キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アカペラのレコーディングが終わった後。夢乃はちょっとした休み時間を使って出張所の外へ。そこにタイミング悪くやってきてしまったスラッシューと鉢合わせてしまう。
「あなたは……」
「ッ、コイツは……キュアソウルビート。黒霧影人の妹か」
同時にスラッシューは面倒な事態になったと考える。このまま彼女を自由にさせればクラヤミンダーを呼ぶ前に中にいるアイドルプリキュアを呼ばれてしまうだろう。そのため、それを嫌ったスラッシューは先手を取って夢乃を捕まえる事を考える。
「あの!」
「……何?いきなり話しかけてきて、私はあなたに構ってる暇は無いんだけど」
するとスラッシューが何かをする前に夢乃が彼女へと声をかけるとスラッシューは僅かに面倒そうな顔を見せた。それに対して夢乃はあくまで優しい声色で話しかける。
「この雰囲気、もしかしなくても天城切音さん……ですよね?」
「……その名前は捨てたわ。もう私には必要無い名前よ」
「そうかもしれません。……でも、私は覚えてますよ。あなたが……優しい人だって!」
夢乃はプリキュアで無い身ながらスラッシューへとかつての事を話し始めた。そんな彼女にスラッシューは少しだけ顔を曇らせる。
「どうして……優しかったら学園祭を襲うなんて暴挙はしないでしょ。それに、現にあなたは私のせいで一回マックランダーにされてるのよ」
スラッシューはあくまで夢乃を牽制するような形で彼女へと脅しをかけた。自分は悪い奴であると……自分に関わっても碌な事は無いのだと……。
「そうかもしれません……。でも、天城切音さんとしてグリッターで働いていたあなたは……キラキラしてましたよ」
「ッ……。あんな偽物のキラキラを見て私を慕うなんて……反吐が出るわ」
しかし、スラッシューの脅しに怯むどころか彼女が思い出したくも無いグリッターでのキラキラした日々を言う夢乃。それを聞いてスラッシューは奥歯を強く噛み締める。
「もうこんな事止めてください。……あなたの根は良い人ですよ。少なくとも、私はそう思ってます」
「黙って……黙ってよ。あなたなんかに何がわかるの。主役の引き立て役しか出来なくて。その主役がいなくなったのは私のせいで……それから世間からずっと否定されてしまった私の……私の何がわかるって言うのよ!!」
スラッシューは脳内にまた思い出したく無いかつての記憶がフラッシュバックしてしまうと頭を手で抑えた。それを見た夢乃はスラッシューへと寄り添おうと勇気を出して声をかける。
「……わかりませんよ。私には、あなたの全部はわかりません。でも、ずっと闇の中で足掻き続けて。それでも世間に否定されてしまって苦労してきた人の気持ちならわかります!今のあなたもきっとその人と同じで」
「同じ?……何が同じなの?そいつはもうキラキラしてるじゃない。ずっと闇の中を彷徨ってる私と違って。友達が、仲間が沢山いるでしょ。私には、私にはもうダークイーネ様しかいない!もう光溢れる場所に戻るなんて暴挙……許されないのよ!!」
それはスラッシューの悲痛なまでの叫びだった。それを見て夢乃はどうにか自分の力で彼女を救えないかと考える。そんな時、スラッシューは夢乃の姿を改めて確認すると先程感じた大きな光の中の1つであると確認した。
「……なるほどねぇ。やはりあなただったわね。私が求める凄まじい光の持ち主は」
「えっ……」
「私の闇よ……この水晶に新たなる力を!!」
その瞬間、スラッシューが手にしたクラヤミンダー生成用の水晶を真上に掲げると彼女の中の闇が注入されて形状が変化。それはダークランダー生成用の水晶である刺々しい見た目の形であり、色合いはそれとは違う紺色をしていた。
「それは……」
「ふふっ、あなた。私の力になりたいんでしょう?……力になってもらうわよ」
夢乃はスラッシューからの圧を感じて咄嗟にこの場から逃げようとする。しかし、ここまで至近距離に近づいてしまっては以上……もう逃げる手段なんて残って無かった。
そして、スラッシューは容赦無く夢乃に対してクラヤミンダーを呼ぶ動きを始めてしまう。
「あなたのキラキラ……頂くわ」
次の瞬間、スラッシューが夢乃の中に存在する特大のキラキラを鷲掴みにするとそれをあっという間に引き抜いてしまった。
「きゃあああっ!?」
そして、同時に夢乃の中にあるキラキラのリボンが引き抜かれると彼女は紫の禍々しい球体に捕まってしまう。
「切り捨てスラッシュ!」
スラッシューは夢乃を捉えてから容赦無く彼女のリボンを真っ二つに切り裂くと闇に閉じ込められた夢乃と紺色の刺々しい水晶をそれぞれの手に構える。
「現れるのです、クラヤミンダー!世界中をクラクラの真っ暗闇にしなさい!」
そしてスラッシューはクラヤミンダーを召喚する……のだが、実際はクラヤミンダーとは違った。何しろその体はクラヤミンダーやダークランダーとは差異がある。具体的に言うと髪のリーゼントは青みのかかった黒いリーゼント。サングラスは緑や赤では無く青でダークランダーと同じような全体的に尖った形状をしていた。
「カガヤケナインダー!」
その怪物の名は闇に包まれ、素体の人間の輝きが失われてしまったという事を象徴したような物……カガヤケナインダーであった。
また、今回は新しくファッションモデルになる事を夢に持っていた夢乃を素体にしたからか、服を着たマネキン人形のような姿をしていた。
「あははっ!カガヤケナインダー……クラヤミンダーがこんな進化を遂げるなんてね。……面白いわ。カガヤケナインダー、暴れなさい!あなたの力を示すのよ!」
「カガヤケナインダー!」
クラヤミンダー改め、カガヤケナインダーは夢乃の中に存在する凄まじい光の力を闇に閉じ込めると彼女は絶望したようなハイライトの消えた瞳で闇に囚われてしまう。
そして、そうなるという事は同時にプリキュア達の方もこの怪物の出現を察知できるわけで。
「ッ!?ブルッと来た!?」
「えっ!?」
「またこんな時に……」
影人達はまたチョッキリ団が出てきたという事でその襲撃に身構える。それから早速ぷりんの闇のレーダーで場所を特定しようとした。
「場所は?」
「すぐ近くだよ!!」
「「「「えっ?」」」」
ぷりんが慌てたような顔でそう言うと影人はその言葉を聞いた直後には反射的に動き出していた。
「ッ……!!」
「カゲ先輩!?」
そして、影人が外に出るとそこにはカガヤケナインダーにされた夢乃とその近くにいるスラッシューを確認する。
「スラッシュー!?お前まさか……」
「ッ、本当に最悪……アイドルプリキュアと会わずに終わらせるつもりだったのに……」
スラッシューは影人が来てしまった事に苛立ちを覚える。何しろ、彼女からしても本来ならアイドルプリキュアとは接触せずに終わらせるつもりだったがために予定を狂わされた形だからだろう。
「影人!あの中に夢乃が閉じ込められてる!」
「嘘だろ……。くっ、あの時1人で行かせなければ……」
影人は油断していたとはいえ、夢乃を1人にさせてしまった事が今回の引き起こしたのだと後悔する。そして、続々と到着する形でうた達も来るとアイドルプリキュアの変身者6人が揃う。
「カガヤケナインダー!」
「って、カガヤケナインダーですか!?」
「まさか、こんな時に新しい種類の敵?」
こころやめろんはカガヤケナインダーという新しい種類の敵が来た事に困惑。しかし、だからと言って怯むわけには行かない。夢乃を助けるにはどちらにせよこの未知な敵を倒さないといけないわけだ。
するとうたが目の前で苛立ちを露わにしているスラッシューへと声を上げた。
「スラッシュー、どうしてこんな事を……」
「煩い!あなた達のせいよ!!あなた達がいつまでも世界を真っ暗闇にさせないから……私の手を何回も煩わさないで!!」
スラッシューも半ばヤケクソと言わんばかりに怒りのような声を上げる。勿論影人達から見たら今の彼女は逆ギレしているような状態なのだが……。
「事情はどうあれ今のスラッシューを放っておくわけにはいきません!」
「夢乃ちゃんの事も助けないとだしね!」
「皆、行くよ!」
こうして六人は夢乃を助けるべくプリキュアへと変身。その姿を変えていった。今回もまたプリルンとメロロンは人間態から変身開始するパターンである。
「「「「「「プリキュア!ライトアップ!」」」」」」
「「「キラキラ!ドレスチェンジ!」」」
「「キラキラ!ショータイム!」」
「キラキラ!ソウルリンク!」
「「「「「「YEAH♪」」」」」」
「キミと歌う、ハートのキラキラ!笑顔ニッコリ、キュアアイドル!」
「キミと瞬く、ハートの勇気!お目目パッチン、キュアウインク!」
「キミと踊る、ハートのリズム!心キュンキュン、キュアキュンキュン!」
「ハートをプリッとロックオン!キミとズッキュン、キュアズキューン!」
「ハートをメロっとひとりじめ!キミと口づけ、キュアキッス!」
「キミと輝く、ハートの鼓動!繋がる魂、キュアソウルビート!」
「「「「「「We are!キミとアイドルプリキュア♪!」」」」」」
こうして、アイドルプリキュアの六人は変身を完了。最後にチーム名を名乗り終わって降り立つと同時にキッスが早速投げキッスを使用。
「お願い、チュッ!ハートガーデン!」
これによりハートガーデンを展開するとダークランダーごと自分達をその中に移動させる事になるのだった。
「あなた達のせいで、あなた達のせいでぇええっ!」
スラッシューが怒りの声を上げると戦闘用の衣装が展開されると両腕に炎の剣を生成。一気に突撃してくる。
「ここは私に任せて!」
「アイドル!?」
ソウルビートへと突っ込んでくるスラッシューに対して、珍しくアイドルがカバーに入るとスラッシューを正面から受け止める。
「貴様っ!?」
「スラッシューは私がどうにかするから……ソウルビートは夢乃ちゃんをお願い!」
「だけど……スラッシューは」
「きっと夢乃ちゃんに声を届けられるのはソウルビートだけだから……お願い!」
アイドルはどうにかスラッシューと互角に押し合うとスラッシューは力押しでは押し切れないと思ったのか一旦後ろに下がった。
「チッ……」
「大丈夫!スラッシューさんはUtaKotoneのKotoneさんでしょ?私がちゃんと説得してくるから!」
アイドルは今のソウルビートにスラッシューの相手をさせるのは危険だと判断。何しろ先程夢乃がカガヤケナインダーにされた時にソウルビートこと影人はかなり動揺していた。そんな精神状態で彼女の相手をさせるのは負担が大きいからである。
加えて、夢乃を怪物にされた際の怒りでスラッシューの事を見境なく攻撃する可能性だって高い。そうなると説得に当たりたいプリキュア側にとっては割と不都合があるというのも言えるだろう。
「……わかった、アイドル。任せるよ」
「オッケー!はあっ!」
するとアイドルは踏み込んで一気にスラッシューへと接近。対してスラッシューは手にした剣で防御しようとする。
「キュアソウルビート以外で私を止めるなんて、傲慢も良いところ」
「それはどうかな?アイドルグータッチ!」
アイドルはスラッシューが防御姿勢を取って自分の攻撃を回避しないとわかるとすかさずブローチをタッチ。一気に踏み込むと彼女へと強烈なグータッチを繰り出した。
「この程度の攻撃……ッ!?」
「はぁあああっ!」
スラッシューはアイドルからの攻撃なんて大した事無いと予想。その攻撃なんていつでも止められると思っていた。しかし、そんなスラッシューの防御をぶち抜くような形でグータッチが炸裂。スラッシューは一気に後ろに吹き飛ばされた。
「があっ!?」
「行くよ!」
アイドルはスラッシューを一気に引き剥がすと彼女が前に飛び出す形で突撃。
「アイドルすまん……スラッシューを頼む」
「カガヤケ!!」
ソウルビートがアイドルの無事を祈るのと同時にカガヤケナインダーは目を発光させる。直後に両手からシャツ型のエネルギー弾を連射。5人はそれを回避するとシャツは地面にぶつかったタイミングで爆発。それを見たソウルビート達はシャツ型のエネルギー弾は炸裂弾であると察する。
「ナイン!」
すると今度は硬質化したスカートを手にすると今度はそれを投げた。そのスカートは固まっているせいか、切れ味が上がっており。その進路上にあったハートガーデンのキノコを一刀両断。
「そんな……」
「凄い切れ味ね」
「この感じだと服を使った攻撃を主体にしてくるタイプか」
続けてダークランダーは腕にジーンズを武装するとその先端が砲口になっているのか。そこから大砲を放ってくる。
「カガ!カガ!カガ!」
「今度はジーンズキャノンってか!?本当に多彩だな!」
「これじゃあ近づけない。夢乃ちゃんに声を届けないとなのに!」
カガヤケナインダーは服を利用した多彩な攻撃を仕掛けるとプリキュア達を翻弄。ソウルビートはどうにか夢乃へと言葉を届けようとする。
「夢乃!わかるか?そんな闇に負けたらダメだ!!」
「カガヤケナインダー!」
しかし、ソウルビートの呼びかけも虚しくカガヤケナインダーは容赦無く攻撃を繰り出してきた。そのため、夢乃を助けるには最早カガヤケナインダーを倒すしか無い。
「ッ……夢乃。痛いかもだけど、ちょっと我慢しててくれよ。絶対に助けてやるからな」
こうして、アイドルプリキュアは夢乃の救出とスラッシューの説得をそれぞれで開始。戦いの火蓋が切って落とされるのだった。
また次回もお楽しみに。