キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
夢乃が自身の夢を周りに話をした翌日、影人達ははなみちタウンの出張所に来ていた。勿論そこにいるのはアカペラをやるためのメンバーである影人、うた、なな、こころ、ぷりん、めろん、夢乃の7人に総監督としてレイにマネージャーズの田中、姫野。サポート役にカッティン、ザックリン。
そしてアカペラ講師の山上、環木、仙石、南の4人という錚々たるメンバーである。
彼等はアカペラ練習もいよいよ大詰めという事でこうやって全員が揃う日を狙って練習する日を作ったのだ。
『誰もが目を奪われてく♪究極のアイドル!♪金輪際現れない♪一番星の生まれ変わり!♪Ah〜!♪その笑顔で♪愛してるで♪誰も彼も虜にしていく♪その瞳が♪その言葉が♪嘘でもそれは完全な愛!♪』
そして、出張所の中では丁度全体での通しが一通り終了。それから講師陣の中での話し合いが進むとその間だけちょっとした休み時間になっていた。
「ふぅ。私達、どんどん上手くなってますね!」
「うん!」
「少なくとも、最初と比べたらかなり進歩したと思いますよ」
なな、こころ、夢乃が自分達の成長を実感する中でうたやぷりんはこのままイケイケドンドンと言わんばかりにテンションが上がっていく。
「アカペラ、凄く楽しい!」
「うん!私達がリアルタイムで上手くなってるのが感じられるのって良いよね!」
「はぁ、あんまり調子に乗って初歩的なミスはやるなよ?お二人さん」
「だけど、私達は着実に上手くなれてる。それはとても喜ばしい事よ」
影人達がそんな風に嬉しさを噛み締めているとそこに話し合いを終えた山上が戻ってきた。
「皆、集合してくれ」
『はい!』
山上の声かけに応じる形で集まる7人。それから早速山上は今回のアカペラの出来について話を始めた。
「まず今のアカペラはとても良かったよ。少なくとも、安定的に良い質を出せるようになったし、尚且つプロの舞台で他人様に見せても問題無いくらいのレベルに到達した」
「本当ですか!?」
「やったぁ!!」
影人達は講師達である山上達が自分達のアカペラを認めてくれた事に嬉しさを噛み締める。流石にプロであるParabolaレベルには遠く及ばないだろうが、アカペラの大会の予選くらいは突破できるレベルには達したというくらいだろう。
「そういう事で俺からも連絡。山上さん達からのゴーサインが降りたから、このまま今日中に収録までやっちゃうよ」
『えっ!?』
山上からの話に続ける形でレイが7人へとそう告げると一同は驚いたような顔つきを見せる。つまり、この日の内にさっさとアカペラの録音をやってしまうとの事だった。
「じゃあもこのままここを使って……」
「そうそう。お前ら1人ずつで収録をする」
「そっか、収録は1人ずつしかできないものね」
幸いな事に前々からこの出張所の一室はレコーディングができる収録スタジオを完備している。今話し合っている間にもここにいるレイと講師達以外……マネージャーズとサポート要員はレコーディングスタジオを準備してくれていた。
そして、7人も人数がいるために収録もそこそこ時間がかかる。そんなわけで今回は少し早めの時間だがもう収録を開始するという流れが決定したのだ。
「うう、緊張する……」
「大丈夫だよ、夢乃ちゃん。私達がついてるからね」
「そうそう!楽しんで歌えば夢乃ならきっとできるよ!」
夢乃は今回のようなCDなどに使うようなレコーディング収録自体は初めてである。勿論ドリーム・アイとして人前で歌うなんて事は今まで幾らでもやってきていた。だから不特定多数の人を相手に歌を聴かせる事自体にはある程度慣れてはいる。それでもやはり初めてのことになると緊張はしてしまうわけだが。
「じゃ。そういう事だから早めに行かないと時間も勿体無いし、始めるぞ」
「はーい!」
それから一同は収録用のレコーディングスタジオへと移動。そのままアイドルプリキュアの6人はプリキュアへと変身。
一応今回の楽曲もアイドルプリキュアの曲として出すためにこれは当然の流れと言える。
「そういえば、収録は個別なのに何で全体練習をこんなにもしたんだろ」
「多分リズム感覚とかを刷り込むためじゃないのか?だってほら。1人ずつ収録をやるって事は周りで一緒にやってくれる人達がいないせいで1人でその感覚を掴まないといけないんだぞ」
「あっ、そっか。周りに音が無い状態。しかも全員の呼吸をピッタリ合わせないとアカペラが完成しないですもんね」
そう、そしてこのアカペラを収録する作業こそが今回のアカペラ活動をする中でかなり大変な山場となり得る。何しろ、本来であればアカペラをやる際は周りに一緒に声を出してくれる仲間がいるのだ。
その中で一緒に出すからこそリアルタイムでお互いの音をキャッチしながら自分の音を微調整するという芸当が可能になる。……しかし、個別でしか収録できないこのスタジオでの収録ではそうも行かない。
一応原曲の音源や既に収録を済ませたパートの音を上乗せした音として流す事はやるが、それはつまり周りの音が無い状態で自分の音を完璧に出力しないといけなくなる。
「刷り込みってそういう事か……」
「キッス、まずはボイパから録る。次がベースの影人。まずはここで元となるリズムを作っておきたい」
「わかったわ」
「その次がリードか?」
「そうなるかな。リードを収録しておけばコーラス隊がそれを基準にできる」
やる順番が決まった所で早速収録を開始。まずはボイパのキッスからだ。そして、この収録において彼女が担う役割はやはり大きい。このリズム次第でこれから録る全てが決まるのである。
「キッス、本番前に原曲の音ありと音無しで二回練習してもらう。本番はその二つの内のやりやすい方を選ぶ感じで」
「そうね。それでお願いするわ」
そんなわけで早速収録を開始するキッス。その間収録をしないメンバーは待ち時間になるが、当然のように収録中の様子を見ることになった。
「それにしてもキッスって凄い事をやってるよね」
「あのボイパの事?」
「うん」
キッスがボイパを当たり前のようにやる中、改めて彼女がやってる事の凄さを言及する夢乃。
「確かにな。元々人間態になれなくて妖精状態じゃ肺活量不足でできてなかったのが懐かしく感じるよ」
「今もどこで息吸ってるかわからない時あるし、少なくとも夥しい程の反復練習を繰り返したのは間違いないだろう。
ソウルビート達はそんな形でアカペラ練習の事を振り返りながら収録を進めていく。続けてベースのソウルビート、更にメインのリードであるズキューンが終了。次はサブのリードと1stを兼ねている夢乃である。
「ズキューンも大分歌が上手くなったよね」
「ふっふーん!」
「最初とかかなり下手だったもんな。妖精態の時なんて周りに合わせて歌うのも一苦労だったけど」
ズキューンことプリルンは最初のパート決めの際に姫野が勧めたためにリードをやらせる事を決定したのだが、思っていた以上の歌の下手さだったために彼女の矯正がある意味一番大変だった。
何しろプリルンは難しい事を考えられないわかなりのマイペースで引っ掻き回されるわで最初の頃はかなり苦労したわけである。それが今では変身前でもそれなりには歌が上手くなった。
流石は中の人がデビューしてから20年もの間、声優業界で活動を続ける大ベテランである。
「おーい作者、お前がメタ発言したら色々面倒だからその辺で止めろ」
そんな話はさておき、続けてウインク、キュンキュン、最後にアイドルである。その間も影人達は話をしながらも真剣に彼女達の歌を聴いていた。
「それにしてもアイドルに低音側をやらせるのは思い切ったよね。多分視聴者がこれを知ったら脳がバグると思うぞ」
「それはあり得るかもな。多分パート別でショート動画とか出したら絶対アイドルの所が注目されると思う」
「ウインクもキュンキュンもコーラスを頑張ってたし、皆で作ったアカペラだよね!」
「ええ。重なる歌声はまるで積層される生地。そして完成した綺麗なハーモニーはミルフィーユのよう」
「おーいキッス、それはちょっとアウト寄りの発言だからな?」
そんな話が飛び交う中で収録は無事に終了。後は編集して動画としてアップロードするだけだ。同時にアイドルプリキュア×ドリーム・アイによるアカペラコラボプロジェクト自体は一応これで終わりを迎えることになる。
「収録の方、お疲れ様です。後は我々が編集してアイドルプリキュアのチャンネルにアップロードすれば完成ですね」
「ここからは私達がその力を見せましょう」
「ザックリ頑張るぜ」
「楽しみに待っているのですぞ」
「うん!」
それからプリキュア達は収録を終えたために変身を解除。その後、山上達へと挨拶をする……事にしたのだが、その挨拶は後でも良いと彼等が言い出したためにまずは収録の後の疲れた体を休める事にした。
「無事に録音が終わって良かった……」
「音、ちゃんと合ってるかな……」
「合ってるから田中さんとかが通してくれたんだろ?そこは自信を持っていけって」
このように一同が休憩をしていると影人はふと何かを思ったのか、レイへとある事を問いかける。
「そういえばさ、MVとかは撮らないのか?」
「あー、MVか」
「ミュージックビデオ……って何?」
影人が聞いたのはMV……つまり、ミュージックビデオのことだ。当然ながらぷりんはその事を知らずに首を傾げる。そこに捕捉するようにこころが話しかけた。
「ミュージックビデオというのはですね。楽曲の世界観を視覚的に表現した短編映像作品の事です。まぁ簡単に言うと曲がこんな雰囲気ですよーっていうのを皆に知ってもらうための動画です」
「そういえば、最近はそういうのを動画投稿サイトとかでも結構見るよね」
「そうだな……確かに作るのはありと言えばありだけど……」
MVの話を聞いたレイはちょっと難しそうな顔をしながら考え始めてしまう。恐らく、レイとしてMVを作るという考えは想定に無かったようで。そうなると今からMVの制作計画を練る必要が出てくるだろう。
「一応できなくも無いけど、その場合夢乃ちゃん……ドリーム・アイはリアルでの顔出しができないからやるとすればアニメーション方式にはなっちゃうかな」
「そっか……確かにドリーム・アイは私達と違って変身とかができないから……」
「リアルのMVなんて撮ったら顔を隠さないといけないし、それに身長とかで子供だってバレちゃうもんね……」
夢乃ことドリーム・アイはミステリアスな大人の女性をイメージして作られており、その体で世間に浸透している。そのためリアルでMVを撮影する場合顔は隠せても体型まではどうする事もできないわけで。
「すみません、私のせいで……」
「いやいや、大丈夫だよそのくらい!私達だって無理にMVを作りたいってわけじゃないから」
夢乃は自分の成長度合いが未だに子供である事を申し訳なく感じており、そんな彼女に慌ててうた達もフォローを入れる。
そのように影人達が話をしているとそのタイミングで丁度タイミングが良いのか悪いのか。はなみちタウンの出張所の外。その建物の近くに1人の影が現れた。
「さて、並外れたキラキラはどこにあるのかしら……」
それはチョッキリーヌにクラヤミンダーの水晶を託されてここにやってきていたスラッシューである。
何故スラッシューがここに現れたのか。理由としては強いキラキラの反応を追った結果、この近くにそれがあるという事で来ていたのだ。
「……っと、この建物から大きめなキラキラが……1、2、3……って、7つもあるってどういう……」
スラッシューは何故こんなにも沢山のキラキラが一箇所に揃っているのかがわからずに混乱するが、同時にそこから感じられるキラキラに見覚えがあった事と前にこの建物に来ていた事を思い出したスラッシューはある事実に辿り着く。
「……あ、もしかしてここにアイドルプリキュアがいるのかしら」
流石にそうでも無ければここまで大きなキラキラが7つも揃うはずが無い。むしろ、当然の理由にスラッシューは逆に納得する始末だった。
「それにしてもこんな森の中で何を……ッ!」
するとスラッシューは森の中に存在する出張所を目視。その目の前に立つ事になる。
「そういえば、ここにアイドルプリキュアの拠点があったのよね。それに、ここにアイドルプリキュアが揃ってる。ならばこのままアイドルプリキュアを一網打尽に……」
スラッシューはこの出張所を強襲する事で中にいるであろうアイドルプリキュアを纏めて叩きのめしてしまおうと画策。だが、それは同時に自分の姿がアイドルプリキュアに見られる事を意味するためにまずはクラヤミンダーを呼び出すためのキラキラの持ち主を探す。
「確かここにあった大きなキラキラは7つ。だから1人だけアイドルプリキュア以外でそれを持ってる事になる。どうにか探し出す手は……」
スラッシューがどうにかしてアイドルプリキュア以外のキラキラの持ち主を探し出そうとする。ただ、このままこの場所にいたのではどこかのタイミングで出張所から出てきた者と鉢合わせる危険を考えて一旦近くの草むらに身を隠そうとしたその時だった。
その瞬間、出張所から1人の少女が出てきてしまう。それは影人の妹の夢乃だった。
〜回想 数分前〜
この少し前、夢乃は先程の収録で緊張して疲れたせいか……影人へとこの休み時間を使ってある事をやって良いかと提案する事に。
「お兄ちゃん、ごめんだけど少しだけ外で体を伸ばしてきて良いかな……さっきの録音作業でちょっと疲れちゃって」
「わかった。また時間になったらメッセージ送って呼ぶからそれが届いたら戻ってきてくれ」
「うん」
〜現在〜
「「あっ……」」
そのため、夢乃は出張所の外に出てきてしまう。そして外にはスラッシューがいるので2人は正面からバッタリと出会う事になるのだった。
また次回もお楽しみに。