キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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手鞠沢高校アカペラ部によるアカペラライブ

プリキュア達の奮闘によって手鞠沢高校の学園祭は守られた。そして、プリキュアから変身解除した影人達はまた学園祭を回るのを楽しむといよいよ本日のお待ちかねこと学園祭の体育館発表のラスト。アカペラ部によるライブ発表の時間となった。

 

「良かった、間に合った!」

 

「前の部活の発表が押してるみたいだからな、まだもう少しだけ待ちになりそうだけど時間通りだね」

 

影人達は約束通りに入場時間に合わせて待ち合わせすると体育館に入り、用意された観客用の席に向かって歩き始める。

 

「アカペラ部の皆、大丈夫かしら……」

 

「大丈夫だよ!だって私達でキラッキランランにしたんだから!」

 

めろんの心配に対してぷりんはアイドルプリキュアが浄化した後なのだから大丈夫であると彼女をフォロー。

 

「そういや影人、まだ全員で挨拶してないけどレイレイ先輩の方は大丈夫なのか?」

 

「ああ。一応文化祭終了後に話せる時間は作るってさっき別れる時にメッセージとしてくれた。それに、今行ったら先輩達の集中の邪魔になるしな」

 

「ま、それもそうか」

 

影人達が先程玲音に挨拶した時は半分半分で別れていた時だったので彼女への挨拶をしていない点をレイは気にしたが、仮に今挨拶に行った所で彼女達の集中の邪魔になってしまう。

 

「……そういえば、先程私達が全員で参加したコスプレファッションの話ですけど、夢乃ちゃんの後は流石に夢乃ちゃんを上回る高得点は出てないですよね?」

 

「ッ……」

 

「夢乃ちゃんが99点だったし可能性は低いと思うよ。同点だったら先にその点数に到達した人が上位になるってルールだし」

 

「アレより上はもう満点しか無いもんね」

 

今回の審査員の中で1人だけ参加しているプロのファッションモデルが大会の審査のレベルを引き上げる要因になっていた。何しろ他の4人の点で満点を取り、80点は確保できたとしてもそこから先の点数を取るには1番の鬼門である彼女を納得させないといけない。

 

「……」

 

「大丈夫だ、夢乃。もし夢乃が1番になれなくてもそれはもう相手が悪かったくらいしか無い。あのプロの人から20点中19点を取れただけ十分過ぎるくらいだ」

 

「うん……」

 

ただ、夢乃はやはりどうしても緊張してしまう。満点以外に自分を超える点数は出せないとはいえ、その1点差だとしても逆転の余地を残す点数にしかできなかったという後悔はどうしても残っていた。

 

「っと、照明が変化し出した。そろそろだ」

 

すると、体育館の電気が消えていくとステージの方に存在するサスことサスペンションライトがステージだけを照らす状態が作られる。そして、司会者の声がマイク越しに響き渡った。

 

『それではいよいよ最後。アカペラ部の皆さん。お願いします!』

 

同時に会場内に拍手が響き渡るとそこに手鞠沢高校アカペラ部の6人が出てくる。順番としてはステージの上手側から玲音→愛莉→結→弥子→閏の並びであった。

 

「あ、レイレイ先輩達出てきましたよ」

 

「ああ。……ただちょっと気になるのが。レイレイ先輩、前の発表の時と雰囲気が違う」

 

こころが小声で影人へと話しかける中、影人はステージ上に出てきた玲音の纏う空気感の違いに違和感を感じる。同時にレイも同じ事を思ったのか。影人へとそっと声をかけた。

 

「ああ……。俺もそう思う。多分だけど、この感じ……」

 

レイがその後影人に言った言葉に彼もその違和感の正体に納得したのか小さく頷く。

 

するとその間に愛莉から外部のお客さん向けのアカペラ部としての挨拶が終わると早速ピッチパイプを取り出す。

 

「わぁ、なんか面白そうな物出したね。めろん、アレが何かわかる?」

 

「ピッチパイプですよ、お姉様。アカペラ練習の時にレイレイ先輩が借りてきている音叉という道具と似たような役割を担うんです」

 

愛莉がピッチパイプを吹くとその音に合わせる形でリード、コーラス、ベースの5人が自身の声の音程を調整するように声を出す。

 

「「「「「んー!」」」」」

 

「ぷっ!ぷっ!ぷすっ!ぷすっ!」

 

同時にボイパである閏もボイパの音がちゃんと出るかを確認。その直後に音のハモリの美しさから拍手が上がる。

 

『……では、歌います』

 

それから愛莉がそう言うと曲のスタートを告げるのはParabolaの時と同じでボイパである閏だ。

 

「トゥッ、トゥッ、トゥッ!」

 

閏の“1、2、3!”に合わせる形でベースの弥子がボイパの閏と共に曲のリズムを作り出す。

 

そしてコーラス隊である1stの嬉歌、2ndの愛莉、3rdの玲音が声を重ねて雰囲気を作り出す。その様子に結は少しだけ驚いたような顔つきを見せるが、彼女は音楽ガチ勢なだけあっとその動揺をすぐに消すと歌を歌うモードに入る。そして、イントロ部分が終わった所で彼女がリードとして歌い出した。

 

〜挿入歌 夢見る15歳〜

 

「女の子には秘密の♪恋のボタンがあるのよ〜♪今年の夏は負けない♪去年みたいに弱くない♪」

 

影人達観客は結の歌に聴き入るとそのハーモニーを楽しむ。今回は音楽ガチ勢の結によるリードである。今まで練習の様子を動画として公開されてきたのは今回1stをやっている嬉歌がリードの歌。

 

また、高校生が歌っているために流石にParabolaには遠く及ばない。それでもParabolaは高いレベルの個と個がぶつかり合う事で作られていた歌だったのに対してこちらは全員が溶け合うような形のハーモニーを理想として作られた歌。

 

そのため質は劣ってもParabolaとはまた違った魅力があるのだと影人達は再認識。加えてこれは余談だが、リードの結は楽譜を貰った日からこの日まで全体練に一度も参加せずに合わせている。そのため、結がこの中で抜きん出た実力の持ち主なのは間違い無い。

 

「AH〜♪」

 

「「「That's Summer Love〜♪」」」

 

「胸が騒ぐわ〜♪」

 

「「「That's Summer Love〜♪」」」

 

「実際、恋するだけなら誰でも出来る〜♪」

 

「勇気を持って輝こう〜♪」

 

「実際、恋愛するのってタイミング〜♪見逃せない〜♪」

 

ここで補足だが、この曲をアカペラアレンジする上で原曲の特性上どうしても結1人では歌いきれない部分がある。そういう所ではコーラス隊のメンバー、特にリードの音に近い1stの嬉歌がサポートとして歌う場面もあった。

 

そのためParabola程では無いが、ポジションが多少動く場面も出てくるというわけだ。

 

「夏祭り♪手を繋ぎ♪花火を見上げて〜♪きれいだと♪私、見て♪君が言う♪」

 

それはさておき、結は未だに脳内で少し混乱していた。夏休みのアカペラライブの時はボイパがズレた事でバラバラになってしまっていた歌が今回はそこまでズレが大きくなかったからである。勿論その場のアドリブでリズムが違う事はあるものの、それはあくまでアドリブの範疇内で収まるちょっとした誤差だ。

 

そして、前回はボイパのズレをどうにかするためにカバーに回っていた2年生コンビが伸び伸びと自分のパートを歌っている。同時に結はこのチームでアカペラをやる事に楽しさを覚えつつあった。

 

「浴衣着て♪金魚すくい♪君が3匹で♪…なんて恋、夢見てる♪15歳〜♪」

 

そして、最初の曲が終わると早速体育館内は拍手喝采が鳴り響く。同時に結は今回のアカペラは前回のような最悪な結果にはならないという事も悟っていた。

 

「(良し、結先輩が気持ち良く歌えてる。レイレイ先輩が言ってた特訓の成果出てるよ)」

 

そして、レイが予想した通り。結は気持ち良く歌えたお礼なのか。閏が振った成功の意味を込めたタッチに結は乗ると2人で笑い合う。

 

「(聴きながらリズム取ってたけど、閏のボイパリズムもそこまで大ズレはしてない。これなら大丈夫なはず)」

 

また、めろんはしれっとボイパ練習の参考にするためか。歌を聴きながら手を膝の上に置きつつ指で軽くトントンとリズムを取っていた。ぷりんはそんなめろんに気づいて微笑ましい顔を少しだけむけていたのだが、それはさておこう。

 

続けて曲は2曲目へと移る。こちらは前回の夏休みの登校ライブで失敗し、部内での亀裂を生む原因となった曲のガーネットだ。

 

「1、2、1、2、3、4!」

 

先程同様に閏の掛け声で始まる曲のイントロ。そしてそれが終わると今度はこちらの歌でのリード担当である嬉歌の歌が始まる。

 

〜挿入歌 ガーネット〜

 

「グラウンド駆けてく〜♪あなたの背中は♪空に浮かんだ〜♪雲よりも〜自由で♪」

 

アカペラ部にとってはリベンジとなるこの楽曲。前は会場内の手拍子が原因でリズムが大崩れしてアカペラとしてシンクロできなくなった。しかし、今回は違う。

 

「ノートに並んだ〜♪四角い文字さえ♪すべてを照らす〜♪光に見えた〜♪」

 

「「「光に見えたの♪」」」

 

一応前回同様に手拍子は起こったものの、それで閏のリズムが大きく崩れる事は無く。多少のズレは結も許容できる範囲内であり、尚且つ彼女は隣で歌う嬉歌がちょくちょく自分に目線を向けてくるのを感じた。

 

「好きという気持ちが〜♪分からなくて〜二度とは戻らない〜♪この時間が♪その意味をあたしに教えてくれた〜♪」

 

これは嬉歌が周りのメンバーをしっかりと見ていて尚且つそれに寄り添うような歌を歌っているからだ。そのため結は嬉歌のリードに安心して合わせる気持ちにできたのである。

 

「あなたと過ごした日々を♪この胸に焼き付けよう♪思い出さなくても〜♪大丈夫なように♪」

 

そんな中、愛莉は玲音の異変を察知したように少しだけ困惑した目を向ける。普段は自分に合わせてくれる玲音が自由に歌っているのだ。……まるで全員が合わせる愛莉の思考では無く。強力な個を合わせるParabolaの聖の思想を示すように。

 

しかし、それが原因で歌が壊れる事は無いように玲音はしっかりコントロール。自分の個を出しつつも他のメンバーのレベルから逸脱しない所に調整していた。

 

「いつか他の誰かを♪好きになったとしても〜♪あなたは〜♪ずっと特別で♪大切で♪またこの季節が〜♪廻ってく〜♪」

 

その後、6人が歌を最後まで歌い終わると会場内は再びの拍手で包まれた。勿論うた達も拍手をしている。

 

「キラッキランラン〜」

 

「心、キュンキュンします」

 

「Parabolaとは違うけど、綺麗な歌声。まるでミルフィーユみたい」

 

こうして、アカペラ部の発表はこれにて終了。前回の夏休み中の登校日ライブと比べて結が不機嫌になってしまう程の大崩れにはならず。見事リベンジに成功したと言える。

 

そして会場中に鳴り響く拍手の音を聞いたアカペラ部の面々は息を沢山使った影響で走った後のような呼吸をしていたものの、その顔つきはやり切ったように晴れ渡っていた。

 

「くぅうう〜っ!やったぁあっ!」

 

閏に関しては嬉しさから両腕を上に振り上げて喜びの声をあげる程である。

 

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」

 

アカペラ部の6人は手を繋いで最後の挨拶を済ませるとステージの上から退場。その様子を影人達はいつまでも続く拍手と共に見送った。

 

それから少しして。学園祭の閉会式。……しかし、このタイミングになっても先程全員で参加したコスプレファッションのコーナーからの呼び出しが夢乃の元に来なかった。

 

「そういや、夢乃ちゃん。さっき挑戦していたコーナーからの呼び出しとかあった?」

 

「……いいえ。うんともすんとも……」

 

一応コスプレファッションのコーナーで挑戦時点での最高得点をマークした者は連絡先を教えるように頼まれている。これは優勝者に優勝賞品を円滑に渡すためだろう。

 

「……この調子だと出ちゃったのかもしれないわね。……満点を取った人」

 

「ッ……」

 

めろんからの言葉を聞いて夢乃の心に冷たい風が吹き抜けるような感覚がする。やはり自分ではダメなのだろうかという不安がとめどなく溢れてしまう。

 

すると、閉会式の際に最優秀賞の人が名前だけ呼ばれるという事でプロの審査員の人がマイクを持ってステージの上に上がる。

 

『それでは、最優秀賞の受賞者を発表します』

 

審査員のその言葉を受けてその場は静寂に包まれる。そして、その静寂を破る形で審査員は判定を下した。

 

「最優秀賞は、100点を取った天城切音さんです』

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

その言葉を聞いた影人を除いたプリキュア組は動揺の顔を浮かべる。……むしろ、この名前を聞いて動揺しないはずがない。何しろ自分達視点では天城切音という名前を使う者は1人しか知らないからだ。

 

「う、嘘……」

 

「切音さんが……スラッシューがあのコンテストに参加していたなんて」

 

「マジか……切音さんが優勝者だなんてな」

 

『天城切音さんはこの後優勝商品である商品券をコンテスト会場にまで取りに来てください』

 

それを最後にプロの審査員はステージを後にする。ただ、影人達の顔は苦かった。そもそも天城切音はスラッシューが使う偽名である。そしてそれはこの学園祭に溶け込むために使っているものだ。

 

しかもそのスラッシュー本人はチョッキリ団アジトに帰ってしまったのでこのままでは優勝者不在状態になってしまう。そして何より……この状況で酷くショックを受けた者が1人いたわけで。

 

「ッ……」

 

「夢乃ちゃん……」

 

夢乃は自分が一位になれなかった悔しさで瞳に涙が浮かぶ。しかし、ここで大泣きなんてすれば周りに迷惑がかかると考えたのか。彼女は必死に涙を堪えようとした。

 

ただ、それでも嗚咽までは堪えられてないのか。小さく泣きそうになるのを我慢するような声が漏れてしまう。

 

「夢乃、夢乃はよくやったよ。……だから、後で好きなだけ泣いて良いからな」

 

「うん……ごめんなさい。お兄ちゃん……」

 

夢乃の出来は最高に近かった。実際99点をマークしていたのだからそれは疑う余地は無い。……だが、今回は相手が悪過ぎた。スラッシューこと天城切音は一世を風靡したUtaKotoneの片翼ことKotoneだ。

 

勝てないのも仕方ない事だろう。だからって夢乃のこの悔しさが収まるわけでは無いが。

 

こうして、影人達が本来観にきていたアカペラ部によるライブと今回の学園祭でのコスプレファッションコンテスト優勝者発表が終わることになるのだった。




また次回もお楽しみに。
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