消滅した。
「ウインク、待たせてしまってごめんなさい」
「キッスも来てくれてたんだ!ううん。私は気にしてないから大丈夫だよ!」
そこにいたのはズキューンと行動を共にしていたキッスである。彼女もまた、ズキューンと共に窮地に陥っていたウインクを発見すると敢えて時間差で2人が出てくる事で見事にジョギの注意を逸らす事を成功させた。
「これで3人。分身を使ってもあなた達が有利という形では無くなったわ」
「ふふっ、そのようだね」
ジョギは分身を止められて尚且つ数の有利も無くなったものの、まだ余裕そうである。恐らく、まだ彼はこの3人だけなら勝てるという認識があるからだろう。
「ウインク、もう一踏ん張り頑張れそう?」
「うん。むしろ、2人が来てくれたおかげで力が湧いたよ。改めてありがと」
「いいえ。その前に、私達が自分達の担当のダークランダーを倒せたのは皆が私達を信じてくれたから。だから私達も頑張れた。お礼を言わないといけないのは私達の方よ」
ウインクのお礼に対してキッスも自分達の事を信じて任せてくれた仲間達への感謝の気持ちをひとまずはウインクへと返す事になる。
「ふふっ。じゃあ2人共行くよ!」
「うん!」
「はい!でも、あのダークランダーの分身能力は厄介ね。何か弱点は無いのかしら」
ズキューンの掛け声に合わせて2人は頷くが、その直後にキッスはダークランダーの分身能力について懸念を浮かべる。
「うーん。対策じゃないけど、あの分身はカレンダーの紙からできてるんだよね。だから下手に沢山攻撃を当てると沢山出てきちゃうのかも」
「攻撃せずに無力化するのが一番って事ね。わかったわ」
「さ、そろそろ作戦会議も終わりにして。僕のダークランダーと遊んでよ!」
プリキュア側の意見がある程度纏ったのを見たジョギはこれ以上は待たないとばかりに攻撃を指示。プリキュア達はそれに対応する事になるのだった。
また次回もお楽しみに。