キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
ソウルビートがカガヤケナインダーの内部へと侵入した頃。スラッシューと交戦していたアイドルの方では。
「はぁあああっ!」
「だぁあああっ!」
アイドルは強化形態であるアイドルハートリボンスタイルに変身するとスラッシュー相手に完全に互角に持ち込んでいた。
「ッ、なんで……何であなたみたいな紛い物が!!」
「紛い物だとしても、私はあなたの事もキラキラにしたい!もう止めようよ!」
「黙ってよ……。あなたみたいな存在、私は絶対に認めない!」
アイドルはスラッシューからの斬撃を両手で白刃取り。それを見て彼女は目を見開く。
「なっ!?」
「はぁああっ!」
アイドルはスラッシューが動揺している間に白刃取りした刃を自身の右横に倒すように持ってくるとすかさず体で体当たり。そのせいでスラッシューは手にしていた炎の剣を手放してしまう。
「ッ!?しまっ!」
「アイドルグータッチ!」
アイドルはその間にブローチをタッチしつつグータッチを一気にスラッシューへと叩き込む。その一撃を受けてスラッシューの顔が歪んだ。
「ぐうっ……」
「Kotoneさん、もう終わりにしようよ」
「ッ……」
アイドルはもう一度スラッシューを説得しようとする。しかし、彼女はそれが気に入らないのか。奥歯を強く噛み締めた。
「Kotoneさんに闇は似合いませんよ。Utakoさんだってあなたがこんな事をしてるなんて知ったら……」
「煩い!!そんな事、わからない私じゃないわよ!!でも、私はダークイーネ様に拾われて。あのお方の望みを叶える事を誓ったの」
「ダークイーネの望み……世界を真っ暗闇に染める事」
「そうよ。だから、もう止まることも引き返すことも許されない。……それに、あなた達みたいなポッと出の新米アイドルを見てるとイライラするの。本来踏むべき手順を踏まずに有名になって、この前は大きな会場でのライブまで……。私なんか、私なんか!!」
スラッシューの闇は更に増幅されると体から溢れ出す。それを受けてアイドルはこのままではスラッシューの意識ごと闇の中に呑まれてしまうと考える。
「(スラッシュー……Kotoneさんから凄い量の闇が出てる……。このままじゃ不味い)」
「ふーっ……潰す、潰す、潰す!!」
スラッシューは自らが放出した闇のあまりの量に意識を乗っ取られかけてさえいた。そのため、アイドルはそんなスラッシューに危機感を抱く。
「スラッシューさん、前のカッティンと同じだ。闇に呑み込まれて自分で制御できなくなってる。どうにか私が助けないと」
アイドルはスラッシューを救うにはもう浄化技を使うしか無いと考える。どちらにせよ、スラッシューの洗脳解除をするために浄化技が必要な事を考えるともうやるしか無い。アイドルは自身が使える最高火力を放つべく領域展開をするべく構えた。
「クライマックスはわた……」
『そこまでだ。スラッシュー』
「えっ!」
アイドルがスラッシューを助けるためにライブの領域を展開しようとした瞬間。突如としてダークイーネの声が響くとスラッシューが放出しようとした凄まじい闇がそちらに吸収。彼女は意識を正気に戻す。
「ッ!?はぁ……はぁ……ダークイーネ様」
『これ以上は限界だ。スラッシュー、もう戻れ』
「しかし、ここ最近そればかりです!私はこのままやられっぱなしで引き下がるのなんて……」
『……それでもだ。今のお前は闇を制御できていなかった。カッティーの時のように暴走させるつもりなら兎も角、お前を暴走させるわけには行かない』
「くっ……」
スラッシューは俯くと悔しそうに拳を握り締める。アイドルはそんなダークイーネの対応に唖然としていた。そんな中、ダークイーネはアイドルを忌々しそうに睨みつける。
『キュアアイドル……スラッシューは救われる事を望んで無い。それなのに何故救おうとする』
「ッ……それは、私がアイドルプリキュアだから。それにスラッシューさんは、Kotoneさんは苦しんでると思ったからだよ」
アイドルはダークイーネからの問いに対して真剣な顔つきで反論するとダークイーネはアイドルが知らないある事実を告げる事に。
『そうか。……だが、お前達のやっている事は無責任な事だぞ。スラッシューを救ったとして。今の彼女はこの世界に居場所なんて無い』
「そんな事……」
『いいや、無いな。何しろスラッシューは……過去からタイムスリップしてやって来た人間だ』
「えっ!?」
アイドルはダークイーネからの言葉を聞いて唖然とする。スラッシューが過去からやって来た人間。それを聞いて驚かないわけがない。ただ、ダークイーネはそんなアイドルへと至極当然そうな言い回しで話を続ける。
『何をそこまで驚いている。別に何も不思議な事では無いだろう?スラッシューは元々昭和の伝説のアイドルユニット、UtaKotoneのKotoneだ。そして彼女の肉体年齢を見てみろ。どう見てもタイムスリップしてないとあの姿というのはあり得ない』
「ッ……!!」
それは実際その通りだ。UtaKotoneが活動していた年代は今から約40年程前。もし仮にスラッシューが当時20歳前後だったとしても順当に進めば彼女の年齢は60代後半くらいだ。つまり、あの若々しいスラッシューの姿はタイムスリップをするなどして本来進むべき時間の流れをすっ飛ばすくらいはしないと不可能と言える。
『昭和の世の中からこの時間軸に来て、尚且つ一度世界から否定された彼女の居場所が……今のこの世界にあるわけが無い』
「そんな……」
『まぁ、それでも救うという話なのなら……私と戦う事も覚悟してもらおうか』
ダークイーネはまるでアイドルを脅すようにそう告げてからスラッシューを回収。その場を去ることになるのだった。
「ッ……それでも、私は……Kotoneさんを救いたい」
アイドルは悔しそうに拳を強く握りしめるとまずは今の自分がやるべき事をやらないといけないと考えて移動を開始する事になる。
一方その頃、カガヤケナインダーの内部ではソウルビートが闇の中をどうにか進んでいた。
「夢乃、どこにいる……」
ソウルビートは自ら闇の力を纏う事でカガヤケナインダーの体が自分の事を異物として捉えないようにしつつ移動。
「ッ……でもこれ、体の負担がキツいな。あんまり長くは保たないかも」
ただ、この闇に同化するのも流石にノーリスクではできないらしく。体への負担に顔を歪めてしまう。
「早い所夢乃を……うん?」
そんな時だった。ソウルビートは闇の中で何かの声が聞こえて来たそして、彼が知る限りその声を出すのは1人しかいない。
「……私なんか、ダメなんだ……私は輝けない。私は、夢なんて追っても無意味なんだ……」
「この声は……夢乃……夢乃!!」
ソウルビートは慌ててその声の主が夢乃だと見抜くと慌てて彼女のいると思われる方へと向かう。
「いた!」
そのままソウルビートは夢乃のいる場所に到達すると急いで駆け寄る。そして、夢乃へと声をかけた。
「夢乃!夢乃!大丈夫か?しっかりしろ!」
「あ……あぁ……お兄ちゃん、ごめんなさい……ごめんなさい……私なんかには、無理だった……。私、一生懸命頑張ったつもりだったのに。誰も、私の事を認めてくれなくて」
「この反応、まさか……幻覚を見せられてる!?」
ソウルビートは自分がいるのに何故か反応がおかしい夢乃を見て彼女は幻覚を見せられていると感じ取る。実際、今の夢乃視点だとファッションコンテストで心がボロボロに折られた所に兄の影人が現れていた。
そして、夢乃は自分の夢のために協力してくれた兄に自分は何も成果を残せなかったという罪悪感で押し潰されそうになると彼に対してただ謝るだけになってしまう。
「俺が目の前にいるのに俺が原因で傷ついてる……どうすれば」
ソウルビートが悩む間にも夢乃は幻覚の中にいる影人へとどうにか許してもらおうと謝り続けていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「いや、今は迷ってる暇は無いな。外じゃ、他の皆が頑張ってるんだ。ここで俺が諦めるわけにはいかない!」
ただ、ソウルビートは外で強化されているカガヤケナインダー相手に戦っていたウインク達の負担を考えると自分が諦めたら状況が終わってしまうと判断。夢乃へと必死に呼びかける。
「夢乃!しっかりしろ!俺は夢乃に謝ってほしいんじゃない!……それと、夢が終わったなんて言うな!!まだ何も始まってないんだよ!!」
「終わって……無い?嘘、嘘だよ……だって、私……凄く頑張ったのに誰も認めてくれなくて……」
「違う!!誰も認めてないなんて……そんな事言わないでくれ!!」
「えっ……」
ソウルビートは夢乃の両肩に手を置きつつ必死に呼びかけると夢乃は一瞬だけ困惑したようにブツブツと独り言を言うのを止めた。つまり、ソウルビートの話を聞けるような状態になってくれたのだ。
「……夢乃、ごめんな……。ずっと夢乃が悩んでるのに、俺は夢乃が自分から言い出すのを待ってて……碌に夢乃の悩みを聞いてあげられなくて」
「それは……私が自分で決めた事……だからお兄ちゃんは何も悪く無い……」
「そっか……。俺は……夢乃が自分の夢を見つけてくれて、やりたい事を見つけてくれて凄く嬉しいんだ。ドリーム・アイとしての活動は元々、俺を助けるためにやってくれた事。だから、俺は自分のせいで夢乃がやりたい事ができなくなってるんだと思ってた」
「………」
ソウルビートは夢乃を助けるためにはちゃんと彼女と向き合って話す必要があると感じ取っており、彼女に正面から向き合う。
「だから、こんな簡単に諦めてほしくない……。絶望に負けないでほしい」
「そんなの、無理だよ……私はお兄ちゃんみたいには輝けない。お兄ちゃんみたいにはできないよ!!」
「できるよ……。少なくとも、俺は夢乃にはできるって信じてる。それに……俺が芸能界で絶望の底に堕ちた時、夢乃がいてくれたからこうしてもう一度頑張ろうって思えたんだ」
「!!」
夢乃は自分が影人に与えていた影響を聞いて驚いたような顔を浮かべる。同時に困惑しながら声を上げた。
「私が、お兄ちゃんを助けた?」
「ああ、お前がドリーム・アイとして頑張る所を見てたらさ。夢乃が無理し過ぎないように助けないとって思えて。その気持ちが俺の事を繋ぎ止めてくれたんだ」
もし仮に夢乃がドリーム・アイをやらず、姫野に引き継ぐまでの間に一時的なマネージャー的な存在を影人がやれていなかったら……恐らく彼は芸能界での絶望をより長く引きずっていただろう。それこそ、影人から絶望する余裕を夢乃が奪ってくれたお陰でギリギリの所で踏み止まれたのだ。
「で、でもだからってそれは私が輝けるのとは別問題だよ」
「いいや。俺が保証する。だって夢乃は俺の妹で父さんや母さんの娘だ。夢乃には他人を惹きつけるその瞳だってある。輝けないわけが無いよ」
夢乃はその言葉を聞くと胸がドクンと高鳴る。同時に彼女の瞳に無意識ながら涙が流れるとソウルビートの方へと寄り始めた。そして、幻覚に囚われていた彼女の前にいた影人の姿が少しずつキュアソウルビートへと変化し始める。
「本当……?私、夢を追いかけられる?ちゃんと夢を叶えられる?」
「ああ。少なくとも、夢乃が自分の夢を信じて走り続ける間はそのチャンスが巡ってくるよ」
「ッ!!……うん!」
そして、ソウルビートに励まされた夢乃の幻覚の景色にヒビが入るとそこから銀色の光が差し込み始める。これなら夢乃を助けられるだろう。後は彼女を解放してカガヤケナインダーの中から脱出するだけだった。
「良し、夢乃の前に映されていた幻覚は消えたはず。このまま一気に……」
「カガヤケナイ……ンダァアアアッ!」
しかし、その瞬間。タイミングの悪い事にカガヤケナインダーがいきなり叫び声を上げるとその体がソウルビートの体をいきなり追い出そうとし始める。
「ッ!?何で……闇の中に紛れていたはずなのに……」
「!!お兄ちゃん!?」
同時にカガヤケナインダーの幻覚から抜け出して来た夢乃はそこでソウルビートが追い出されそうになる姿を見かける事に。
「ぐ、クソッ。あとちょっとなのに……」
「お兄ちゃん!私、信じてるから!!お兄ちゃんなら私の事……きっと助けてくれるって!!」
夢乃はカガヤケナインダーから追い出されそうになるソウルビートを見て咄嗟に彼へと声をかける。そしてそれはもう闇に囚われた彼女では無かった。
「ああ、任せろ……絶対に……!」
ただ、ソウルビートが話を終える直前。その体がカガヤケナインダーの中から消失。同時刻、カガヤケナインダーと交戦する4人のプリキュアはその圧倒的な力の前に押されていた。
「カガヤケナイ!!」
「くっ、ウインクバリア!」
カガヤケナインダーから放たれる弾幕の嵐に対してウインクが咄嗟にウインクバリアを展開。キュンキュン、ズキューン、キッスの3人がそれを後ろから支える。しかし、そのパワーに無理矢理押し込まれるとそのままバリアは破壊。
「なっ!?」
「ンダァアアアッ!!」
「「「「うわぁああああっ!?」」」」
4人はそのままカガヤケナインダーからのエネルギー弾連射の餌食にされるとその体は酷く傷つき、その場に倒れてしまう。
「「「「ううっ………」」」」
「ぐあっ!?」
同時にカガヤケナインダーに入っていたソウルビートも飛び出すと4人の近くに叩きつけられる。
「そんな……」
「ソウルビートまで」
ただ、ソウルビートが持っていた分の闇は消え去ったためにカガヤケナインダーはパワーダウン。ついでに言えば夢乃の気持ちを取り戻せたためにこれでどうにかできる可能性は上がった。
「絶対に……夢乃を助ける……」
ソウルビートはそうやって自分がやるしか無いと己を鼓舞しつつ夢乃を助けるべく立ちあがる事になる。
また次回もお楽しみに。