キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
それではどうぞ!
影人達がダンシングスターカップの方に寸田の応援のために行っていた裏側。黒霧家の夢乃の部屋では夢乃と彼女のマネージャーこと姫野がいた。
その理由は単純。いつものドリーム・アイとしての配信をやるためである。ただ、今の時間はお昼前後なので配信をやる時間としてはかなり珍しいが。
「実は、話も一区切りした所で今日はお知らせがあるんだよね〜」
そんな中、配信の途中で夢乃は視聴者に向けてのある発表をする事にした。それは勿論、完成をもうすぐに控えたコラボレーションアカペラの件である。
この辺はレイや田中達と話をして解禁の許可を得たために今回の配信で伝える事にしたのだ。そして、夢乃のこの配信に合わせてアイドルプリキュア側も公式のホームページの方のお知らせ欄にて発表がされている。
「この度、私はあの巷で有名なアイドルプリキュアさんとアカペラのカバー曲を歌う事になったんだ。あ、早速皆驚いてるね」
すると夢乃の発表に合わせる形で高速でチャットの欄が流れ始めていた。そのメッセージの大半はドリーム・アイがアイドルプリキュアとアカペラをやる事に対する驚きや祝福の声だった。
「ん〜?私が適当を話してる〜?じゃあ、アイドルプリキュア側のホームページを見てみてよ。そろそろ更新されてる頃だからさ」
また、コラボ先が大きなアイドル過ぎて流石にそれは無いのではないかと勘繰る者もいたのか。この話に否定的なメッセージも流れてくる。そのため、夢乃はいつもののらりくらりした話し方でしっかりその否定的なメッセージを論破。
ついでに言えばこの時点でアイドルプリキュア側も同じ発表を済ませている。それを受けてメッセージ欄は少しずつ事実を知ったファン達の影響で否定的な意見はどんどん消えていく事に。
「この感じだとアイドルプリキュアさん側の方の発表を見てきたかな?ま……私の話が嘘じゃない事、わかってくれた?」
すると配信のチャットの方はコラボへの期待感やドリーム・アイの声や歌が可愛い事。最近歌が上手くなっている理由に納得がいったなどの好意的なメッセージが溢れるように流れていく。
「一応配信の方はアイドルプリキュアさんの方のチャンネルに挙がる予定だがらアイドルプリキュアさんの方のホームページの方をチェックしてね。皆が驚くような歌のハーモニーを見せるから」
夢乃はそう言って視聴者にコラボとしての配信を楽しみにするように伝えると視聴者達は興奮したように嬉しそうな声が溢れ出す。
「……今日の夢も楽しんでもらえたかな?それじゃあ、また次の夢の中でも会おうね〜」
それから、夢乃はもう少しだけメッセージに対しての返事を続けてからドリーム・アイとしての今回の配信を終えるべく最後の言葉を言うことに。そのままの流れで配信は切られ、画面が暗くなった。
「ふぅ……今日も無事に終わった」
「夢乃さん、お疲れ様です」
「姫野さん、こちらこそいつもありがとうございます。姫野さんがいてくださるお陰で私も配信を安心してできてますよ」
それから早速反省会や夢乃のメンタルケアの方が始まる。すると夢乃は僅かに考えてから前々から話として挙がっている新たな夢に関しての話をする事にした。
「姫野さん……私は、自分のやりたい事をするべきなんですよね」
「ええ。影人さんも他の皆さんもそれを望むはずです」
それを聞いて夢乃は少しだけ無言になってしまう。それから懸念を話すように喋り始める。
「私、2つの事を同時に進めるのは無理なのかなって思うようになってきて」
「!!2つの事というのは……」
「はい。……ドリーム・アイも、私が新しくやりたいと思った事も両方とも……」
すると姫野はどう返せば良いか迷って少しだけ考える。マネージャーとして、姫野としては夢乃のやりたい事は全部やらせてあげたい。ただ、2つの夢を同時に追う……内容にもよるが、それがどれだけ厳しいものかわからない彼女では無い。
「夢乃さん、2つの夢を追うという事がどれだけ厳しいか……その事はちゃんと理解してますか?」
「……わかってます。私が言ってる事を実際にやれるなんて思うのは傲慢だって。……でも、そのくらいどっちもやりたい気持ちが強くて。どちらか片方を捨てたくなくて」
夢乃の気持ちに対し、姫野はその感情を何となく理解できていた。姫野にだって今の仕事と田中への恋する気持ち。どちらか片方を捨てろと言われてそう易々と捨てられるものでは無い。それと同じ選択を夢乃は迫られている。
しかも配信のために鍛えられた影響で周りと比べて大人びているとはいえ、夢乃はまだ小学生だ。本来なら自分のの抱いた夢を純粋な気持ちで追いかけられる年齢なのである。
「(こうなると夢乃さん1人でこれを考えるのはやはり無理があるのでしょうか……)」
姫野は夢乃の気持ちを確認した上でどうするのが正解なのかわからずに悩んでしまう。そして、そんな姫野の様子を見た夢乃は彼女を困らせていると感じ取るとどうにか安心させるために取り繕おうとした。
「ッ……姫野さん、ご迷惑をかけてすみません……。やはり2つ同時なんて無茶が過ぎますよね……。私みたいな奴がそんな事言っても周りを困らせるだけ。またよくよく考えてみます」
「夢乃さん、……どうしてそんなに気を使うんですか。そんな事言い出したら私だって……夢乃さんに気を使わせてばかりで情けないですよ」
姫野は夢乃へと言葉を返してからまずは夢乃の側に寄り添う事にした。本来こういう役割を担うのは兄の影人……なのだが、今影人はこの場にいない。両親もそれぞれ仕事でいないのに加えていたとしても悩みを全く相談してないため今の夢乃の側に寄り添うのは不可能だ。
「夢乃さんは……そのやりたい2つの夢を追いかけて、両方叶えたいんですか?」
「はい……。配信者としても、新しく見つけた夢としても……どっちもやりたいです」
「……ひとまず、この事をレイさんのお父さん……ウチの社長に話す事はできますか?」
「えっ……」
夢乃はそれを言われて僅かに混乱する。ただ、少し冷静に考えるとそれは当たり前だという事実に思い至った。
「そう……なりますよね」
「はい……。今の夢乃さんはサウンドプロダクションに所属するタレントです。なので、サウンドプロダクション関連の事と別の事をする際にはどうしても相談の必要があるので……」
姫野は正直この事をハジメに報告するのは気が引けてしまっている。もし仮に夢乃がサウンドプロダクションを辞めるなんて事態になればハジメは無理にでも引き止めようとするだろう。
そのくらいハジメとしては配信者としての夢乃の才能を買っている。だが、そこに夢乃の意思が無ければ2人の関係は冷え込むだろうしハジメのせいで純粋な夢の心が深く傷つくかもしれない。
「……もし夢乃さんがウチの事務所を抜けて、早乙女まりあさんでしたっけ。その方の元に行くのでしたら私が全力で社長から守ります。ですが、仮にそうなったとしても社長への報告義務がある以上……彼との対面は避けられません」
「わかってます……。これは、私1人が勝手に決断して勝手に実行できる事では無い事くらい……」
2人の間に重い空気が流れる中、姫野の方のスマホにメッセージが届いた。そこに表示された名前は、この日影人達の中で唯一寸田の大会を観に行けなかった男……音崎レイである。
「レイさん……」
それから姫野は早速スマホを開くとその文章に目を通す。ただ、その文を夢乃に伝えるのは少し申し訳ない気持ちだった。
「姫野さん……もしかして」
「はい……ハジメさん……社長が来てほしいと言われてるそうです」
このタイミングでのハジメからの呼び出し。彼の事なので夢乃の悩みと無関係な事で呼び出されたなんて考えは捨てた方が良いだろう。
恐らく、ハジメも夢乃の配信を観るなり何なりして彼女の不調に気がついてしまったと考えるのが自然だ。
「勿論断る事もできますよ。理由を付ければ何とか……」
「……いえ、私は行きます」
姫野はどうにか今の夢乃をハジメと会わせない方向で動こうとしていた。まだ夢乃の心は迷っている。そのため、今夢乃をハジメと対面なんてさせたら下手をするとハジメが夢乃の心を容赦無くへし折ってしまう危険さえあるわけで。
夢乃を影人達から預かっている姫野の身からすれば彼女の安全を考えるのは何も間違ってはない。
「宜しいんですか?恐らく社長は……」
「……それでも行きますよ。逃げてばかりじゃ、私は何も変われません。それに、いつかは言わないといけない事です。……ですので今から行きましょう」
夢乃はそう言って自分を無理矢理納得させると姫野と共に早速サウンドプロダクションへと向かう事になる。
一方、そのサウンドプロダクションの方ではハジメの都合で振り回されていたレイがハジメへと睨むような目を向けていた。
「社長……どうして無理矢理引っ張り出すんですか」
「どうして?……答えなんてわかりきってるのにその質問をするのかい?」
「夢乃ちゃんはまだ小学生ですよ。やりたい事が出来たのならそれを尊重してやるべきではないんですか」
レイは夢乃の気持ちを踏み躙ろうとしているハジメへの怒りからつい口調が荒くなってしまう。恐らく、まだ夢乃ではハジメから突きつけられる残酷な言葉に耐える事ができない。
下手したら夢乃がやりたいと言い出した事を無理矢理捩じ伏せる危険もある。
「この会社に利益があるのならね。……でも、彼女がそちらに気持ちが向いてしまったら恐らくこの事務所を辞める事になるだろう。……まだ彼女はうちに必要な人材だ」
「ッ……それで夢乃ちゃんの心を壊してしまったら意味が無いだろ!」
レイはハジメへと今からでも夢乃を呼ぶのを止めるように言うが、レイの言葉は当然のようにハジメには届かない。
「この程度で壊してしまう気持ちなら、彼女のやりたい事というのもその程度だったって事じゃないのかな」
ハジメは冷酷にもそう言って切り捨ててしまう。最早ハジメを止める事なんて誰にもできなかった。
「ッ……夢乃ちゃんの気持ちをメチャクチャにするような無茶な事だけは言わないでくださいよ」
レイはもうこうなった以上、ハジメの事を止めるのは無理だと判断。せめて夢乃の気持ちは尊重するように釘を刺す。
「(くっ……寸田先輩の大会を観に行けなかっただけでも申し訳ないのに、ここで親父が余計な事を言って夢乃ちゃんの心を壊しでもしたら……影人になんて言って謝ればいいんだよ……)」
レイは正直、この時点でかなり胃が痛い状態だった。昨日の時点で行くと言っておきながら今日になっていきなり行けなくなったという事を伝えるだけでも気不味い事なのに、もし帰ってきた影人が心の壊れた夢乃を見たら何をしでかすかわかったものじゃない。
せめて平穏に終わってほしいと考えつつ自分には成り行きを見守るしか無いと感じるのだった。
それから少しして。連絡に対して行くという回答が返ってくると夢乃が事務所の受付を通過。レイやハジメのいる応接室の部屋にノックをしてきた。
「黒霧影人の妹、黒霧夢乃です」
「入りたまえ」
「……失礼します」
それから夢乃は緊張した顔つきで部屋の戸を開けて中に入ってくる。勿論後ろには彼女のマネージャー兼付き添いとしてきた姫野が立っていた。
「まずはよく来てくれたね。ささ、立ち話をするのも疲れるだろう。まずは座りたまえ」
「はい、失礼します……」
夢乃はハジメからの話に緊張感を感じつつも座る。その丁寧な所作にハジメは笑みを浮かべた。
「やはり君は普通の小学生と比べるとこういう場での立ち回りが上手い。影人君の教えの賜物だね」
「はい……え、えと。それで私に用事というのは……」
夢乃はいきなり褒められた事に困惑しつつも単刀直入に自分を呼んだ理由について聞くことに。一応本人も何となく想像はしているが、それが正しいかどうかの擦り合わせも必要だからである。
「君の予想している通り、君が新しく始めたい事についての相談だよ」
「ッ……」
夢乃はハジメからそう言われて肩を強張らせる。そして、改めてハジメの事をしっかりと見た。その様子にレイや姫野は不安そうな顔を夢乃へと向ける。まだ彼女は覚悟を決め切れていない。その状況ではハジメの言葉に無理矢理押さえつけられてしまう。そういう考えが浮かんでいた。
「すぅ……ふぅ……はい。ハジメさんの仰る通り、私には新しく夢ができました」
「ほう。随分と素直だね。君の事だから私の前でも見栄を張ると思ったけど」
夢乃はハジメからの威圧に対し、一度深呼吸して気持ちを落ち着けるとあくまで冷静に話す。
「どちらにしても社長にはお話ししないといけない事です。誤魔化しても問題が先送りになるだけかなと」
「そうか。それならこちらも話が早くて助かる。……それで、君は新しく何がやりたいんだい?」
ハジメからの単刀直入な質問に対してレイや姫野は夢乃の方をチラッと見る。すると夢乃は覚悟を決めたような顔を見せるとずっと姫野を除いて(ただし、盗み聞きしてしまった影人は除く)誰にも言っていなかった自分の夢を話す事にした。
「私がやりたいと思った新しい夢。……それは、ファッションモデルです」
「………」
そして、それはハジメが望む内容では無い。何しろファッションモデルになるにはそれ専門の事務所に所属する必要がある。少なくとも、サウンドプロダクションにVtuber配信者とファッションモデルを両立できるような部署は無い。
「(夢乃ちゃんがファッションモデルか……なるほど、どうりでこの前のコスプレファッションコンテストやハロウィンでのコスプレに色々拘ったわけだ)」
レイも夢乃のファッションモデルという夢に意外そうな顔を見せつつもそれを目指す事に対して納得はできるような感じであった。
「(後は親父の反応だけど……)」
ハジメは夢乃からの答えを聞いて考え込むような仕草を見せる。少なくとも、彼が許容できる話では無いのは間違いない。ハジメはどう対応するかを考え終わると夢乃へと自分の意見を言うのだった。
また次回もお楽しみに。