キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ダンシングスターカップで優勝し、ダンシング☆スターの称号を目指してトレーニングに励む寸田とそれを見守る影人達。その中で寸田に足りない物をダンスバトルで教えたこころ。これにより寸田はようやくスッキリとした気持ちになれていた。
「こころ、キラッキランラン〜♪」
「寸田先輩がダンス部にこころちゃんを誘ったのも、納得だね」
うたやなながこころの事を褒める中でレイが影人へと話しかける。それは勿論、今回のこころの活躍の件だ。
「こころ、上手く先輩に足りない部分を教えられたな」
「ああ。多分こころならわかってると思ってた。だから俺もこころに任せる事ができたよ」
「それにしても、ダンスって凄いよな。言葉がわからなくてもただ踊るだけである程度気持ちを相手に伝えられるんだから」
「いや、寸田先輩のお爺さんに関してはちょっと異常のレベルだけどな?動物とかとも意思疎通してたみたいだし」
流石に素人がダンスだけで世界中の人々と完璧に意思疎通して分り合うは無理だと思うが、それでもダンスを通じて笑顔が広がる……くらいなら現実味がある範囲と言える。
何しろ、ダンスというのは古来より世界各地で伝わる伝統的な物。そういう経緯もあって地域ごとでは通用しなくなる言葉とは違い、世界のどこでも通用するという利点があるわけだ。
そんな話はさておき、これで寸田は自分がスピンをする意味を思い出す事になる。
「皆もありがとう。スピンする意味、思い出せた。俺、全力をぶつけてくるよ!」
「先輩、ファイトです!」
「明日、俺達も観に行きますよ!」
そのまま影人達は翌日のダンシングスターカップに観戦しに行く事も表明。こうして、寸田は万全な状態で大会に臨む事に。
「寸田先輩!」
『頑張れ〜っ!!』
最後にだが、うたが掛け声をする形で寸田へのエールを全員で送るとその場は解散してそれぞれ帰宅するのだった。
そして、それから一夜が明けた翌日の土曜日。とうとう迎えたダンシングスターカップ当日。影人達が会場に到着するとそこはもう既に多数の人々で賑わっており、様々な衣装を着た出場者や今回のカップを観に来た人で溢れている。
「わぁ……!盛り上がってるね!」
「皆、衣装が華やかだね!」
「これがダンシングスターカップなんですね!」
「ああ、でも折角ならレイも来てほしかったかな……」
今現在、このダンシングスターカップの会場のある場所に来ていたのは影人、うた、なな、こころの4人にプラスしてうたが襷掛けしているポシェットの中に詰められたプリルン、メロロンの妖精コンビのみ。つまり、昨日いたメンバーの中でレイだけは来れなかったのだ。
「仕方ないよ。レイ君、またいつものように実家の事が原因で拘束されちゃったんだし……」
「だけど、ハジメさんもレイ君の将来や自分の仕事のためとはいえ容赦無しだよね……」
レイとしては応援に行きたい気持ちが強かったものの、自分の父であり社長でもあるハジメに逆らう事はできず。泣く泣く応援に行くのを断念せざるを得なかった。
「ま、俺達にできるのはレイの分まで寸田先輩を応援する事くらいだからな」
「はい!」
「それじゃあそろそろ中に……」
影人達は雑談もこの辺にして観客席のあるホール内に入ろうとそちらに向けての移動を開始する……が、そのタイミングで影人は何かに気がつくとその方を向く。
「って、あれは何だ?」
「「「ん?」」」
影人の言葉に女子3人組もその方を向くとそこにあったのはとあるダンスチームを見てザワザワと騒めく人々であり、その中心にいるのは円陣を組む5人の男子高校生と思われるダンスチームだった。
「おい!あれ、ダンス強豪校!煌星高校の奴等だ!」
「「うん!」」
「「「うん!」」」
その男子高校生は髪色がピンク、青、黄、緑、紫という鮮やかな色合いをしている者ばかりなのに加えて、彼等から発せられる輝きのオーラは凄まじく。その輝きもあって周囲から見てもよく目立っていた。
ピンク髪の青年が2年の星河楽。青髪の青年が同じく2年の夏目颯斗。黄髪の青年が3年で部長の月宮爽々奈。緑髪の青年が3年で副部長の天弦晃雅。紫髪の青年が1年の黒瀬舞人である。
「胸に高鳴れ!俺達のビート!」
「「「「「イェーイ!!」」」」」
恐らく彼らもこのダンシングスターカップに参加するのだと察せられる。尚、高校生という事で部門としては中学生部門である寸田と当たる事は無い……が、来年からは寸田が高校に入るため意識はしておくべき相手だろう。それでも優先順位としては一段下がる事になるだろうが。
「それじゃあ頑張って行こうぜ!」
「「「「おう!」」」」
5人が気合い入れを終えた所で彼等もエントリーやらを済ませるために移動を開始する。そんな5人の様子を影人達は見ていた。
「凄い、もうオーラからしてキラッキランラン……」
「うん、ただ見てるだけなのに圧倒されちゃいそう……」
「確か煌星高校でしたっけ。寸田先輩も前にこの高校の話をされてましたけど、高校ダンス部の界隈では結構有名どころなんですよね」
するとうた達女子3人組が彼等の雰囲気に呆気に取られていると影人もまた何かに気がつく。
「あの5人から発するキラキラのオーラ……なんかアイドルプリキュアのそれに近い気がする」
「うえっ!?そんな事ある!?」
「いや、何となくの直感だよ」
「でもカゲ先輩の直感ですからね……何かしらはきっとあるはずです」
影人は本当にちょっとした直感だったために変にそれを深掘りするつもりは無く。自分の話に食いついてきたうたを捌くのだが、それでも彼等から感じられるキラキラが他の人のキラキラよりも異質なのは察知していた。
「あ、でも強豪校のダンス部ならもっと人数がいそうなのに5人だけというのはちょっと気になるかも」
「ただ、選抜メンバーの線もあり得ますし、決めつけは良くないかもしれませんね」
「そうだな。あの人達も結局この大会には出そうだし、寸田先輩のついでだけど一緒に観るか」
そんな風に煌星高校の面々の話をする影人達。そんな時、その煌星高校の5人の近くにいた男性が振り向く。彼は派手な服装を着ており、頭には髪に混ざる形で動物ようなケモ耳が生えていた。そんな彼は影人達からの目線に気がつくとウインクを送る。
「……ん」
「あの人凄いプリ!」
「派手な衣装メロ……」
するとプリルンはその男性を見て興奮したような声を上げ、逆にメロロンの方は派手な衣装を着た謎の男性に苦手意識を持ったような様子だった。
「あの人……は誰でしょうか?見た所煌星高校の関係者っぽいですけど」
「マネージャーか何か……って言いたい所だけど、あのケモ耳っぽいの。やっぱりそうなのか?」
影人は何となくある予感がしつつも今はそれを気にしても仕方ないと思い、その場を後にする事に。
同時刻、チョッキリ団アジトではバーのエリアにいるジョギが1人でカウンター席に座ってボーッとしていた。そして、そのタイミングでチョッキリーヌが歩いてくる。
「……ジョギ、あんな所で何してるんだい?」
「……はぁ……」
ジョギが1人溜め息を吐くと複雑そうな顔を見せていた。それは、ここ最近ずっと考えているアイドルプリキュアをどうするか問題である。
「アイツらが変な事を思い出させるからこっちも変なことを考えるようになっちゃったじゃないか……」
今のジョギには少しずつ脳内に刷り込まれるように嫌な事を思い出させてくるアイドルプリキュアへの苛立ちを感じると共に、この記憶を過去の物としてさっさと忘れようとする気持ちが湧き上がっていた。
「チッ……ダメだな。変に考える程に記憶が思い出される。なら、発想を逆転させるか」
ジョギはそんな風に考えているとそのタイミングでチョッキリーヌが彼へと話しかけてくる。
「……あーあ、期待の新人も最近は何だかパッとしないね」
「……」
ジョギはこれに対してチョッキリーヌが嫌なタイミングで絡みに来たと感じるが、ひとまずは構う事無くさっさとやろうとした事を始めた。
「りんご……ゴリラ……ラクダ……ダチョウ」
「何をしてるんだい?1人でブツブツと喋って」
「1人しりとりですよ。偶にはボーッとして変な事をするのも良いのかなと」
ジョギがやっているのは1人しりとりだ。よくわからない事を始めたと感じるかもしれないが、実はこれがジョギの狙いである。
嫌な事を忘れようとしてその事を余計に考えてしまうよりは、こうやってよくわからない事をやる事で嫌な記憶を丸ごと抹消しようとしているのである。ただ、アイドルプリキュアを倒さない事にはその場凌ぎでしか無い事には変わりないが……。
「ふーん。……そういう時はウジウジしてないで、体でも動かしてきたらどうだい?」
チョッキリーヌはそんなよくわからない事を始めたジョギを励ますためか、ダンスのターンを決めて見せる。ただ、ジョギ視点だとその動きが下手に見えてしまったのか。
「先輩」
「……ん?」
「ダンス、下手ですね」
ジョギは笑顔でチョッキリーヌのターンを下手だと切って捨ててしまうとそんな事を言われたチョッキリーヌは当然面白くないわけで。
「……はぁ!?折角元気が無さそうなアンタを励ましてやったのに、ホント可愛くない奴だね!」
「で、今日はどっちが行くんですか?せ・ん・ぱ・い?」
ジョギはそんなチョッキリーヌを煽るように問いかけると当然彼女は苛立ってしまうわけで。
「わざわざ煽るように言ってくれて……今日もアタシが行く」
「ふ〜ん、じゃあ先輩、頑張ってきてくださいねー……」
ジョギはチョッキリーヌが行くと言い出したため、自分が行かなくて良いとわかった瞬間に棒読みする形でチョッキリーヌを送り出す。そしてそんな事をやられたチョッキリーヌはイラっとするわけで。
「何だよその棒読みは!もう良い!今日はいつも以上にアンタといると調子狂うからね。さっさと行かせてもらうよ!」
「はいはーい、行ってらっしゃーい」
ジョギは気の抜けた言い方でチョッキリーヌを見送ると彼女は憤慨していなくなってしまう。
「はぁ、やっとあの面倒な人がいなくなった。それにしても、僕がここに来てから数ヶ月くらいであの先輩も色々変わりましたよね。かく言う僕も……」
ジョギはチョッキリーヌが変わった事や自分さえもアイドルプリキュアが原因で変わっている事を実感していた。そして、彼女達と長く関わり過ぎた者の末路を知ってるだけに多少の焦りの気持ちが出てくる。
「アイドルプリキュア、アイツらと関わる者だけで僕達の中の何かが変わっていく。そのせいでカッティーとザックリーはいなくなった。まぁ、ザックリーの方は僕が怪物化させたんだけどね。……ただ、彼女達をこれ以上のさばらせると僕達3人共が危険なのは確か……。早めに手を打っておきたい所だ」
ジョギは自分達の変化を感じ取っているだけにそろそろアイドルプリキュアを潰す手立てを打つ必要があると考えた。
「……なら、私が潰す……」
「スラッシュー様は具体的な手立てが見つかるまでは休んだ方が賢明だと思いますよ」
するとジョギの独り言に続く形でスラッシューがアイドルプリキュアは自分が潰すとばかりに出てくる。ただ、ジョギとしては無策のままスラッシューが出てもまた彼女の記憶を使われた上で調子を崩されて終わるだけという答えが見えていた。そのため、スラッシューの出撃に否定的な声を上げる。
「煩い!今度こそ、今度こそ私が……」
「あのですね、僕としてもスラッシュー様が倒してくれる分には構わないんですよ。……ただ、普通に行っても調子狂わされて終わるだけじゃないですか。そろそろ学習した方が良いですよ」
「ッ……」
スラッシューはジョギの言葉に苛立ったように拳を握り締めるが、彼の言葉が正しいのもまた事実だ。どうにかアイドルプリキュアからの声かけを防ぎ、自分の中の記憶が変に作用しない状況を作らないといけない。
「わかってるわ。でも、アイドルプリキュアと接さずにどうやってアイツらを倒せば……」
「それこそダークランダーを強くするとか?……何か方法を見つけられれば良いんすけどね」
ジョギがそんな風に例を挙げてみるとスラッシューはそれを聞いてジョギの方を改めて向く。
「ならば、ジョギ」
「はい?」
「ダークランダーの強化案を考える事を任せるわ。私はまた体調を整える。アイドルプリキュアを倒すまで、世界を真っ暗闇に染めるまで……私達は止まるわけにはいかないの」
「はいはい」
スラッシューがそう言ってその場からいなくなる中、正直な所ジョギは溜め息を吐きたかった。スラッシューの異変は日に日に大きくなっている。それこそもう下手に前線に出せないくらいには……だ。
前にアドバイスとして投げたアイドルプリキュアと話をしない案も恐らく彼女達の前ではほぼ無意味だろう。何しろアイドルプリキュアは自分達がらどれだけ突っぱねてもちゃんと向き合ってくれるまで説得しようとしてくるのだから。
「(ホント、ああいうのが1番ウザいって何でわからないかな。他人には踏み込まれたく無い領域だってあるのにさ)」
ジョギはアイドルプリキュアへの苛立ちを募らせながらもスラッシューからの命令を無碍にはできないため、ひとまずは彼女からやるように言われたダークランダーの強化案を考えてみるのだった。
また次回もお楽しみに。