キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アカペラ部のライブが無事に終わり、その後全員で受けていたコスプレファッションコンテストの結果も発表された。しかし、そこで夢乃は1位を取る事ができずに悔し涙を流す結果に。
そして、閉会式が終わると影人達は玲音との約束通り彼女と話をする事になった。
「レイレイ先輩!お疲れ様です!」
「「「「「お疲れ様です!」」」」」
玲音の姿を見つけた影人達の内、まずはうたが真っ先に彼女へと挨拶の言葉を投げるとそれに続く形でなな達女子組の5人が言葉をかける。
「皆、観に来てくれてありがとう」
「レイレイ先輩の声、凄くキラキラしてました!」
「何だかいつも以上に活き活きしてましたよね?」
そんな風にうた達から言われた玲音。彼女はアカペラ部とは別でできた自分の後輩のような存在と一緒にアカペラを話せるのが嬉しいのか微笑んでいた。
「うん。いつも以上に楽しんで歌に臨めたのはそうだと思うよ。現に、お客さん達は皆嬉しそうにしてたからね」
「これはもう私達も負けられないよ!」
「ええ、後少しで私達のアカペラも完成します。楽しみに待っててください」
「そうだね。君達が作るアカペラ。私も凄く楽しみに待ってるよ」
それから玲音との軽い雑談をして影人達は別れる事になる……そのはずだったが、うた達がそろそろ行く事を言い出したタイミングでここまであまり会話に参加していなかった影人とレイはここに残る事を伝える。
「それじゃあ、私達はそろそろ……」
「待って皆。俺とレイの2人はちょっとだけレイレイ先輩と話がしたいんだけど良いかな?」
「えっ……別にそれは良いよ。でもどうしたの?」
「俺と影人は別れる前に個別で聞いておきたい事があるから。皆は先に高校の校門付近で待っててくれ」
男子コンビにそう言われてうた達は頷くと玲音への別れの挨拶を済ませてから一旦この2人を残してその場から去っていく事になる。
「……君達2人がわざわざ残ってくれたって事は私の変化に気がついた感じ?」
「はい。……今回のレイレイ先輩。普段のアカペラ動画と比べて声の出し方が違うと言いますか」
「普段なら周りに合わせている所を思いっ切りやってて。それの影響で曲の音の層が一気に厚さを増した感じ……でしょうか」
「ふふっ。大体合ってるよ」
玲音は正解の答えに辿り着いてくれたのが嬉しいのか、頷く。そして、その顔は微笑みつつもどこか覚悟を決めたような物であった。
「……レイレイ先輩、もしかして」
「うん。……やっと決意が固まったよ。アカペラ部の皆と、君達が頑張って変わっていく様を見てたらさ。私も変わりたくなっちゃった」
「という事は、Parabolaに入るんですね」
「そういう事になるのかな」
玲音はそう言いつつ空を見上げる。その空は日が沈み出した影響でオレンジ色に染まっていた。
「愛莉先輩にその事は話したんですか?」
「……これから話すつもり。多分愛莉は私が本気を出した事に気がついたはずだから」
影人とレイはそれを聞いてふとアカペラライブ中の愛莉を思い出す。それは玲音が本気で歌う度に混乱したような目線を向けるという愛莉の構図だった。
「心配しなくても大丈夫。……私だって愛莉とこのまま絶交するわけじゃないし。するつもりも無い」
「だけど、多分愛莉先輩は……」
影人もレイもこのままでは玲音が一番大切な存在。愛莉との関係が壊れてしまうような予感がしていた。少なくとも、誰かのケアが無いと関係修復は無理そうに思える程に。
「……大丈夫。もし心配してるような事態になったら……その時はまたどうにかする。それにさ、いつも心配してくれてる君達2人にこれ以上余計な負担をかけたく無い。……この問題は私の手で全部解決してみせるから」
それは、影人達に頼らずとも今回の件を解決したいという彼女の覚悟を示す言葉でもあった。
それ程までに今の玲音は影人やレイにこれ以上この件の事で頼るのが自分の気持ち的に許せないらしい。
「わかりました。ですが、その代わりお願いです」
「……何?」
「絶対に愛莉先輩との絆、無くさないでください。玲音先輩も愛莉先輩もです」
影人はこれ以上玲音の件に干渉するのは良くないという事を彼女自身の覚悟という形で示された以上、自分達にできるのは2人が絆を失ってしまわない事を頼む事だけだった。
「……アイドルプリキュアとして活動している間に俺達は見たんです。些細なすれ違いが大きな亀裂になって。そのせいで闇に堕ちてしまった人の事を」
「ッ……そっか」
玲音も今の影人の頼みでプレッシャーを受ける程では無いが、これから愛莉との接し方を間違えるとその人と同じ轍を踏みかねないというのを胸に強く刻んだ。
「……うん。私はアイリならきっとわかってくれるって信じてる。だから2人も私を信じてほしい。絶対君達の……アイドルプリキュアの手を煩わせる結果にはしないから」
「はい!」
「……それと、もうすぐ君達のアカペラも完成するって話でしょ?……楽しみにしてるから」
「勿論、レイレイ先輩の期待に添えるような結果にします」
影人からの答えを聞いた玲音は安心したように微笑むと同時にスマホが鳴り、そこに写されたメッセージが愛莉の物だと確認。同時に彼女は覚悟を決めて待ち合わせの場所へと向かうのだった。
「レイは良かったのか?レイレイ先輩と話すの……殆ど俺がやっちゃったけど」
「別に良いよ。むしろ、俺にそういう説得は性に合わない。それに影人ならレイレイ先輩に言うべき事は大体全部お前が言ってくれると思ってたからさ」
「そうか」
今回の会話でレイはそこまで玲音に気持ちをぶつける事は無く。あくまで見守る事に徹していた。彼がそうしたのは影人の事を信頼している証拠であり、影人ならこの会話で言わないといけない内容を全部言ってくれると思ったからである。
「レイレイ先輩も行ったし、俺達もそろそろ行くか」
「そうだな。あまり皆を待たせると今度はそっちが心配してきそうだ」
こうして、影人とレイはうた達が待つ手鞠沢高校の出入り口付近へと向かう事になるのだった。
一方その頃、影人達と別れて先に出入り口付近に来ていたうた達6人。ぷりんとめろんは今日一日人間態を維持したのに疲れたのか。2人揃って妖精態のプリルンとメロロンに戻っていた。
「一日ずっと人間の姿になってるのは大変プリ……」
「やっぱりこの姿が一番しっくり来るのメロ……」
「ふふっ。流石の元気さのプリルンも学園祭を楽しんだから疲れちゃったか」
「でもこうして2人が隣り合わせで寄り添ってる所は何度見ても良いですね」
そんな中、夢乃は先程の悔し涙を流した影響か。目尻が赤くなっていたものの、これ以上は心配をかけさせまいとどうにか涙を抑え込んでいた。
「夢乃ちゃん、大丈夫そう?」
「はい。どうにか落ち着きました。……でも、やっぱり1番を取れなかったの……悔しいですよ。この程度のショーで1番を取れないなんて……情けないです」
そんな夢乃を見たこころは何となくだが、今の夢乃が少し危険な精神状態になりつつあると感じる。
「夢乃ちゃんがここまで本気になってるの、初めてだよね?」
「はい。……それに何だか、前に聞いた幼い頃のカゲ先輩の話と今の夢乃ちゃんが重なっているようにも見えてしまいます」
幼い頃の影人はここからあまりにも努力を頑張り過ぎた挙げ句、結果が伴わなかったせいでボキリと心が折れてしまっていた。今の夢乃は自分の夢を頑張り過ぎる前の段階に来ているような気さえもしていた。
「ひとまず、家に戻ってから影人君には個別で話をした方が良いかも。多分夢乃ちゃんの事だし、影人君には自発的には話さないだろうから」
「そうですね。その方が……うん?」
ななとこころが2人でコッソリと相談をしているとそんな彼女達の元に走ってくる影が見えた。
「あ、良かった!まだ帰ってなかった!」
「ッ、あの人は!」
「「コテン(プリ)(メロ)」」
そこに来たのは先程影人達が全員で出たコスプレファッションコンテストの審査員を務めていたプロの女性ファッションモデルの人である。その人は黒いセミロングの髪を靡かせながら走ってきた。そして、彼女が近づいたのに合わせて妖精であるプリルンとメロロンは人形のフリをする事に。
「確か審査員さんの」
「ええ。改めてだけど、先程はコンテストお疲れ様。そういえば、コンテストの時は自己紹介をして無かったわね」
それを聞いて一同は顔を見合わせる。確かにプロのファッションモデルが審査員として出る……という話は概要説明にあったものの、その人が誰なのかという紹介はされてなかった。
そして、彼女は頭に着けていたウィッグと瞳に入れていた黄色のカラーコンタクトを外す。その容姿は栗毛のロングヘアをウェーブにしつつ瞳は暗めな紫色。そしてモデルらしく美しく整ったスレンダー体型をした女性。そんな彼女の姿を見てうた達中学生組は驚きの声を上げていた。
「「「って、ええーっ!?あ、あなたは確か……」」」
「ふふっ。お察しの通り、私は早乙女まりあ。今日は妹のかぐやはいないから1人だけで審査員をしていたわ。イェーイ!」
そこにいたのはここ最近注目されるようになり、ファッション雑誌の表紙を飾る程の人気を誇るモデル。早乙女姉妹の姉こと早乙女まりあだった。
「早乙女まりあって妹でファッションモデルとデザイナーを兼業してる早乙女かぐやさんのお姉さんじゃないですか!?」
「う、うん。しかも2人は早乙女姉妹って呼ばれる程に姉妹揃って人気だよね」
「そんなに畏まらなくても大丈夫よ。少しくらいだったら気にしないしさ。……それに、妹がこの前お世話になった人達だからね」
「「「えっ、妹?」」」
うた達は妹という単語を聞いて困惑したような顔を浮かべる。早乙女姉妹の妹と言えば先程から出ている早乙女かぐやの事になる……だが、うた達はそのかぐやとは会った事すらないわけで。当然のように混乱した。
「ほら、このポーズと言葉に見覚えないかしら?……アゲー!」
すると、まりあが両手でチョキを作るとそれをギャルのように掌を上にする形でポーズとして取る。
「ああっ!?そのポーズと掛け声って!!」
「そ。私達早乙女姉妹は聖あげはって子のお姉さんなの」
うた達は以前アイアイ島で出会ったキュアバタフライの変身者であるサバサバしたギャルのようなノリの女性。聖あげはの事を思い出す。どうやら早乙女姉妹であるまりあとかぐやは彼女の姉らしい。
「まさかこんな所で繋がってたなんて……」
「ふふっ、じゃあ自己紹介も済んだ所でだけどさ。……黒霧夢乃ちゃんに用事があって」
「私……ですか?」
すると今までわざと話さずに空気になる事に徹していた夢乃へとまりあが話しかける。それを聞いて彼女は少し困惑していた。
「夢乃ちゃん、私の所属してる事務所に来ない?」
「……えっ。それって」
「うん。さっきコンテストに出てくれたあなたの輝く姿に私……気持ちが凄くアガるのを感じてさ。だから簡単に言ったらあなたをスカウトしたいの」
夢乃はそれを聞いて状況を理解するのに時間がかかる程に放心状態になると彼女のおめでたいニュースにうた達は喜びの声を上げる。
「凄いですよ夢乃ちゃん!」
「うん、プロの人からスカウトされるなんて……」
「キラッキランランだね!」
「……ごめんなさい」
「「「えっ?」」」
「……今のダメな私に……そんな資格なんてありません」
夢乃はプロの人からの誘いに対し、それを割とすぐに断ってしまう。その心は複雑その物だった。勿論、嬉しさが無かったわけじゃない。自分の能力を認めてくれて、買ってくれた事はとても嬉しい事だった。
……だが、今の自分は先程のファッションコンテストで1位を取れない程度の能力しか無い。1位通過して誘われるならまだしも、2位程度の自分ではまりあの期待に応えられないと感じているのだ。
「……それはあなたの本心が言ってる?」
「それは……。でも、今の私なんかじゃダメなんです。だからその……」
正直胸が苦しく、辛い。こんな大きなチャンスなんて早々来る物では無い。頭ではわかっていても、今の自分がプロのファッションモデルの下に行ったってその人に失望されるのを怖がってしまっている。だから、彼女の誘いに乗るという選択肢がどうしても取れなかった。
「……わかったわ。じゃあ、少しだけあなたの決意が決まるまで待つよ」
「えっ……」
「期限はそうね……あなたが中学生に進級する時。来年の3月末くらいにしておくわ」
「待ってください!そんなにも待たせるなんて……まりあさんに……」
夢乃はそんな話を聞いて困惑する。来年の3月末……今からだと5ヶ月も待たせる事になってしまう。そんなにも彼女の事を待たせるなど夢乃としては言語道断。流石に引き伸ばし過ぎだと感じていた。
「私には、さっきのあなたのキラキラがとても眩しく映った。多分かぐやが見ても同じ答えを返すと思う。……だからその輝きをまずは信じないとね」
「ッ……」
「だけど、まだあなたは小学生だから。いっぱい悩んで、迷うだけの時間がある。……私達にはそういう時間があまり無かったから」
まりあは夢乃の事をダイヤモンドの原石として見てくれている。だから幼い夢乃がちゃんと気持ちを纏めて答えを出すまで待つようだった。そして、そう言うと彼女は夢乃へと名刺として持っていた自らの連絡先を手渡してからその場を去っていく事になる。
「まりあさん……ッ。私の、キラキラ……」
「おーい!」
「悪い、待たせた!」
するとまりあと入れ替わるように玲音と話をしていた影人とレイが合流。それから一同は自宅のあるはなみちタウンに帰る事になる。
「……私は、どうするべきなんだろう」
そして、夢乃はこの日から自分の将来取るべき道に悩む事が増えてしまうのだが……その話はまた別の機会に描くとしよう。
一応今回でうたミルコラボ編が完結となり、次回からはアニメ39話に行く予定です。
加えて今回早乙女まりあを出しましたが作中で言及している通り、ひろプリを履修してる人ならわかる人になると思います。
そして、夢乃の夢はもう少しだけ引っ張る形になりますのでまた決着の方は別の話になりますね。そのため、こちらはもう少しお付き合いください。
それでは、また次回もお楽しみに。