キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜   作:BURNING

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ダンスバトルで伝える足りない物

影人とこころが寸田の練習風景を目撃した翌日の昼休み。その寸田がまた回転しながら色々と迷惑をかけていたのでこころがそれを止めた。

 

それから倒れていた影人と寸田が復活。そして、寸田の方は早々に手を合わせて先程の件を謝る事になる。

 

「本当にごめん!」

 

「カゲ先輩や寸田先輩も含めて誰もそこまで大きな怪我をしなくて良かったです」

 

「でも流石に今のは怪我はしなくても効きはしたけどな?」

 

影人は先程喰らってしまった理不尽な寸田との激突が不満なのか。少しばかり機嫌が悪くなっていた。

 

「影人君も本当にごめん……」

 

「良いですよ。誰も怪我してないんで」

 

影人は一応許したものの、やはりいつもはあるはずの主人公補正が全く働かず。吹っ飛ばされた上で寸田が上から降って来た形だったために色々と納得できていない。そのためどうしても不機嫌になってしまうのだろう。

 

「それはそうと。あなたがこころの言ってた寸田先輩ですか?」

 

「うん、そうだよ。そちらは紫雨さんのお友達……と、同じ学年で有名な田中姉妹だよね」

 

寸田は確認を取るようにうた達の方を見てそう言うとそれを受けてうた達が早速挨拶をする。

 

「2年の咲良うたです!」

 

「蒼風ななです」

 

「音崎レイです」

 

「3年の田中ぷりんだよ!」

 

「同じく3年の田中めろんです」

 

「俺は3年でダンス部の部長。寸田躍、よろしく!」

 

寸田はクルクルと回りながら自己紹介をする。尚、影人に関しては既に学校中の噂としてこころの彼氏という話が挙がっており。その話を寸田も知っていたために前々から確認を取れていたというのもあって自己紹介は不要だった。

 

それはさておき。まずは前日からの謎。ダンシングスターカップに賭ける寸田の想いから聞く事になった。

 

「あの!どうして寸田先輩はそんなにダンシングスターカップに賭けてるんですか?」

 

「えっ?……ああ、それはうちの爺ちゃん。いや、我が寸田家が」

 

「我が寸田家って……その感じだと先祖代々みたいな古い名家みたいな感じですね、寸田先輩の家というのは……」

 

寸田の言い回しから彼の実家はそこそこ歴史のある名家に通ずる物だと察した影人。そんな寸田家の家系である寸田はまずは実家の話を始める事に。

 

〜回想 寸田家〜

 

そこは寸田家の屋敷とも言える大きな道場のような場所だった。やはり寸田家は先祖代々からの古い家と言うべきなのか。そして、その道場の入り口を入って振り返ると上の方に“回転(すなわち)平和”という文字が家訓として堂々と習字で描かれて飾られている。

 

そんな道場の中。幼い寸田躍は祖父である寸田周と向き合った状態でその話を聞いていた。

 

「躍、しかと聞け。我が寸田家は代々踊りを通じて世界と繋がって来たのじゃ」

 

「うん……でも爺ちゃん。踊りと世界ってどう関係あるの?」

 

そんな幼い頃の躍が疑問を抱くのと同時に庭に存在する“ししおどし”の音が鳴り響く。そして、周が少し考えてから答えを返した。

 

「ふむ……。わしは若い頃。世界中を旅していた。……だが、外国語なんてサッパリ喋れなかったんじゃよ」

 

どうやら周は世界を旅するのが好きな旅人だったらしく。しかし、世界中を旅する上で必要となるはずの外国語が全くできない状態で行ってしまったようで。このままでは意思疎通すらできずに大ピンチ……という時に周を救ったのはダンスであった。

 

「しかし、そんなわしを救ってくれた踊り。それが回転舞踊じゃ!!」

 

周は海外での人間関係に困った時。楽しいと感じた時、ワクワクを感じた時。どんな時でも常に回るという行動を欠かさなかった。たったそれだけで、言葉が通じなかったはずの外国人達も周と一緒になって笑ってくれたのだ。

 

そして、その行為は世界各地。どの場所でも通用し周は世界の人々と仲良くなれたのである。

 

「回れば世界中!どこの国でも!どんな時でも、笑顔になれて!誰とでも友になれた!そして、種族の壁さえも乗り越えた!」

 

しかも周曰く。その効能は他の動物にも届いたらしく。動物達とも仲良くなってしまったそうで。

 

「へぇ……。回るって凄いんだね!」

 

「ダンスは……世界を救う」

 

こうして、躍は祖父の教えを信じてダンスにおける回るという行為は世界を救えるだけの可能性があるのだという気持ちを抱くことができたようだった。

 

〜現在〜

 

「ダンスは世界を救う……」

 

「キラッキランラン〜♪!」

 

そんなわけで寸田の話が終わるとその内容にこころは思わず復唱し、うたは目を輝かせる程に興味を抱く。

 

「確かにダンスは全世界どこでも共通のコンテンツであるからな。言葉が使えなくても通じるかは別だがこれはあながち馬鹿にできないぞ」

 

「ああ。それに周さん程の熟練度になると動物にも通じるとか凄いな」

 

加えて割と現実主義である影人やレイもある程度納得しており、それだけ寸田の話に説得力があった事を示していた。

 

「俺に取って爺ちゃんは最高に憧れる人なんだ!その爺ちゃんがダンスで世界を救うために始めたのが……ダンシングスターカップってわけ」

 

「なるほど。そんな経緯があったのね」

 

「躍のお爺さん!キラキラしてるよ!」

 

「だろ?中学生ラストの今年はどうしても優勝して……ダンシング☆スターの称号が欲しいんだ!」

 

寸田のダンシングスターカップに賭ける想いを聞いた影人達は話が終わるのに合わせて拍手をする事になり、寸田がどれだけ強い気持ちでこの大会に臨んでいるのかというその覚悟を実感する。

 

「そうだったんですね!」

 

「それじゃあさ!皆で応援しよう!」

 

「弾ける笑顔の輝き。やがて星になり、世界を照らし出す。ダンスが世界を救う所。是非見てみたいわ」

 

するとぷりんとめろんは手にそれぞれのメンバーカラーに光るキラキライトを振る形で寸田の目指す目標を応援したいと言い始めた。勿論2人の気持ちにうた達が乗らないわけが無いという事で。

 

「よーし!私も寸田先輩の事を応援します!」

 

「お役に立てるかどうかはわからないけど……」

 

「特訓、全力でお手伝いします!」

 

うた、なな、こころは次々と寸田を応援する事を表明。影人とレイもそれを見て顔を見合わせると最早答えは一つとばかりに自分達もその流れに乗ることに。

 

「俺達もお手伝いしますよ」

 

「こうなったら徹底的にやりましょう」

 

影人達も今回の話に乗る事になり、これで全員が参加を表明。寸田は自分を手伝ってくれるという嬉しさで笑顔になる。

 

「皆ありがとう!頑張るよ!……目指せ!」

 

『ダンシング☆スター!』

 

影人達の気持ちが一つに纏まった……というわけで、早速ダンシングスターカップに向けての放課後特訓が始まった。ただ、当然寸田には普通の部活もあるためそちらがある日はそれを優先する事になる。

 

ちなみに、寸田はこのダンシングスターカップに出て優勝が目標であるために3年の中では部活の引退を先延ばしにしていた。その影響でまだ部長をやっている事になる。

 

そんなわけで。放課後、いつものトレーニング場でダンスのトレーニングが始まる。

 

「まずはストレッチだな。体を動かす上で準備運動が無いと怪我をしやすい」

 

「私が後ろから押しますよ」

 

それから寸田がストレッチを進めているとレイが影人の方へと近寄って話しかけた。

 

「良いのか?影人」

 

「何がだよ」

 

「こころ、寸田先輩の方に行ってるけど」

 

「別に寸田先輩が横取りしたってわけじゃないから良いだろ。流石にそこの分別くらいつくって」

 

レイの揶揄いに影人はあくまで冷静に返す。そんな間にもストレッチは終わり、早速トレーニング開始となる。

 

内容としてはまず寸田が本番で披露するダンスを行い、それをぷりんが持っているトイカメラに記録。そこで良い所やダメな所を見つけてそこを直していくという形だ。

 

「うぉおおおっ」

 

「寸田先輩の回転、改めて見ると凄い」

 

「私達もやってみようよ!」

 

そして、カッコ良く回り続ける寸田に触発されたのか。うたやぷりんが寸田を真似る形でスピンをやってみようとする。

 

「「クルクルクルクル〜!」」

 

「って、あれ……やっぱり目が回るぅうう……」

 

「お星様が見えて来たぁあ……」

 

「うたちゃん!?ぷりんちゃん!?」

 

ただ、案の定2人にとっては長時間回転するだけでも大きな負担になってしまうため……あまり回転する事ができずに目を回してしまう。

 

「こんな事もできるよ」

 

「えっ?」

 

すると今度は寸田が頭を地面に付けて軸にする形でそのままスピンするというブレイクダンスをやってみせた。

 

「おぉ!!」

 

「これがブレイクダンスってやつだ!」

 

「動画とかでは偶に見るけど、生でやってる所は余計に迫力があって凄い」

 

「ダンス部部長の看板は伊達じゃないって事か」

 

そんな風に順調に寸田の練習を進める影人達。ただ、こころはその中で前日にも感じた違和感がまた出て来てしまう。

 

「………」

 

「こころ?もしかして昨日の事か?」

 

「はい……やはり昨日からずっと気になってた事。まだ解決して無さそうで」

 

こころは胸の辺りにモヤモヤとした感情を感じつつ寸田の練習を見守る事になる。

 

それから数日後。ダンシングスターカップを前日に控えた最後の練習日。寸田がある程度踊った所で項垂れるような形で四つん這い状態になってしまう。

 

「寸田先輩!?」

 

「……ダメだ。明日が本番なのに……何かが足りない」

 

どうやら、寸田自身にもモヤモヤとした気持ちがあったようで。今の現状では目標の達成が不可能であると悟ってしまう。

 

「これじゃあ、ダンシング☆スターには届かない!!」

 

「スピードも回転数も凄いですよ!何ならここ数日だけでも上がってます!」

 

「うんうん!」

 

「いっぱい頑張ってるのに……」

 

「ダンシング☆スターの称号というのは、それだけ高き壁という事です。お姉様」

 

うた、なな、ぷりん、めろんも寸田の頑張る姿を見て来ただけに彼が困っているのは見過ごせなかった。ただ、自分達ではどうにかしようにもダンスの知識不足であるために打開策を出す事ができない。

 

「影人、言わなくて良いのか?」

 

「ああ……何となく寸田先輩に足りない部分に想像は付いたけど、俺じゃあそれを補填できるかと言われても無理だ。だからここは任せるよ」

 

レイは影人なら何か浮かんでいると予想して彼に話しかけるが、その影人は思考が追いついてもそれを行動するには自分よりも適任者がいるという事である人物に視線を送る。

 

するとそこには既にこころが寸田へと話しかけるべく近づいており、彼女が項垂れる寸田の前にしゃがむとそっと話しかけた。

 

「……寸田先輩、私とダンスバトルをしませんか?」

 

「ダンスバトル!?」

 

ダンスバトル……それは、競技ダンスに於ける定番。実力のあるダンサーが1対1、若しくは2対2。それ以上の人数だとチームバトルという形で向かい合い、DJがランダムにかける音楽に合わせて即興で踊りを披露。その際の技術や表現力、音楽への理解度を競い合うストリートダンスの競技形式だ。

 

今回の場合、こころと寸田による1対1という状況が成立する事になるだろう。

 

「紫雨さん……どうして」

 

「私は寸田先輩の誘いを断って、アイドルプリキュア研究会を始めました。……だからわかるんです。アイドルプリキュアにあって、今の寸田先輩に無い物が。……それを伝えたいんです!」

 

「こころちゃん……」

 

「でも……」

 

その言葉からこころの気持ちの強さは寸田にもよく伝わって来た。そして、寸田が返事に迷っているとそこに影人がフォローする。

 

「寸田先輩。こころは、先輩の誘いをお断りしたあの日以降もダンスの練習はしっかり励んできました。それに、アイドルプリキュアの研究会をやる中でもしっかり成長してます。寸田先輩に足りない物もきっと補えますよ」

 

「黒霧君……」

 

影人からの説得も聞いた寸田の気持ちが少しずつ変わる中、ここでこころが再度寸田へと頼み込む。

 

「先輩、改めてですがお願いします!」

 

「……わかった」

 

こうして、寸田はこころの提案を受け入れると早速ダンスバトルを開始する事になった。一応練習も兼ねるべくかける曲は本番で使う予定の曲である。

 

それから、早速こころと寸田はダンスバトルを開始。最初に様子見で1〜2回程ラリーをした所でこころはダンスを継続しながら寸田へと問いかける。

 

「ダンスは世界を救うんですよね?」

 

「ああ、その通りだ!」

 

「そのために大事な事は何ですか?」

 

「それはスピン!もっと早く、もっと回る!」

 

「ッ……」

 

寸田はこころの質問に対し、同じくダンスを継続しながら大事な物はスピンであると返す。それを聞いて影人は僅かに反応しかける。やはり寸田には大事な事が見えてない。それこそ、目の前のダンシング☆スターの称号にばかり目が行ってしまっている。

 

そして、影人と同じ事を感じたのか。こころもまた寸田へと答えが違うとばかりに声を上げた。

 

「違います!」

 

「どういう事!?」

 

「スピンの先に何があるんですか?」

 

「スピンの……先」

 

寸田はこころに自分の意見を否定されて最初こそ困惑するが、こころに言われて冷静に考えてみる。

 

「何のためにスピンするんですか!?」

 

「何のためにスピンするのか……」

 

そして、こころから問われたスピンする理由。そこまで行った所でようやく彼は幼い頃に祖父である周から教わった事を思い出す。

 

〜回想〜

 

「どうして回る事で通じ合えるかわかるかな?」

 

「ううん……わからない」

 

「うぬぬぬぬ……ひーっははっ!」

 

周からの問いに対し、幼い頃の寸田はその意味がわからなかった。そのため、周は口で実際に言うよりやってみた方が早いとばかりに自分が回転をやってみせる。

 

「躍、お前もやってみ!」

 

「うん!」

 

周が楽しそうに回転する姿を見た躍は目を輝かせるとその周から促され、彼の回る姿に倣って回ってみる。すると、躍は心の底から楽しさが湧き上がってくると自然と笑顔が浮かんだ。

 

「ッ!あはっ!面白い!」

 

「良い笑顔じゃ。お前が回る事によって、周りの人皆がお前の笑顔を見る事ができる。東西南北全てに笑顔を向ければ、その力は何十倍にもなる!」

 

躍が回転を止めると興奮したように声を上げ、周がそれに合わせて彼の体を抱き上げる。そのままゆっくりとした速度ながらも回りつつ高い高いのような状態となった。

 

「凄い!!」

 

「そして、お前の笑顔で周りの人々も笑顔になり……心が通い合う」

 

周が伝えたかったのは自分の笑顔を周囲に見せる事によってそれを見た人々に笑顔の連鎖を作る事である。幼かった躍はこの時はその全てを理解する事ができなかったが、今ならその意味を本当の意味で理解する事ができるだろう。

 

〜現在〜

 

寸田は祖父から教わった言葉の意味を理解するとそれに従う形で回りながら笑顔を浮かべる。同時にこころは寸田が大事な事を思い出してくれたと微笑む。

 

「ッ!そうか!それは周りの皆に笑顔を見せるため!この笑顔を!」

 

「笑顔の輪が広がり、心が通じる!そしてダンスは……」

 

「「世界を救う!!」

 

こうして2人の気持ちは1つとなり、手を取り合ってからデフォルメの演出として爆発が発生。勿論実際は起きてないのだが、それでも2人は揃ってダンスのシメを飾る事になる。

 

「それです!先輩!」

 

「ありがとう、紫雨さん!」

 

「(こころ、成長したな。前まではアイドルプリキュアから何かを貰う立場だったのに、今はこうして誰かに何かを与える立場になってるんだから)」

 

影人もまた、自分の彼女の成長に微笑ましさを感じつつこの光景をそっと見届けていた。これにより寸田はこころのアドバイスの元、ダンシング☆スターになる上で必要な物を取り戻す事になる。




また次回もお楽しみに。
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