キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ダンシングスターカップ当日。影人達は先輩である寸田の活躍する場面を見届けるために大会の会場に入っており、席に座っていた。
そして、大会が始まる時を今か今かと待ち侘びており……会場の空気感もあって緊張感が浮かび上がってくる。
「うう……こっちも緊張してきた!」
「うん、もしかするとピアノの発表と同じくらいかも……」
「今日は寸田先輩の晴れ舞台だ。上手く練習通りの力を発揮できれば……」
「もうすぐ始まりますよ」
影人達は寸田が最高のパフォーマンスが披露できる事を願い、開会の時を待つ中でとうとうその瞬間が来た。そして、同時に演出として一時的に電気が消える。
『皆さん、お待たせしました!ダンシングスターカップ、いよいよ開幕です!まずは中学生部門、選手入場!』
そして、ステージ付近の照明が灯ると早速司会の男性がその場を仕切る形で声を上げた。同時にステージの奥の画面には“ダンシングスターカップ”と“中学生部門”が浮かび上がり、それに合わせる形で“中学生部門”と書かれたプラカードを持ったスタッフに続く形で選手が入場してくる。
そのダンスチームは多彩であり、チアガールのチームに少年達のチーム。普通の女子達のダンスチームに背中に翼を生やし、派手な服を着たソロのダンサーもいた。勿論、中には影人達の目的である寸田もいる。
「こうして見ると沢山のダンスチームがいますね」
「うん、個人も団体も纏めて中学生部門って感じだったから尚更そう感じるのかも……」
「凄く派手な服を着た人もいるのメロ」
「プリ!寸田先輩は……いたプリ!」
影人達は早速寸田を見つけると少し緊張した面持ちで歩いており、この大会に賭けているからこそ緊張感も凄いのだろう。
「寸田先輩、まずは笑顔を魅せる事が大事ですよ……。緊張感に負けないように……」
影人達は今の時点では緊張している寸田が本番ではダンスを楽しんでやれる事を祈るように見ていたのだが……ここで思わぬアクシデントが起きてしまう。
「イェーイ!」
「あっ……」
「ッ!?あれっ!?俺のキャップは……」
派手な衣装を着た少年が観客席へのアピールとばかりに両腕を挙げた瞬間。その片方の腕が丁度唾が後ろ向きになって被っていた寸田の帽子に命中。そのまま彼のキャップは押し上げられて飛ばされてしまう。
「ヤバいな……」
「えっ?」
観客席からこの様子を見ていた影人がこの状況の不味さに気がつくとその事に気がついてないこころが影人の方を向く。そして、影人のその言葉通りに寸田は焦ってしまっていた。何しろ、キャップが無いという事は寸田お得意のヘッドスピンができなくなってしまう事を意味する。
何しろヘッドスピンをやるには頭を地面に付けないといけない。だから帽子は頭皮へのダメージを防ぐ上で絶対にいる。ただ、キャップを悪気が無いとはいえ飛ばされてしまった以上はそれを探し出さないといけないのだが……。
「寸田先輩は今下手に動けない。入場者の中にいるから動いたら目立ってしまう」
「そんな、どうすれば……」
「じゃあ、プリルン達が……」
「ダメだ。お前らが見つかったら絶対にそれどころじゃなくなるし、多分あの状況で行ったら見つかる」
それならばとプリルンとメロロンがキャップをさりげなく取って寸田に渡せれば良いと2人が提案するが、影人はリスクの大きさからそれを却下。
そして、寸田の方も動けないなりに慌てた様子でキョロキョロと周りにキャップが落ちてないかを探し始める。
「(ヤバい、早く見つけないと。もう戻る時間になっちゃう……)」
寸田は競技のためにステージから戻るまでの間で急いで探すが、探し物というのはこういう時に限って見つからない物である。
そんな風に寸田がキャップを探しつつ焦っていたのとほぼ同時刻。ジョギに送り出されて来たチョッキリーヌの方は何故かダンシングスターカップの行われている会場の上空に姿を現した。
すると、彼女は先程ジョギに出かけ際にやったダンスを揶揄われたからか苛立ったような声を上げる。
「このチョッキリーヌ様に向かってダンスが下手だとか!しかも何だい、あんな適当な送り出し!あー!思い出しただけでイライラしてくるよ!!」
チョッキリーヌは折角ジョギの事を励まそうとしたのに結局はいつものように軽くあしらわれてしまったのが余程悔しいようである。尚、ジョギ視点からするとチョッキリーヌに励まされる事自体が余計な事に当たるため彼が塩対応をする気持ちは分からなくもないのだが。
それはさておくとして、チョッキリーヌがこの場所を選んだのには理由があった。
「く、こうなったら上手い奴のダンスを見て学んでやるよ!そんでもって帰ったら上手くなった私を見せてギャフンと言わせてやる!それに、ここなら真っ暗闇も沢山ありそうだからね」
チョッキリーヌはここでダンスの大会……ダンシングスターカップが行われる事を知っており、その大会にはダンスが上手い人間が集まる事もわかっていた。
そこでならダンスの上手い人間を見られる上に人が集まるが故に真っ暗闇も取り放題。正に一石二鳥な戦略である。
「さてと、早速中に入らせてもらうよ」
チョッキリーヌは再度建物の中……ホール内のステージが上から見下ろせる照明器具付近の位置に出てくると真っ暗闇を探す。
「真っ暗闇真っ暗闇……あっ」
チョッキリーヌはいつの間にかここに来た理由がダンスから真っ暗闇の方にすり替わるとその真っ暗闇を見つけようとする。そして、丁度そのタイミングで丁度良く真っ暗闇を持つ者……寸田を発見した。
「やはり私はツイてるねぇ。丁度良い真っ暗闇があるじゃないか」
チョッキリーヌは闇を放出している寸田にターゲットを決めると早速彼の胸に秘めた闇を抜き取るために呪文を言いつつ指を鳴らす。
「お前の闇を見せてみな」
「ああああっ!?」
その瞬間、寸田の胸から黒いリボンが生成。それは彼の心の闇を示していた。
同時に寸田が叫ぶ様子は周りからもよく見えるために影人達がそれを確認する。
「「「ああっ!?」」」
「なっ!?」
そして、影人達が驚いている間にもチョッキリーヌが召喚の儀式を止める事は無い。
「チョッキリ呑まれてしまえ!」
チョッキリーヌがそう言いながらポーズを決めると黒いリボンが解かれて寸田が闇の中へ。そのままチョッキリーヌは水晶と闇の球体を合わせて地面に叩きつける。
「さぁ来な!ダークランダー!」
「ダーク、ランダー!」
これにより、召喚されたダークランダー。今回の個体は寸田が被っていたキャップをモチーフにしているようだった。同時にステージ上にいきなりダークランダーが出現した事でその場は大混乱に陥ってしまう。
「寸田先輩が……」
「助けないと!」
「またこのパターンかよ。アイツら良い加減にしろって!」
観客席やステージ上にいた人々が急いでその場から避難するために逃げ惑う中、影人達はそれを見やりつつ人がいなくなるのをひたすら待つ。幾らダークランダーの中に囚われた寸田を助けるためとはいえ、変身の瞬間を見られるわけにはいかないからだ。
「うわ!?何だあれ……」
「一体、何が起きてるんだ……」
「ッ、だけどこれだけはわかる。……皆を呼びに行くよ」
「ああ!」
一方その頃、ステージ袖の方からこの様子を見ていた煌星高校のダンス部である楽と颯斗の2人は怪物の出現に驚きつつもこの状況には慣れてるのか割と冷静な様子で頷き合う。そして、何故か他のダンス部のメンバーを呼びに行く形でその場から離脱する。
「良し、俺達以外は全員避難したな」
「早く寸田先輩を……」
影人達他の観客達が全員いなくなったのを見計らってステージへと移動。ダークランダーの方も影人達の姿を認識してその方向を向く。
「ンダ?」
「寸田先輩の大事な大会を邪魔しないで!皆さん、行きましょう!」
今日は珍しくこころが仕切る形でそう言うと全員がそれに頷き、早速プリキュアへの変身を開始する。
「「「「「「プリキュア!ライトアップ!」」」」」」
「「「キラキラ!ドレスチェンジ!」」」
「「キラキラ!ショータイム!」」
「キラキラ!ソウルリンク!」
「「「「「「YEAH♪」」」」」」
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」
「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」
「キミと輝く、ハートの鼓動!繋がる魂、キュアソウルビート!」
「「「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」」」
こうして、アイドルプリキュアの六人は変身を完了。最後にチーム名を名乗り終わって降り立つと同時にキッスが早速投げキッスを使用。
「お願い、チュッ!ハートガーデン!」
これによりハートガーデンを展開するとダークランダーごと自分達をその中に移動させる。
そして当然ながら、中にはダークランダーの使役者であるチョッキリーヌも一緒に移動する。そのため、チョッキリーヌはプリキュアへと声をかけた。
「本当に忌々しいね!こんな所にまでいるんじゃないよ!」
「それはこっちの台詞だっつーの!お前らチョッキリ団は俺達の参加するイベントとかに悉く現れないと気が済まないのか?」
「ソウルビート、ちょっとそれはメタ発言じゃないかしら……」
そんな疑惑の発言はさておき、どちらにせよチョッキリーヌから見てアイドルプリキュアが邪魔だという事は変わらない。
「もう良いわ。アンタ達がいるとスラッシューのおかしくなる現象も落ち着かないし今回こそ終わりにしてやるよ!ダークランダー!」
「ダ、ダ、ダ、ダ、ダークランダー!!」
すると今回はダンサーが素体だからか。リズムに乗るような掛け声を上げつつ跳び上がると蹴りを振り下ろしてくる。
「「「「「「ッ!」」」」」」
対して6人はそれをジャンプでしっかりと回避。アイドルプリキュア側で最初に飛び出したのはこれまた珍しくキュンキュンである。
「寸田先輩を返して!」
「ンダ!?」
キュンキュンからの蹴りはダークランダーに命中するとその体を吹き飛ばす。ただし、繰り返すようだが今回の素体はダンス部部長の寸田だ。そのため、素体としての身体能力は高く。
吹き飛ばされたのを利用して両手を地面に着ける形で吹き飛ばされた勢いをしっかり逃すとそのまま両手でジャンプする形で立て直して着地した。
「ダーク、ラン、ダー!」
「ふん!そんな攻撃じゃ効かないよ!行け、ダークランダー!」
「ダダダダ、ダークランダー!」
ダークランダーはチョッキリーヌからの指示を受けると突如として両腕を広げた状態で駒のように回転を開始。その回転スピードはこれまでのダークランダーとは別格の速さだった。
「あれは……」
「寸田先輩のスピン!」
「また回転する系の敵か!そろそろ対戦するのも飽きて来たんだが?」
また今回のダークランダーもスピン攻撃を仕掛けてくるという事で、ソウルビートは良い加減その手の相手とは戦い飽きたと言わんばかりである。……ただし、その回転速度は今までのダークランダーとは別格な事もあってその回転が周囲の空気を無理矢理動かすと竜巻の周辺のように風が駆け抜けていく、
「「「「「ッ……」」」」」
「このダークランダーが今までの回転するダークランダーと同じだと思ったら大間違いだよ!」
「確かに、回転スピードで考えたらいつもより速いか……」
プリキュア達はダークランダーが巻き起こす竜巻級の風を受けてその場に踏み留まるのが精一杯になってしまう。唯一ソウルビートはどうにか動けるが、それでも下手に動けばたちまちこの竜巻の餌食だろう。
「それでも……私達は寸田先輩を助けるんです!」
キュンキュンはどうにか状況を打破するために跳び上がるとブローチをタッチする。ただ、それを見たソウルビートはキュンキュンが焦って動いてしまったと感じて声を上げる。
「キュンキュン待て!闇雲にやっても……」
「キュンキュンレーザー!」
ただ、焦っているキュンキュンにソウルビートの声は届かず。キュンキュンレーザーを放ってしまう。
「ダ!ダ!ダ!ダ!」
その瞬間、ソウルビートの感じた嫌な予感が現実になってしまうようにキュンキュンレーザーはダークランダーの起こす回転を前に弾き飛ばされてしまう。
「ッ!?そんな……」
「って、うわあっ!」
そして、更に運の悪い事に。弾かれたキュンキュンレーザーは流れ弾となって他の5人の元に飛んで行ってしまう。
「ッ!しまった!!」
「そんなのあり!?」
キュンキュンは自分のミスで仲間に迷惑をかけたと感じるとその間にソウルビート達は攻撃を回避しつつキュンキュンへの声をかける。
「今は気にするより切り替えてくれ!ダークランダーの弱点を探す!」
「弱点……でも、そんなの何処にも……」
ソウルビートに言われてダークランダーの弱点を探すプリキュアだが、そんな物は何処にも存在しない。強いて言うなら前みたいに足元を狙うくらいだろうが……。
「そうだ、ソウルビートアトラクトで足元を狙えば……」
「いや、多分無理だ。確かに足元なら転ばせられるかもだけど、ここまでで何度かその手は使ってるし、流石に対策してくるはず」
ただ、足元を狙う以外にダークランダーの弱点は無さそうに思われた。そして、プリキュアが苦戦してるとなるとチョッキリーヌも上機嫌で声を上げる。
「どうだい?お前達にこの高速回転は止められないだろう?良い加減諦めるんだよ!!」
「ッ……どうにかして、回転を止めないと……」
ウインクはそう呟くが、やはりダークランダーの弱点は見つからない。果たして、アイドルプリキュアはダークランダーに勝つことができるのだろうか……。
同時刻、ハートガーデンの外側。そこでは煌星高校のダンス部の5人がステージ付近に集まっていた。
「ここに怪物がいたんだよな?」
「ああ、俺達が見たんだから間違いない」
「それじゃあ、ささっと倒そうぜ」
「俺達にとっても大事な大会だしな」
「皆、行くぞ!」
「「「「「レッツ、ダンスハイ!」」」」」
そして、5人は左腕に着けたブレスレットを天に掲げるとその光に包まれる事になるのだった。
また次回もお楽しみに。