キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
アカペラのレコーディングを終えてから数日後。平日に入ったため、影人達は学校へと登校。
この日の昼休みの時間では影人達がいつものようにご飯を食べているとその最中でうたが以前の戦いの際にダークイーネが言っていた事を話し始める。
「そういえばさ。前に夢乃ちゃんを助けるためにカガヤケナインダー……?だっけ。それとスラッシューと戦ったじゃん」
「そうだね。それがどうかしたの?」
「スラッシューが帰る時にダークイーネが出てきたんだけど、その時気になる事を言ってたんだよね」
影人はスラッシューの元にダークイーネが現れたと聞いて何となく状況を察する。これまでもスラッシューがやられそうになるとダークイーネが介入しては彼女を連れていくという事例は何度かあった。そのため、これだけなら特に大きな問題では無いだろう。
「それで、どんな事を言ってたんだ?」
「えっと、スラッシューが過去からやってきた人だって……」
「「「「か、過去からやってきた(んですか)!?」」」」
うたの発言になな、こころ、ぷりん、めろんが驚いたような反応を示す。ただ、影人やレイ辺りは至って冷静な顔のままだった。
「まぁ、伝説のアイドルのUtaKotoneが活動をしていたのは約40年くらい前の昭和時代なんだし……スラッシューのあの年齢感を考えたらタイムスリップするくらいしか年齢の問題を解決する手段は無いだろ」
「た、確かにそうか……」
「でもタイムスリップってどうやってしてるんですかね。40年くらい前にタイムマシンのような物があった……なんて事はないでしょうし」
スラッシューことKotoneがタイムスリップでこの時代に来たとして、もしその説を証明するには肝心のタイムスリップの方法を知らないといけない。ただ、影人はその答えに何となく辿り着いていた。
「タイムスリップが発動したのは多分海だな。というか、状況的にそこしかあり得ない」
「海!?でも海に入ってタイムスリップなんてでき……ああーっ!!」
レイから海がタイムスリップの鍵だと聞いてうたは疑問を抱きながらも何かに気がついて思わず声を上げる。するとなな、こころ、めろんもその意味を理解する中でぷりんだけはやはり意味がわかっていなかった。
「なるほど、確かに海ならタイムスリップが使えるかもしれないわね……」
「え?え?一体どういう事?」
「この前アイアイ島でトットさんが言ってたじゃないですか」
「あっ、そういう事か!!」
「という事は、昭和時代から一回アイアイ島の方に行きかけて。すぐにまたこっちの世界の令和の時間軸に出てきたって事になるのかな」
今のななが出した仮定通りにKotoneが海の中を移動し、流れ着いたのであれば彼女がこちらの世界にやって来れた事に説明が付く。
「何にせよ、Kotoneさんがタイムスリップをしてこっちの世界にやってきたのは間違い無さそうだね」
「それなら尚更こっちの世界にも居場所が無かったんだろうな……」
Kotoneは昭和時代でUtakoを失った後に歌姫としての自分の居場所が無い事を苦しんでいる節があった。そして、そのまま海の中に入ってアイアイ島に行ってさえくれればまだ救いの目はあったかもしれない。
何しろアイアイ島にはその生き別れた相方のUtakoがいるのだから。しかし、Kotoneはこっちの世界に戻ってきてしまった。しかも、彼女にとっては未知の世界である令和の世界に。
「これは、余計に早い所Kotoneさんを救わないといけなくなってしまったな」
「そうだね、でも私達ならきっとできるよ!」
「勿論!Kotoneの事もキラキラにしちゃおう!」
うたやぷりんはKotoneを早い所助け出す事を呼びかけ、一同はその意見で纏まった。そんな所で次はこころが次の話題を始める。
「それでは、皆さんの意見が纏まった所で話題を変えますけど私の方から皆さんにお見せしたい物があるんです!」
「「「「うん?」」」」
そんなこころからの話を聞いて一同はキョトンとした顔つきを浮かべる。するとこころは既に何かの準備を始めていた。
「こころが見せたいものか……影人は勿論……」
「ああ、このタイミングで見せるものは何となく想像はできてる」
うた達はこころから見せたいものの話が出て疑問符を浮かべる中、一緒に話を聞いていた影人はただ1人、何となくではあったがその見せたいものの正体を見抜いていた。
「流石、影人君。彼女の言いたい事をしっかりわかってるなんて」
「それで、その見せたい物って?」
「ふっふーん……それはですね、じゃーん!!」
こころが影人達の前に出したのはアイドルプリキュアのマスコット6人分であった。勿論、ソウルビートはまた新しく新規で作った上でである。
「何と!アイドルプリキュアのマスコット、全員分揃いました!!」
「「「「おぉ〜っ!!」」」」
一応アイドル、ウインク、キュンキュンの分はだいぶ前にうたの家でお泊まり会をした際に写真を撮りまくって完成した物だったが、ズキューンとキッス、ソウルビートの方は長らく完成していなかった。
何しろキッスが登場からそこそこの期間心を開かなかった事とソウルビートに至っては色々忙しくなった夏休み後に誕生していたため、どうしても制作するのが滞っていたのである。
「キュアズキューンとキュアキッスがいる!」
「ソウルビートもほら!」
「ソウルの分とは別でちゃんと新しく作ったんだね」
「当然です!ソウルとソウルビートは姿が全く違いますからね!」
尚、キュアソウルだけキュアソウルビートの方にもう完全に乗り換えてしまったために出番が完全に無いのだが……その話はこの辺で終わるとして。
このマスコットを見た人間態のメロロンことめろんは自分の大好きなズキューンやソウルビートのマスコットにうっとりした様子だった。
「お姉様もソウルビートも……とても素敵です!」
「こころちゃん、本当に上手だね!」
「はい!我ながら完成度が高くて心キュンキュンしてます!」
こころは自画自賛ながらも、今回のマスコットの出来にはかなりの自信があった。そんな中で影人は苦笑いを浮かべる。
「その代わり、これを完成させるためにまた被写体としてかなり撮られたからな……」
「当然、作るなら細部まで正確に再現したいですから!」
「言われてみれば、私達も結構な枚数撮られてたかも」
「そうですね。私がハートキラリロックの呪縛から解き放たれた後……割とすぐに」
ぷりんやめろんも言われてみると戦闘とは関係の無い場所で変身したかと思えばプリキュアとしての姿の写真撮影会が開かれていた事を思い出す。
「俺は2回目だったけどな?」
「しょうがないだろ?ソウルビートに進化したのが原因なんだから」
「ぐっ……」
キュアソウルのまま姿が少し変わった程度なら前のマスコットを少し改造する程度で良かったのだが、流石に色まで変わってしまうとどうしようもできない。
どちらにせよこのマスコットも6体全員が完成してようやく揃い踏みを見る事ができたという事になる。
「凄く、キラッキランラ〜ン♪」
「アイドルプリキュアは、ずっと憧れでキラキラな気持ちをくれる。私にとって最高のアイドルです!」
「わかるよ〜!その気持ち!」
こころにとってそれだけアイドルプリキュアという存在は生きる上で自分達に活力を与えてくれる存在なのだと言えるのだろう。そして、そんなこころに同調するうた。するとふとめろんがななへと質問をしていた。
「ななはどうなの?」
「へ?」
「ななにとってのアイドル。憧れで、キラキラな気持ちをくれる人」
「私にとっての……アイドル」
ななはその答えについて少し悩んだ様子だった。この調子だとまだ良い答えが浮かんでないのだろう。
「ごめん、私はまだそういう存在が何なのかわからないかな……」
「そう……」
「でも、焦って見つける必要は無いからな。そういうのはじっくり探しても良い事だし」
「うん……ちょっとまた探してみるよ」
そんなわけで、今日もいつも通りの平和な日常を過ごす影人達。そのまま昼食を食べる流れになり、自分達の好きな話に花を咲かせる事になる。
それから時間が経ってこの日の夕方。なながいつものように自宅に帰るとそこには彼女の父親である蒼風一が帰ってきていた。
「ただいま!」
「お帰り。ママから良い物が届いてるよ」
「えっ!?それって何?」
一からの言葉にななは一瞬で笑顔になる。改めてだが、ななの母親である蒼風睦美は世界的に有名なピアニストだ。そのため、家を留守にしてしまう事が多く。基本的に蒼風家は父親の一と娘のななの2人きりとなる。
そんな中でななにとって大好きな母親からのプレゼントが届いたとなれば彼女が喜ばないわけがない。
すると、早速ななの父親の一はチケットを2種類を2枚分。計4枚を自身が座っているソファーの前にあるテーブルに出した。
「フランス行きの航空券と、ママのコンサートのチケット!勿論2人分だ!」
「ママに会えるの!?嬉しい!」
ななはそのチケットや航空券を手にして微笑む。それらは母親からの招待状とも言えるような物だろう。
「コンサートはいつあるの?」
「ああ。日付は……今週の土曜日だな」
ただし、フランスと日本では8時間分の時差がある。そのためその差分の時間は考慮して動かないといけないだろう。
とはいえ、ななは普段世界中を飛び回っている母親とは会う事ができない。なので久しぶりに会って話す事ができる今回のような話は願ったり叶ったりの物と言える。
それからななは一旦出かけた後の片付けをするために自室に戻ると久しぶりに会える母親の事を思い浮かべて心が躍らせる。
「ふふっ、ママに会えるの楽しみだなぁ……。あ、でもフランスに行くって事は今度の土日は皆と会う事はできないんだよね。後でレイ君や皆に言っておかないと」
ななはフランスに行く都合で土日に遊ぶ事はできなくなった旨を伝えないといけないと考えた。
それから暫く経ってその日の夜、ななはレイと電話をする事に。これはレイの方が忙しいために休みの日にデートとかに行きづらい分、こういう所での会話をするための物である。
そのため、まずはいつも通りの普通の会話をするとタイミングを見てから今回の件についてを話す事に。
『そっか、久しぶりにななは母さんに会えるのか』
「うん!フランスに行かないといけないから皆と遊ぶのは無理になっちゃうけど……」
『いや、折角普段会えないななの母さんからのお誘いだ。俺達の事は全然気にしなくて良いよ』
「ふふっ、ありがと!」
レイはななが嬉しそうにしているのを微笑ましいような様子で話している。ただ、ななはふと何となくレイの声に違和感を感じたのかその事を聞く事に。
「そういえばレイ君。何だか元気無さそうな感じだけど大丈夫?」
『えっ?そうかな?それはななの気のせいだよ』
するとレイは何でもなさそうな感じで答えを返す……が、やはりななにはどこか引っかかるような声に聞こえてしまう。
「そうかな……ちょっと引っかかる気がするけど……わかった。それならこれ以上は聞かないでおくね」
『ああ。それじゃあな』
「うん。また明日ね」
ななはレイの反応に少しだけ違和感を覚えつつもレイの事なのでまたあまり詮索してほしく無い事なのだろうと考えて電話を切る事になる。
同時刻、ななとの電話を終えたレイは少し渋い顔を浮かべつつ溜め息を吐く。
「はぁ……。あの感じだとバレてるな……。俺が何かしら悩んでる事」
レイは流石に彼女であるなな相手にこの隠し事をするのは正直キツかった。
「……だけど、これは俺と俺の家族の問題だ。その問題に、ななを巻き込みたくない。それに、今なながこれを知ったら絶対に電話をかけた事を後悔しちゃうからな」
レイはそう言って自分の中に複雑な気持ちをしまい込む。それは、既に自分の母親が亡くなってしまっている事実をななが知れば……母親の事で幸せな気持ちになってる事を伝えてくれた彼女は気不味くなってしまうだろう。
今は幸せ気分を堪能してほしいという事でレイはななにはこの事を隠す事にした。少なくとも、今回の母親との件が終わるまでの間は……。
「はぁ……何でこんな事になっちゃうのかな」
ただそれでもレイの本音としてはこの事について、ちゃんとななに話したいのか……。もう一度大きな溜め息を吐いてしまうのだった。
それから数日後の金曜日。影人は自宅の自室を慌てた様子で片付けていた。その様子に夢乃が溜め息を吐く。
「はぁ、お兄ちゃん。今から片付けとか遅すぎない?」
「ッ!仕方ないだろ!?こころが来てくれるって事が嬉しくてつい抜けてたんだよ!!」
この日はかねてよりこころと約束していた彼女が家にお泊りをする日だ。両親である魁斗や理沙はもう少ししたら家に帰ってくる感じである。
「もう。お兄ちゃんもそういう抜けとかやるんだね」
「そりゃあ俺も人間だからな?そういうミスもやる時はやる」
「早くしないとこころ先輩来ちゃうからね」
「わかってる!!」
夢乃からジト目を向けられた影人は片付けをしつつ焦ったように反論。少なくともこころに居心地が悪いなんて事は思われたくない影人はどうにか彼女が来るまでの間に急いで片付けを進めるのだった。
また次回もお楽しみに。