キミとアイドルプリキュア♪〜輝けない少年と心の鼓動〜 作:BURNING
影人とこころが共同作業で料理を完成させた後。時間も丁度良いくらいになったために早速影人達は夜ご飯を食べる事になった。
「わぁ……美味しそう」
「それにしてもこうして息子が彼女を連れて来る日がやってくるなんて……父さん、嬉しいよ」
「それ、だいぶベタな台詞だな……。まぁ、俺もようやくこころの事をうちに連れて来れて良かったよ」
影人はテーブルの上に夜ご飯や取り皿、箸等を準備しつつ家族4人と彼女であるこころが揃っている光景にしみじみとした気持ちを抱く。
「もう、カゲ君ってば……ちょっと照れくさいですよ」
「こころちゃん、もう影人と婚約は済んだの?」
「ちょっ、理沙さん!?」
「気が早すぎだって。まず俺達は結婚するにしても最短であと5年は待たないといけないんだからな?」
一応結婚できる最低年齢が18歳のため、こころが18歳となる5年後までは最低でも待たないといけない。それなのに今の段階から婚約の話を持ち出す辺り、家族の方は受け入れ準備がバッチリなのだろう。
それはさておき、影人達はご飯の準備を終えると早速5人でテーブルを囲んで食べる事に。
「「「「「いただきます」」」」」
5人が“いただきます”の挨拶をして料理に手を付けるとこころは早速影人と一緒に作った料理を口にする。
「はむっ……美味しい」
「良かった。こころが一緒に作ってくれたとはいえちゃんと美味しいって言ってもらえる仕上がりで」
「え〜?私はお兄ちゃんの事だし大丈夫だと思ったけどな。それに、2人の甘々な愛が詰まってるんだから美味しく無いなんて事絶対に無いと思うよ」
「夢乃、甘々な愛とかよくそんな事躊躇いもせずに言えるよな?」
影人は夢乃の恥ずかしい言葉に思わずツッコミを入れてしまう。ただ、夢乃はまだ小6であるので幾ら配信のために大人な知識を身につけたとしても純粋な気持ちは残っている。
なので、夢乃は大人としての知識を持ちつつもこういう大人になればなるほど恥ずかしいと思えるような台詞も言えてしまうのだ。
「そうだ、こころちゃん。影人との馴れ初めとか聞きたいな〜」
「へ?」
「確かに俺も気になる」
「うええっ!?そ、そういうのはカゲ君から聞いてないんですか!?」
こころはまさかの影人との馴れ初め話をリクエストされて慌ててしまう。そして、そんな彼女の返しに夢乃は苦笑いしつつ答えた。
「あはは、実はお兄ちゃん。そういう話は一切してないというか。兎に角言いたく無いの一点張りで」
「そりゃあ、言いたく無い物は言いたく無いんだから仕方ないだろ。というか、恥ずかしい」
影人は少し顔を赤くしつつこの話をするのを拒否してしまう。そして、影人が拒否してるのにこころが話すのもまた申し訳ないのか。こころも揃って否定の答えを返す。
「で、でも私から話すのも……」
「だったら、今日ここで2人から一緒に聞こうか」
「えっ!?」
「はあ!?」
魁斗は折角当人が2人揃っているのなら今以上に聞くチャンスなんて無いとばかりに2人が付き合い始めたキッカケを聞き出そうとする。
「ちょ、父さん。何でだよ」
「そりゃあ、今を逃したら影人は喋ってくれないだろう?」
「当たり前だ。元々喋るつもりなんてねぇよ」
「そんな冷たい事言わないでさ〜。お願い?」
すると魁斗に便乗したのか、妻である理沙も気になって詰め寄ってきた。影人とこころはそれでもどうにか隠し通そうとする。
「ゆ、夢乃!これどうにかしてくれよ!」
「えー?お兄ちゃん、今更逃げられるわけないでしょ?折角なら私も知りたいに決まってるじゃん」
「ダメだこの空間には逃げ場がねぇ!?」
結局、この後影人やこころは馴れ初めやらお付き合いに至るまでの経緯。更にはこれまでのお付き合いでしてきた事を根こそぎ3人から聞かれて話してしまう事になるのだった。
それから暫くして。ご飯を食べ終わり、ご飯後も少し続いていた影人とこころへの質問タイムが終わると次はお風呂に順番に入っていく事になる。
「クソッ……何で今回はやけにしつこいんだよ……」
「あはは、大体全部話す事になっちゃいましたね……」
影人はこころとやった事をあらかた喋る羽目に遭った事に渋い顔を浮かべるとこころの方も苦笑いをしていた。ただ、嫌な気持ちにはなってないのか。逆に影人の両親とこういう事を通じてとはいえ話すことができたのが彼女としては良かったのか……そこまで深刻な事にはなっていなかった。
「はぁ……。まぁ、もう今更言ってても仕方ないか」
「お兄ちゃん、お義姉ちゃん。お風呂沸いたからえっと……」
するとそこに夢乃が来るとお風呂が沸いた事を伝えに来る。そして、その視線を見た影人は頷くとまずは客人であるこころに先に入るように言った。
「そうだな。こころから入って良いよ」
「えっ、良いんですか?」
「良いも何も今日は俺達がこころをもてなす側だからな。遠慮なく入ってくれ」
「わかりました!それならお先に失礼しますね」
「ごゆっくり〜」
それから影人と夢乃に見送られる形でこころが先にお風呂へと入りに行く。そんな彼女を見送った所で影人は父親の魁斗から話しかけられた。
「影人」
「何?またこころとの時間の事が気になった?」
「いや、今度は真面目な話」
影人は魁斗からの声かけにまた先程のような揶揄い混じりの物だと考えたがその本人曰く違うらしく。真面目な話との事で彼の正面に座った。
「それで、何の話?」
「……影人はこころちゃんと付き合えて。今の自分は幸せか?」
「それ今更聞く?幸せに決まってるよ」
「まぁ、そう返すよな」
魁斗はそうやって影人から当然の事をわざわざ聞くなと言わんばかりの返しに何か懐かしい想い出を脳裏に浮かべるようだった。
「……実はさ、俺は昔。誰かと付き合う事で幸せになれるなんて思えてなかったんだ」
「えっ?今は母さんと結婚するくらいだったのに?」
影人はまさかのカミングアウトに唖然とした顔つきを見せる。そしてもしこのカミングアウトが本当であれば、下手したら魁斗の考え次第で今の自分はいなかったのでは無いかという事を感じていた。
「まぁな。だけど、俺は高校生くらいかな。そのくらいまではただ自分の好きな事に没頭して、その好きな事をやるために勉強にばかり集中していたんだよ」
「そういえばそんな話。前にしてくれたよな」
影人は魁斗が高校生の頃は自分の夢を叶えるために勉強にばかり没頭。そしてそれは自分を好きになってくれた子を失望させてしまう程だった。
その魁斗に失望した相手こそが理沙が前に姫野に話した際の話の中に出てきた理沙の前に告白した子なのだろう。
「俺は勉強にばかり目が行って自分を好きになってくれた相手の事を全然見ていなかった。結局、その子は俺への熱が冷めて別れちゃったんだよな」
「ッ……」
魁斗は自嘲するようにそう呟くとその視線はどこか後悔するような物であった。
「ほんと、何で俺はあの時ちゃんと向き合う事ができなかったのかなって今でも思うよ。お付き合いをしなくなるにしてももっとやり方はあったはずなのに。……あの時彼女から受けた目線は今でも印象に残ってる」
影人はそれを聞いて複雑な気持ちが浮かんでしまう。もし仮にここで魁斗がその子と向き合っていたとして。そうなっていたら自分は今ここにいないかもしれないという事になる。
「だけど、当時の俺はそれさえもどうでも良かった。俺は高校卒業後も頑張って、今の仕事をやるようになって。でもやっぱり俺の中では他人との関係よりも自分の仕事ややりたい事を優先する事が多かった。そんな時に会ったのが母さんだ」
理沙は元々魁斗と同じ高校、尚且つ同級生だった。そして、理沙は魁斗への気持ちを自覚しながらも友達の気持ちを優先して自分の心を封印する事に。だが、再会して魁斗がフリーだと聞くや否や彼女は連絡先を交換しては猛アタックを仕掛けてきた。
勿論最初は魁斗にとってそんなアタックは邪魔でしか無かったわけで。一時期理沙の事が嫌いになってしまう程だった。
「……それでも俺は理沙の気持ちに負けた。それだけ俺は理沙に魅力を感じるようになって。理沙の事を手放したく無いって思えるようになったんだ」
「じゃあ、母さんが父さんの心を射貫いたんだ」
「ああ。俺のために色々尽くそうとしてくれて、仕事ばかり優先してつまらなかったはずの俺の事を好きでいてくれたんだ」
理沙だって自分の事を全然見ようとしてくれなかった魁斗に対して嫌気が差さなかったわけでは無い。正直な所不満だってあった。
……ただ、それでも彼女は諦めずに必死にアタックし続けたのだ。魁斗はそんな理沙の健気な部分を見せられる度にその意識は少しずつ彼女の方に傾いていく事に。
「結局、俺は理沙の事が段々気になるようになって。理沙とお付き合いするようになった。
理沙の押しに根負けした魁斗は彼女と付き合い、最終的には心を通わせて結ばれた。勿論、その道のりは真っ直ぐでは無かったものの……魁斗は理沙と付き合う中である事に気がつく。
「俺は理沙のおかげで大事な事に気がついたんだ。自分の事をちゃんと見てくれる存在は大事にしないといけないって……」
魁斗は理沙のおかげで今まで以上にもっと周りを見るようになった。自分の事ばかりで狭くなっていた彼の視野はそのおかげで大きく広がる事になる。そして、同時に過去の自分が無視してしまった彼女には申し訳ない事をしてしまったという後悔も今更ながら思うようになった。
「影人、こころちゃんの事……ちゃんと見てあげないとダメだぞ」
「うん……それはわかってるつもり。こころがいてくれなかったら。俺はまだ立ち直れてなかったかもしれないし。それができていてももっと時間がかかってたから」
影人は魁斗からの話を受けて自分が彼女に救われた分、彼女の事はちゃんと見てあげないといけないという事。そして、こころの事をこれからも愛しようという気持ちを胸に強く抱く事になる。
そんな時、丁度影人達のいる部屋である居間の扉が開くとお風呂から上がってきたこころが顔を見せた。
「お待たせしてすみません。お風呂空きました」
「わかった、髪はうちのドライヤーを使ってもらうとして……」
影人はこころをどうするべきか迷った。普通なら自分の部屋に連れて行くのが定番……なのだが、この後お風呂の順番次第では自分の部屋の中にそのまま置いていく事になってしまう。流石にそれはそれで影人視点だと気が引けていた。
ただ、それなら夢乃に相手をするのを任せれば良いという話になるのだが……何故かこの時の影人はその考えに至らずと言った所である。
「それなら、今度は私がこころちゃんと一対一で話しても良い?」
「ッ、母さん」
するとそのタイミングを見計らって来たのか。理沙が自室から出てくるとこころの相手を任せてほしいと言う。
「大丈夫、今度は私も真面目な話をするから」
「真面目な話……ならまぁ良いか。じゃあ、お願い」
影人は理沙が真面目な話をすると聞いて安心したような顔になる。流石に真面目な話をすると言われればその話を受け入れざるを得ない。
「そういや、風呂入る順番はまだ決まってないけど良いのか?」
その瞬間、魁斗がいきなりの爆弾発言を投げると影人の顔は凍りつく。先程までの流れだと自分が次に風呂に入るつもりでそれが当たり前という感じだったのだが……。実際の所はまだそこまで決まっていなかった。そのため影人は唖然としてしまう。
「えっ、今の流れ俺が先に入る感じじゃないの?」
「えー?こころちゃんが入った直後の残り湯を堪能したいの〜?」
「ふぐっ!?」
「ッ!?」
すると唖然とした影人へと追い討ちとばかりに理沙がニヤニヤとした顔つきで更に影人を揶揄おうとする。影人も流石にそこまでやられるとは思ってなかったのかデフォルメの矢印が刺さるような形で精神的なダメージを受けてしまう。
尚、当のこころはそう言われて恥ずかしさからお風呂上がりな事もあって一瞬にして顔が湯気が出る程に赤くなってしまった。
「ふふっ、冗談よ。じゃあ影人から入るって事で良いわね」
「ちょっ、それなら今の件言わなくても良かっただろ。余計に俺が恥ずかしくなるやつじゃねーか」
「まぁまぁ。折角だから影人から入ってくれば良いよ」
「父さんも……」
そして、こうなってしまうと影人に逃げ道なんて無い。完全に影人からお風呂に入る順番が出来上がってしまう。尚、この場にいない夢乃も最初からこころの次は影人が入るという流れだと思っていたのでもし仮に彼女に聞いたとしても肯定の言葉が返ってくるだろう。
「はぁ……わかったよ。じゃあ誰も異議なしって事で入ってくるわ」
こうして、影人は呆れ顔を向けて溜め息を吐きつつも後ろがつっかえてしまうために風呂場へと向かっていく。
それを見届けた魁斗は懐かしい光景を思い出した。それは、大人になってから初めて自分と理沙が一つ屋根の下で過ごす日の夜に自分が理沙の後に入る事になって彼女の事を意識してしまった時のことである。
「アイツも同じか……こういう所は血筋なのかもな」
「さ、じゃあこころちゃん。影人が上がってくるまでに私と一緒にお話ししましょうか」
「よ、よろしくお願いします……」
また、影人がいなくなったのに合わせてこころと理沙はお話をするために2人で揃って理沙の部屋の方へと向かっていくのだった。
また次回もお楽しみに。