キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
学校での研究会帰り。ダンス練習中のダンス部の部長こと寸田躍を見かけた影人とこころ。その際にいきなり高速回転を始めた寸田はそのまま勢いで影人達を飛び越えたものの、その回転スピードを殺し切れないまま近くのベンチに突っ込んでしまう。
それから影人達によって看病された寸田は暫くして目を覚ますと早速影人達からの事情聴取を受ける事に。
「大丈夫ですか?」
「うん、心配かけちゃったな」
「先輩、幾らダンスが好きだからってアレはどう見てもやり過ぎですよ」
「ごめんごめん……」
影人も影人であそこまでの無茶なスピンをした寸田の事を心配していた。しかも、本番でとかなら兎も角として。ただの練習の中で周囲に風を発生させる程のスピンをやるなどどう見ても無茶が過ぎる。
「カゲ先輩の言う通り、あんなにスピンするのは無茶ですよ」
「むしろ、よくあそこまでの回転スピードを維持したままベンチにぶつかっても平気でしたね。あんなの、普通なら大怪我確定ですよ」
「あはは……確かにそれはそうなんだけどさ……」
今現在、寸田はダンス練習用の鏡のある施設の柱にもたれかかった状態で座っており。その体は先程のベンチへの激突の影響でボロボロな様子だむた。
そんな寸田を心配した影人やこころからの忠告に対し、寸田の方はボロボロになりつつもまだダンス練習……と言うよりはスピンを止めるつもりは無いようで。
「……それでも俺は、もっとスピンしなきゃいけないんだ。……世界を救うために」
「世界を救うため!?」
「さっきもその話が出てましたけど、世界を救うために躍るダンスって話がだいぶ飛躍してますよね」
影人は先程の寸田の発言にもあったダンスで世界を救うというのがイマイチピンと来ておらず。そのせいでかなり困惑した様子だった。
「あの、ダンスで世界を救うっていうのは一体どういう事ですか?」
「俺も正直その言葉だけだと話が飛躍しすぎてイメージが掴めません。一体どういう事でしょうか」
影人もこころも完全に寸田の世界を救うという発言の意図を理解できておらず。そのため、寸田へと言葉の真意を問う。
「……中学を卒業する前にどうしても。ダンシングスターカップで優勝したいんだ」
「ダンシング……スターカップ」
「やっと俺達でもわかりそうな話が出て来ましたね」
中学時代に打ち込んだ部活動で大会に全国大会出場したい。或いはそこで優勝する。……自分の好きな部活動に所属し、そこで活動に励む学生ならよくある話だ。
「ダンシングスターカップ。それはスタイルに拘らず、見ている人にどれだけ感動を与え……笑顔にできるかを競う大会なんだ」
「笑顔にできるか……ッ」
影人は記憶の片隅に残っていたかつての自分の見た光景を思い出してしまうと少しだけ顔色が悪くなってしまう。
「カゲ先輩、大丈夫ですか?」
「ああ……悪い……。ちょっとどうしても……な」
正直な所、こんな記憶なんてさっさと乗り越えて振り切ってしまいたい。しかし、どれだけ周りに励まされて助けられたとしても。人間のトラウマという物は要所要所で思い出してしまうものだ。
「黒霧君、大丈夫か?」
「いえ、ちょっと過去の事を思い出しちゃっただけです。……続けてください」
「わかった。……それでそのダンシングスターカップ。俺にとって、中学生部門は今年がラストチャンスなんだ」
「先輩、3年生ですもんね……」
「そう思うとこればかりは仕方ない事か……」
寸田はダンス部の部長であり中学3年。つまり、中学生部門で考えた場合。もう次が無いという事を意味する。
「俺はこの大会に賭けてるんだ。絶対に優勝しないといけない。……というわけで!俺はまたトレーニングに戻るよ」
「ちょっ!?待ってください。さっきあんな目に遭ったばかりなのにまだやるんですか?」
「そうですよ!まずは一旦休んで先程のダメージの回復を……」
「いいや。そんな事なんてしていられない。それに、今日はまだ2万回しか回ってないしね」
「「2万回!?」」
寸田が言い出した2万回もスピンしたという言葉に思わず驚く2人。そんな事をすれば普通なら脳震盪やらを起こしてダンスどころでは無くなるはずなのだが……。恐らくスピンを得意として常日頃から練習を重ねている寸田だからこそできる事なのだろう。
ただ、常人からしてみたらやはりそんな途方もない回数を回ってるなんて言われたらやり過ぎに感じるわけで。影人とこころは寸田へと止めるように言う。
「おーい、流石に回りすぎじゃありませんか?」
「そうですよ!まだ続けるんですか!?」
「平気平気!紫雨さんも黒霧君も気をつけて帰るんだよ!」
そう言ってスピンを再開してしまう寸田。影人とこころはそれを心配そうに見ながらも、そろそろ時間が不味いためその場を後にして帰る事に。
「寸田先輩、ああ見えて凄い事をやってのけてるんだな」
「ええ。……ですが、何か引っかかります。寸田先輩、何か大事な事を抜かしてそうな気がして」
「大事な事……こころもそう思うか」
どうやら、先程の寸田とのやり取りで影人もこころも寸田が何か大切な事を忘れ去っているという予感を感じたようで。2人の意見は一致する。
「ひとまず、この話はまた明日皆に話すか」
「はい!」
影人とこころはこの件をうた達にも相談する事を決定し、この日は帰宅。それから一夜開けて翌日の昼休み。影人達はいつもの場所で弁当を食べる事になると前日の寸田との事をうた達へと話す。
「「2万回もスピン!?」」
「それはまたやってる事が人間離れしてるな」
案の定、2万回スピンしたという話を聞いて驚きの声を上げるうたとなな。レイも平然とした話し方こそしているが、内心ではかなり動揺している。
「そうなんですよ。ただ、寸田先輩。ボロボロになってからも回り続けるくらいで……」
「それって、ダンスに命を懸けてるくらいに情熱があるって事だよな」
「まぁそのくらいの気持ちが無いと2万回もスピンなんてできないと思う」
「そう考えると寸田先輩って凄いね!!」
影人達の話を聞いたうたは寸田の凄さを感じ取るとキラキラとした顔つきになっていた。
すると、その近くでは同じようにお弁当を食べていたぷりんがそれに反応する。尚、やはり学校生活中という事もあってプリルンとメロロンはしっかりと人間態で活動中であった。
そのぷりんが沢山スピンとしたと聞い気持ちが文字通り踊ったのか。クルクルとその場で回り始める。
「クルクルクルクル楽しい……って、あれ?目が回って来たぁ……」
「お姉様!?」
「当たり前だ。普通はそうなるんだよ」
ぷりんは回っている内に目を回すとフラフラと千鳥足になってしまう。そもそも人間はクルクルと回転するだけで目や脳に負担がかかり、その結果目を回してしまうわけで。
多少回転しても大丈夫なのはスピンを多用するダンサーや氷の上で何回もジャンプしつつスピンするフィギュアスケーター。そういう訓練を日頃から受けている人だけである。
そんなわけでぷりんがスピンの影響で目を回しているとめろんがぷりんを受け止めつつデフォルメとして演出のスポットライトを浴びた。
「スピン……それは巡るめく情熱の証……お姉様、もっと回りましょう」
「えっ?めろん、ちょっと待っ……」
「クルクル〜!」
めろんはぷりんを支えた状態のままその場でスピンをしてしまう。今の目を回しているぷりん相手にそんな事をしたら当然追い討ちになるわけで。
「めろん。その辺で終わりにしてあげろ。流石にそれはトドメを刺しに行ってるぞ」
影人はめろんへとぷりんにトドメを刺すのを止めるように言ったタイミングでようやく回すのを止めた。尚、この際にぷりんが振り回された酔いで食べた物をスパーキングするという色んな意味でアウトな事態はギリギリ避けられた模様である。
「それにしても、スピンし過ぎて周りの建造物とかにぶつかってるのか。……うーん。そこまでボロボロになるくらい頑張ってるのには……何か理由があるのかも」
話が脱線したために戻すと今の寸田は自分がどれだけ傷つこうとダンシングスターカップと呼ばれるダンス大会に賭けている。ななは寸田がそこまでするのには理由があると推測し、こころも考え込む。
すると、そんな時にうたが寸田が頑張る理由について何かを思いついたように声を上げる。
「あっ。もしかしてその大会で優勝したら凄い賞品が貰えるとか?えっと、確かダンスプラッシュスターカップだっけ?」
「ダンシングスターカップです。先輩」
「あとそれだと色々混ざってるぞ」
影人とこころがうたの間違いについて指摘しているとその間になながスマホでそのダンシングスターカップのホームページを出した。
「多分これかな。……“ダンスは世界を救う”ダンシングスターカップ」
「そういえば、寸田先輩。説明の時に世界を救うとか言ってました!」
「寸田先輩の言葉はこの大会のキャッチコピーから来てそうだな。だけど、ダンスで世界を救うってやっぱりイメージ湧かないな……」
「いやいや、アイドルが世界を救うために頑張ってるお前らがそれを言っても説得力皆無だぞ?」
影人の話にレイが思わずツッコミを入れるとホームページを見ていたなながその大会の創設者の所を見る。
「この大会の創設者は……寸田周!?」
「なーんか既視感のある名前だな」
「きっとこれは訳アリだね!」
その画面に映されていたのは1人の老人の顔であり、この人物がダンシングスターカップを始めるキッカケを作ったようだった。尚、影人はその創設者の名前に既視感を感じ始める。
「寸田君〜!!止まれーっ!!」
するとそんな時に、突如としてどこからともなく教師の慌てたような声が聞こえてくると影人達は全員でその方を向く。
「うぉおおおおっ!」
影人達の視線の先にいたのは何故か学校内での移動中でも回転をしている寸田の姿である。ただ、その寸田の回転の勢いの凄まじさからか。周囲にいた人間を自身の回転が発生させた風に巻き込んでしまっていた。
「な、何あれ!?」
「わぁ……面白そう!」
「絶対やったらダメだからな?」
うたが驚く中、ぷりんは先程目を回したばかりなのに寸田のやっている事を面白そうと言い出してしまう。
「寸田君、止まるんだぁああっ!!」
それはさておき、回転しながら進む寸田を止めるべく影人達の担任である富士見先生が両腕を広げて肉壁になろうとする。しかし、寸田よりも体格のしっかりしてる彼でもまるで効果無しなのか。富士見先生は一瞬にして呆気なく吹き飛ばされてしまう。
「寸田君ぅうううん!?」
普通の大人の男性でも軽く吹き飛ばす程の凄まじい回転を出す寸田。恐らくこれ以上のパワーとなると前に教育実習に来ていた持田先生くらいなら対抗できたかもしれない……が。もう彼は実習期間を終えていなくなってしまっている。
「な、何て回転の速さ!」
「大人の男性を軽く吹き飛ばせるなんて。正に情熱のハリケーンね」
「なな、めろん。流石にこれは感心してる場合じゃないだろ……」
それはさておき、天然モードを発揮したななやポエムを言い出しためろん。そんな2人へとレイがあくまで今は非常事態である事を話す。
「すみません先生!!俺、もう少しで掴めそうなんです!!」
「はぁ。けどだからって。周りに迷惑をかけて良い理由にはなりませんよ!」
すると今度は影人が寸田を止めるために前に出る。それを見たうた達は影人なら絶対に止めてくれるという安心感があった。
「影人君!」
「これで一件落着だね」
「ああ。アイツなら止められる」
「はい!カゲ先輩ならきっと……」
「止める!はぁあああっ!」
しかし、何故かこういう時に発揮されるであろう主人公補正が今回だけ発揮されなかったのか。影人が寸田を正面から止めようと待ち構えるものの、その勢いを受け止めようとした瞬間。
「は?」
「「「「「えっ?」」」」」
「何でだぁあああっ!?」
影人は寸田の勢いを止められずに呆気なく吹き飛ばされると体が宙を舞ってしまう。
「「「「「ええーっ!?」」」」」
そして、影人なら止められると思っていたうた達は思わず叫んでしまうとレイも呆気に取られていた。
「影人でも止まらないってマジ?」
「そこは俺のカッコ良い見せ場だ……ぐへえっ!?」
そのまま呆気なく地面に叩きつけられる影人。尚、叩きつけられる直前にメタ発言をしかけるがその前に地面に激突して不発に終わってしまう。最早寸田を止める手段は無いかと思われた。……そんな時である。
「カゲ君がダメだったのなら……もう私しか止められません!」
ここで出て来たのはこころである。同じダンス仲間の彼女がダメならもうどうしようもできない。
「寸田先輩、止まってください!」
「紫雨さん!?」
こころはここまでの流れで寸田には説得が通用しない事。そして自分の力では真正面からぶつかっても呆気なく吹き飛ばされてしまう事もわかっていた。
「失礼します!」
そのため、こころは寸田を止めるために自分から駆け出すと敢えて正面から向かいつつも体勢を低く。重心も下げてスライディングをするような形で回転中の当たり判定が少ない寸田の足元を狙う。
「はあっ!」
「えっ!?ちょっ!?」
こころのスライディングで軸になっている脚を軽く蹴られた事により、寸田の脚はようやく地面から離れる。そして、こうなってしまうと回転中の寸田にはどうする事もできず。今度は逆に寸田がバランスを崩して宙に舞った。
「うわぁああああ!?」
「痛てて……まさか寸田先輩のスピンがここまでとは……って、嘘だろ!?」
「「のはあっ!?」」
だが、運が良いのか悪いのか。寸田が飛んで行った先には先程吹き飛ばされていた影人がおり、そのまま寸田は影人を巻き込む形で激突。その衝撃で周囲に土煙が舞うが、どうにか寸田を止める事は成功した。
ただし、寸田の落下に巻き込まれた影人への被害は甚大だったが。そのため、影人は寸田に覆い被さられた状態でどうにかこころへと声を上げる。
「こ、こころ。止めるのは良いけどせめて吹き飛ばす先は選んでくれ……」
「ああっ!?カゲ先輩すみません!?」
影人の様子を見て慌てて謝るこころ。そしてこの一連の流れを見たうた達は影人への同情とこころへの賞賛に二分される事になる。
「あの回転を止めちゃうなんて。こころ凄い!」
「こころのカッコ良さに心キュンキュンだよ!」
「影人の方は……流石にドンマイだな」
「2人共、大丈夫!?」
「ひとまず躍に話を聞かないとね」
こうして、うた達は倒れた影人と寸田の元へと向かうと2人を立たせてから寸田の方に改めて事情聴取をするのだった。
また次回もお楽しみに。